Friday, March 19, 2010

Gigante [ウルグアイ映画]

gigante 2009年2月、第59回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ )、アルフレート・バウアー賞、初監督作品賞を受賞した作品。

おはなし
夜間警備員としてスーパーに勤めるハラは巨体に似合わず内気な独身男である。店内カメラから送られる映像を薄暗い警備員室で夜っぴて眺めるだけの仕事は退屈極まりない。このところリストラをめぐる争議もあり、居心地が良いとも言えない。

ある日ハラは監視モニターごしに清掃係の女子従業員を見初める。彼の単調な日常に変化が訪れる。 

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


gigante25 Watts』と『Whisky / ウィスキー』と『Acné』しか知らないくせに私はもう「製作会社のControl Z Filmsの作品なら私は好きになるんじゃないかな」という先入観―――たぶんいい意味の―――を持ってしまっているので、そうですね、案の定『Gigante』も好みでした。

プロットに特に意外性があるでもなく終盤の展開も序盤から読めると思う。ちょうど主人公ハラがそうであるように作品自体が寡黙でセリフも動きも多くないけれども、にやり・くすりとしながら鑑賞できる作品。

でも、淡々と味わうだけではなくてもっと深く読むべき作品なのではないかとずっと考え続けている。6回転は回したけど、ずっと考えています。私はそういうのは不得手なので苦労しているところ。

日本のアマゾンでは今日現在扱いが無いと思う。

Gigante@IMDb
製作会社ControlZ Filmsのサイト内ページ

監督・脚本: Adrián Biniez アドリアン・ビニエツ

出演:
Horacio Camandule オラシオ・カマンドゥレ ... Jara ハラ、Jarita ハリータ

Leonor Svarcas レオノール・スバルカス ... 清掃係の女性従業員
Augusto Peloso ... Rojas ロハス: スーパーの正社員
Darío Peloso ... 肉売場のいけめん従業員

Federico García フェデリコ・ガルシア ... Matías マティアス: ハラの甥っ子

gigante

(コメント欄につづく)

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Wednesday, June 24, 2009

El baño del Papa 『法王のトイレット』上映会

リンク: これからの講演会 <立教大学ラテンアメリカ研究所>.

2008年9月のラテンビートフィルムフェスティバルで上映された『El baño del Papa / 法王のトイレット』の上映会があるそうです。

この作品は昨年のLBFFではお客さんの反応の良さでは一位、二位くらいだったんじゃないかな。2004年の『ウィスキー』が話題になったときに、「ウルグアイの映画事情はとても厳しく、映画誕生以来、これまでに製作された長編映画は約60本。2002年までは映画産業は存在しないも同然だったが……略……」というのにびっくりしたものですが、『法王のトイレット』は「いいじゃん! いいじゃん!( ・∀・) ウルグアイ映画、力強いじゃん!」と感じることができる作品だと思います。

英語字幕のみの上映だそうですが、日本語あらすじが配布されるそうで理解の助けとなるでしょう。( 7月に入ってから事情がかわり、7/3の情報では日本語字幕つきに変更になったとのこと。

日時
2009年7月4日(土)17時30分より

場所
立教大学池袋キャンパス、8号館8201教室

詳細はリンク先(立教大学ラテンアメリカ研究所)で御確認ください。


くどいようですが私は昨秋のLBFFの中では『法王のトイレット』がいちばん誰に対しても薦めやすい作品だったと思っています。だからお薦めします

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Thursday, January 01, 2009

El Último Tren / The Last Train [アルゼンチン映画][ウルグアイ映画]

el ultimo tren何が始まるのかが最初のほんの数分でわかってしまう。そこからいったいどうやって残り80分を持たせるのかと興味をひかれた。‘それ’までを描くのかと思っていたからね。‘それ’からを見せるとは思っていなかった。

男の意気を見よ、と突っ走る三人の‘ナイスじい’(ナイスガイな爺さん)をじっと見つめる映画でした。


と書いていて思い出したのは『800発の銃弾』(同じ2002年)。

それから、題材が鉄道でなかったとしても、『今夜、列車は走る』(2004年)は似ていると思う。そういえば、『今夜、~』の試写会のあとにスペイン語映画の授業で感想を述べ合っていたときにも、『El ultimo tren』の名が挙がっていたよ。

ストーリー DVDの箱より てきとう訳 (前半)
ウルグアイに残っていた19世紀の機関車をハリウッド資本が買い取った。映画撮影に使用されるというこのニュースは派手に報じられたが、「鉄道友の会」の古参メンバーは快く受け止めなかった。

機関車が米国へ移送されるのを阻止しようと決意した彼らは、少年一人をしたがえて、一世一代の奇計をめぐらす。

El último tren@IMDb
直訳: 最後の汽車
英題: The last train

もうひとつのタイトル: Corazón de fuego
意訳: 炎の心臓、燃え盛る心

監督: Diego Arsuaga ディエゴ・アルスアガ

脚本: Diego Arsuaga  Beda Docampo Feijóo  Fernando Javier León Rodríguez  Andrea Pollio  Andrés Scarone

出演:
Héctor Alterio エクトール・アルテリオ ... “El Profesor” (Antonio Lopez) “教授”(アントニオ・ロペス)
Federico Luppi フェデリコ・ルッピ ... “Pepe” (Jose Aviles) “ペペ”(ホセ・アビレス)
José Soriano ホセ・ソリアーノ(ペペ・ソリアーノ) ... “Secretario” (Dante Minetti) “書記” (ダンテ・ミネッティ)
Balaram Dinard ... Guito ギト

Gastón Pauls ガストン・パウルス ... Jimmy Ferreira ジミー・フェレイラ: 機関車の所有者
Eduardo Miglionico ... Ponce ポンセ刑事
Elisa Contreras ... Micaela ミカエラ: “教授”の妻
Alfonso Tort ... Daniel ダニエル: “教授”の甥

Saturnino García サトゥルニーノ・ガルシア ... De León デ・レオン: 渉外


DVDのメイキングでガストン・パウルスはこう語っている:
だって、ルッピ、アルテリオ、ソリアーノですよ。僕らの世代の役者にとって、彼らの一人とでも共演できるのならそれは栄誉です。でもね、3人いっしょにとなると、もう………夢ですよ、それは。


DVDGOで2008年2月購入 12.92ユーロ (1ユーロ=158.49円当時)


日本の鉄道ファンもこれ観たらぜったい喜ぶぜ…と思ったら、なんとちゃんと上映されていた。2004年2月8日、財団法人東日本鉄道文化財団の主催した鉄道映像フェスティバルで『The Last Train』として。すげぇよ、みなさん。いい目をお持ちだ。


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Friday, November 21, 2008

En la puta vida [ウルグアイ映画]

en la puta vida サラっと観ただけなので注意点がいくつかあります)(サラっとどころか別の作業の時にBGVとしてつけていただけ、みたいなもの)(とは言うが、2回転半くらい回してもいるので案外わかってるかも)


ストーリー
エリサは母親との折り合いが悪く、口論の末、二人の息子を連れ家を飛び出した。頼れるものといったら愛人だけだったが、その男も結局は甘いセリフをその場しのぎに吐いていただけだった。

エリサは親友ルルといっしょにモンテビデオ市内に美容院を開くという夢を叶えたい一心でクラブホステスとして働き始めるが、娼婦に転身するのに時間はかからなかった。

その世界で彼女はプラシドという男と知り合い、やがては強く惹かれる。実業家だというその男はスペインとウルグアイを行き来していてずいぶんと手広く商いをしているらしかった。エリサとルルはプラシドの手引きでバルセロナに渡る。空港ではパスポートの偽造が見破られそうになったが幸い入国を許可された。

子供をウルグアイの知人に預けてきたことは身を裂かれるような思いであったが、バルセロナでは一晩に何百ドルも稼げると、夢と野心で胸は膨らむ。

しかし間もなくエリサとルルは立ちんぼとしての悲惨な現実に直面する。二人は離れて立っていろ、誰ともしゃべるな、客とは7分で終わらせろ……。苛酷な生活が始まった。

バルセロナの売春街の一角ではウルグアイ人娼婦とブラジル人トランスベスタイトの間で縄張り争いが烈しくなっていた。小競り合いの中でプラシドの撃った銃が一人の娼婦の命を奪う。刑事のマルセロはプラシドを捕えるが、凶器の拳銃が見つからないうえ、売春街に巣食う人々の口は堅く聞き込みも思ったようにいかない。

エリサが何か知っているとにらんだマルセロと、プラシドを早く釈放してほしいと願うエリサの利害が一致し、ある取引が成立した。

★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜


たぶん今年最大のいわゆる「祭り」は、毎日新聞が多くの日本人から「売日新聞」と呼ばれるに至った『変態事変』だったと思うのだけど、あの騒擾の中で、「米州機構が公式文書にて問題の変態記者ライアン・コネルの記事を引用していたこと」もちょっと話題になったこと、覚えていますか。毎日新聞まとめwikiの該当のページをさらっと読んでください。

この時に私が苛立ったのは、なぜアニータみたいな女の事例が、回り回って、言うに事欠いて「人身売買」と表現されたのか、という点でした。


世の中には売春を正業としている人がいるでしょう。副業かもしれないけどな。なんだ? その報告書だかなんだかで取りざたされていた娼婦たちは、‘ロープー’だったんじゃないのか。承知の上で、やる気で日本に来ていたんじゃないのか。どうなんだ。

ヒューマン・トラフィック』の前半だけ観たことがある。あの映画で性奴と形容するのがふさわしい境遇に閉じ込められていた娼婦たちは、外国への家族旅行で商店街でウィンドウショッピング中に白昼堂々と掻っ攫われていたり、ふつうに恋愛関係を構築した(と思った)上で出かけた旅先で、愛したはずのその男によって組織に売り飛ばされたり、そういった形で苦界に身を沈めた女たちだよ。

『ヒューマン・トラフィック』で描かれた拉致被害者と、我が国で業としての売春に従事している、「アニータ」でシンボライズされるような女たちとがおんなじように語られることに、私は違和感を覚えたわけだ。


あの手の女は「日本という国での滞在」を違法に取得しているんだよ。どこの国の人がどこの国を訪れるのであれ、「外国で過ごす期間とその過ごし方」というのは盗むことが許されるものではない。「旅行」と言って「90日」許可された入国ならば、旅行者として90日を超えないように過ごさなければならないものだ。それが社会のルールである。

それを外れるのは盗人以外のなにものでもない。

このところ毎日・TBSなんかがやたら後押ししているように見受けられるカルデロンの一件なんかもそう。その両親は「他人名義の旅券で入国」までしたんだろう。計画犯罪上等ではないか。

この一家をめぐっては嘆願書まで出されているらしいが、とんでもない話だ。そんなものに署名した人間は、あれです、「犬」って貼ってあるみたいに、玄関にシールかなんかつけといてほしいくらいだ。「へー。そーゆー人が住んでるんだな」って、私が理解した上で街を歩くことができるように。

こういうのを「かわいそー」で語るオメデタイ人間が私の周りにすぐには見当たらないことを願います。『おなじ月の下で』でも言ったけど、こういうのはかわいそーとかいう問題ではない。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


で、何の話かと言うと、エリサには同情できないという話。

初めは、もう男に体を利用されてばかりもいないぞとばかり力強く立ち上がったヒロインが、自分の夢のために泥水もガブガブ飲んでピカレスクに世を渡っていく痛快な話かと期待していたんだが、ただ、頭の悪い娼婦の話だった。

経済状況が悪くて、学のない女が、ましてや子供を二人も抱えた女が生きて行くことが日本とは比べられないほどに難しい、ほとんど不可能なのかもしれない国のお話であるというのはわかってる。それを頭に入れてもなお、この女は馬鹿だと私は思う。


エリサは売春が正業だった。
そういう世界に出入りしているプラシドという男が羽振りがいいのはいったいどんなビジネスを展開しているからなのか、見当もつかなかったとは言わせない。第一、偽造旅券の入手をあっさりとプラシドに頼んでいたじゃないですか、エリサは。

よその国での滞在を盗むにあたり良心の呵責はこれっぽっちも無かったでしょう、貴女。

そうして潜り込んだスペインではプラシドにカジノに連れていってもらって、派手に遊ばせてもらって、豪華なディナーも御馳走してもらう。自分がそうやってたかっている遊興費の出所が自分と同じような売春婦たちからのピンハネであろうと想像できなかったとでも言ってのけるつもりか。


この女のようなのはあまり「被害者」と思わない。だからエリサが訴えた主張も胸には響かず、むしろ「アニータ」へ憤りを覚えた時のような苛立ちを抱かせるものだったし、この映画のラストで示されるアピール自体にも私はほとんど心を動かされなかった。

私がこの映画から受け取ったメッセージは「外国での売春婦のおかれた状況がひどい、こんな社会を許すまじ!」ではなくて、「外国に売春しに来るようなビッチ、許すまじ!」だった。


そういう意味では私にとっては強いメッセージとなった。はからずも。

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Tuesday, September 16, 2008

El baño del papa / 法王のトイレット [ウルグアイ映画]

LBFF第5回スペインラテンアメリカ映画祭の作品紹介より:
1988年、ブラジル国境沿いにあるウルグアイの寒村にローマ法王がやって来ることになった。貧しい村人達はメディアに煽られ、5万人の観光客を見込んで一日だけの商売に知恵を絞り始める。一攫千金を狙い、家を抵当に入れ借金までして出店の準備に勤しむ人達。

妻と娘と3人で暮らすベトも、自転車で国境を越え不法に品物を運ぶ仕事で何とか食繋いできたが、その日暮らしがやっとの状態。この機に貧乏暮らしから抜け出すため、ある商売を思いつく。果たしてベトが得たものとは・・・?実話をもとに、独特のユーモアで彩られた、切なく温かいウルグアイ映画の傑作!

El bano del papa@IMDb 
El bano del papa 公式???


すごくよかったです。
私の好きなさちさんのブログ、amapolaKLE4cさんの日記をはじめとして多くのブログで語られていると思うので、私は感動を文字にするのは今回はサボってしまうことにしました。なんと!


ただ一つ書きますが、「観る機会があったらぜひ観てください」。後悔しないと思う。今回の映画祭でも一番人気だったんじゃないかなという気配を感じています。


メモ
・ベトたちはいつもたぶん、ウルグアイのMeloから国境のAceguáまで行って帰ってくるんだよね。


Exibir mapa ampliado


(つづきはコメント欄で)


監督・脚本: César Charlone   Enrique Fernández エンリケ・フェルナンデス

出演:
César Troncoso セサル・トロンコーソ ... Beto ベト
Virginia Méndez ビルヒニア・メンデス ... Carmen カルメン (妻)
Virginia Ruiz ビルヒニア・ルイス ... Silvia シルビア (娘)
Mario Silva マリオ・シウバ ... Valvulina バルブリナ (親友; ご近所; 仕事仲間)
Rosario Dos Santos ロサリオ・ドス・サントス ... Teresa テレサ (バルブリナの奥さんだっけ?)

Nelson Lence ネルソン・レンセ ... Meleyo メレジョ (‘móvil’=税関??? 国境警備隊???の、いけすかない官吏)

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Sunday, April 20, 2008

25 Watts [ウルグアイ映画]

25 wattsここを読む前に鑑賞を済ませてもらえるといいな。フェデリコ・ガルシア・ロルカ図書館にもあったと思います

この作品、人々が初見でどれくらい「わかる(※後述)」ものなのか、興味があります。スペイン語学習歴とスペイン語圏滞在歴(どこの国か)を合わせて聞かせてもらえれば、この作品を一発勝負で「わかる(※後述)」のはいったいどういう人なのかが掴める。参考までに知りたい。

なんてね。



というわけでここから先は鑑賞前の人は読まない方がいいな…。観る前に余計な情報を入れないでほしい。

(※amazon.co.jpのはビデオ、amazon.comのはリージョン1のDVD、DVDGOだとリージョン0(?)で、今15ユーロ


いや、これ、本当に難しかった。私がこれまで観てきた…何作だろ……百何作?の中でたぶんいちばん「わからない(※後述)」。これまで長いことその座はアルゼンチン映画の『Martin (Hache)』が占めていたのだけど、『25 watts』の方がずっとキツい。本当にたいへんだった。


さてここで、何がどうであることを「わかる」と言うのか、を整理したいと思う。


若い男の部屋を女が訪れた → 無遠慮に入ってきたのでたぶん恋人同士だろう → 二人はベッドの上でしゃべっている → 男が迫っても女はイヤな表情を浮かべて手を突っ張って男を押し戻している。キスを拒んでいる様子 → そのあと結局はキスしている

(ここで切り替わってしばらくは他の登場人物のシークエンス)

(また切り替わる。この画面から始まるシークエンス)
↓↓↓↓
25 watts
ベッドの下は乱雑。ベッドから誰かが降りる。膝下だけが映る。どう見ても女の足。足元には衣類らしきもの


25 watts
どう見ても女の脚をしたその人はかがんで、どう見ても女のパンツを手に取った


25 watts
どう見ても女の脚をしたその人が片脚をあげた。どう見ても女のパンツを、どう見ても穿いているようだ


同様に、どう見てもタンクトップをも床から拾い上げた。膝下しか映っていないがどう見ても今それを身に着けているのだろう

ここでどうもその人の動きは止まったようで、

女声が何か言い、男声が何か答える

25 watts
するとその人はおもむろにしゃがみ込んで床に手をついてベッド下を覗き、ガラクタの中を手で探る


この二人、どう見てもセックスしたでしょ? そしてセックス後に女が、どう見ても何か探してるわけじゃん? 脱いで放り投げてあったパンツを拾って穿いて、キャミソールを着て、そこで一呼吸おいて何か気づいた様子で探してるんだったら、ほぼ間違いなくブラジャーでしょうよ。ブラジャー探してるんだよね、この女性は。他に何がある。


さて。
これは「わかった」のかどうなのか。


「お話がわかった」という意味では「わかった」んだよ。あの女性はブラジャーを探していたんだ。これは広義の「わかった」。外国語映画を「わかる」のにコトバは関係ないね。コトバを知らなくても話は「わかる(広義)」。映画鑑賞ってそれがいいと思う。


でも、外国語の勉強という意味ではこういうのを「わかった」と言うわけにはいかない。

私がこのブログにおいてスペイン語の映画について「わかった」「わからない」と言う時は、セリフを頭の中でどこまで文字に起こせているかを問題にしています。いや、ほんとにディクテーションをしなくたっていいわけで、つまり、セリフを聞いたそばから頭の中で‘テープ起こし’ができているのかいないのか、です。

それができている状態を「わかった」と言っています。こっちはさしづめ狭義の「わかった」

ブログタイトル脇に「映画で学ぶスペイン語」などと大風呂敷を広げてしまった以上、しょうがないや、このブログでは私はどの作品でもそれを目指していなければいかんのでしょうよ。もうしょうがない。何の因果でこんなつらい作業を。


昔々、グラナダに住んでいた友人が―――彼女はその時点で2年ほどスペインに住んで勉強していたのだが―――、日本から来たばかりの、スペイン語学習歴は1~2か月くらいの女子といっしょにハリウッド映画かなんか(吹替)を観にいき、観終わってから「いやぁ、30%くらいしかわからなかったかな……」と呟いたらば、その女子が「えーーーっ? それしかわかりませんでしたあ? あたし、8割くらいはわかりましたよー?!」と言ったらしい。

┐(´д`)┌ヤレヤレ である。


今回の『25 Watts』、どういう人だと何%くらい「わかる(狭義)」ものなのか。
あらためて思ったけど、ウルグアイとかのスペイン語は、私にはなんだかよその言葉だ。よその言葉すぎる。本当に苦労した。たった10分進むのに巻き戻し巻き戻し巻き戻しで2時間~3時間かかったなんてザラだった。最初に観ようとしたのって10か月前のことだからな。以来、挫折しちゃ再挑戦しの繰り返しで、最初の方のチャプターなんか何回観たかわかんないよ。そしてそれなのに、昔過ぎてよく覚えてないよ。

心頭滅却してもダメなセリフはダメ。聞こえて来ない。苦難を感じまくり。だけど、これ、面白いよ。というのをコメント欄で長々と書きます。


25 Watts@IMDb
直訳: 25ワット

脚本・監督: Juan Pablo Rebella フアン・パブロ・レベージャ  Pablo Stoll パブロ・ストール

これらのCDは、サントラの中からamazon.co.jpにありそうなものを見つくろったもの

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Saturday, December 24, 2005

Whisky / ウィスキー [ウルグアイ映画]

whisky※ウルグアイ映画です

ウルグアイ ―― モンテビデオ。
ハコボ・コレルはさびれた靴下工場の経営者。それ以外の一切を排除したような単調な生活。マルタは信頼のおける従業員。女工としての仕事の他にハコボの秘書的な役割もこなす。しかしこの二人が労使関係を超えることはありえず、時計の針のように精確なリズムで静寂な日々を刻むのみ。

毎朝カフェテリアで朝食をとるハコボ。工場の前で待つマルタ。やがてハコボがやってきてシャッターを開ける。おはよう以外に交わす言葉は無く、マルタは更衣室に向かいハコボは機械の電源を入れる。二人の一連の動作は、テープを巻き戻して再生しても1mmも1秒も位置やスピードが狂わないのではないか。

そろそろハコボの母の一周忌である。長らく交流が絶え母の葬儀にも来られなかった弟エルマンがブラジルからやってくることになる。ハコボの、そしてマルタの人生に変調がもたらされる。エルマンが滞在する数日間、妻のふりをして一緒に暮らしてほしいとハコボがマルタに頼んだのだった。

弟エルマンが到着し3人で数日を過ごすうちに誰かの中で何かが変わるのか、あるいは誰の中でも何も変わることがないのか。
___


この映画、感想を書いちゃいけないんだと思う。
「………った」。その点点点に嵌まる形容詞を私が書いてしまったら、それ自体がネタバラシにもなろうし、これから本作を観る人にとってのミスリードにもなっちゃうのだと思う。だから何も書かないよ。

一コマ一コマのディテールがどうとでも解釈できちゃうのだと思うよ。だから、観終わってからIMDbCinemaScape答え合わせをすると、皆がてんでんばらばらな解釈を披露しているので「へっ?」って思わず首が前に出ちゃう。「え? そっち?」「なんでそう見えたの?」「あのシーンをそう受け止めた人がいるとは……」と。

「この映画、観るべき? 観なくていい?」という質問に答えるならば、「観といてくれ。必ず」です。

一コマも見落とすことのないようにということと、鑑賞前に一切のレビューを封印しておいてほしいということをお伝えしときます。真っ白な頭で観て。私は映画を観る前に、レビューの星の数とジャンルくらいは薄目を開けて見ちゃうんです。だってそれによって観るか観ないかを決定するんだから。しかし今回はソレをやるべきじゃなかった。ホントに真っ白な状態で観た方がよかったな。

『ウィスキー』は観る人が観るように観えるでしょう。その人が観るようにしか観えないでしょう。自分が正解だと思った解釈が自分にとっては正解なのですよ。「いや、映画って本来そういうもんでしょ」などとツッコみたくなるかもしれないけど、えーっとね、そりゃそうなんだけど、『ウィスキー』は、なんつうか、違う。
___________

メモ
1) 「matzeíbe」とは? → 「matzeiva」か
・a stone that serves as an open religious center, around which anyone wishing to serve Gd may gather.
・a single stone, that are used for worship.
・a tombstone is placed at her grave.

2) 女子工員がききたがるラジオDJの番組はOceano FMのOrlando PettinatiのMalos Pensamientosという番組?

3) capaz que: [副][口][アル,ウル] a lo mejor.

4) お店で財布がどうのこうの言ってるのは、Tony Ramosという人のこと?

5) エルマンがピリアポリスへの小旅行へ二人を誘う。ピリアポリスってどこなんだろう? Piriápolis

6) ホテルの部屋備え付けのミニバーのことをfriobarって。スペインでもそう言うんだっけ? minibarじゃなかったっけ?

7) discar: [アル、ボリ、ホン、パラ] marcar (pulsar en un teléfono los números de otro)

8) ヘルマンがホールで歌う歌は、Leonardo FavioのO Quizas Simplemente le Regale Una Rosa

9) 「これを2つ乗っけて」というような命令文、スペインのスペイン語では、ラフなのが「Ponme dos.」、丁寧なのは「Póngame dos.」。しかしウルグアイ近辺のスペイン語では「Poneme dos.」となるのですか? これが、よくわからん。これは、二人称に対する命令形なの? 三人称なの?

10) 「ウィスキー」というのは、写真を撮るときに笑顔がうまく作れるように発する一言 (la palabra que se utiliza para simular la sonrisa al hacer fotos.)。「はいチーズ」ね。スペインだと「patata」。


Whisky オフィシャル
ウィスキー 日本公式

Whisky @IMDb
ウィスキー @みんなのレビュー
ウィスキー@映画生活
ウィスキー @goo映画
ウィスキー@ぽすれん
ウィスキー@象のロケット
Whisky la película de Pablo Stoll @Yahoo! Cine
@シネマカフェ

監督: フアン・パブロ・レベージャ Juan Pablo Rebella パブロ・ストール Pablo Stoll
製作: フェルナンド・エプスタイン Fernando Epstein クリストフ・フリーデル Christoph Friedel エルナン・ムサルッピ Hernan Musaluppi
脚本: フアン・パブロ・レベージャ Juan Pablo Rebella パブロ・ストール Pablo Stoll ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ Gonzalo Delgado Galiana
撮影: バルバラ・アルバレス Barbara Alvarez
音楽: ペケーニャ・オルケスタ・レインシデンテス
 
出演:
アンドレス・パソス Andres Pazos
ミレージャ・パスクアル Mirella Pascual
ホルヘ・ボラーニ Jorge Bolani
ダニエル・エンドレール Daniel Hendler
アナ・カッツ Ana Katz
アルフォンソ・トール Alfonso Tort

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