Sunday, April 24, 2011

Macario [メキシコ映画]

この文はある意味“ネタバレ”不可避

子だくさんのマカリオは森で集めた薪を売って糊口を凌いでいる。女房も町の富家の洗濯女をして少しは稼いでくるが雀の涙といったところで、一家は極貧に喘いでいる。日々の食事にすら窮するマカリオらを尻目に、町の金持ちは“死者の日”の飾りの細部に至るまで贅を尽くしている。

マカリオは食事をとるのをやめた。「お腹が空いていないの?」と女房にきかれてマカリオは「腹が減ってるかって?生まれてこのかたずっと腹は空きっぱなしだよ」と答える。

「俺は喰うことしか考えていないんだ。ひもじい思いのまま死んでいくのさ。俺はもう誰かに食べ物を分けなきゃならない暮らしはたくさんだ。自分だけ腹一杯七面鳥を喰いたい。誰にも分けたくない。“誰にも”ってのは、子供たちにもってことだ。俺だけで喰いたい。喰いたいんだよ!それができないんだったらいっそもう何も喰わずに死んでいきたい」。

女房は女房で金持ちの女から無慈悲な仕打ちを受け、ひもじさと惨めさと憤りに突き動かされるようについに盗みを働いた。マカリオのために盗んだ七面鳥を女房は子どもたちからも隠し通す。そして「一人でお食べよ」とマカリオを仕事に送り出したのであった。

その日森に入ったマカリオが七面鳥を食べようと包みを開いたところ、どこから現われたのか、怪しい男らが入れ替わり立ち替わり分けろ分けろと声を掛けてくる。一人目は悪魔、二人目は神様であった。マカリオは分け与える気などさらさらない。悪魔にも神にも。

しかし「何千年も食べ物を口にしていない」と訴えた三人目の男には分けてやることにした。

食べ終わるとその男はマカリオに礼をすると言い出した。地面から湧き出た水をマカリオに渡し、「私が病人の床の足の方に立っていたらお前はその水を病人にお遣り。一滴だけで十分だ。でも私がもしも病人の枕元に立っていたら、お前はもうなんにもしないことだ。その人は死ぬんだから。もう私が連れていくんだよ」と言う。

男は死神であったのだ。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


…………これは……まんま『死神』の展開じゃないか。


と、ここで「え?どうしてどうして?」と思って映画をいったん停止しあれこれ検索してみると、そうか、『死神』っていう演目は西洋からの翻案だったのだね。知らなかったわ!

『死神』という咄についてはコレ!という原作はまだ調べがついていないが、とりあえずこのメキシコ映画『Macario』はIMDbによればB. Travenという作家の『The Third Guest』を原作としているようだ。そしてそのB. Travenという人は謎の多い人らしいです

(⇒ 本棚の隅っこ: B. Traven 『マカーリオ』


というわけで、死生観の面白さを味わうだけでなく、子どもの頃から馴染んできた落語の世界まで覗くことができて、二重に面白い作品でありました。いやあ、圓生につながるとは全く予想していなかった。

Macario (1960) - IMDb

残念ながら日本のアマゾンでは扱いが無いようだ。


以前友人に「死者の日って?」と聞かれて、死者の日について言及のありそうな書籍を検索したことがあるので羅列しておこうと思う:

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Saturday, March 05, 2011

Rabia / 激情 [メキシコ映画][コロンビア映画][スペイン映画]

rabia TIFF 第22回東京国際映画祭の上映作品

東京国際映画祭 | 激情の作品紹介ページより:

[解説]
肉体労働者と住み込みのメイドの関係は、男の起こした事件で終わったかに見えた。しかし、男は女の側にいることを決意する。想像を超えた方法で…。卓越した映画技法と役者の渾身の演技が光る激情的ラブストーリー。

[あらすじ]
移民の建設作業員ホセ・マリアは……略……建設現場の監督と対立し、暴力を振るったすえに殺害してしまう。

……略……廃墟と化した広い屋根裏部屋に身を隠したホセは、まるで覗き魔か、もしくは幽霊のように……略……

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rabia わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

3回転半くらい再生してチラチラ観た。
だいたいどんな作品も観ているうちに「これを書こう」「これに触れておこう」「この言い回しは説明しよう」などと浮かんでくるもので、一回りまたは二回り見終わる頃にはだいたい文章は頭の中でできあがっているものなのだが、この作品は3回転してもめぼしい思いつきが得られず困った。

十分に悲しいし可哀想だし、ホセ・マリアの憤りに共感もする。破滅的で自滅的で破壊的で、窒息しそうな感覚に襲われもするが少しの希望は残されていて、

・貧困
・南米移民への蔑視
・本国でも移民先の国でも踏みにじられる尊厳
・生殺与奪を握られた移民が曝される苛酷な現実
・移民労働者の悲惨な日常生活

といった事柄が描かれているのだけれども、「それらが描かれていますね」とここで述べるのは、陳腐で凡庸でたまらなく気恥ずかしい。だから書くことがなくなって困ってしまったわけである。


主役のホセ・マリアを演じたGustavo Sánchez Parra グスタボ・サンチェス・パラの半分人間でなくなってしまったような形相に息をのんだ。グスタボ・サンチェス・パラのあの姿がこの作品の収穫の一つ。

一度目の再生をしている間は他の事をしていて、目の隅で画面をとらえていてチラ見をするような格好だったのだが、妖怪みたいなホセ・マリアが姿を見せたとき私は絵に描いたような“二度見”をした。以後何度か再生した時もそのシーンになると「来るぞ、来るぞ」と待ち構えたものである。


グスタボ・サンチェス・パラは14kgの減量をして撮影に臨んだらしい。終盤を撮ってから序盤へと戻ったのだろうなと思ったが、やはりそうだったみたい。まあそうだよね。
Gustavo Sánchez Parra bajó 14 kilos por "Rabia" - Instituto Mexicano de Cinematografía, Imcine

そして下記の記事だと温情の女主人を演じたコンチャ・ベラスコが「彼は40kgも痩せたのよ。31kgのところから撮影を開始したの」と言っているが、40kgはさすがにヤバいだろ???
Videochat de Martina García y Concha Velasco Sur.es

何kgだ、何kg減らしたんだ!?もともと細身だった彼にとっては、これほどの急激な肉体的変化は精神面にも厳しく作用したらしい。
'Rabia' lleva cine del bueno a la sección oficial | Andalucía-Málaga | elmundo.es

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Sunday, September 19, 2010

A tiro de piedra [メキシコ映画]

a tiro de piedraサンセバスティアン映画祭にて一人で観た作品。

おはなし
ハシントは21歳になる今まで北部メキシコの寒村で羊の番をしてきたが、退屈な暮らしに飽き飽きしている。道端でキーホルダーを拾った彼は、これぞ“お告げ”とばかり何千キロの彼方を目ざして独り歩き出すのだった。

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En la puta vida』『La misma luna』『Sin nombre』などなどの感想文に表れていると思うけど、私が“不法入国もの”に心を動かされることは「決して」と言ってしまっていいくらい無いことなので、この作品に対しても同じような感想文が書き上がりそうです。(例外は『Habana Blues』だけかもしれない)

だから観ている間の私は実に淡々としたもので、冷淡と言ってもいいくらいだったでしょう。

不法入国という行為自体への冷然とした視線がそもそも私にはあるし、不法入国ものの作品の展開にあまり新鮮味を期待していないというのもあったし。騙されたりたかられたり、命綱と言えるくらい大事な物を盗まれるならまだしもなぜか凡ミスで失ってしまったり。そういう過程でも描かれるのでしょと思ったように描かれていく。だから、まあ、退屈だと感じはしたんだよ。


でもこの作品、上映後に監督とのcoloquio(質疑応答)が設けられていてね、それを聞いていたら印象が好くなってしまってね。そういうの、フェアじゃないとも思うんだけどね。“フェア”って何に対してどういう“フェア”かよくわからないけど。

監督の語りを聞いていたらなんか好きになっちゃったんだよね。でもそれを紹介しようとするとネタバレ必至なので、続きはコメント欄で。


監督: Sebastián Hiriart セバスティアン・イリアルト
脚本: Sebastián Hiriart  Gabino Rodríguez ガビーノ・ロドリゲス

出演:Gabino Rodríguez ガビーノ・ロドリゲス ... Jacinto Medina ハシント・メディーナ

A tiro de piedra@IMDb
A tiro de piedra 製作会社


Ver A tiro de piedra en un mapa más grande

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Saturday, September 18, 2010

Chicogrande [メキシコ映画]

おはなし
メキシコ革命において、頭領のパンチョ・ビリャへの忠義を尽くした無名の英雄にスポットを当てた作品。

パンチョ・ビリャが国境を越えてニューメキシコ州コロンバスを襲撃したのをきっかけに、アメリカは“懲罰隊”を派兵するという大義名分を掲げメキシコに侵攻する。本作が描き出すのはちょうどそんな時代である。

チコグランデという男はパンチョ・ビリャを守り抜くために身命を擲つ覚悟をしている。アメリカ軍前衛部隊のフェントン少佐は“北方のケンタウロス(半人半馬)”と異名をとったパンチョ・ビリャの身柄を確保するまでメキシコ中を探し回る覚悟である。

そしてアメリカ軍の軍医であるティモシー・ウェズリーはメキシコという不可思議で不可解な国の特性と、凄まじい拷問に遭ってもなお頭領を守り抜こうとするメキシコの民の気質を理解しようと日々自問自答を続けていた。

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今年のサンセバスティアン映画祭のオープニング作品。流血や拷問のシーンが嫌いな私には苦痛の2時間だった。時折客席のあちこちからおじさんらしき人たちのうめき声も聞こえたくらいなので、どぎつい描写で思わず目を逸らしたのは私だけではないと思う。

………「2時間」と書いてしまってから正確には何分の作品なのかとChicogrande@IMDbを見てみれば95分とのこと。95分!? Ω ΩΩ< な、なんだってー!! そんなに短かったかい!? と驚いたということは、つまりそれほど長く感じられたほどに息が詰まるシーンが多かったということか。

でもつまらなかったわけではないですよ。凄惨なシーンの連続により緊張を強いられただけのことで。鑑賞後のツイートでも、「6~7合目までlentaでその後駆け上がっていくわよね」と書いていた。終盤の盛り上がりが気持ちいいくらい。

メキシコの歴史について予復習の必要を感じる作品でもありました。(追い追いコメント欄で)


ところで、アマゾンで「パンチョ・ビリャ」やら「ビラ」やらで検索してみた時のこれ↓

pancho


もしかして」じゃねーよ。


Chicogrande@IMDb
Chicogrande 公式

監督・脚本: Felipe Cazals フェリペ・カサルス

原案?: Ricardo Garibay

出演:
Damián Alcázar ダミアン・アルカサル ... Chicogrande チコグランデ
Daniel Martinez ダニエル・マルティネス ... Butch Fenton フェントン少佐
Juan Manuel Bernal フアン・マヌエル・ベルナル ... Médico Gringo 従軍医ティモシー・ウェズリー

Iván Rafael González イバン・ラファエル・ゴンサレス ... Guánzaras グアンサラス(少年兵)
Jorge Zárate ホルヘ・サラテ ... Viejorresendez レセンデス(この“戦”で息子を失っている; 息子はパンチョ・ビラの居所を突き止めるための拷問で死んだ)

Patricia Reyes Spíndola パトリシア・レジェス・スピンドラ ... La Sandoval サンドバル(村人)
Alejandro Calva アレハンドロ・カルバ ... Francisco Villa パンチョ・ビラ
Bruno Bichir ... Ursulo
Tenoch Huerta ... Doctor Terán

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Monday, August 16, 2010

Hasta el viento tiene miedo [メキシコ映画]

hasta el viento tiene miedo わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

1968年のメキシコ産ホラー映画。IMDbのジャンル表示は「Drama | Fantasy | Horror | Mystery | Thriller 他」といったところ。


おはなし
厳格な規律で知られる女子校で寮生活を送るクラウディア。ある夜、彼女は悪夢にうなされる。
「私はとても暗いところに居たの。長い長い階段があって、上から誰かが私を呼んでるのよ。上っていくと屋根裏部屋みたいなところがあって、そこに女の子がいたのよ。首を吊ってぶらぶら揺れていた」。

学校の庭の片隅に古い塔が忘れられたようにひっそりと建っていた。
「これよ、この塔が夢に出てきたの。上の方にあの子がいるのよ。はっきり覚えてるわ。そう、この階段よ。この階段をのぼったの。階段はひどく軋んでいたわ」。

校長のベルナルダは塔に侵入したクラウディアらを厳しく罰する。「でも鍵が開いていたんですもの」「嘘をつくんじゃありません。鍵は私が持っているこれ一つなんですから!」

夜な夜な誰かがクラウディアの名を呼ぶ。まるで塔に吸い寄せられるようにクラウディアは寮を抜け出す。夢遊病患者のような足取りで寮から出て行く彼女の後を、級友のキティたちはつけてみることにした。


えーっとIMDbの新サーチ機能を初めて使ってみる。これで調べたいことがちゃんと調べられたのかわからないけど、たとえば ⇒ 「スペイン語 | ホラー | 1950年~2010年 | 評点7.0以上 | 最低でも50票」という条件で検索して評点の降順に並べた時に、この作品はかなり上位に来る。

ウィキペディアであれなんだけど、Hasta el viento tiene miedo (1968)@Wikipediaを読むと、ホラー映画を愛好するメキシコ人の間ではカルト作品と捉えられているようですね。それから11月1日の諸聖人の日、11月2日の死者の日に放映されるのかな。


欧米のホラー作品の怖さ―――制作者が怖いでしょうとアピールしたいのだなとこちらが感じとるポイント―――って私にはピンと来ないってことが多い。早い話が、「題材が怖くない」。よくわからない。

この作品はそういう意味では題材は日本人たる私にも理解しやすかった。日本の怪談スピリッツに通じるような気がする。お岩の「恨めしいぞへ伊右衛門どの」にも似た、死者の無念・怨念から始まる一連の不可解な出来事が主人公らを怯えさせる、という。わかりやすい。つまり、「ちゃんと私にも怖い題材を使っている」。

ただ、仕上がりが………怖くないんだよね……。
素材はいいのにもったいない! もっと話の作り込みようがあったと思うんだ。虐げる側はもっとコッテコテのサディスティックに描いて、死ぬ者はもっと理不尽に虐げられたうえで死んだように描いたらいいと思うんだよね。

日本ホラーを盲信するわけじゃないけど、うん、このプロットで日本人が作ったらもっと戦慄できる作品になったと思うんだよね。


(つづきはコメント欄で)

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Sunday, February 14, 2010

Sin Nombre / 闇の列車、光の旅 [メキシコ映画]

sin nombre公式サイト(邦題『闇の列車、光の旅』)からストーリー紹介:
ホンジュラスに住む少女サイラ。よりよい未来を求め父とアメリカを目指すことにした彼女は、移民たちがひしめきあう列車の屋根の上で、カスペルというメキシコ人少年と運命の出会いを果たす。彼は、強盗目的で列車に乗り込んだギャングの一員だが……略…………

サンダンス映画祭 監督賞・撮影監督賞 受賞作品

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紹介文に「カスペルはギャングの一員」とありますが、それがつまりこないだちょっと書いたマラ・サルバトルーチャです。あれはこの作品を観るにあたってちょっと助けになると思う。

ただ『Sin nombre / 闇の列車、光の旅』という映画はマラ・サルバトルーチャの構成員の生き方ばっかりではなくて、中米の人々が北米への不法入国を目指す様をも同時に説明しています。

『闇の列車、光の旅』は今年の初夏に全国順次公開です。面白いです。是非。


とても佳い作品であるのはたしかだけれども、私の好き嫌いを言うなら、苦手といえば苦手ジャンルですということ。私は苛酷な現代事情を描き出すといった作品はなるべく観ないようにしているので。観たくないんだよ、私は映画の中では人々は浮かれてて欲しい。

それから私は不法移民という事象に対しては非情とも言えるスタンスを保つことにしているので、このようなテーマの映画を観て悲しいなどと感じることを日頃から自身に許していないというのもまた「苦手」とした理由の一つではあります。


人が絶望したり死んだりする絵図は見ていればそれは悲しいものでしょう。私だってこの映画の何箇所で泣いたかしれない。

それでも、「かなしい……」「かわいそう……」というその感想は、たとえば我が国の不法滞在者にまつわる社会問題とは切り離して考えなければならないでしょ。この映画で映し出される移民がかわいそうに思えるということと、現実に我が国に在る不法外国人がかわいそうなのかどうかというのは全く別モノであるということ。そこのところはハッキリと自分の中で分けておきたい。そういうのはうっかり混ぜちゃダメなの。「混ぜるな危険!」なの。

……って、こんなこと言ってる私がむしろ誰よりも混ぜてるのかもしれんがね。



より大きな地図で Sin Nombre 闇の列車、光の旅 を表示

(つづきはコメント欄で。私はあまり書けないけどたぶんアリ・ババ39さんたちが書いてくださる)

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Tuesday, December 29, 2009

Rudo y Cursi / ルドandクルシ [メキシコ映画]

rudo cursi 映画『ルドandクルシ』公式サイトよりストーリー紹介:
それなりに幸せ! メキシコの片田舎のバナナ園で、喧嘩しながらも楽しく働く兄弟の生活はまさにそんなものだった。兄のベトは妻子もいてバナナ園の作業長も務めているが、ギャンブル好きの乱暴なゴールキーパー。その性格と荒っぽいプレースタイルによって‘ルド’(=タフな乱暴者)と呼ばれている。弟のタトは優秀なストライカーだが、本当は歌手になりたいと夢見ている。

日々、草サッカーに明け暮れる二人の前に、ある日偶然、サッカー・スカウトの‘バトゥータ’が現れた。ところがPK対決で兄に勝ったタトだけが選ばれ、メキシコシティに赴くことに。……略……


さらっと一度観たときの印象は『Y tu mamá también / 天国の口、終りの楽園。』と似ていたな。『天国の口~』の脚本を書いたカルロス・クアロンが本作では監督を務めている。

『天国の口~』は、「どうせ、ただの男アイドルの筆下ろし物語なんだろ」と高を括っていたのに実際に観てみたらけーーーっこうシリアスに社会を描出していて面白かった。『ルドandクルシ』も同じ印象で見終えました。

男ペネロペ’=ガエル・ガルシア・ベルナルやディエゴ・ルナが可愛いとか萌えるとかいうだけの作品ではけっしてなく、陽気な煙幕を張っておいて深刻な社会事情にさらっと触れている。

‘男ペネロペ’っていうのは私の友人がガエルを形容した一語。


犬のシャンプーをしながらとかいう「~ながら」の時にBGVとしてDVDを回しておくというスタイルで5回まわし、プラス、一回はふつうに観てみましたが、観るたんびに、ラストは彼らが愛しくてしょうがなくなるわけです。‘ラストは’ね。

じゃぁラストに至るまでは?っていうと、毎回毎回いらいらいらいらしたわ。何に?って、田舎っ兵衛にね。誰も彼も田舎っ兵衛なんだわ。

でも「いなかっぺ」っていうのは出身地をどうこういうものではないと思うわ。ひとが「いなかっぺ」であるかどうかには出身地なんか関係ない。「かっぺ性」というものは精神の、性根の問題である、と。ひとは田舎っぺとして生まれるのではない、田舎っぺになるのだ、と。

いや、あるいは逆かもしれないな。つまり、ひとは皆いなかっぺとして生まれて来るが、いなかっぺ根性のままの者がいなかっぺなのだ、と。

何を言ってんだか、自分でもよくわからない。


(つづきはコメント欄で正月にでも)

主人公タトは歌手としての成功を夢見ているのだが、もう、なんと言ったらよいか………ヒドすぎてあたしは目が覚めてしまった、この『Quiero que me quieras』。このヒドさは素晴らしいよ、ガエル・ガルシア・ベルナル。BGVとしてDVDを回しっぱなしにしていて画面はろくに見ていないという方法で再生していた時、あまりのヒドさに、思わず二度見したわ。

゚ ゚   ( д )   
な゛ん゛じゃごり゛ゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っですわ。
「『I want you to want me』に何てことしてくれるんだ!」ですわ。


スポーツ選手とかが歌なんかに手ぇ出すとこうなっちゃうのかね。スペインの闘牛士ヘスリンの歌とかってこういう立ち位置だったのかしら。「Jesulin cancion」でググったら一発で「Las 100 canciones mas odiosas de la historia歴史上もっとも忌むべき曲百選)」とかいうブログがヒットするくらいだし。

しかし、ガエル・ガルシア・ベルナル演ずるタトの歌う『Quiero que me quieras』を見たあとでは、口パクとは言えヘスリンの方がよっぽどマシだわい。ガエルさん、凄いよ、偉いよ、あの「歌の才能の無さ」演技は。


お口直しにやっぱりここはひとつ王子様、ロビン様を。
⇒ Cheap Trick  【I WANT YOU TO WANT ME】【SURRENDER】

外タレで様つけていいのは、ぶっちゃけロビン様だけなのだよ。


なんかわからないけど、泣けてしょうがなかったわ、私、これ。

わかんない。昭和の香りかなあ。ノスタルジー。武道館がBUDOKANとして燦めいて聳えていた時代への追懐の情とやらいうものなんだろうか。私がもう人生折り返したように自覚しているからか。

で、なんの話だったか。そうそう、Rudo y cursi。
『ルドandクルシ』の話は、コメント欄で加筆していきます。

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Saturday, September 19, 2009

Los bastardos / よそ者 [メキシコ映画]

Bastardos開催中のLatin Beat Film Festival 09 / ラテンビートフィルムフェスティバル2009 / 第6回スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映された作品。

LBFF公式サイトの紹介文より
ロスで暮らすメキシコ人不法移民のヘススとファウストは、日雇いの仕事が舞い込むのを路上で待つだけの生活を送る。しかしその日、ヘススはいつものデイパックに銃を忍ばせていた---。……(中略)……ある日変貌したヘススとファウストの鬱屈した日常の先に待つ衝撃のラストは。

Los Bastardos@IMDb
Los Bastardos 公式

監督: Amat Escalante アマ・エスカランテ
脚本: Amat Escalante  Martín Escalante マルティン・エスカランテ

出演:
Jesus Moises Rodriguez ヘスス・モイセス・ロドリゲス ... Jesús ヘスス
Rubén Sosa ルベン・ソサ ... Fausto ファウスト

Nina Zavarin ニーナ・サヴァリン ... Karen カレン: 白人女
Trevor Glen Campbell ... Trevor トレボー: その息子

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Saturday, May 30, 2009

Arráncame la vida / 命を燃やして [メキシコ映画]

arrancame la vidaストーリー
1932年、メキシコ、プエブラ州。カタリーナ・グスマンが町で姉や男の子たちと遊んでいるところへ男が近づいてきた。アンドレス・アセンシオというその男は30歳をこえたころだろうか。カタリーナはというと、まだ15歳であった。

アンドレスはカタリーナたちを車で家まで送ってくれた。姉が後でそっとカタリーナに尋ねる。「あの人のどこが気に入ったの? ずいぶん年上よ」。「でも、あの人の目が好きなの。手も好きだわ」。

その日からアンドレスはカタリーナの家を頻繁に訪れた。彼は俗っぽい武勇伝をあれこれと語ったものだ。カタリーナの家族の心を掴んでしまうのにそう時間はかからなかった。

アンドレスにはあちらこちらに数えきれないほどの女がいるのだとか、奴は犯罪者だとか、いろいろおぞましい噂も耳に入っては来た。いつか家族みなが後悔するだろうと言われたこともある。

「たしかに私たちは後悔することになったのです。でも、それは何年も経ってから。」


16歳のカタリーナはアンドレスに嫁ぐ。

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メキシコ版『風と共に去りぬかぜ』という印象。

大河ドラマのようでもあり(描かれているのはカタリーナの15歳から30歳までだけなので、大河ドラマというにはちょっと短いかもしれないけれど)、テレノベラてれ的でもある。イサベル・アジェンデいさをふと思い出したり、『赤い薔薇ソースの伝説』を連想したりもした。

と、とりあえず断片的な記憶をしぼって知った風な口をきいてみましたが、最終的には、あれです、『人形の家にん』だと思う。25年前に読んだだけなのでうろ覚えだけど。


私、『風と共に去りぬ』のひと、好きじゃないんだよね。16歳のときに観て「なんだろう、この女 ( `_ゝ´)」と思ったっきりだ。それ以降、大人の気持ちで見なおしていればまた違った印象を持っただろうとは強く思うのだが、あいにく機会に恵まれず、したがって「なんなんだ、この女」のまんまなのです、あのひとは。←名前が出てこないくらい。

しかし、私自身が‘メキシコ版・風と共に去りぬ’であろうかと言った本作のカタリーナは好きだよ。彼女が15の時から30の時までおおむね好印象を受けたし、幸せを噛みしめているであろう彼女の心の中を想像して涙がこぼれたくだりもある。


男と女の寂しさと悲しさと嘆きと諦めと愛と力とがうねっている作品です。


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

(つづきはコメント欄で)

Arráncame la vida 公式
Arráncame la vida@IMDb
英題: Tear This Heart Out

命を燃やして@ぽすれん

観始めるときにメッセンジャーの名前表示の欄に『Arráncame la vida』と入れておいた。(観ている作品タイトルをそうやって記入しておくと、スペイン語人の友人があれこれとコメントをくれるから、いつもそうしている)

するとすぐにスペインの友人が、「Menuda frase te acabas de poner, qué dramática これまたなんちゅうフレーズを。ドラマティックだな!」というメッセージを送ってきた。

「いや、これ映画のタイトルなんだけど、……え? そんなに?」と聞いたところ、「pues significa ‘quítame la vida violentamente’. tus amigos se van a asustar. ‘私の命を奪って’じゃないか。君の友達はみんなビックリしちゃうぞ」。

・原作: Ángeles Mastrettaあんへれす

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Sunday, April 05, 2009

Sólo con tu pareja / 最も危険な愛し方 [メキシコ映画]

soloストーリー
トマスは女たらし。女をとっかえひっかえ家に連れ込み、することはさんざんして、朝になって別れ際に女の名前を間違えているような男。相手かまわずTPOなどわきまえず喰い散らかしてきた。しかも、この男、相手の女にコンドームをつけるよう言われても「え? だってピルは飲んでるんでしょ?」と聞き返すようなろくでなし。

そんなトマスだったが体調不良が続き、友人であり隣人である医師マテオのクリニックで血液検査をしてもらうことになる。検査結果をマテオはトマスに伝えたのだが……。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


solo・そこそこ面白い。気楽に観られる。

・どちらかと言ったらシリアスな作品で冷酷非情な役柄を演じることが多いのかなと思ってきたDaniel Giménez Cachoの若い頃の作品で、こんなドタバタ喜劇に彼が出ていたのだと知って意外な気がした。しかも、何よこの端整な顔立ちは。いや、たしかに中年になってからの彼も綺麗っちゃぁ綺麗ですけどさ。

・二人の日本人(医師)が登場する。(俳優さんはおそらく日系の人; Toshiro Alberto HISAKIとCarlos NAKASONE)

・夢だか悪夢だかの中の世界がカオティックで笑える。

・全編( ̄ー ̄)ニヤリとさせられる。


させられるけれども、け・れ・ど・も、

・序盤から中盤にかけてのコント的展開がやや冗漫。
・中盤のコント的展開も冗漫。
・終盤のコント的展開も冗漫。

まぁ、つまりだいたい冗漫だ。馬鹿げてて面白いんだけども。


(つづきはコメント欄)(観てから3週間くらい経っちゃったのでとにかく書いてスッキリしたい)

Sólo con tu pareja@IMDb
直訳: 恋人とだけ

最も危険な愛し方@ぽすれん
最も危険な愛し方@映画生活

監督: Alfonso Cuarón アルフォンソ・クアロン

脚本: Alfonso Cuarón  Carlos Cuarón カルロス・クアロン

出演: (役名でけっこう言葉遊びをしている感じ)
Daniel Giménez Cacho ダニエル・ヒメネス・カチョ ... Tomás Tomás トマス
Luis de Icaza ... Mateo Mateos マテオ: 隣人、友人、医師
Astrid Hadad ... Teresa de Teresa テレサ: その妻
Dobrina Liubomirova ... Silvia Silva シルビア: マテオのクリニックの看護師

Claudia Ramírez クラウディア・ラミレス ... Clarisa Negrete クラリサ: トマスとマテオのマンションに越してきた女性
Ricardo Dalmacci ... Carlos カルロス: その同棲相手

Isabel Benet ... Gloria Gold グロリア: トマスの仕事相手; 広告代理店かな

Toshirô Hisaki ... Takeshi タケシ: 日本人
Carlos Nakasone ... Koyi コージ: 日本人

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