Sunday, September 23, 2012

EVA / エヴァ [スペイン映画]

EVA わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

Latin Beat Film Festival 2012 / 第9回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2012 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映される。


映画祭の作品紹介ページ(『EVA < エヴァ >』)よりストーリー
舞台は近未来の2041年。エンジニアのアレックスは、雪に閉ざされたサンタイレーネのロボット研究所に10年ぶりに戻り、少年のロボットの製作にとりかかる。

一方、かつての恋人ラナは、兄ダビッドと結婚。一人娘エヴァを授かっていた。エヴァの個性にひかれたアレックスは、彼女をモデルにロボットを作りたいと願うが…。

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オープニングCGの出来栄えが評判となった作品です。

この作品については今年初めのゴヤ賞の記事でも少し書きました:
Premios Goya 2012: candidatos / 第26回ゴヤ賞ノミネート : Cabina
Premios Goya 2012: palmareses / 第26回ゴヤ賞発表: Cabina


2012年10月27日(土)シアターN渋谷梅田ガーデンシネマにて公開

(つづきはコメント欄で)


EVAをエヴァと書くのは私はどうしたって抵抗があるが、まあ勝手にすればという気分です。舞台はどこでもありうるのだし。

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Sunday, September 09, 2012

No habrá paz para los malvados / 悪人に平穏なし [スペイン映画]

No habra paz para los malvados Latin Beat Film Festival 2012 / 第9回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2012 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映される。

この作品は、私、断言するけど、一回観ただけで話の流れ・登場人物の関係を把握できる(日本)人はいないね。エンリケ・ウルビス監督の過去の作品、『La caja 507 / 貸し金庫507 [スペイン映画]』でも同じようなことをボヤいたけど、これはもっともっと難しかった。大仕事だったよ。


だからとにかくそれを追います。

鑑賞前にこの記事で予習してもらえれば幸い。……と言いたいところだが、本来作品を観ながら理解した方がいい事柄まで私がここで淡々と説明してしまうので、鑑賞前に読んでしまうのはあまりお薦めできないという、私のブログの抱える永遠の矛盾。

鑑賞前に流れ・人間関係を知ってしまうか、鑑賞後にワケがわからなかった点を確認しに来るか、それは自分で決めてください。

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映画祭の作品紹介ページ(『No habrá paz para los malvados / 悪人に平穏なし』)よりストーリー: 
マドリッドの中年捜査官サントス・トリニダは、泥酔して立ち寄った酒場で、怪しげな男たちと遭遇し、事件を起こしてしまう。サントスは、事件の発覚を恐れて、現場から逃走した目撃者の足取りを追い始めるが、まもなく、目撃者の背後に不穏な動きをする犯罪組織があることを突き止める。……略…… 2004年にマドリッドで起きた爆弾テロ事件をベースにした作品で ……略……


もう一度警告しますが、108分のうち80分くらいまでを説明してしまうよ

↓↓↓ ほんとにかなり書くよ ↓↓↓

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サントス・トリニダによる殺戮の現場となるのはClub Leidy'sという売春宿。


(1) 売春宿にて
サントス・トリニダ: 第一線を外れ失踪者捜索班で人探しに当たっている。アル中気味。

イングリッド: 売春宿のママ; コロンビア人(帰化)

若い男: 売春宿の用心棒

ドン・ペドロ・バルガス: 売春宿のオーナー; コロンビア人


サントスはこの3人を射殺。しかし、二階にいた若者にだけは逃げられる。サントスはこの若者(→)を探し回ることとなる。

美形の若者: 売春宿でサントスに殺されず、唯一逃れた若いイケメン; 店の防犯ビデオに写っていた; ( 終盤まで名前は出てこないので「イケメン君」で通します)


サントスは死体を探り身元などを調べる。用心棒の財布からホテルのカードキー、店主のポケットからパスポートや携帯などを取り出す。用心棒の使っていた名前が“ウーゴ・アングラーダ”だとわかる。


キューバ人労働者: 売春宿から出てきたサントスとすれ違った; のちにチャコンたちに目撃証言をする(→(7))


サントスは現場から持ち去った物品を燃やして処理しちゃう。自分の撃った薬莢も拾い集めてきたので捨てる。用心棒が持ってたホテルのカードキーなどは残しておいた。

サントスはホテルに電話して「“ウーゴ・アングラーダ”の部屋につないでくれ。部屋番号を教えてくれ」と言う。( 実際、電話でこんなこと教えてもらえるとは思えないけどな)


(2) 売春宿殺害事件の捜査
チャコン判事: 殺害事件の捜査を指揮する

レイバ: その部下; サントスとは同期採用


(3) 警察署内
ロドルフォ: 失踪者捜索班でのサントスの相棒; サントスに仕事をすっぽかされて頭に来たりしている

サントスは売春宿で射殺したペドロ・バルガスらのパスポートなどを警察のデータベースと照合している。バルガスが「2003年からスペインに居住; 2004年にはコカイン密輸に関与」していた記録など。また、バルガスの携帯の発着信履歴から、下記の男が浮かび上がる

NHPPLM アウグスト・ロラ: コロンビアのバランキージャ出身; 前科欄には「2004年 麻薬売買, ペドロ・バルガスの関与」, 「2005年 税務犯罪」, 「マチューカという店で喧嘩」とある。


(4) ホテル
サントスは仕事をほっぽり出して、死んだ用心棒“ウーゴ・アングラーダ”が滞在していたホテルへ。部屋番号は教えてもらったし、カードキーを持っているので楽々と侵入。車のキーを見つけたので地下駐車場に下りていく


(5) 地下駐車場
用心棒“ウーゴ・アングラーダ”の車(Audi)発見。車中でGarmin社のカーナビ発見。カーナビの表示履歴に「トリブレテ通り 21番地」という番地があったので、サントスはその番地まで行ってみる。


(6) その番地を訪ねる。その建物に入ってみたが見当がつかないのでとりあえず出て、その辺のベンチでしばし独りで過ごしている

ちなみにグーグルのストビューはこれ(Calle de Tribulete, 21)。映画の画面と比べると、たしかにここだね。

それから、この時にサントスの隣に腰掛けているお爺さんは、Don Simonかどこかのやっすいやっすいワインをパックから直に飲んでいる(という、“貧困地域っぽさ”の演出か)。

(7) チャコンの事務室
チャコンとレイバは売春宿殺害事件発生直後に“容疑者( それはサントスなわけだが)”とすれちがった労働者(→ (1))から目撃証言を得る。

そしてチャコンの秘書アナが、殺害された売春宿オーナーのペドロ・バルガスについて書類を揃えてきた。「2003年からスペインに居住; 2004年にはコカイン密輸に関与」。「もう一つの死体(=用心棒)については未だ身元不明。指紋照合をインターポールに依頼中」。

用心棒が“ウーゴ・アングラーダ”という名であることが未だわからないのは、サントスがいろいろ隠滅しちゃったから…)


(8) クラブ~セリアの家
サントスは手がかりを持っていそうなラチー(ド)という情報屋を探して、クラブのトイレで若い男に「ラチーを知っているか」と尋ねたりしている。( 逃げた男がモロッコ人かと見て、そこに近そうな人物としてラチー(ド)をまず当たることにしたのだろう) 

Celia セリア: ゴーゴーダンサー; ラチーの元カノ;
サントスはラチーの居所を聞き出そうとするが「知らない」らしい; サントスはラチーの写真などをぱらぱらと見る; 「ラチーはまだコロンビア人の連中と組んで“ビジネス”してるのか」

ラチー(ド):
ゲーノー活動もしているらしいが早い話が前科者のちんぴら; 警察の情報屋; ( この男が登場するのはもっと後のシーンである)


(9) 売春宿の事務室
チャコンやレイバは売春宿の金庫を開ける。30万ユーロもの場違いな大金。

そして、この日ようやくチャコンたちは用心棒の人定ができた。“ウーゴ・アングラーダ”の他にも多数の偽名を使い分けており、ヨーロッパの複数の国から指名手配をされている人物である、と。


(10) アウグスト・ロラから聴取
チャコンは、アウグスト・ロラ(→ (3))から事情を聴く。殺害されたペドロ・バルガスと過去に様々な犯罪捜査で名前のあがった男である。周到なことに、弁護士を同行している。

アウグスト・ロラが言うには、「食料品の輸出入とかホテル業を展開している; “マチューカ”というナイトクラブは経営しているがあれは断じて売春宿ではない」。

2004年の麻薬密輸がらみの捜査でペドロ・バルガスとアウグスト・ロラの名が挙がったが、弁護士曰く、「あの件は棄却されました」。


(11) 用心棒が滞在していたホテル
殺害後にサントスが痕跡を消してしまったから、レイバやチャコンがここまで辿り着くのに時間がかかった)

ローマ⇔マドリードの飛行機のチケットの半券が見つかったのでレイバは乗客名簿の照会をする。

駐車場で車も見つかるがGPSが無い( だってそれもサントスが…)。駐車場の防犯カメラを調べることにする。

そして、Brigada Central de Estupefacientes 麻薬取締局のセルダン刑事にアポをとる。


(12) チャコンはセルダンを訪ねる
チャコンは麻薬取締局のセルダン刑事を訪ね、殺害された用心棒“ウーゴ・アングラーダ”またの名を“アンドレス・ダビッド・ウルタード”について尋ねる。セルダン曰く、「コロンビアマフィアの殺し屋で、FARC(反政府武装組織)の元メンバーだ」。

チャコンはまた、ペドロ・バルガスとアウグスト・ロラが04年に関与した疑いのある麻薬事件の捜査がなぜ頓挫したのかを質問する。

セルダン曰く、最近はバルガス達のようなコロンビアマフィアはマグリブ(=モロッコ、アルジェリア、チュニジアなど)のハシシを取り扱うよう方針転換をしているようだ。コロンビアマフィアの捜査はすでに麻薬取締局の手を離れ中央情報局に移っている。急進的イスラム主義者の活動と関係していると考えたのだろう、と。


(13) ナイトクラブ、マチューカ
アウグスト・ロラの経営するナイトクラブである。サントスがやってきた。( サントスはこの店の名を(3)の時に知っている)  

そこでずっと探してきた情報屋のラチーをやっと見かける。

ちょうどその時、マチューカの事務室ではレイバがアウグスト・ロラと“会話”をしている。アウグスト・ロラは相変わらずの弁護士同伴。なかなか尻尾を出さない抜かりない男。

(11)の飛行機のチケットの半券の話がここで繋がる) 


ここで従業員がアウグスト・ロラを呼びに来た。

フラビオ: マチューカの従業員; ( この人はぶっちゃけチョイ役なのだけど、この人の顔をこのシーンで覚えておかないと直後のシーンで「???」ってことになっちゃう)


サントスは店内ではしゃぐラチーを見張っている。ラチーが店を出て行くのを追いかけるが、タイミングの悪いことにレイバに会ってしまい、話の相手をする間に見失った。「ちっきしょう……」と地団駄を踏んだが、そこで駐車場にいる一人の男に目を留める。

これがさっきの従業員、フラビオである。車が一台寄ってきてフラビオを拾って走り去る。サントスはあとを追って深夜の飲食店に入るわけです。


(14) 深夜の飲食店
すると殺害現場からただ一人逃がしてしまったあの「イケメン君」が店に来たではありませんか。

その後サントスは「イケメン君」の車を追って、とあるマンションまで来た。

「イケメン君」の部屋を「男」が訪れた。

翌朝、「イケメン君」と「男」が出て行く。サントスは後をつける。2人はバスターミナルで到着する白人男性を待っていた。

そしてショッピングセンターでサントスは三人を見失った。


(15) メリダ捜査官
メリダ刑事: 中央情報局の捜査官( Unidad Central de Inteligencia Exteriorとのことだけど実在する機関の名称かどうかは知らない)

チャコン判事は、なぜ麻薬事件などを中央情報局が追うのかを質問する。メリダ捜査官は、「コロンビアマフィアとモロッコの急進的聖戦主義組織とが関係を深めていると、我々の情報屋が言うもので」「我々がマークしているのは、組織のリーダーの“セウティ”という男です」「しかしセウティはバルセロナに移動した後の足取りがわからなくなっています」。

チャコンはセウティとやらいう男の書類を送ってくれるようメリダに依頼。情報屋とも会いたいと告げるが、メリダは「それは……いろいろと難しい話なので、うちの部長と直接交渉してみてください」。


(16) 「イケメン君」のマンションに侵入してみるサントス
室内の引き出しを開けたりして物色している。


(17) 中央情報局のオンティベロス部長
チャコンはメリダ捜査官から言われたとおり、その上司であるオンティベロスと密かに会う。と、ここへやって来たのが、ラチーである。情報局のタレコミ屋とはラチーだったのだ。

ラチーはアウグスト・ロラのことも知っているし、またセウティとも知り合い。「セウティはこわいやつですよ。宗教にいかれちまいました」。

「セウティとアウグスト・ロラを引き合わせたのはあなたなんですね?」「そうっすよ。ロラは新しいことを始めたがってたから紹介してやりました」

オンティベロスはチャコンに、「そちらが捜査している売春宿殺人事件はコロンビアマフィアの殺し屋のしわざでしょう。セウティは関係ないし、ましてや聖戦主義者ウンヌンはまるで関係ないでしょう。セウティはあなた方が追うべき人物とは思えませんな」という。


(18) とある夫婦のお宅を訪ねるサントス
実はこれは「イケメン君」の住むマンション一室の大家さん夫婦。さきほど(16)で「イケメン君」の部屋に侵入した時、サントスは引き出しを探っていたでしょ? あれで大家さんのことが判ったからこちらに来てみたのでしょう。

大家さん夫婦の娘さんが結婚した時にあのマンションをあげたのだそうだ。しかし娘さん夫婦は今はあそこに住んでいない。ロンドンにいるそうだ。サントスは娘さんとその夫の写真を手に取る。

(14)で見かけて、そして見失ったあの「男」が写っているではないか。

この夫という人物はアラブ人ではなくて、セウタ生れで、国籍はスペイン、ラバピエス地区の文化センターでアラビア語の講師をしていたというので、サントスはそのセンターの場所を聞く。


(19) レイバたちの捜査本部
殺害された用心棒のホテルの防犯カメラ映像(→ (11))を見るうち、レイバはそこに写る一人の男( これがサントスなんだけど)に目を留めた。

そして、売春宿の事務室の金庫などから採取された指紋の照合結果が届いた。若い男のものであった。これが「イケメン君」である。


(20) イスラムの文化センター。
さっき(18)で聞いたセンターまで来てみたサントスは、壁の写真に気づく。セリアの家にあったラチーの写真とおんなじ一枚である。(→ (8))

だからセリアに厳しく迫り、今度こそラチーの電話番号を聞き出した。


(21) 「イケメン君」のマンション。
レイバらは(19)で指紋があがった「イケメン君」の部屋を家宅捜索。「イケメン君」は真面目な学生。数人の若者とハウスシェア暮らしらしい。

チャコンのもとへオンティベロスがセウティの書類を届けに来た。一枚の写真に、セウティがスペイン人妻といっしょに写っている。

「この男の奥さんはマドリードの出身なんですね!? なぜそれをもっと早く言ってくださらなかったんですか!」と、オンティベロスに対して怒気まじりに問いかけるチャコンである。


(22) サントスは遂にラチーを見つける
サントスはついにラチーをつかまえた。セウティの居場所を聞き出そうとする。「知らないわけないよな。お前、一緒に写ってるじゃないか」。

「昔のことっすよ。サッカーやって、みんなで食事したりやつの家に行ったりしてただけで」とラチーが言うので、じゃあその家とやらに案内しろという流れになるわけです。


(23) 大家さんの奥さんふたたび
チャコンたちが事情を聞いています。さっき(21)の資料を見て、セウティの妻がマドリっ子だとわかったから、その親を呼び出したというわけね。

セウティのことをいろいろ尋ねていたら奥さんが「……でも、もうこないだの刑事さんにおなじことをお話ししましたよ…?」と言うので、チャコンとレイバは「???」となる。「刑事さんとは、いったいどこの誰のことでしょうか?」。


(24) セウティの家とやらを探して
(22)でラチーがセウティの家がどうのこうのと言ったので、サントスはラチーを連れてその家を探す。ラチーの記憶を頼りに、郊外にあるその家に辿り着いた。


(25) チャコンの事務室
レイバとチャコンの会話。


(26) トリブレテ通り 21番地
サントスは(5)(6)のトリブレテ通り 21番地まで再び来てみました。得意の不法侵入。建物内は雑然としている。

とりあえず近くのバルで飲んでいたら21番地から男たちがものを運び出していて、その中にセウティの姿をついに視認したのである。

サントスは彼らの車を追う。やがて一行は夜のアトーチャ駅に着いた。


………と、ざっとこんな感じです。ここまで来れば、残りの30分は何も見失わずに観られると思う。これでだいじょうぶ。

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Saturday, April 07, 2012

Los peores años de nuestra vida [スペイン映画]

 ( 95年くらいから今日までに何度も観た作品だけどサラっと書きます。注意点がいくつかあります


おはなし
まるで冴えない弟とイケメンで女たらしの兄が、美しい画学生に二人して惹かれてしまう。弟の恋心をみてとった兄は手を貸そうとするが、自虐的なピエロを演じがちな弟とは噛み合わず、なかなかうまく事が運ばない。彼女との出会いが兄弟それぞれの内面にもたらす変化を軽妙に描いた作品。

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この作品、もう書いちゃおう、今日こそ書いちゃおうって、何度回したかわからない。

「何度も観た」というのは、つまり何度も観られるくらい気軽・気楽な作品であるということ。しかし何度観たところで、鑑賞後ただちに熱のこもったブログを書きたくなるほどの感興は得られなかったからこそ、結局何度も観なくちゃいけなくて、だから何度も観たのだということ。遅くとも3年前の時点でも「観たけど書けてない」というメモをしてあったもんね ⇒ descanso : Cabina


なんていうの、「軽妙」と言い表されるように作ってみましたという感じの作品で、別につまらなくはないしセリフが―――特にお父さんのセリフが―――面白いし、ほのぼのするしあんまり誰もボロボロに傷つくでもないし、“わるもん”らしき人がそんなにいるわけでもなし、いいっちゃあいいし、好きは好きだけれども……、すごく小さい世界で小さいことをテーマに作られている作品だと思う。凡庸って言っちゃえばそれまで。ストーリーや人物像なんかも、別に映画にする必要は無いんじゃないかという、トレンディードラマに毛が生えた作品。

こんなわけだから何度観てもブログを書くに至らなかったんだと思う。私を突き動かすものがない。


ただ、何度も言うけど、無理矢理フォローしているわけじゃないけど、つまらなくはないんですよ。それからスペイン語はたいへん聞き取りやすい。

Los peores años de nuestra vida (1994) - IMDb 
直訳: 僕らの人生の最悪の時期
英題: The Worst Years of Our Lives 

監督: Emilio Martínez Lázaro エミリオ・マルティネス・ラサロ
脚本: David Trueba ダビ・トゥルエバ

出演:
Gabino Diego ガビーノ・ディエゴ ... Alberto アルベルト
残念な弟; 女性との付き合い方において頭でっかちの理論ばかりこねくり回すタイプ; 「どうせ君も僕をフるんだよね」と女の子に面と向かって聞いてみたりする鬱陶しいタイプ; 顔もイケてないわSEXすれば早漏だわ、冴えない、冴えなすぎる; 小説家志望だとかで出版社に原稿を送りつけては送り返され落胆する日々; 浮かんで来る言葉をいちいちレコーダーに録音している; 父親にはきちんと金になる仕事に就くよう再三言われている; 英語が得意(?)

Jorge Sanz ホルヘ・サンツ ... Roberto ロベルト
アルベルトの兄; できすぎた兄; いけめんで女に全く不自由しない兄; 女はすぐ落とせる; 銀行での仕事も決まったところ; アルベルトが世間のイケてる男たちを「顔ばっかり良くて脳みそからっぽな連中」と腐す時はたいていこの兄に対するあてこすり

Ariadna Gil アリアドナ・ヒル ... María マリア
美術学生; 絵画を学ぶためアルベルト・ロベルト兄弟のマンションの上階にある老画家のアトリエに通ってきている。二十歳ほども歳の離れた彫刻家サンティアゴとは不倫の仲; 最近その不倫関係をサンティアゴの妻に知られてしまった

Agustín González アグスティン・ゴンサレス ... Father 兄弟の父親
ベランダで鶏を飼うのが趣味で一羽ずつ名前をつけて健康まで気遣うほどの可愛がりよう; 次男のアルベルトのニートぶりに気を揉む日々; 家業のインテリア店を手伝わせようと考える; 強圧的な父親というわけではけっしてなく、若者への理解はあるほうだ

Maite Blasco マイテ・ブラスコ ... Madre 母親
優しい母親; 「あなたはまだ成長期なんだからちゃんとお食べ」などと、いい歳をした次男のアルベルトの世話を焼く; 夫の趣味のニワトリにはもうウンザリ

Carme Elias カルメ・エリアス ... Carola カローラ
ロベルトの職場の上司; 年頃の娘と連れだってナイトクラビングにくりだす; 逆ナンも一度二度ではない

Jorge de Juan ホルヘ・デ・フアン ... Santiago サンティアゴ
マリアの不倫相手の彫刻家; たぶんアルベルトはこの人のことを「cursiな奴」と苦々しく思っているだろう、陰で口真似とかしていたくらいだから

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Thursday, April 05, 2012

Mientras duermes / スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 [スペイン映画]

わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

『REC / レック』シリーズなどで知られるスパニッシュホラーの旗手、ジャウマ・バラゲロ監督の最新作。


おはなし
早朝、ラジオの人生相談番組のパーソナリティーがリスナーに話しかける。「幸せになる術はかならずあります。それを見つけ出すんですよ」。

「……俺は幸せにはなれない。幸せだったことがない。幸せになる能力が無いんだ」とひとりごつセサルは、四十がらみでいかつい容貌の寡黙な男。マンションの住み込み管理人をしている。住人からはそれなりに信頼されているが、オーナーの受けは極めて悪い。

セサルは一日の大半をこの建物で過ごす。寝たきりの母をときおり病院に見舞う他には街に出かける用も無く、趣味があるわけでもない。

三階に住む老女ベロニカのたわいないおしゃべりにつきあい、彼女の留守中の犬の世話を引き受け、住人宛ての郵便物の処理をして、詰まった水道管の掃除を頼まれ、表の掃き掃除をし……、セサルの日常は過ぎてゆく。

彼は若く美しいクララの住む五階の一室を夜毎訪れる。昏々と眠り続けるクララのそばで息を潜め、セサルは夜の闇を共有する。

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めいっぱい詳述していながらネタバレらしきネタバレはしませんよというのを信条としている私にしては珍しく全部つるっと書いちゃってるようなストーリー紹介文ですが、これ、しょうがないんだよね。今書いたことは、最初の数分であっさりと見せられちゃう事ばかりだから。もう冒頭からこういう話です。タイトルが「君の寝ている間に / Mientras duermes / While you Sleep」だし。

この後の展開をお楽しみください。


どうだろな。3回ほど回してみた感じ、可もなく不可もなくといったところ。別に怖くはない。……いや怖いけど。怖いと言っても、ほら、「こわい話」も細分化できるでしょ。これは恐怖感ではなくて嫌悪感を抱かせるタイプの「こわい話」。イヤ~な気持ちになる。女の人は特に受け付けないかも。


Mientras duermes (2011) - IMDb 
直訳: 君の寝ている間に
英題: Sleep Tight (ぐっすりお休み)

公式 Mientras Duermes – 14 de octubre estreno en cines

2012.07.31 加筆
「スリーピングタイト 白肌の美女の異常な夜」8/11(土)シアターN渋谷にて妄想解禁レイトショー!

スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 - goo 映画
スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜@ぴあ映画生活作品情報


監督: Jaume Balagueró ジャウマ・バラゲロ
脚本: Alberto Marini アルベルト・マリーニ

出演:
Luis Tosar ルイス・トサル ... César セサル: 潔癖症気味か?

Marta Etura マリア・エトゥラ ... Clara クララ: 一人暮らしの女性。
Alberto San Juan アルベルト・サン・フアン ... Marcos マルコス: クララの彼氏

Petra Martínez ペトラ・マルティネス ... Sra. Verónica ベロニカさん: 老婦人。3階の住人。犬を二匹飼っているが一匹はこのところ体調が悪い。

Amparo Fernández アンパロ・フェルナンデス ... 清掃婦; 夜間にやって来る
Roger Morilla ... その息子で手伝いに来ている

Iris Almeida ... Úrsula ウルスラ: 少女
Pep Tosar ... Padre de Úrsula: その父

Margarita Rosed ... セサルの母親; 病院で寝たきり


スペイン人のレビューにザッと目を通したら、『Mientras duermes』はヒラリー・スワンク主演の『ストーカー / The Resident (2011) - IMDb』(スペインでのタイトル“La víctima perfecta”)のパクりじゃないかなどというコメントがありました。私はそちらは観ていないから何とも言えないけど、こういうのって、もうしょうがないんじゃないの? 似ちゃったところで。映画って、完全に新しいものなんてもう作れないんじゃないかと私は思っているんだけど。なにかしらカブるのってしょうがないでしょ。

ちなみに公開時期はどうなってるのか。『ストーカー』が映画見本市に出たのが2010年11月3日で(The Resident (2011) - Release dates)?、『Mientras duermes』が映画祭に出たのがその一年後の2011年9月23日だって(Mientras duermes (2011) - Release dates
 


セサルが買い物袋を手に提げて管理人室に戻ってきて洗面所に直行する。袋から取り出した物を化粧棚に並べ始める。几帳面に並べるのである。



最初、「わ。TENGAいっぱい集めてる。気持ち悪い」って思ったんだけど、制汗剤・防臭剤だった。ロールでくるくる塗るタイプの。

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Saturday, February 04, 2012

Calabuch [スペイン映画]

calabuch

アメリカの科学者ハミルトン教授は核爆弾を開発してきたが、嫌気がさして突然に姿を消してしまった。世界各国の警察がハミルトン教授の捜索を開始した。

彼はスペイン、地中海沿岸ののどかな村カラブーチに辿り着いていた。身寄りもなく学もなく身分証明書の類も持たぬ流浪の老人ホルヘとしてハミルトン教授はこの村に現われたのである。留置場に入れられもしたが、そこはのどかなカラブーチ村のこと、出たり入ったりをして“暮らす”うちに教授は、もとい、ホルヘは村の住人との交流を深める。

この好々爺が村人それぞれに心を配り、彼らの抱える問題の解決を後押ししてあげるものだから、村人もその人柄に魅了されないわけがない。やがて村対抗の花火コンテストの日が近づき、ホルヘはロケット花火造りの指揮を執る。

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昨年から、そうだな、BG“V”としての再生も含めれば10回は観ていると思う。最初の一回、再生しっぱなしという形の“鑑賞”をした時は、「ふつーに」ニコニコしてちょっとドタバタする作品ぐらいにしか見えず、だけどベルランガ作品がそんなわけはないと思うので書くことに悩み、それで11ヶ月ものあいだ書けずに来たのです。山の登り方がわからなかったんだよね。昨年の『Novio a la vista [スペイン映画]: Cabina』の時もそうだった。

今年に入ってまたくり返しくり返し再生している間に、なんとなくわかったような気がしてこないこともない。(←なんだ、この日本語上級生は) 

そしてそうなると、「ニコニコ」「ドタバタ」な作品とばかり見なしてもいられず、「ふつーに」グッと来る作品でありました。終盤なんてちょっと鼻の奥がつーんとなるよ。

ただ、ベルランガ作品というものはブログで知った風な口をきいて済ませられるものではないので、ちょっとずつ調べてわかったようなわからないようなメモをしていくことにします。それしか手がないだろう。


Calabuch (1956) - IMDb

監督:Luis García Berlanga ルイス・ガルシア・ベルランガ
脚本: Leonardo Martín レオナルド・マルティン  Florentino Soria フロレンティーノ・ソリア  Ennio Flaiano エンニオ・フライアーノ  Luis García Berlanga

出演:
Edmund Gwenn エドマンド・グウェン... Prof. Jorge Serra Hamilton ホルヘ・セラ・ハミルトン博士

Franco Fabrizi フランコ・ファブリーツィ... Langosta ランゴスタ: 留置所; 映写係
Valentina Cortese ヴァレンティーナ・コルテーゼ... Schoolmistress 小学校の女先生

Juan Calvo フアン・カルボ... Matías マティアス: 署長; テレサの父; 映画が好き、特にフアニータ・レイナ(後述)が好き; マティアス署長がフアニータ・レイナの映画に夢中になっている時間帯を利用してランゴスタたちは密輸をやっている

María Vico ... Teresa テレサ: マティアス署長の娘; フアンを愛しているが父が猛反対; フアンとはベネズエラに渡ろうと計画を進めているところ
Mario Berriatúa マリオ・ベリアトゥア... Juan フアン: 密輸で小金を作って小舟を買いたいと思っている; テレサと結婚したいが、フェリックス神父に頼んでみてもテレサの父親であるマティアス署長の許可が無い限り認められないと追い返されてしまう

Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ... Vicente ビセンテ: 絵描き?と言いたいところだけど小舟に名前を入れたりして過ごしている
José Isbert ホセ・イスベルト... Don Ramón ドン・ラモン: 灯台守; フェリックス神父と電話でチェスの戦いに興ずる; ホルヘのアドバイスであっさりと勝ててしまいフェリックス神父を怒らせる

Félix Fernández フェリックス・フェルナンデス... Don Félix フェリックス: チェスをしてる神父
Nicolás D. Perchicot ニコラス・D・ペルチコット... Andrés アンドレス: 花火師

Francisco Bernal ... Crescencio クレセンシオ: 郵便配達; 密輸仲間
Isa Ferreiro ... Carmen カルメン: 居酒屋の女; 電話交換手
Manuel Guitián ... Don Leonardo レオナルド: 鼓笛隊の指揮をしていた
Pedro Beltrán ... Fermín フェルミン: 留置所の番人; ナポレオンを読んでた; マティアス署長の机の上に足を乗っけていて怒られる

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Friday, January 20, 2012

¿Y tú quién eres? [スペイン映画]

わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

おはなし
アナは公証人の資格試験にむけて勉強に励んでいる。我が子をぜひとも公証人にというのは父ルイスの悲願でもあった。

受験勉強に精を出すアナを一人マドリードに残し、家族は避暑地サンセバスティアンのリゾートホテルへ行く。しかし今年はいつもの夏とは違う。最近アルツハイマーの初期症状が見られる祖父のリカルドは一緒ではないのだ。

リカルドを施設に預けていくという両親のことばにアナは反発を覚えるのであった。

マドリードに残ったアナは特別養護老人ホームに祖父を見舞ううちアルツハイマー型認知症患者が直面するさまざまな問題を目の当たりにする。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


いつも言うことだけど、私はこのブログで取り上げる作品に滅多にペケ(×)をつけない。たいていは「好き」か「ものすごく好き」だ。今、イベロアメリカ映画(スペイン語映画・ポルトガル語映画) 索引を見てみたが、これまでに合計で265作品くらい紹介してきたようだ。そしてペケをつけた作品はと言えば、5%も無いんじゃないの? いや5%(13作品)くらいはさすがにいってるかな。

さて私がこんな前置きをする時は、そうです、俺はこれからペケをつけるぞという挨拶です。


この作品はダメだ。ペケつけることしか見えてこない。私の大大大好きなマヌエル・アレクサンドレとホセ・ルイス・ロペス・バスケスが起用されているというのに、だ。


アントニオ・メルセロ監督といえば、2年前のゴヤ賞では栄誉賞を贈られた人です。(→ Premios Goya 2010: palmareses / 第24回ゴヤ賞発表: Cabina

あの当日のアリ・ババ39さんのコメントがこちらです:
自宅で名誉賞のゴヤ像を会長から手渡された唯一の人がアントニオ・メルセロ監督、アルツハイマー病でガラには出られなかった。代わりにステージには二人の息子が登壇、父親を称える素晴らしいスピーチをした。どんなふうに素晴らしかったか? そうね、アイタナ・サンチェス・ヒホン以下観衆の涙を見れば充分だよ。名誉賞では毎回目がウルウルするのだが、今年はもらい泣きしてしまいました。これが三つ目のサプライズでした。


偉大な監督なのだろうとは私も思います。実際、1972年の中編『La cabina [スペイン映画]: Cabina』もとても面白かった。

だけど私は、小児ガン病棟で闘病する子どもたちを描いた同監督の『Planta 4ª [スペイン映画]: Cabina』はけっこう冷淡に書いたと思う。あの作品については、

・闘病ですね、ってだけの話ですね
・オーソドックス過ぎるだろ
・テレビドラマでこういうのあるよね
・実は演技がかなーり棒じゃない?
・この登場人物は今おもしろいことを言っていますよ・やっていますよという見せ方が定石すぎて、そういう意味ではすごいよね

ってことをやんわりと冷たく書いたと思う。


今回の『¿Y tú quién eres?』についても私はおんなじことを言うわ。そしてそれをもっと苛烈に言わなきゃいけない作品だった。

長くなると思うのでつづきはコメント欄に。軽くサラッと観たつもりなのに、こんなに長く文句を言わなきゃいけないなんて。

マヌエル・アレクサンドレとホセ・ルイス・ロペス・バスケスの壮大な無駄遣い。


¿Y tú quién eres? (2007) - IMDb
直訳: で、どちらさんでしたかな?

監督・脚本: Antonio Mercero アントニオ・メルセロ

出演:
Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ ... Abuelo 祖父リカルド
Cristina Brondo クリスティーナ・ブロンド ... Ana アナ: 孫娘
José Luis López Vázquez ホセ・ルイス・ロペス・バスケス ... Andrés リカルドの医療ホームでの同室者

Monti Castiñeiras モンティ・カスティニェイラス ... Fernando Castañeda 担当医師
Amparo Moreno アンパロ・モレーノ ... Alicia アリシア: 担当ヘルパー
Álvaro de Luna アルバロ・デ・ルナ ... Luis ルイス: アナの父親
Ángeles Macua アンヘレス・マクア ... Enriqueta エンリケタ: アナの母

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Sunday, October 09, 2011

Balada triste de trompeta / 気狂いピエロの決闘 / The Last Circus [スペイン映画]

premios goyaLatin Beat Film Festival 2011 / 第8回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2011 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭: Cabinaの上映作品。

第8回 ラテンビート映画祭 | LATIN BEAT FILM FESTIVAL 2011 in TOKYO, YOKOHAMA & KYOTOより:
スペイン映画界のヒットメーカー、イグレシア監督が手掛けた異色のラブ・ストーリー。イグレシア監督は、スペインで名誉ある「最優秀映画監督賞」を受賞。また、2010年のベネチア国際映画祭ではコンペ部門審査委員長のタランティーノから絶賛され、見事、銀獅子賞と脚本賞をダブル受賞した。


おはなし
1937年、ハビエル少年の父はサーカスの人気道化師であった。父は内戦の渦に飲み込まれるようにして共和国側で戦うことを余儀なくされ、捕らえられて“戦没者の谷”建設の強制労働に従事する中、ハビエルの眼前で無残な死を遂げた。

1973年、中年にさしかかったハビエルは、父の面影を胸にサーカスで“泣き虫ピエロ”として働くようになっていた。サーカスで一番の人気者、“陽気なピエロ”を演じるのはセルヒオという男であった。酒を飲むたびに残忍な性格を剥き出しにするこの男は、恋人であるエアリアルパフォーマーのナタリアにも容赦なく暴力をふるう。しかし、子どもたちの人気を集める彼には団長もものを言うことができずにいる。

ハビエルはよりによって、このナタリアに恋心を抱いてしまった。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


twitter 先日のツイート
忙しい時は何かの作業中にBG“V”としてDVDを繰り返し再生するという形で“鑑賞”するしかない。そんな“チラ見”の時にも“Balada triste ~(The Last Circus)”のOPには釘付けになったよ。凄くかっこいいだろ

オープニングタイトルがとても気に入った。こういうことはこれまであまりコメントしたことがないな。これは惹かれたよ。「ああ、きっと私はこの作品を気に入るし、知人のあの人やあの人にも薦めよう」と、OPを見ただけでも強く思ったわ。


アレックス・デ・ラ・イグレシアの作品なので、ちょっと痛みを感じる作りになっています。人の体に傷がつく音が、生理的な恐怖を与えてくれるというか。その代わりというか色合いは抑えてくれてあったので、私のように血が嫌いな人でもあんまり抵抗無く見ていられる。


ハビエルの父が、泣き虫ピエロのマヌエルと組んで子どもたちを笑わせ喜ばせているシーンから映画は始まる。

爆撃の音が轟きその笑い声を掻き消す。と、そこへ殺気立った兵士の一団が乗り込んで来る。庶民の暮らしをぶち壊してなだれ込んできて、子どもたちの笑顔を恐怖と涙で塗りつぶし夢も希望も踏みにじり、大人達を次々と殺戮に駆り立てる……という描かれ方をしているのが、フランコ側ではなくて共和国側であることがおもしろい。アリ・ババ39さんはこれをアレックス・デ・ラ・イグレシアの「バランス感覚」なのだとおっしゃった。

そうだと思う。こういうシーンでフランコ側を狂った狼のように、そして共和国側をぷるぷる震える白い子ウサギのように描くことは、ある意味―――乱暴に言えば―――“馬鹿の一つ覚え”だろうとも思う。

共和国側のエンリケ・リステル大佐が叫んでいたでしょう、「我々につかない者は反乱軍の者とみなす ……略…… あの扉を開けたら、ヤツらをぶっ殺すんだ、ぶっ殺さないと俺たちがぶっ殺されるんだからな。簡単な話だ」って。殺るか殺られるかだから。そして、同じ国の民同士、へたすれば親子・兄弟の間でさえも敵味方にわかれて裏切り合い殺し合わなきゃいけないのが内戦のむごさ・痛ましさでしょう。

だから我が国も、内戦は「ダメ。ゼッタイ。」



DVDやラテンビート映画祭で何度か観ているんだが、この作品、考える時間が必要な作品だよね。私はまだぼんやりとしかわかってないな。見終わるたびになんだかしくしく泣いているにもかかわらず、どうして泣いているのかハッキリとわかっていない。

ハビエルという青年の悲しみに満ちた人生と狂気、セルヒオという男の残虐と絶望、間に立つナタリアという女の弱さと狡さと浮気癖。……これらを内戦以後のスペインにあてはめて考えればいいと思うのだけど、それでもまだところどころわからなくなってしまう。やや消化不良気味だけど、今回はこの辺で。


一つ思ったのは、「アレックス・デ・ラ・イグレシアは高さのあるところでの大立ち回りが好きなんだよな」ということ。


いくつかメモ
映画『気狂いピエロの決闘』 - シネマトゥデイ
気狂いピエロの決闘 - goo 映画


戦没者の谷(バリェ・デ・ロス・カイードス)

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映画館 Cine Luchana's 

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Saturday, August 27, 2011

Torrente 4 Lethal Crisis / トレンテ4 [スペイン映画]

Torrente 4Latin Beat Film Festival 2011 / 第8回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2011 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭: Cabinaで上映される作品。

「ラテンビート映画祭 Latin Beat Film Festival| ラテンビート映画祭2011、上映作品12本発表!」より おはなし

マドリッド警察のはみ出し者トレンテは、ドジで怠け者で大酒飲み、おまけに不恰好な中年刑事。彼の周りでは、なぜかいつも珍事件が続発し、トレンテは否応なしにトラブルに巻き込まれていく…。……略……1998年に製作された1作目が大ヒットを記録し、以後シリーズ化された。……略……監督兼主演のサンティアゴ・セグーラ(『どつかれてアンダルシア』のニノ役)は、スペインでは国民的コメディアンとして知られている。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


アピールポイントを最初に挙げておこうか:
・おっぱい星人もお尻星人も、どちらも楽しみにしていていいんじゃないかい。
・マドリードのサッカー選手などの友情出演多数


さて。
José Luis Torrente Galvánがトレンテの本名。この男は次のように形容されている:

・Un ser repugnante, machista, racista, homófobo, fascista y repulsivo. ("Torrente 4", taquillazo de la mediocridad | Suite101.net
・un policía fascista, machista, descebrado… el típico antiheroe español. (¿El cine español está en crisis? | Blog de kaiserland77.com
・uno de los personajes más políticamente incorrectos que se han visto en la pantalla: fascista, machista, racista, corrupto, alcohólico y ajeno a sutilezas, el policía José Luis Torrente (Sanfic 7 » Torrente 4 – Crisis letal


と、こういう男なので、まあ、私も眉を顰めたこと顰めたこと。下品で汚くて悪臭が漂ってくるようで、反吐が出るわ! 記憶から消し去ってもらいたいシーンもある。あたし、鑑賞後、三食くらいは食が進まなかったくらいよ。それから、上記のとおりこのおっさん políticamente incorrecto だから。ひどいセリフの連発です。それでもついニヤニヤしてしまうので居心地が悪いったらない。

だけど、だからってPC、PCっつって目くじら立てられても困っちゃうわけで。ポリティカルコレクトネスを厳守すべしという人が万が一いるならば、まあ、その人にはお薦めしない作品です。


私はトレンテの第一作はわりと「つまらない」風に片づけたけど、第4作のこれだってお話は「愚にもつかぬ」というやつだと思っています。ただ、ことばは本当に面白い。途中で語句メモをとるのを投げたほど、トレンテのことばは“豊か”です。この汚くて臭そうなおっさんの野卑で俗悪なregistroを観察し、彼と仲間のポリティカル・インコレクトネスの連打を味わう分には実に面白い作品。



ところで、先日たくさんリツイートされていたツイート(twitter http://twitter.com/#!/djaoi/status/99036186101821440)は男女の下ネタの違いを簡潔に述べたものでとても面白く読んだ。

これとは別に昔から私は、男がおそらく“下ネタ”という範疇で語っているであろう事柄には排泄物を取り扱ったものも多々あるが、女の言うところの“下ネタ”というジャンルからは排泄物は除かれている、と思っているんだよ。だからあたしたちが下ネタで頬を紅潮させて盛り上がってるところへズカズカ入ってきて排泄物だのガスの話をしないでほしい。それ、私たちにはなんにもおもしろいこと無いから。


……そんなこんなで、トレンテは男の下ネタ。

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Tuesday, August 16, 2011

Calle Mayor / 大通り [スペイン映画]

この作品については割と細かく書いてしまうと思う

おはなし
どこにでもあるごくありふれた地方都市。カテドラル、川、広場の柱廊、そして町一番の賑わいを見せるメインストリート。

35歳になって未婚のイサベルはさしずめ“敗者”である。18年前に修道女学校を出た後ずるずると時が経ち、独り身のまま来てしまった。もう未婚の女友達もほとんど居ない。

フアンはマドリード出身の銀行員。この町に赴任した当初は戸惑ったが、今ではcasino(=会員制娯楽クラブ)での遊び仲間もでき、毎日そこそこおもしろおかしくやっている。だが、いかんせん退屈である。この町の暮らしは単調の一言だ。道行く人の顔ぶれもそれぞれの生活パターンも判で押したよう。

だからフアンはcasinoの悪友と一緒になって他人にたちの悪い悪戯を仕掛けては楽しんでいる。すべては暇つぶし。「冗談だよ、ほんの冗談じゃないか」。

次にフアンの仲間が目をつけたのはイサベルであった。フアンが行き遅れのイサベルに求愛してその気にさせて、ついに結婚できると舞い上がる女の無様な姿を見て楽しもうという趣向である。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


私はよく何かの作業中にBG“V”としてDVDを再生しておく。横目でチラチラ画面を見る、耳は聞くともなしに聞いている。この作品を最初に一回“鑑賞”したのも、そんな風だった。

行き遅れだ、負け犬だと世間から煽られ追い詰められている独身女が抱くであろう当たり前の結婚願望というものを、弄ぶだけ弄び嬲るだけ嬲って嘲り嗤う、いわゆる勝ち組と思しき男たちの卑劣な笑いで埋め尽くされたような作品だった。

1回見終わった時に友人アリ・ババ39さんにメールを書く用事があったのだが、そのついでに私は、「今、一度再生してみたところだけど、calle mayor、すっごく体に悪そうなんだけど、なんなのあれ!」と“殴り書き”をしたものである。

ヒロインの受ける仕打ちがあんまりに非情で、救われもせず土砂降りの雨のなか終わってしまうので、私は別作業の手を停めて( ゚д゚)ポカーンとしていた。……FIN……ってなんだよ、なにがFINだよと。こんな目に遭わなきゃいけないような何を彼女がしたというのかと、どこかで聞いたことのある、別の作品のタイトルみたいなことでも吠えたかった。


次の日も私はこれをまた横目で鑑賞した。そしてアリ・ババ39さんにメールを送った。「今日もう一回CalleMayorをBGVとして再生してみたのですけど、あたし、たぶん少しわかったと思います。暗号を解読したような気分!」

去年の今頃は、本作のフアン・アントニオ・バルデム監督のちょうどすぐ前の作品にあたる『Muerte de un ciclista / 恐怖の逢びき [スペイン映画]: Cabina』を観た。そのとき私自身が言っていたじゃないか、2サス目線で観ててもダメだって。男女の愛憎がどうした、心の闇がどうだこうだというドラマかなんかを見るように見ていたら、スペイン映画は本当には楽しめないんだ。解読する努力を楽しんだ方がいい。


糸口をつかんでから更に何度か再生したら、悲しくて胸がちょっと苦しかった。可哀想だと思った。イサベルがというよりも、あの当時のスペインという国とそこに暮らした人々が。


(簡単に書ける話ではないので、ちょびっとずつコメント欄に書き足していきます)


Calle Mayor (1956) - IMDb
直訳: 大通り

監督・脚本: Juan Antonio Bardem フアン・アントニオ・バルデム
原案: Carlos Arniches カルロス・アルニーチェス 『La señorita de Trevélez』(⇒ 2011年8月13日 観ました

出演:
Betsy Blair ベッツィ・ブレア ... Isabel イサベル
José Suárez ホセ・スアレス ... Juan フアン

Yves Massard イヴ・マサール ... Federico Rivas フェデリコ: フアンのマドリード時代からの旧友; マドリードの雑誌“Ideas”に書いてくれるようドン・トマスに依頼するためにこの町を訪れた
René Blancard ... Don Tomás ドン・トマス: 哲学者

悪友は誰が何の職業だったか、あんまりはっきり覚えてない
Alfonso Godá アルフォンソ・ゴダー ... 悪友ホセ・マリア(ペペ、エル・カルボ): 弁護士
Luis Peña ルイス・ペニャ ... 悪友ルイス: 商店の二代目
Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ ... 悪友ルシアーノ: 地元の新聞の発行人
José Calvo ホセ・カルボ ... 悪友: 医者?

Lila Kedrova ... Pepita ペピータ: 男たちがよく遊びに行く飲み屋のママ; 「飲み屋」って言っても……
Dora Doll ... Tonia トニア: フアンに惚れている、その店の女給: 「女給」って言うか……

Matilde Muñoz Sampedro ... Chacha: イサベルの家のchacha(使用人)
María Gámez ... Madre: イサベルの母


だんだん苦悩し始めたフアンがトニアを探して店に駆け込む。店名と両隣の建物の質感なども合っているようなのでここだと思う。少なくとも外観はまさにコレ。

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Saturday, August 13, 2011

La señorita de Trevélez

音量ちょっと注意↓↓

察するに、TVEが1983~84年にかけて“La Comedia”というドラマシリーズを放映したと。そのシリーズは20世紀(の前半など)の戯曲を毎回一つドラマ化していたと。そのうちの一話が、1984年1月24日に放映されたこの『La señorita de Trevélez (トレベレスのお嬢さん)』であったと。



"La comedia" La señorita de Trevélez (TV episode 1984) - IMDb
La señorita de Trevélez - Wikipediaですみませんが

おはなし
ティト・ギローヤ、マンチョン、トリハの三人組はcasino(=ビリヤードなどで遊んだりする会員制サロン)の遊び仲間で、いつも悪ふざけばかりしてつるんでいる。自分たちのグループに“Guasa Club(冗談倶楽部)”などと名前をつけて調子に乗っている。

パブロ・ピカベアもそんな仲間の一人。サロンの正面にあるトレベレス家の若く可愛らしいお手伝いさん、ソリータに気がある。しかしサロンの常連客、ヌメリアーノ・ガランもおなじくソリータを狙っているらしい。

“冗談倶楽部”の会員ではないヌメリアーノが恋敵となっていることが気にくわないピカベアは“倶楽部”の連中にこのことを訴え出た。“倶楽部”はヌメリアーノにソリータから手を引くようにと脅しをかけたがまったく気に掛けていない様子だったので、それではと、ヌメリアーノがもうこの街にも居られなくなるような悪戯を仕掛けた。

その悪戯とは、フロリータに―――トレベレス家の家長ゴンサロが何よりも大事にしている行かず後家の妹フロリータに―――ヌメリアーノの名を騙ったラブレターを出して愛の告白をしてしまうというものだった。

フロリータはすっかりその気で、ゴンサロもヌメリアーノを妹の婿となる男として祝福に来る始末。おろおろするヌメリアーノを尻目に、結婚式の段取りがどうのこうのと、話はどんどん進んでしまう。

ゴンサロはフロリータにちょっと軽口を叩いただけの男を病院送りにしたこともあるほどの妹思いの人物なので、今回のようなオオゴトになってしまった後ではヌメリアーノはどのような目に遭うか知れたものではない。“冗談倶楽部”の悪戯だと言い出すきっかけを逃したヌメリアーノは窮地に立たされる。

しかし“冗談倶楽部”の、とりわけティトの悪戯はエスカレートするばかり……。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


・作者はCarlos Arniches(カルロス・アルニチェス; 1866~1943)という劇作家。(⇒ Carlos Arniches - Página principal 20世紀初めのスペイン演劇界において傑出した存在)

劇場で上演されるばかりでなく、テレビドラマ版・映画版も数多くある。
⇒・"Lo tuyo es puro teatro" La señorita de Trevelez (TV episode 2000) - IMDb
⇒・"Estudio 1" La señorita de Trevélez (TV episode 1971) - IMDb
⇒・"Teatro de siempre" La señorita de Trevélez (TV episode 1969) - IMDb
⇒・IMDb - "Primera fila" La señorita de Trevélez (TV episode 1963)
Calle Mayor / 大通り [スペイン映画]: Cabina
⇒・IMDb - La señorita de Trevélez (1936)

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