『苺とチョコレート』というキューバ映画。
私がストレートに「感動した。」と感情を吐き出した数少ない作品。このブログにおいて、あそこまでストレートに書いた唯一の作品かもしれない。
私はRSSリーダーで「スペイン映画」とか「キューバ映画」などの語句を捕捉しているから、こういった作品について書かれたブログを訪れることはよくある。すると奇妙な文章にもたまに出会うのです。
という件を書き留めましょう。
まず私の文: http://azafran.tea-nifty.com/blog/2006/08/fresa_y_chocola_be67.html
そして問題の女子学生の文:http://ameblo.jp/clara626/entry-10044988105.html
それでは、幾つか見るべきポイントを挙げます。
1) ダビドとディエゴの出会いのシーン
西語音声では「Con permiso.」の一言(=「エクスキューズ・ミー」のような決まり文句)のみ。
日本語字幕では「失礼」の一言しか現れない。
私 |
女子 |
Coppelia(コッペリア)でチョコレートアイスクリームを食べていると、「相席よろしいかしらん」と科(しな)を作りながら目の前に男が座った。 |
『相席、よろしいかしらん??』 |
「相席よろしいかしらん」なんてのは、おっさんくさい言い回しを私がテキトーに考えたのです。「~かしらん」ってのは私はよく使うしね。(※ついでに言うと、私は「~かしらん」と書く時には必ず、男言葉なのか女言葉なのかって点にも思いを馳せて意識して使っているのだよ。昨日今日ポッと出の‘かしらんユーザー’じゃないんだよ、私は)
2) ディエゴが苺アイスを食べるシーン
私 |
女子 |
なんだ、男のくせに苺アイスを食べている |
(なんだコイツ。男のくせに苺アイス食ってやがる。) |
苺アイスを食べる同性愛者を見て思ったであろう主人公ダビドの‘心の声’を、私が文章を構成する上で勝手に作った一節である。それを、作文の都合上、地の文にポンと放り込んでおいたのである。もちろん、字幕にもどこにもそんなもん現れるわけがない。私が勝手に入れた一文なんだから。
それが見事に一致していますね、と。
3) ダビドとディエゴが論争するシーン。長いスペイン語セリフに相当する日本語字幕は短く縮められて訳されている。
音声 |
字幕 |
Ustedes al que no dice que sí a todo o tiene ideas diferentes, enseguida lo miran mal y lo quieren apartar |
他人と考えが違うだけで攻撃された |
しかし…
私 |
女子 |
君たちは、何にでもYesと言わない奴や違った考えを持っている奴のことは、すぐに曲解して遠ざけようとするだろう |
君たちは、何に対してもYesと言わない奴、
人とは違う考え方を持つ奴を すぐに弾いて遠ざけようとするだろう |
これもまた、訳の長さから何からずいぶんと似たものだね。
ここの西文はね、私は耳で聞き取ったんですよ。そして訳も私。
日ごろから私は訳する時はなるべく全ての単語を拾って、なるべく逐語訳に努めているので、こんなにまどろこしい日本語訳になっているのです。私がこういうじれったい・やぼったい訳し方をするのは、スペイン語勉強中という人が文の構造などを見失ってしまうことの無いように、を考えてのことです。
(ついでに言うと、「君たちは、」というところでさっそく読点を入れてしまうのも私の癖なんだよな。)
さて。
めぼしいのはこの3点だけだとなると、こうしてブログに書くにはちょっと弱いかなぁと思った。これでは面白みが足らん。
そこで、「待てよ」と。
たとえば、彼女のブログ中の、「Vivimos en una de las ciudades ma′s maravillosas del mundo. 僕たちは、世界で一番美しい街に住んでいる。」。これ、私のブログには無いクダリである。スペイン語のアクセント記号を打たずに「ma's」という書き方で代用するというのは、日ごろ私のやらないことだし。
ここはどうしたんだろう?
彼女がこれを聞き取ったんですか?
彼女はスペイン語ができる人で、だから上述の3)も自分で聞き取れたのだろうか?
……ふと、彼女のこれをコピペし検索してみた。
「Vivimos en una de las ciudades ma′s maravillosas del mundo. 」
4) そしたら、あーた、これはamazonのyukkiebeer氏(No1レビュワー)の書いた部分じゃないですか。
↓↓↓
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005NJUO
yukkiebeer氏 |
女子 |
僕らは世界で一番美しい街に住んでる |
僕たちは、世界で一番美しい街に住んでいる |
まぁ、ここはね。このくらいシンプルな一文ならね、誰が訳してもこのようになりますからね。これは仕方ないといえば仕方ない。この一文だけならばね。
ところがそうではないから面白い。
5) レビューの続き部分より
yukkiebeer氏 |
女子 |
彼はこの街にとどまって何かをしたいと考えているのです |
できることなら、ハバナに止まって何かしたいと考えていたのではないだろうか。 |
さてそうなってくると、この女子学生の文章の残りの部分も元がありそうだ。
6) こちらは、スペイン語圏の映画を(もさることながら各国映画を)数多く見ているシネマでキッチュさんのブログ
↓↓↓
http://rabuchan.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_1081.html
シネマでキッチュさん |
女子 |
苺は女の食べ物、それを食べる男はオカマ、とみなされる
キューバでやっぱり苺を食べてたディエゴはオカマなわけだけど。
さてさて、
ダビドはオカマは人間の屑だと思っているのに
ディエゴのほうはダビドに一目ぼれ。 |
苺は女が食べるもので、
それを食べている男は当然オカマと見なされるご時勢、
やはりディエゴもそう(オカマ)だった。
ダビトは、オカマなんてもんは人間のクズだと
ディエゴに嫌悪感を抱くが、
一方ディエゴは、というとダビドを一目で好きになる。 |
といった感じです。彼女のブログの他の部分についても、検索すれば他の人の文章が見つかるんじゃないかな。
彼女は、「◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇で挟んでいる数十行は引用部分なんですー」のつもりかもしれないが、だったら元の文にチョコチョコ手を加えないでいただきたいものだね。
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5月中旬のある日、関西の大学(スペイン語学科とかある大学)から私の『ベル・エポック』の感想文に対してさんざんアクセスがあった。学校が終わった時間帯になっても関西からの「ベル・エポック あらすじ」などの検索が止まらなかった。
宿題だったのかなあと思った。あの映画、誰かのブログでも読まないことにはわけがわかんないかもな、と。私の敬愛する映画ブロガーの皆さんのところにもそういうアクセスが行ったんじゃないかなぁと思い、私はその夜ニヤニヤした。
というのを友人に話したところ、思わぬレスポンスがあった。
・ときどきブログに書評を載せる後輩女子のところは、「>8月の終わりになると例年いろんなところから『本の名前』+『感想』で検索され」るのだそうだ。
・友人のお母さんは大学で教えていらっしゃるそうだが、「>最近はみんなネットで調べて終わり、というかネットの情報の信頼性について、何の疑いもなく『資料』と思う学生が多いらしい」のですと。
・大学で教えている立場の友人など、「>学生のレポートを採点していたら、ワタシのサイト(に以前書いていた専門分野ネタ)からコピペした輩を発見し、憤りとともにちょっと感慨深かったことが」あるらしい。「>評価Cにしましたが。」が効いてる。
ふーむ。そういうことで読まれたとしたら、これはあまり嬉しくない話です。
昔は、他人の書いた文なんて、明確な意思をもって図書館などに足を運んでワザッワザ目にするものだったから、自分でも‘引用’という行為がはっきりと自覚できていたんだけども、今の子はコピペ、コピペででやってるから意識も無いってことなのかね。
ただ読まれる分にはいっこうにかまわないし、元を明示しているんだったらいくら参照してくれたって私はかまわないんだよ。私の文に対する反論でも酷評でもね。いや、もっと言えば、元を明示してくれてなくったって、「……と書いている人がいたが」とか「…ってのを読んだことがあるが」くらいで、ぜんぜんかまわん。
要は、「自分にうそをつくな」と言いたいだけの話です。
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映画の感想文なんてどうしたって似てきちゃうからね。着眼点がいっしょなんてのはよくある話なんですわ。
でも、そのように判断のつくものと、そうでないものとがあるんだよ。起承転結の構築の仕方をなぞっちゃったりとか、つまり結論への到り方をまねしちゃうわけで、ひいては感想の抱き方をそっくりね。そういう文章、時々見かけるね。
GWに私は、95年作品の『Dia de la Bestia(アレックス・デ・ラ・イグレシア監督)』を見て、96年作品の『タクシー(カルロス・サウラ監督)』を思い出したので、たてつづけにブログに書いた。あの当時のスペイン社会の空気を考えながら、その二作品に通底する事象について記したわけだ。
6月ごろだったかなぁ。
『Dia de la Bestia』に対してアクセスがあった。アクセス解析から察するに、私の感想文を読んでいるようだった。「ほほぅ、この作品を今どきまだ観てくれる人もいるのか」と興味深く・嬉しく思ったものです。
すると、翌日になってUPされたぜんぜん知らない人のブログが、やはり『TAXI』との共通点に言及していて、「……ふぅむ……」と思った。「……はてさて……」と思案した。一応そちらのブログに感想のコメントをし私のURLを残してきたわけだが、まもなく、そのURLを踏んだ形で私のブログを来訪した人があった。
うん。
REMOTE_HOSTとか諸々、おんなじじゃないですか。あなた、昨日私の『Dia de la Bestia』を熟読してた人じゃないんですか?
まぁ、こんなのこれ以上なんでもありませんけどね。
上述したとおり、映画の感想文なんて誰かとかぶるのは当たり前なのね、でもね……。ってね。思ったわけよ。まぁしょうがないよ、こういうのは。本当にそう思ったのかもしれないんだから。
ただ、自分がこれから書こうと思ったとおりのことを既に書いちゃっている他人のブログが目に入っちゃったら、私なんか、素知らぬ顔して自分の文を書き続けることはできないんだよな。「誰それさんも書いておいでだが」などとリンクしておいたりするだろな。
少なくとも、先方のブログに「やっぱりそうですよね」「同感です」「おんなじような文になっちまいました」的なことをあとでコメントしに行くよ。
(以上、今外出しなければならないので中途半端なまんまでUP)(この週末中にもうちょい細部をいじります)
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