Saturday, September 29, 2012

Xingu / シングー [ブラジル映画]

LBFF 2012 Latin Beat Film Festival 2012 / 第9回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2012 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映。

映画祭の作品紹介ページ(Xingu / シングー)よりストーリー
1940年代、ブラジル内陸部マトグロッソ州の開発隊に参加したヴィラス・ボアス三兄弟は、アマゾン川支流のシングー川流域で暮らす先住民族インディオと遭遇し、友情を育くむ。キリスト教や森林開発、疫病といった外圧から、彼らの生活を守るため、3兄弟は行動を起こすことを決意する。

先住民族保護に生涯をささげたヴィラス・ボアス三兄弟の苦難の日々を描いた感動作。……略……

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佳かったです。
いつものように私は何も知らずに観ましたが、話はわかりやすい。復習がしたくなる作品。

途中、展開が早くて説明的だなとか逆にちょっとテンポがゆっくりかなと感じるところもありましたが、前者については伝記ものならしかたないね。バルト9では10/4(木)の21:00からまた上映されるのでどうぞ。


次男(めがね) Claudio Villas Boas: 1916~1998
三男 Leonardo Villas Boas: 1918~1961
長男 Orlando Villas Boas: 1914~2002

次男クラウジオが26歳の時(ということは1942年か)に物語は始まります。ホンカドール・シングー開発隊(Expedição Roncador-Xingu)のことを新聞で知った次男が三男とともに、開発隊に応募する人の列に並ぶのです。自分の名前を書くこともできないといった無学の人を装った二人は無事に(?)採用され、サンパウロで会社勤めをしていた長兄のオルランドも呼び寄せるのでした。

Morre o sertanista brasileiro Orlando Villas-Boas - Que Dia é Hoje? - Oi Educaによればオルランドは多国籍企業に勤めていたようだが、これでサクッとホワイトカラーの職を捨てて弟二人に合流しちゃうのがおもしろい)


ブラジル学を学ぶ人のために』と『現代ブラジル事典』にその頃の社会の動きについて書いてあります。二つの本の該当箇所の筆者が同じなのでだいたいおなじことが書いてありますが、前者から引用してみます:

第Ⅰ部 開発と社会  第一章 開発と環境保護への取り組み  
1 開発と森林破壊  アマゾンへの開発の訪れ
……略……マタ・アトランティカの開発に比べるとアマゾン(正確にはアマゾン河流域アマゾニア)の開発は新しく、せいぜいがこの1世紀のことである。その鬱蒼とした森林が人を寄せ付けず、また植民者にとって経済的利益がなかったからである。アマゾンには多様な自然が存在しているが、……略……つまり農耕には不適な土地がほとんどを占めている。先住民であるインディオはこうした森で焼畑を営んでいたが、それは人類学者B・J・メガーズによって自然の植生の模倣といわれたものであり、貧弱なアマゾンの優れた利用法であった。

19世紀末になってアマゾンの深い眠りは突然醒まされることになった。ゴムブームの到来である。アマゾンを原産とする天然ゴムが自動車のタイヤ、軍事用に大量に需要された。……略……

……略……アマゾンに再び開発が訪れるのは1940年以降のことである。この年ブラジル大統領として初めてアマゾンを訪れたジェトゥリオ・ヴァルガスは文明の名でアマゾン征服を宣言した。アマゾン開発は中央集権的な政治を目指すヴァルガス政権にとって国家統合の手段の一つであった。53年にはアマゾン経済開発庁(SPVEA)を設立し、「法定アマゾン」という地域区分を定めた。しかしヴァルガスの時代はアマゾン開発の前奏にすぎなかった。現実に開発が進むのは64年の軍事クーデター以降であった。……略……


たしか映画で描かれたのは1942年からこのぐらいまでだったと思う。(「1971年にノーベル平和賞候補になった」などはおはなしの中では描かれておらず、テロップでの説明)


ひきつづき同書:
3 貧困と環境破壊 開発の犠牲者
開発は、先住民であるインディオを危機に追いやった。インディオ人口は植民以来過重な労働、混血、残虐行為によって減少してきたが、森林破壊がそれに拍車をかけた。……略……開発はインディオの文化とアイデンティティを失わせている。政府は1973年にインディオ法を制定しインディオの文化の保護を図った。88年憲法は伝統的にインディオが住む土地について不可侵を定めた。政府は、インディオ法と96年の政令第1775号によって、インディオ居住区の確定を進めた。

……略……しかし、現実に居住区として制度化されたものは数が少ない。加えて開発の浸透は、インディオを森の奥へと追いやり、あるいは文明の受け入れと固有の土地の放棄を促すことによって、確定すべき土地を事実上狭めている。さらに確定した土地についても牧畜業者、砂金採集人(ガリンペイロ)が不法に侵入しつつある。


(コメント欄につづく)

amazon.co.jpを「シングー」で検索してヒットするのは←こちらの本。

『アマゾン、シングーへ続く森の道』白石絢子著 地球の裏側から問い返される - エンタメ - 47NEWS(よんななニュース)

アマゾン、シングーへ続く森の道 一般書籍 ほんの木「自然なくらし」

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Saturday, April 07, 2012

Los peores años de nuestra vida [スペイン映画]

 ( 95年くらいから今日までに何度も観た作品だけどサラっと書きます。注意点がいくつかあります


おはなし
まるで冴えない弟とイケメンで女たらしの兄が、美しい画学生に二人して惹かれてしまう。弟の恋心をみてとった兄は手を貸そうとするが、自虐的なピエロを演じがちな弟とは噛み合わず、なかなかうまく事が運ばない。彼女との出会いが兄弟それぞれの内面にもたらす変化を軽妙に描いた作品。

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この作品、もう書いちゃおう、今日こそ書いちゃおうって、何度回したかわからない。

「何度も観た」というのは、つまり何度も観られるくらい気軽・気楽な作品であるということ。しかし何度観たところで、鑑賞後ただちに熱のこもったブログを書きたくなるほどの感興は得られなかったからこそ、結局何度も観なくちゃいけなくて、だから何度も観たのだということ。遅くとも3年前の時点でも「観たけど書けてない」というメモをしてあったもんね ⇒ descanso : Cabina


なんていうの、「軽妙」と言い表されるように作ってみましたという感じの作品で、別につまらなくはないしセリフが―――特にお父さんのセリフが―――面白いし、ほのぼのするしあんまり誰もボロボロに傷つくでもないし、“わるもん”らしき人がそんなにいるわけでもなし、いいっちゃあいいし、好きは好きだけれども……、すごく小さい世界で小さいことをテーマに作られている作品だと思う。凡庸って言っちゃえばそれまで。ストーリーや人物像なんかも、別に映画にする必要は無いんじゃないかという、トレンディードラマに毛が生えた作品。

こんなわけだから何度観てもブログを書くに至らなかったんだと思う。私を突き動かすものがない。


ただ、何度も言うけど、無理矢理フォローしているわけじゃないけど、つまらなくはないんですよ。それからスペイン語はたいへん聞き取りやすい。

Los peores años de nuestra vida (1994) - IMDb 
直訳: 僕らの人生の最悪の時期
英題: The Worst Years of Our Lives 

監督: Emilio Martínez Lázaro エミリオ・マルティネス・ラサロ
脚本: David Trueba ダビ・トゥルエバ

出演:
Gabino Diego ガビーノ・ディエゴ ... Alberto アルベルト
残念な弟; 女性との付き合い方において頭でっかちの理論ばかりこねくり回すタイプ; 「どうせ君も僕をフるんだよね」と女の子に面と向かって聞いてみたりする鬱陶しいタイプ; 顔もイケてないわSEXすれば早漏だわ、冴えない、冴えなすぎる; 小説家志望だとかで出版社に原稿を送りつけては送り返され落胆する日々; 浮かんで来る言葉をいちいちレコーダーに録音している; 父親にはきちんと金になる仕事に就くよう再三言われている; 英語が得意(?)

Jorge Sanz ホルヘ・サンツ ... Roberto ロベルト
アルベルトの兄; できすぎた兄; いけめんで女に全く不自由しない兄; 女はすぐ落とせる; 銀行での仕事も決まったところ; アルベルトが世間のイケてる男たちを「顔ばっかり良くて脳みそからっぽな連中」と腐す時はたいていこの兄に対するあてこすり

Ariadna Gil アリアドナ・ヒル ... María マリア
美術学生; 絵画を学ぶためアルベルト・ロベルト兄弟のマンションの上階にある老画家のアトリエに通ってきている。二十歳ほども歳の離れた彫刻家サンティアゴとは不倫の仲; 最近その不倫関係をサンティアゴの妻に知られてしまった

Agustín González アグスティン・ゴンサレス ... Father 兄弟の父親
ベランダで鶏を飼うのが趣味で一羽ずつ名前をつけて健康まで気遣うほどの可愛がりよう; 次男のアルベルトのニートぶりに気を揉む日々; 家業のインテリア店を手伝わせようと考える; 強圧的な父親というわけではけっしてなく、若者への理解はあるほうだ

Maite Blasco マイテ・ブラスコ ... Madre 母親
優しい母親; 「あなたはまだ成長期なんだからちゃんとお食べ」などと、いい歳をした次男のアルベルトの世話を焼く; 夫の趣味のニワトリにはもうウンザリ

Carme Elias カルメ・エリアス ... Carola カローラ
ロベルトの職場の上司; 年頃の娘と連れだってナイトクラビングにくりだす; 逆ナンも一度二度ではない

Jorge de Juan ホルヘ・デ・フアン ... Santiago サンティアゴ
マリアの不倫相手の彫刻家; たぶんアルベルトはこの人のことを「cursiな奴」と苦々しく思っているだろう、陰で口真似とかしていたくらいだから

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Thursday, April 05, 2012

Mientras duermes / スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 [スペイン映画]

わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

『REC / レック』シリーズなどで知られるスパニッシュホラーの旗手、ジャウマ・バラゲロ監督の最新作。


おはなし
早朝、ラジオの人生相談番組のパーソナリティーがリスナーに話しかける。「幸せになる術はかならずあります。それを見つけ出すんですよ」。

「……俺は幸せにはなれない。幸せだったことがない。幸せになる能力が無いんだ」とひとりごつセサルは、四十がらみでいかつい容貌の寡黙な男。マンションの住み込み管理人をしている。住人からはそれなりに信頼されているが、オーナーの受けは極めて悪い。

セサルは一日の大半をこの建物で過ごす。寝たきりの母をときおり病院に見舞う他には街に出かける用も無く、趣味があるわけでもない。

三階に住む老女ベロニカのたわいないおしゃべりにつきあい、彼女の留守中の犬の世話を引き受け、住人宛ての郵便物の処理をして、詰まった水道管の掃除を頼まれ、表の掃き掃除をし……、セサルの日常は過ぎてゆく。

彼は若く美しいクララの住む五階の一室を夜毎訪れる。昏々と眠り続けるクララのそばで息を潜め、セサルは夜の闇を共有する。

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めいっぱい詳述していながらネタバレらしきネタバレはしませんよというのを信条としている私にしては珍しく全部つるっと書いちゃってるようなストーリー紹介文ですが、これ、しょうがないんだよね。今書いたことは、最初の数分であっさりと見せられちゃう事ばかりだから。もう冒頭からこういう話です。タイトルが「君の寝ている間に / Mientras duermes / While you Sleep」だし。

この後の展開をお楽しみください。


どうだろな。3回ほど回してみた感じ、可もなく不可もなくといったところ。別に怖くはない。……いや怖いけど。怖いと言っても、ほら、「こわい話」も細分化できるでしょ。これは恐怖感ではなくて嫌悪感を抱かせるタイプの「こわい話」。イヤ~な気持ちになる。女の人は特に受け付けないかも。


Mientras duermes (2011) - IMDb 
直訳: 君の寝ている間に
英題: Sleep Tight (ぐっすりお休み)

公式 Mientras Duermes – 14 de octubre estreno en cines

2012.07.31 加筆
「スリーピングタイト 白肌の美女の異常な夜」8/11(土)シアターN渋谷にて妄想解禁レイトショー!

スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 - goo 映画
スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜@ぴあ映画生活作品情報


監督: Jaume Balagueró ジャウマ・バラゲロ
脚本: Alberto Marini アルベルト・マリーニ

出演:
Luis Tosar ルイス・トサル ... César セサル: 潔癖症気味か?

Marta Etura マリア・エトゥラ ... Clara クララ: 一人暮らしの女性。
Alberto San Juan アルベルト・サン・フアン ... Marcos マルコス: クララの彼氏

Petra Martínez ペトラ・マルティネス ... Sra. Verónica ベロニカさん: 老婦人。3階の住人。犬を二匹飼っているが一匹はこのところ体調が悪い。

Amparo Fernández アンパロ・フェルナンデス ... 清掃婦; 夜間にやって来る
Roger Morilla ... その息子で手伝いに来ている

Iris Almeida ... Úrsula ウルスラ: 少女
Pep Tosar ... Padre de Úrsula: その父

Margarita Rosed ... セサルの母親; 病院で寝たきり


スペイン人のレビューにザッと目を通したら、『Mientras duermes』はヒラリー・スワンク主演の『ストーカー / The Resident (2011) - IMDb』(スペインでのタイトル“La víctima perfecta”)のパクりじゃないかなどというコメントがありました。私はそちらは観ていないから何とも言えないけど、こういうのって、もうしょうがないんじゃないの? 似ちゃったところで。映画って、完全に新しいものなんてもう作れないんじゃないかと私は思っているんだけど。なにかしらカブるのってしょうがないでしょ。

ちなみに公開時期はどうなってるのか。『ストーカー』が映画見本市に出たのが2010年11月3日で(The Resident (2011) - Release dates)?、『Mientras duermes』が映画祭に出たのがその一年後の2011年9月23日だって(Mientras duermes (2011) - Release dates
 


セサルが買い物袋を手に提げて管理人室に戻ってきて洗面所に直行する。袋から取り出した物を化粧棚に並べ始める。几帳面に並べるのである。



最初、「わ。TENGAいっぱい集めてる。気持ち悪い」って思ったんだけど、制汗剤・防臭剤だった。ロールでくるくる塗るタイプの。

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Saturday, February 04, 2012

Calabuch [スペイン映画]

calabuch

アメリカの科学者ハミルトン教授は核爆弾を開発してきたが、嫌気がさして突然に姿を消してしまった。世界各国の警察がハミルトン教授の捜索を開始した。

彼はスペイン、地中海沿岸ののどかな村カラブーチに辿り着いていた。身寄りもなく学もなく身分証明書の類も持たぬ流浪の老人ホルヘとしてハミルトン教授はこの村に現われたのである。留置場に入れられもしたが、そこはのどかなカラブーチ村のこと、出たり入ったりをして“暮らす”うちに教授は、もとい、ホルヘは村の住人との交流を深める。

この好々爺が村人それぞれに心を配り、彼らの抱える問題の解決を後押ししてあげるものだから、村人もその人柄に魅了されないわけがない。やがて村対抗の花火コンテストの日が近づき、ホルヘはロケット花火造りの指揮を執る。

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昨年から、そうだな、BG“V”としての再生も含めれば10回は観ていると思う。最初の一回、再生しっぱなしという形の“鑑賞”をした時は、「ふつーに」ニコニコしてちょっとドタバタする作品ぐらいにしか見えず、だけどベルランガ作品がそんなわけはないと思うので書くことに悩み、それで11ヶ月ものあいだ書けずに来たのです。山の登り方がわからなかったんだよね。昨年の『Novio a la vista [スペイン映画]: Cabina』の時もそうだった。

今年に入ってまたくり返しくり返し再生している間に、なんとなくわかったような気がしてこないこともない。(←なんだ、この日本語上級生は) 

そしてそうなると、「ニコニコ」「ドタバタ」な作品とばかり見なしてもいられず、「ふつーに」グッと来る作品でありました。終盤なんてちょっと鼻の奥がつーんとなるよ。

ただ、ベルランガ作品というものはブログで知った風な口をきいて済ませられるものではないので、ちょっとずつ調べてわかったようなわからないようなメモをしていくことにします。それしか手がないだろう。


Calabuch (1956) - IMDb

監督:Luis García Berlanga ルイス・ガルシア・ベルランガ
脚本: Leonardo Martín レオナルド・マルティン  Florentino Soria フロレンティーノ・ソリア  Ennio Flaiano エンニオ・フライアーノ  Luis García Berlanga

出演:
Edmund Gwenn エドマンド・グウェン... Prof. Jorge Serra Hamilton ホルヘ・セラ・ハミルトン博士

Franco Fabrizi フランコ・ファブリーツィ... Langosta ランゴスタ: 留置所; 映写係
Valentina Cortese ヴァレンティーナ・コルテーゼ... Schoolmistress 小学校の女先生

Juan Calvo フアン・カルボ... Matías マティアス: 署長; テレサの父; 映画が好き、特にフアニータ・レイナ(後述)が好き; マティアス署長がフアニータ・レイナの映画に夢中になっている時間帯を利用してランゴスタたちは密輸をやっている

María Vico ... Teresa テレサ: マティアス署長の娘; フアンを愛しているが父が猛反対; フアンとはベネズエラに渡ろうと計画を進めているところ
Mario Berriatúa マリオ・ベリアトゥア... Juan フアン: 密輸で小金を作って小舟を買いたいと思っている; テレサと結婚したいが、フェリックス神父に頼んでみてもテレサの父親であるマティアス署長の許可が無い限り認められないと追い返されてしまう

Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ... Vicente ビセンテ: 絵描き?と言いたいところだけど小舟に名前を入れたりして過ごしている
José Isbert ホセ・イスベルト... Don Ramón ドン・ラモン: 灯台守; フェリックス神父と電話でチェスの戦いに興ずる; ホルヘのアドバイスであっさりと勝ててしまいフェリックス神父を怒らせる

Félix Fernández フェリックス・フェルナンデス... Don Félix フェリックス: チェスをしてる神父
Nicolás D. Perchicot ニコラス・D・ペルチコット... Andrés アンドレス: 花火師

Francisco Bernal ... Crescencio クレセンシオ: 郵便配達; 密輸仲間
Isa Ferreiro ... Carmen カルメン: 居酒屋の女; 電話交換手
Manuel Guitián ... Don Leonardo レオナルド: 鼓笛隊の指揮をしていた
Pedro Beltrán ... Fermín フェルミン: 留置所の番人; ナポレオンを読んでた; マティアス署長の机の上に足を乗っけていて怒られる

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Saturday, January 21, 2012

Tiempo de revancha [アルゼンチン映画]

今回はけっこう細かいところまで書いちゃうと思う


アルゼンチンでは1981年7月30日に公開された作品。
監督は私のたぶん好きなアドルフォ・アリスタライン(IMDb - Adolfo Aristarain)。

「たぶん」と書いたのは、彼の11作品のうち今作の他にはまだ2作品(Martín (Hache) [アルゼンチン映画]: CabinaLugares Comunes [アルゼンチン映画]: Cabina)しか観ていないから、少し遠慮してみたわけです。鑑賞済みの3作はどれも素晴らしい。大好きだ。


おはなし
ペドロ・ベンゴアはかつては労働組合員であったが、妻と19歳の娘のある身ではいつまでもそうやって暮らしていけるわけもない。ペドロは経歴を修正してくれる業者に依頼して過去を消し、多国籍巨大企業トゥルサコ社の所有する銅山の労働者の口にありついた。

銅山に着いて仲間を紹介された時ペドロは吃驚する。かつての組合活動仲間のブルーノがいたのである。その場は顔色一つ変えずに素っ気なく自己紹介を交わした二人だが、岩陰で再会を心から喜び合うのだった。

会社の業務命令は安全基準を無視した無謀なものばかりで、死亡事故も後を絶たなかった。会社の不手際が目につき腸が煮えくり返る。ペドロは上司と衝突もしたが、ブルーノも言うとおり、ここでは「不平不満は禁物、抗議はするな、我慢我慢」なのである。

そんな時にブルーノがたいへんな計画を持ちかけてきた。「事故だよ。俺様が事故に遭うんだって。ただしペドロ、お前が精確に計算して事故を起こすんだよ」。

打ち合わせ通りにペドロが事故を起こし、段取り通りにブルーノが救出され、しかし後遺症で声を失ってしまっているという設定で、この巨大企業から金をもぎ取ろうと言うのである。裁判のあいだじゅうずっとそんな嘘をとおせるわけがないと怪訝な顔のペドロにブルーノが言って聞かせる。

「裁判なんかしねえよ。いいかペドロ、トゥルサコという会社はな、金をくれるんだ。法廷に持ち込ませないために金をくれるんだよ」。
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とても面白かった。面白かったというか、じっとりはり付いてくるような怖さで寒気がする。緊張感で息苦しい。


(コメント欄で細かく追っていきます)


Tiempo de revancha (1981) - IMDb
直訳: 復讐の時


監督・脚本: Adolfo Aristarain アドルフォ・アリスタライン

出演:
Federico Luppi フェデリコ・ルッピ ... Pedro Bengoa ペドロ・ベンゴア
Haydée Padilla アイデー・パディージャ ... Amanda アマンダ
Joffre Soares ... El Padre: ペドロの老父; 装丁家
Ingrid Pelicori ... Lea Bengoa レア: ペドロの娘; 歯学部学生
Jorge Chernov ... Jorge ホルヘ: レアの彼氏

Ulises Dumont ウリセス・ドゥモン ... Bruno Di Toro: ブルーノ: ペドロの昔の労働組合活動仲間
Julio De Grazia ... Larsen ラルセン: ブルーノの旧知の弁護士

Enrique Liporace ... Ingeniero Basile: バシーレ技師; 駅まで迎えに来てくれた
Aldo Barbero ... Ingeniero Rossi: ロッシ技師; バシーレの上司

Alberto Benegas ... Golo ゴーロ: 最初に駅まで迎えに来てくれて車を運転してくれた仲間; 常に運転が荒い; 先住民マプーチェかとペドロが聞いたがそれは否定した

Arturo Maly ... Dr. García Brown ガルシア・ブラウン: 会社側の弁護士
Rodolfo Ranni ... Torrance トランセ: 本社社員
Jorge Hacker ... Don Guido Ventura ギード・ベントゥーラ: 社のトップ

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Friday, January 20, 2012

¿Y tú quién eres? [スペイン映画]

わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります

おはなし
アナは公証人の資格試験にむけて勉強に励んでいる。我が子をぜひとも公証人にというのは父ルイスの悲願でもあった。

受験勉強に精を出すアナを一人マドリードに残し、家族は避暑地サンセバスティアンのリゾートホテルへ行く。しかし今年はいつもの夏とは違う。最近アルツハイマーの初期症状が見られる祖父のリカルドは一緒ではないのだ。

リカルドを施設に預けていくという両親のことばにアナは反発を覚えるのであった。

マドリードに残ったアナは特別養護老人ホームに祖父を見舞ううちアルツハイマー型認知症患者が直面するさまざまな問題を目の当たりにする。

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いつも言うことだけど、私はこのブログで取り上げる作品に滅多にペケ(×)をつけない。たいていは「好き」か「ものすごく好き」だ。今、イベロアメリカ映画(スペイン語映画・ポルトガル語映画) 索引を見てみたが、これまでに合計で265作品くらい紹介してきたようだ。そしてペケをつけた作品はと言えば、5%も無いんじゃないの? いや5%(13作品)くらいはさすがにいってるかな。

さて私がこんな前置きをする時は、そうです、俺はこれからペケをつけるぞという挨拶です。


この作品はダメだ。ペケつけることしか見えてこない。私の大大大好きなマヌエル・アレクサンドレとホセ・ルイス・ロペス・バスケスが起用されているというのに、だ。


アントニオ・メルセロ監督といえば、2年前のゴヤ賞では栄誉賞を贈られた人です。(→ Premios Goya 2010: palmareses / 第24回ゴヤ賞発表: Cabina

あの当日のアリ・ババ39さんのコメントがこちらです:
自宅で名誉賞のゴヤ像を会長から手渡された唯一の人がアントニオ・メルセロ監督、アルツハイマー病でガラには出られなかった。代わりにステージには二人の息子が登壇、父親を称える素晴らしいスピーチをした。どんなふうに素晴らしかったか? そうね、アイタナ・サンチェス・ヒホン以下観衆の涙を見れば充分だよ。名誉賞では毎回目がウルウルするのだが、今年はもらい泣きしてしまいました。これが三つ目のサプライズでした。


偉大な監督なのだろうとは私も思います。実際、1972年の中編『La cabina [スペイン映画]: Cabina』もとても面白かった。

だけど私は、小児ガン病棟で闘病する子どもたちを描いた同監督の『Planta 4ª [スペイン映画]: Cabina』はけっこう冷淡に書いたと思う。あの作品については、

・闘病ですね、ってだけの話ですね
・オーソドックス過ぎるだろ
・テレビドラマでこういうのあるよね
・実は演技がかなーり棒じゃない?
・この登場人物は今おもしろいことを言っていますよ・やっていますよという見せ方が定石すぎて、そういう意味ではすごいよね

ってことをやんわりと冷たく書いたと思う。


今回の『¿Y tú quién eres?』についても私はおんなじことを言うわ。そしてそれをもっと苛烈に言わなきゃいけない作品だった。

長くなると思うのでつづきはコメント欄に。軽くサラッと観たつもりなのに、こんなに長く文句を言わなきゃいけないなんて。

マヌエル・アレクサンドレとホセ・ルイス・ロペス・バスケスの壮大な無駄遣い。


¿Y tú quién eres? (2007) - IMDb
直訳: で、どちらさんでしたかな?

監督・脚本: Antonio Mercero アントニオ・メルセロ

出演:
Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ ... Abuelo 祖父リカルド
Cristina Brondo クリスティーナ・ブロンド ... Ana アナ: 孫娘
José Luis López Vázquez ホセ・ルイス・ロペス・バスケス ... Andrés リカルドの医療ホームでの同室者

Monti Castiñeiras モンティ・カスティニェイラス ... Fernando Castañeda 担当医師
Amparo Moreno アンパロ・モレーノ ... Alicia アリシア: 担当ヘルパー
Álvaro de Luna アルバロ・デ・ルナ ... Luis ルイス: アナの父親
Ángeles Macua アンヘレス・マクア ... Enriqueta エンリケタ: アナの母

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Monday, December 26, 2011

Ausente / プールサイド [アルゼンチン映画]

premios goyaLatin Beat Film Festival 2011 / 第8回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2011 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭: Cabinaの上映作品。

第8回 ラテンビート映画祭 | LATIN BEAT FILM FESTIVAL 2011 in TOKYO, YOKOHAMA & KYOTOより:
高校教師のセバスティアンは、目を怪我したと言う生徒マルティンを病院に連れていく。治療後、車で自宅へ送ろうとするが、マルティンは「家のカギを失くし、親と連絡もとれない」と巧みに嘘をつき、セバスティアンの家へ上がり込む。人目もはばからず、裸で部屋を歩き回るマルティンにセバスティアンは戸惑いを覚えるが…。……略…… 2011年のベルリン国際映画祭ゲイ&レズビアン映画部門(テディ賞)で見事大賞を受賞した。


これは困ったね……。うーむ。「嫌いではない」。私がもともとGLBT作品には比較的やさしい目線になりがちであるということを差っ引かないといけないかもしれないが。

嫌いではないよ、ないけど……書くことがほとんど無いのはどうしたことか。朝一番の上映だったから頭が起きていなかったんだろうか? 一人で観てしまって、直後に友達同士で語らったりせず印象を刻みつける作業が欠けたためだろうか。

好きな系統の作品なんだがなあ。印象的だったことは……と、メモ帳を見てみてもこれといってめぼしいメモが無い。


友人は数日前の上映日に鑑賞を済ませてあった。これから『プールサイド』を観ようという私にただ一つ、「たぶん『こ…れ…は…ど…う…な…の…?』って思うクダリがあるから」ってコメントしてた。そのコメントの意味はわかりかねたが私もあえて尋ねずに鑑賞に臨んだ。だが、観ていて「ああ、このことか。はははは」とわかったよ。音楽がおどろおどろしすぎたんだ。


音楽が怖すぎる、大仰」ってやっぱりメモしてある。


音楽は邪魔だったね。あんなホラー映画のように見せる必要はなかったでしょ、あのシーン。


今年のラテンビート映画祭、アルゼンチン作品はこれだけだったんだよね? ひょっとすると「同性愛的な作品をなにか一つ」と探した結果これを持ってきたのかもしれないが、もしもそういう理由にこだわったとしたならばそれは読みが違うと思う。

同性愛的だろうが異性愛的だろうが家族愛的だろうがなんだろうが、私は面白い作品を持ってきてほしかった。面白いかどうかにこだわって選定してほしかった。


アルゼンチン作品ということならば、愛というか隣人愛というかいや偏愛というか愛憎というか……が実に面白く描かれている『El hombre de al lado [アルゼンチン映画]: Cabina』なんかを持ってきてもらいたかったよ、望むべくんば。映画館に観客の含み笑いがじわじわ拡がる様子を味わいたかった。

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Sunday, October 09, 2011

Balada triste de trompeta / 気狂いピエロの決闘 / The Last Circus [スペイン映画]

premios goyaLatin Beat Film Festival 2011 / 第8回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2011 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭: Cabinaの上映作品。

第8回 ラテンビート映画祭 | LATIN BEAT FILM FESTIVAL 2011 in TOKYO, YOKOHAMA & KYOTOより:
スペイン映画界のヒットメーカー、イグレシア監督が手掛けた異色のラブ・ストーリー。イグレシア監督は、スペインで名誉ある「最優秀映画監督賞」を受賞。また、2010年のベネチア国際映画祭ではコンペ部門審査委員長のタランティーノから絶賛され、見事、銀獅子賞と脚本賞をダブル受賞した。


おはなし
1937年、ハビエル少年の父はサーカスの人気道化師であった。父は内戦の渦に飲み込まれるようにして共和国側で戦うことを余儀なくされ、捕らえられて“戦没者の谷”建設の強制労働に従事する中、ハビエルの眼前で無残な死を遂げた。

1973年、中年にさしかかったハビエルは、父の面影を胸にサーカスで“泣き虫ピエロ”として働くようになっていた。サーカスで一番の人気者、“陽気なピエロ”を演じるのはセルヒオという男であった。酒を飲むたびに残忍な性格を剥き出しにするこの男は、恋人であるエアリアルパフォーマーのナタリアにも容赦なく暴力をふるう。しかし、子どもたちの人気を集める彼には団長もものを言うことができずにいる。

ハビエルはよりによって、このナタリアに恋心を抱いてしまった。

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twitter 先日のツイート
忙しい時は何かの作業中にBG“V”としてDVDを繰り返し再生するという形で“鑑賞”するしかない。そんな“チラ見”の時にも“Balada triste ~(The Last Circus)”のOPには釘付けになったよ。凄くかっこいいだろ

オープニングタイトルがとても気に入った。こういうことはこれまであまりコメントしたことがないな。これは惹かれたよ。「ああ、きっと私はこの作品を気に入るし、知人のあの人やあの人にも薦めよう」と、OPを見ただけでも強く思ったわ。


アレックス・デ・ラ・イグレシアの作品なので、ちょっと痛みを感じる作りになっています。人の体に傷がつく音が、生理的な恐怖を与えてくれるというか。その代わりというか色合いは抑えてくれてあったので、私のように血が嫌いな人でもあんまり抵抗無く見ていられる。


ハビエルの父が、泣き虫ピエロのマヌエルと組んで子どもたちを笑わせ喜ばせているシーンから映画は始まる。

爆撃の音が轟きその笑い声を掻き消す。と、そこへ殺気立った兵士の一団が乗り込んで来る。庶民の暮らしをぶち壊してなだれ込んできて、子どもたちの笑顔を恐怖と涙で塗りつぶし夢も希望も踏みにじり、大人達を次々と殺戮に駆り立てる……という描かれ方をしているのが、フランコ側ではなくて共和国側であることがおもしろい。アリ・ババ39さんはこれをアレックス・デ・ラ・イグレシアの「バランス感覚」なのだとおっしゃった。

そうだと思う。こういうシーンでフランコ側を狂った狼のように、そして共和国側をぷるぷる震える白い子ウサギのように描くことは、ある意味―――乱暴に言えば―――“馬鹿の一つ覚え”だろうとも思う。

共和国側のエンリケ・リステル大佐が叫んでいたでしょう、「我々につかない者は反乱軍の者とみなす ……略…… あの扉を開けたら、ヤツらをぶっ殺すんだ、ぶっ殺さないと俺たちがぶっ殺されるんだからな。簡単な話だ」って。殺るか殺られるかだから。そして、同じ国の民同士、へたすれば親子・兄弟の間でさえも敵味方にわかれて裏切り合い殺し合わなきゃいけないのが内戦のむごさ・痛ましさでしょう。

だから我が国も、内戦は「ダメ。ゼッタイ。」



DVDやラテンビート映画祭で何度か観ているんだが、この作品、考える時間が必要な作品だよね。私はまだぼんやりとしかわかってないな。見終わるたびになんだかしくしく泣いているにもかかわらず、どうして泣いているのかハッキリとわかっていない。

ハビエルという青年の悲しみに満ちた人生と狂気、セルヒオという男の残虐と絶望、間に立つナタリアという女の弱さと狡さと浮気癖。……これらを内戦以後のスペインにあてはめて考えればいいと思うのだけど、それでもまだところどころわからなくなってしまう。やや消化不良気味だけど、今回はこの辺で。


一つ思ったのは、「アレックス・デ・ラ・イグレシアは高さのあるところでの大立ち回りが好きなんだよな」ということ。


いくつかメモ
映画『気狂いピエロの決闘』 - シネマトゥデイ
気狂いピエロの決闘 - goo 映画


戦没者の谷(バリェ・デ・ロス・カイードス)

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Saturday, August 27, 2011

Torrente 4 Lethal Crisis / トレンテ4 [スペイン映画]

Torrente 4Latin Beat Film Festival 2011 / 第8回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2011 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭: Cabinaで上映される作品。

「ラテンビート映画祭 Latin Beat Film Festival| ラテンビート映画祭2011、上映作品12本発表!」より おはなし

マドリッド警察のはみ出し者トレンテは、ドジで怠け者で大酒飲み、おまけに不恰好な中年刑事。彼の周りでは、なぜかいつも珍事件が続発し、トレンテは否応なしにトラブルに巻き込まれていく…。……略……1998年に製作された1作目が大ヒットを記録し、以後シリーズ化された。……略……監督兼主演のサンティアゴ・セグーラ(『どつかれてアンダルシア』のニノ役)は、スペインでは国民的コメディアンとして知られている。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


アピールポイントを最初に挙げておこうか:
・おっぱい星人もお尻星人も、どちらも楽しみにしていていいんじゃないかい。
・マドリードのサッカー選手などの友情出演多数


さて。
José Luis Torrente Galvánがトレンテの本名。この男は次のように形容されている:

・Un ser repugnante, machista, racista, homófobo, fascista y repulsivo. ("Torrente 4", taquillazo de la mediocridad | Suite101.net
・un policía fascista, machista, descebrado… el típico antiheroe español. (¿El cine español está en crisis? | Blog de kaiserland77.com
・uno de los personajes más políticamente incorrectos que se han visto en la pantalla: fascista, machista, racista, corrupto, alcohólico y ajeno a sutilezas, el policía José Luis Torrente (Sanfic 7 » Torrente 4 – Crisis letal


と、こういう男なので、まあ、私も眉を顰めたこと顰めたこと。下品で汚くて悪臭が漂ってくるようで、反吐が出るわ! 記憶から消し去ってもらいたいシーンもある。あたし、鑑賞後、三食くらいは食が進まなかったくらいよ。それから、上記のとおりこのおっさん políticamente incorrecto だから。ひどいセリフの連発です。それでもついニヤニヤしてしまうので居心地が悪いったらない。

だけど、だからってPC、PCっつって目くじら立てられても困っちゃうわけで。ポリティカルコレクトネスを厳守すべしという人が万が一いるならば、まあ、その人にはお薦めしない作品です。


私はトレンテの第一作はわりと「つまらない」風に片づけたけど、第4作のこれだってお話は「愚にもつかぬ」というやつだと思っています。ただ、ことばは本当に面白い。途中で語句メモをとるのを投げたほど、トレンテのことばは“豊か”です。この汚くて臭そうなおっさんの野卑で俗悪なregistroを観察し、彼と仲間のポリティカル・インコレクトネスの連打を味わう分には実に面白い作品。



ところで、先日たくさんリツイートされていたツイート(twitter http://twitter.com/#!/djaoi/status/99036186101821440)は男女の下ネタの違いを簡潔に述べたものでとても面白く読んだ。

これとは別に昔から私は、男がおそらく“下ネタ”という範疇で語っているであろう事柄には排泄物を取り扱ったものも多々あるが、女の言うところの“下ネタ”というジャンルからは排泄物は除かれている、と思っているんだよ。だからあたしたちが下ネタで頬を紅潮させて盛り上がってるところへズカズカ入ってきて排泄物だのガスの話をしないでほしい。それ、私たちにはなんにもおもしろいこと無いから。


……そんなこんなで、トレンテは男の下ネタ。

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Tuesday, August 16, 2011

Calle Mayor / 大通り [スペイン映画]

この作品については割と細かく書いてしまうと思う

おはなし
どこにでもあるごくありふれた地方都市。カテドラル、川、広場の柱廊、そして町一番の賑わいを見せるメインストリート。

35歳になって未婚のイサベルはさしずめ“敗者”である。18年前に修道女学校を出た後ずるずると時が経ち、独り身のまま来てしまった。もう未婚の女友達もほとんど居ない。

フアンはマドリード出身の銀行員。この町に赴任した当初は戸惑ったが、今ではcasino(=会員制娯楽クラブ)での遊び仲間もでき、毎日そこそこおもしろおかしくやっている。だが、いかんせん退屈である。この町の暮らしは単調の一言だ。道行く人の顔ぶれもそれぞれの生活パターンも判で押したよう。

だからフアンはcasinoの悪友と一緒になって他人にたちの悪い悪戯を仕掛けては楽しんでいる。すべては暇つぶし。「冗談だよ、ほんの冗談じゃないか」。

次にフアンの仲間が目をつけたのはイサベルであった。フアンが行き遅れのイサベルに求愛してその気にさせて、ついに結婚できると舞い上がる女の無様な姿を見て楽しもうという趣向である。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


私はよく何かの作業中にBG“V”としてDVDを再生しておく。横目でチラチラ画面を見る、耳は聞くともなしに聞いている。この作品を最初に一回“鑑賞”したのも、そんな風だった。

行き遅れだ、負け犬だと世間から煽られ追い詰められている独身女が抱くであろう当たり前の結婚願望というものを、弄ぶだけ弄び嬲るだけ嬲って嘲り嗤う、いわゆる勝ち組と思しき男たちの卑劣な笑いで埋め尽くされたような作品だった。

1回見終わった時に友人アリ・ババ39さんにメールを書く用事があったのだが、そのついでに私は、「今、一度再生してみたところだけど、calle mayor、すっごく体に悪そうなんだけど、なんなのあれ!」と“殴り書き”をしたものである。

ヒロインの受ける仕打ちがあんまりに非情で、救われもせず土砂降りの雨のなか終わってしまうので、私は別作業の手を停めて( ゚д゚)ポカーンとしていた。……FIN……ってなんだよ、なにがFINだよと。こんな目に遭わなきゃいけないような何を彼女がしたというのかと、どこかで聞いたことのある、別の作品のタイトルみたいなことでも吠えたかった。


次の日も私はこれをまた横目で鑑賞した。そしてアリ・ババ39さんにメールを送った。「今日もう一回CalleMayorをBGVとして再生してみたのですけど、あたし、たぶん少しわかったと思います。暗号を解読したような気分!」

去年の今頃は、本作のフアン・アントニオ・バルデム監督のちょうどすぐ前の作品にあたる『Muerte de un ciclista / 恐怖の逢びき [スペイン映画]: Cabina』を観た。そのとき私自身が言っていたじゃないか、2サス目線で観ててもダメだって。男女の愛憎がどうした、心の闇がどうだこうだというドラマかなんかを見るように見ていたら、スペイン映画は本当には楽しめないんだ。解読する努力を楽しんだ方がいい。


糸口をつかんでから更に何度か再生したら、悲しくて胸がちょっと苦しかった。可哀想だと思った。イサベルがというよりも、あの当時のスペインという国とそこに暮らした人々が。


(簡単に書ける話ではないので、ちょびっとずつコメント欄に書き足していきます)


Calle Mayor (1956) - IMDb
直訳: 大通り

監督・脚本: Juan Antonio Bardem フアン・アントニオ・バルデム
原案: Carlos Arniches カルロス・アルニーチェス 『La señorita de Trevélez』(⇒ 2011年8月13日 観ました

出演:
Betsy Blair ベッツィ・ブレア ... Isabel イサベル
José Suárez ホセ・スアレス ... Juan フアン

Yves Massard イヴ・マサール ... Federico Rivas フェデリコ: フアンのマドリード時代からの旧友; マドリードの雑誌“Ideas”に書いてくれるようドン・トマスに依頼するためにこの町を訪れた
René Blancard ... Don Tomás ドン・トマス: 哲学者

悪友は誰が何の職業だったか、あんまりはっきり覚えてない
Alfonso Godá アルフォンソ・ゴダー ... 悪友ホセ・マリア(ペペ、エル・カルボ): 弁護士
Luis Peña ルイス・ペニャ ... 悪友ルイス: 商店の二代目
Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ ... 悪友ルシアーノ: 地元の新聞の発行人
José Calvo ホセ・カルボ ... 悪友: 医者?

Lila Kedrova ... Pepita ペピータ: 男たちがよく遊びに行く飲み屋のママ; 「飲み屋」って言っても……
Dora Doll ... Tonia トニア: フアンに惚れている、その店の女給: 「女給」って言うか……

Matilde Muñoz Sampedro ... Chacha: イサベルの家のchacha(使用人)
María Gámez ... Madre: イサベルの母


だんだん苦悩し始めたフアンがトニアを探して店に駆け込む。店名と両隣の建物の質感なども合っているようなのでここだと思う。少なくとも外観はまさにコレ。

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