Deprisa, deprisa / 急げ、急げ [スペイン映画]
白昼堂々自動車泥棒や強盗を繰り返す4人組。パブロ、メカ、セバス、紅一点のアンヘラ。衣食住はもちろん、遊興にドラッグにと彼らは盗んだ金を使う。
車を盗む時、金を奪って逃げる時、いつだって「Deprisa, deprisa 急げ、急げ」と叫んでいる。
1975年のフランコ死去、1978年の新憲法制定を経て民主主義体制への移行を図り、スペイン社会は変容しつつあった。首都マドリードのアウトサイダーの姿をドキュメンタリータッチで描いたカルロス・サウラ監督作品。1981年の第31回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。
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予備知識ゼロで見始めたが、パブロやメカがしゃべり始めて1~2分で「これは素人を起用したのね」とわかる。かなりの棒読みなので。(それでもバーテンダーや「火事ダー、逃ゲロー」よりはよっっっっっぽどマシだがね)
台詞回しがたどたどしいので最初は面食らう。パブロだかセバスだかがセリフを“噛む”ところさえあったかと思う。そこでIMDbの『Deprisa, deprisa』のinfoを見る:
Berta Socuéllamos ベルタ・ソクエジャモス ... Ángela アンヘラ
Jose Antonio Valdelomar González ホセ・アントニオ・バルデロマール・ゴンサレス ... Pablo パブロ
Jesús Arias ヘスス・アリアス ... Meca メカ
José María Hervás Roldán ホセ・マリア・エルバス・ロルダン ... Sebas セバス
強盗団を演じた彼らはこの作品以外には出演が記録されていない(※メカ役のヘスス・アリアスはもう一作品には出ている)。そして……、パブロ役のホセ・アントニオ・バルデロマール・ゴンサレスやヘスス・アリアスが30歳とちょっとで死亡していることに気づけば、そう、もう、これは本物の不良青年をスカウトして不良青年を演じさせたのではないか、そして不良青年は映画出演後も不良の道を生きていき、不良として早死にしていったのではないかと考えるわけである。ひょっとして『ピショット(VHS)』のFernando Ramos da Silvaのような最期を迎えたのではないかと。
それでIMDbのトリビアやDeprisa, deprisaのwikipediaを見ると、当たらずといえども遠からずといったところ。
Jose Antonio Valdelomar González (Pablo) was recruited by Saura in a casting for non-professional actors. He was paid US$3,000. In 1992 he was found dead of heroin overdose at Carabanchel prison (Madrid), where he was arrested for robbing a bank.
Despite false rumors that she died of an overdose, Berta Socuéllamos (Ángela) gave up everything for her privacy and she lives in peace with her family. She married 'Jose María Hervás' (el Sebas) and they still live in the same place
撮影終了してから公開までの間にヘスス・アリアスは逮捕され、カラバンチェル刑務所やその他の矯正施設に収容されることとなる。1992年に31歳で死亡するが、遺体の引き取り手は無く、2007年に荼毘に付された。
wikipediaからの受け売りになりますが、新聞ABCはカルロス・サウラのこのキャスティングなどを含めて作品をずいぶん批判したようです。 「Otro de los actores de una película de Saura detenido por un atraco サウラ作品の出演者、また一人強盗罪で逮捕」などの記事が例として挙げられています。
他紙にもいろいろ記事があります。
主演のバルデロマール、撮影中にヘロインを摂取
『急げ、急げ』の主役、銀行強盗で逮捕
バルデロマール、出演作品鑑賞は刑務所内で
バルデロマール、ヘロイン過剰摂取によりカラバンチェルで死亡 ………etc.
パブロがおばあちゃんを訪ねていく。「数日前におまえのことを聞きに刑事が来たよ」と言われて、ニヤッと笑って「それは少年院の時のことを聞きに来たのさあ」とはぐらかすシーン。あのバルデロマールのナチュラルな振る舞いの凄味と来たら。
セリフが棒読みであるのは目を瞑るとして、この作品の放つリアリティは当時の観客には衝撃だったのじゃないかなと想像します。パブロたちの銀行襲撃のニュースをMatías Pratsが報ずるシーンなんて、特に生々しく感じただろうと。
私はカルロス・サウラの音楽ものというか舞踊ものはほとんど興味が無い。残念ながら。彼の作品を数多く観たわけじゃないからなんとも言えないが、『Deprisa, deprisa』のような作品の方がずっとずっと好きだ。
でも『Deprisa, deprisa』の曲の挟み方が好きになれない。サウラの曲の使い方には前にも文句をつけたことがあったと思う。あれは、そうだ、『TAXI / タクシー』だ。「ダッサいタイミングでかかるので気恥ずかしくなる」とまで言った。ダメなんだよね。
カルロス・サウラ、本当に凄いと思う。彼の作品を観ていると鳥肌が立つ。でもどんなに彼を尊敬して彼の映画を称賛していても、曲の趣味は合わない。そういう合う・合わないは仕方のないこと。
(つづきはコメント欄で)
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