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Saturday, September 29, 2012

Xingu / シングー [ブラジル映画]

LBFF 2012 Latin Beat Film Festival 2012 / 第9回ラテンビート映画祭 / ラテンビートフィルムフェスティバル2012 / スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映。

映画祭の作品紹介ページ(Xingu / シングー)よりストーリー
1940年代、ブラジル内陸部マトグロッソ州の開発隊に参加したヴィラス・ボアス三兄弟は、アマゾン川支流のシングー川流域で暮らす先住民族インディオと遭遇し、友情を育くむ。キリスト教や森林開発、疫病といった外圧から、彼らの生活を守るため、3兄弟は行動を起こすことを決意する。

先住民族保護に生涯をささげたヴィラス・ボアス三兄弟の苦難の日々を描いた感動作。……略……

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

佳かったです。
いつものように私は何も知らずに観ましたが、話はわかりやすい。復習がしたくなる作品。

途中、展開が早くて説明的だなとか逆にちょっとテンポがゆっくりかなと感じるところもありましたが、前者については伝記ものならしかたないね。バルト9では10/4(木)の21:00からまた上映されるのでどうぞ。


次男(めがね) Claudio Villas Boas: 1916~1998
三男 Leonardo Villas Boas: 1918~1961
長男 Orlando Villas Boas: 1914~2002

次男クラウジオが26歳の時(ということは1942年か)に物語は始まります。ホンカドール・シングー開発隊(Expedição Roncador-Xingu)のことを新聞で知った次男が三男とともに、開発隊に応募する人の列に並ぶのです。自分の名前を書くこともできないといった無学の人を装った二人は無事に(?)採用され、サンパウロで会社勤めをしていた長兄のオルランドも呼び寄せるのでした。

Morre o sertanista brasileiro Orlando Villas-Boas - Que Dia é Hoje? - Oi Educaによればオルランドは多国籍企業に勤めていたようだが、これでサクッとホワイトカラーの職を捨てて弟二人に合流しちゃうのがおもしろい)


ブラジル学を学ぶ人のために』と『現代ブラジル事典』にその頃の社会の動きについて書いてあります。二つの本の該当箇所の筆者が同じなのでだいたいおなじことが書いてありますが、前者から引用してみます:

第Ⅰ部 開発と社会  第一章 開発と環境保護への取り組み  
1 開発と森林破壊  アマゾンへの開発の訪れ
……略……マタ・アトランティカの開発に比べるとアマゾン(正確にはアマゾン河流域アマゾニア)の開発は新しく、せいぜいがこの1世紀のことである。その鬱蒼とした森林が人を寄せ付けず、また植民者にとって経済的利益がなかったからである。アマゾンには多様な自然が存在しているが、……略……つまり農耕には不適な土地がほとんどを占めている。先住民であるインディオはこうした森で焼畑を営んでいたが、それは人類学者B・J・メガーズによって自然の植生の模倣といわれたものであり、貧弱なアマゾンの優れた利用法であった。

19世紀末になってアマゾンの深い眠りは突然醒まされることになった。ゴムブームの到来である。アマゾンを原産とする天然ゴムが自動車のタイヤ、軍事用に大量に需要された。……略……

……略……アマゾンに再び開発が訪れるのは1940年以降のことである。この年ブラジル大統領として初めてアマゾンを訪れたジェトゥリオ・ヴァルガスは文明の名でアマゾン征服を宣言した。アマゾン開発は中央集権的な政治を目指すヴァルガス政権にとって国家統合の手段の一つであった。53年にはアマゾン経済開発庁(SPVEA)を設立し、「法定アマゾン」という地域区分を定めた。しかしヴァルガスの時代はアマゾン開発の前奏にすぎなかった。現実に開発が進むのは64年の軍事クーデター以降であった。……略……


たしか映画で描かれたのは1942年からこのぐらいまでだったと思う。(「1971年にノーベル平和賞候補になった」などはおはなしの中では描かれておらず、テロップでの説明)


ひきつづき同書:
3 貧困と環境破壊 開発の犠牲者
開発は、先住民であるインディオを危機に追いやった。インディオ人口は植民以来過重な労働、混血、残虐行為によって減少してきたが、森林破壊がそれに拍車をかけた。……略……開発はインディオの文化とアイデンティティを失わせている。政府は1973年にインディオ法を制定しインディオの文化の保護を図った。88年憲法は伝統的にインディオが住む土地について不可侵を定めた。政府は、インディオ法と96年の政令第1775号によって、インディオ居住区の確定を進めた。

……略……しかし、現実に居住区として制度化されたものは数が少ない。加えて開発の浸透は、インディオを森の奥へと追いやり、あるいは文明の受け入れと固有の土地の放棄を促すことによって、確定すべき土地を事実上狭めている。さらに確定した土地についても牧畜業者、砂金採集人(ガリンペイロ)が不法に侵入しつつある。


(コメント欄につづく)

amazon.co.jpを「シングー」で検索してヒットするのは←こちらの本。

『アマゾン、シングーへ続く森の道』白石絢子著 地球の裏側から問い返される - エンタメ - 47NEWS(よんななニュース)

アマゾン、シングーへ続く森の道 一般書籍 ほんの木「自然なくらし」

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Comments

この作品を観て一ヶ月前の下記の報道を思い出す人も多いと思う:

アマゾン先住民多数殺害か ベネズエラで金採掘業者 生き残ったのは3人 - MSN産経ニュース


ただ、このベネズエラの虐殺報道に関しては、こちらのような記事もある:

真偽不明のベネズエラ先住民虐殺、政府の取材ツアーで見えたもの 写真12枚 国際ニュース : AFPBB News

アマゾン先住民虐殺か、ベネズエラ政府は「証拠発見できず」 (ロイター) - Yahoo!ニュース

ベネズエラ政府、アマゾン先住民虐殺の証拠を発見できず(9月2日)|ラテンアメリカの政治経済
ベネズエラ:ヤノマミ人の代表、虐殺はなかったと認める(9月8日)|ラテンアメリカの政治経済


これらが報じられた時にゴルゴ13を思い出した人もいたと思う:

ゴルゴ13:G線上の狙撃: 鬼畜の宴
ゴルゴ13総合研究所『俺の背後に立つな!』: ゴルゴ13第38巻-1鬼畜の宴


そして、このゴルゴの漫画のような行為を日本人が南米のどこかでレジャーとしてやっているなどというでたらめを、「“社会の公器”が嗤わせてくれるぜ」な毎日新聞が英語で言いふらしていたのが発覚して非難囂々となった、4年前の変態新聞事件を久々に思い出してあらためて腸が煮えくり返った私のような人もいた。

Posted by: Reine | Saturday, September 29, 2012 19:11

Xingu (2012) - IMDb
Site Oficial de Xingu O Filme
Xingu - O Filme オフィシャルブログ
Xingu O Filme (Facebook)


監督: Cao Hamburger カオ・アンブルゲール

脚本:
Elena Soarez  Cao Hamburger  Anna Muylaert

出演 (実際の人とよく似ていた)
João Miguel ジョアン・ミゲル ... Claudio Villas Boas 次男
Felipe Camargo フェリペ・カマルゴ ... Orlando Villas Boas 長男
Caio Blat カイオ・ブラット ... Leonardo Villas Boas 三男

Tapaié Waurá ... Izaquiri イザキリ: 最初に接触した酋長さんだったよね

「『“Villas Boas”なら先住民がおかれている非道い状況をなんとかしてくれる』という噂をたよりにクラウジオを探しに来たカイアビ族の人」と、「先住民族の娘; 次男クラウジオと恋に落ちた人」と、「その娘に惚れてる先住民の若者」といたはずなんだけど、下記の誰が誰なのかがよくわからない。“トゥトゥマイ”って誰だったっけ?

Maiarim Kaiabi ... Prepori プレポリ:
Awakari Tumã Kaiabi ... Pionim ピオニム:  

Totomai Yawalapiti ... Guerreiro Kalapalo

Adana Kambeba ... Kaiulu カイウル: この人がたぶんクラウヂオの恋の相手となった娘だと思うんだ


※それからクラウヂオを演じたジョアン・ミゲルは、3年前のラテンビート作品(Estômago / イブクロ ある美食物語 [ブラジル映画]: Cabina)の主演。あの作品では気弱でダメダメなくせにのび太みたいな無駄口叩いたりする男を演じていたが、今回は行動力と知性や信念が備わった男の役だったためか、私、迂闊なことにジョアン・ミゲルだと気づくまでけっこう時間がかかってしまったわ。

Posted by: Reine | Saturday, September 29, 2012 19:47

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