Mientras duermes / スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 [スペイン映画]
(
わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります。
)
『REC / レック』シリーズなどで知られるスパニッシュホラーの旗手、ジャウマ・バラゲロ監督の最新作。
おはなし
早朝、ラジオの人生相談番組のパーソナリティーがリスナーに話しかける。「幸せになる術はかならずあります。それを見つけ出すんですよ」。
「……俺は幸せにはなれない。幸せだったことがない。幸せになる能力が無いんだ」とひとりごつセサルは、四十がらみでいかつい容貌の寡黙な男。マンションの住み込み管理人をしている。住人からはそれなりに信頼されているが、オーナーの受けは極めて悪い。
セサルは一日の大半をこの建物で過ごす。寝たきりの母をときおり病院に見舞う他には街に出かける用も無く、趣味があるわけでもない。
三階に住む老女ベロニカのたわいないおしゃべりにつきあい、彼女の留守中の犬の世話を引き受け、住人宛ての郵便物の処理をして、詰まった水道管の掃除を頼まれ、表の掃き掃除をし……、セサルの日常は過ぎてゆく。
彼は若く美しいクララの住む五階の一室を夜毎訪れる。昏々と眠り続けるクララのそばで息を潜め、セサルは夜の闇を共有する。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
めいっぱい詳述していながらネタバレらしきネタバレはしませんよというのを信条としている私にしては珍しく全部つるっと書いちゃってるようなストーリー紹介文ですが、これ、しょうがないんだよね。今書いたことは、最初の数分であっさりと見せられちゃう事ばかりだから。もう冒頭からこういう話です。タイトルが「君の寝ている間に / Mientras duermes / While you Sleep」だし。
この後の展開をお楽しみください。
どうだろな。3回ほど回してみた感じ、可もなく不可もなくといったところ。別に怖くはない。……いや怖いけど。怖いと言っても、ほら、「こわい話」も細分化できるでしょ。これは恐怖感ではなくて嫌悪感を抱かせるタイプの「こわい話」。イヤ~な気持ちになる。女の人は特に受け付けないかも。
Mientras duermes (2011) - IMDb
直訳: 君の寝ている間に
英題: Sleep Tight (ぐっすりお休み)
公式 Mientras Duermes – 14 de octubre estreno en cines
2012.07.31 加筆
「スリーピングタイト 白肌の美女の異常な夜」8/11(土)シアターN渋谷にて妄想解禁レイトショー!
スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 - goo 映画
スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜@ぴあ映画生活作品情報
監督: Jaume Balagueró ジャウマ・バラゲロ
脚本: Alberto Marini アルベルト・マリーニ
出演:
Luis Tosar ルイス・トサル ... César セサル: 潔癖症気味か?
Marta Etura マリア・エトゥラ ... Clara クララ: 一人暮らしの女性。
Alberto San Juan アルベルト・サン・フアン ... Marcos マルコス: クララの彼氏
Petra Martínez ペトラ・マルティネス ... Sra. Verónica ベロニカさん: 老婦人。3階の住人。犬を二匹飼っているが一匹はこのところ体調が悪い。
Amparo Fernández アンパロ・フェルナンデス ... 清掃婦; 夜間にやって来る
Roger Morilla ... その息子で手伝いに来ている
Iris Almeida ... Úrsula ウルスラ: 少女
Pep Tosar ... Padre de Úrsula: その父
Margarita Rosed ... セサルの母親; 病院で寝たきり
スペイン人のレビューにザッと目を通したら、『Mientras duermes』はヒラリー・スワンク主演の『ストーカー / The Resident (2011) - IMDb』(スペインでのタイトル“La víctima perfecta”)のパクりじゃないかなどというコメントがありました。私はそちらは観ていないから何とも言えないけど、こういうのって、もうしょうがないんじゃないの? 似ちゃったところで。映画って、完全に新しいものなんてもう作れないんじゃないかと私は思っているんだけど。なにかしらカブるのってしょうがないでしょ。
ちなみに公開時期はどうなってるのか。『ストーカー』が映画見本市に出たのが2010年11月3日で(The Resident (2011) - Release dates)?、『Mientras duermes』が映画祭に出たのがその一年後の2011年9月23日だって(Mientras duermes (2011) - Release dates)
セサルが買い物袋を手に提げて管理人室に戻ってきて洗面所に直行する。袋から取り出した物を化粧棚に並べ始める。几帳面に並べるのである。
↑
最初、「わ。TENGAいっぱい集めてる。気持ち悪い」って思ったんだけど、制汗剤・防臭剤だった。ロールでくるくる塗るタイプの。
The comments to this entry are closed.
Comments
“ざっと見”カテゴリーなので語句メモは特になし。
・“Me voy pitando.”
・irse, marcharse, salir, etc., pitando.: 1. locs. verbs. coloqs. Salir apresuradamente, con prisa.
・sea quien seaというconcesiva / 譲歩の表現: Cabinaが出てきたな。
・「誰それも首になった。con los años que llevaba con nosotros 何年もここで働いてきたというのに」
→“con”の使い方
Posted by: Reine | Thursday, April 05, 2012 20:34
↓
↓
似ているというか、『Mientras Duermes』を観てふわっと思い出されるのは、『Hable con Ella / トーク・トゥ・ハー [スペイン映画]: Cabina』だったりはしないかね。
それから何と言ってもバラゲロ監督の長編デビュー作、『Los Sin Nombre / ネイムレス 無名恐怖 [スペイン映画]: Cabina』じゃないのかな。
他人にとことんまでイヤ~な思いをさせてやるのが俺の快感だ、というタイプのサイコパスって居るんでしょう? そのヒトはもうヒトの形はしているがヒトではなくて、ただひたすらに悪意の塊なんだ。
悪意に満ちた数々の行為に理由なんか要らないんでしょう? 無いのでしょう。対象とした相手が戸惑ったり苦しんだりするのを見たい。そういう欲求を満たすために綿密な計画をたてて大胆な行動に移す、ぶっ壊れた怖いヒト。
IMDbのレビューでも、「何故?」とセサルのそもそもの動機を知りたがっている人がいるけど(Mientras duermes Reviews & Ratings - IMDb)、別に相手への復讐とかそういうコンテクストなんて、サイコパスという者には無いのだと思う。
セサルの一連の行動の“理由”をあえて想像するなら、母親への思いでしょう。元々ぶっ壊れて生まれてきたのか、成育の過程でぶっ壊れたのかはわからないけど、いずれにしても母親をどうしてか恨んで憎んでいるんだろうね。
病床でまったく身動きのとれない母親に、自分の異常なストーリーをぶつぶつと話して聞かせる。自分がぶっ壊れたイキモノであることを母親に見せつける。母親の顔に苦悶の表情が浮かんできて涙がこぼれ落ちるが、それがセサルの快感かあるいは喜びか充足感なのでしょう? これがセサルの母親への、もっといえば女性全般への、復讐の形なのだよね。
母親にクララのことを話して聞かせる中、「クララは母さんに似てるかもね」というセリフがある。セサルはそれを基準にターゲットを選定しているのかもね。
先述のヒラリー・スワンクの作品のほうの男はどうしてヒラリー・スワンクに執着したのか知らないけど、あちらは男が女に惚れているから、心惹かれてしまったからストーキングする、というプロットなの?
だとしたらこっちのセサルとはスタートもゴールも大きく違うと思うよ。セサルはクララに惚れていて一連の行為に及んでいるわけではないでしょう。セサルはクララを、なにがどうしたかしらないが、憎しみの対象としているんだから。
病室の母親にセサルが耳打ちしていた。
「てめえが産んだ化けもんの息の根を止めたいか? まだだよ。もうちょっと待てや。俺はあのビッチの顔から笑顔なんか剥ぎ取ってやるんだからよ」。
セサルは他人の幸せを見守ることができない。幸せな他人を黙って見ていることすら不快でたまらないんだろう。
悪意を餌に膨れ上がったモンスターのような息子の独白を聞かされる母親は、戦慄してか絶望してか、あるいはそれまでの自分と息子との在りように何か悔恨の情でもあるのか、身動きも取れぬままベッドの上ではらはらと涙をこぼします。
このシーンでふと、都市伝説かなにか知らないが、日本の兇悪犯罪史に残る最悪の大量殺人犯にまつわるエピソードを思い出した。
その“モンスター”を身籠もったときに母親は、「あかんわ、これ、おろしたいねん私。あかんねん絶対」と夫に訴えたのだという。そんな話をふと思い出した。
Posted by: Reine | Thursday, April 05, 2012 21:13