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Thursday, June 30, 2011

Tropa de Elite 2 - O Inimigo Agora É Outro / エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE [ブラジル映画]

tropa de elite 2今日までにこのブログではちょうど250のイベロアメリカ映画作品を扱ってきたようだ。私はそのうち95%は「好き」か「すごく好き」になって鑑賞を終えていると思う。たいていは好きになりそうな作品を探し回って観ているんだから、当然といえば当然か。

そんな中でも「もう本当にすごく好き」という作品は幾つかに絞られる。2007年のブラジル作品、『Tropa de Elite [ブラジル映画]: Cabina』がその一つ。今回はその続編である。


おはなし
“ナシメント大尉”とは、ジョゼ・パヂーリャが監督し2008年のベルリン映画祭で金熊賞を獲得した作品『Tropa de Elite』の主人公であり、演者ヴァギネル・モウラの経歴に燦然と輝くキャラクターである。

その続編『Tropa de Elite 2』では前作から十年後の、出世したナシメントを描いている。BOPEの司令官を経て公安部の次官となった彼は、BOPEの組織力の増強と麻薬密売組織の撲滅に心血を注いでいるが、それこそが真の敵にエサをやっているというからくりにはまだ気づいていないのであった。汚職警官と政治屋どもが選挙の裏でほくそ笑む。

今度の敵は凶悪だ。

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前作を観ていなくてこの作品だけを観るのであっても理解にそう大きい支障はないと思う。もちろん前作を観てあった方が良いけれど。前作には若きマチアスの人となり、彼がBOPEを志願した経緯―――それはすなわちマチアスとナシメントの出会いの経緯でもあるのだけど―――や、そもそもBOPEとは何であるのか、彼らはどのようにBOPEの一員となりどのようにBOPEの一員であり続けるのか、などが丁寧に描かれているからね。

(……私のブログ(『Tropa de Elite [ブラジル映画]: Cabina』)ではだいたいの流れがわかるように書いてしまってあります)


今度は別の奴が敵だ」という意味の副題があるので、それは誰だと言うのかと考えながら見始める。電車の中で観ていたのだが、15分辺りで早くも暴力描写に狼狽し「ひゃっ」って画面を閉じた。刑務所内の暴力が映し出されていた。停止ボタンをドタバタオロオロと大慌てで探したよ。向かいの席の乗客が怪訝そうだった。

前作ではPM(軍警)の腐敗っぷりを描いていたけど、じゃあ今回は刑務所の汚れを描いていくのかしら?とまずは思った。でもそんなシンプルなわけないわね。


刑務所で発生した暴動を鎮めるため、フラガという学者が交渉人として呼ばれる。ナシメントはフラガのことをこう説明してくれる:
「面倒なのは、犯罪者を擁護することで生計を立てていらっしゃるサヨクのお利口さんたちだ。そしてああいった連中からいらんことを吹き込まれてしまう人がこの世には大勢いるってことも厄介だ。フラガは俺のことをファシストと呼んでいたが、それを俺に面と向かって言うほど度胸のある奴じゃあなかった。表向きは俺に敬意を払っていたよ。俺も奴に対してそうしなきゃいけなかったから胸糞が悪かった」。

ああ、じゃあ今回は、そういう連中こそが国家・社会の敵ではないかと訴えていくつもりだろうか?と思った。ああ、そうかもしれん。まさにああいう奴どもこそが敵たりうると日頃から私は考えているから。そういう連中ほどタチの悪いものは無しと、私は苦々しく忌々しく思ってきたから。

だが、この作品の狙いはそこでも無いようだ。


それではいったいどこの誰がナシメントの真の敵だと言うのでしょうか。つまりブラジルの民の真の敵とは、いったい社会のどのようなからくりに巣喰っていると言うのでしょうか。それを115分かけて抉り出すように見せていく迫力の作品です。


映画冒頭に緊張感漂うシークエンスが映し出され、そこに至るまでの歳月をじっくり描いていき、ついには冒頭のシーンに戻ってくるっていう作りは前作とおなじ。おはなしは前作よりは難しいかもしれないな。前作の方が《敵》の正体も《敵》が肥大化するからくりもシンプルだった。そして今回は社会のインフラまでもが《敵》に利するような構図なので、前作にも増して恐ろしい。兇悪な敵の姿が浮かび上がってきて、観ている者を戦慄させる。正直なところ、私はあの社会で生き延びていく自信はない。

敵が手強いだけに、前作よりも今作の方がイライラ、ジリジリさせられると思う。「ナシメント、頼むよ、こいつらみんな始末してくれよな」と願いながら辛抱して見続けたよ。



TROPA DE ELITE 2 - Site Oficial
Tropa de Elite 2 - O Inimigo Agora É Outro (2010) - IMDb
エリート・スクワッド ~ブラジル特殊部隊BOPE~ - DVDレンタル ぽすれん

2011.09.29 加筆
前作(第一作)と合わせてDVD発売だって。
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!

なぜ邦題を素直に「エリート・スクワッド 2」としてくれなかったのか、よくわかんないんだけど、まあ観られるだけいいか。でも、この邦題じゃ、先にこっちを観ちゃってワケわかんなくなる人、続出だと思うわ。やっぱり前作を先に観た方がいいのよ。(⇒あっちを先に観て! エリート・スクワッド [DVD]

(語句メモなどはコメント欄に)


序盤で舞台となるのは刑務所: Penitenciária Laércio da Costa Pellegrino (通称: Bangu 1)。ここで4年前に起きたある‘事件’からストーリーは始まります。

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Thursday, June 16, 2011

El Gran Vázquez [スペイン映画]

El Gran Vazquezおはなし 
1964年、バルセロナ。
マヌエル・バスケスの家の前に男たちがうんざりした表情で立っている。男たちはみな取り立て屋である。月賦の支払、家賃の催促、たまりにたまったツケ、……バスケスがドアを開けて出てくるのをこうして何時間も待っている。

そこへもう一人男がやってきた。
激しくドアを叩き、ビルから転落しそうになってもかまわず窓からの侵入を試みる。「俺はこういういかさま野郎には我慢ならないんだよ。善良な市民を馬鹿にしするのもいいかげんにしやがれ」。

烈火の如く怒ったかと思いきや、今度は「こっちはパンの一かけら食べるのだって苦労してるってのに。こいつから取り立てないと、俺はクビになるんだ」とがっくりと肩を落とし、他の取り立て屋からも同情され施しを受ける。

しかし……芝居がかったこの男こそがマヌエル・バスケスである。


スペインナンバーワンと評された漫画家バスケス。彼が世に送り出したキャラクターは数知れない。『ヒルダ姉妹』、『私立探偵アナクレト』、『セボリェタ家の人々』……。子どもたちは、いや大人ですら彼の漫画に熱狂した。

しかしバスケスには大いなる欠点があった。この男、何事にもお金を払う気がない

稀代のペテン師マヌエル・バスケスの嘘八百の人生と、ブルゲーラ出版社の面々の辛抱の歳月を描いた伝記作品。

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昨年9月のDONOSTIA ZINEMALDIA / 58 FESTIVAL DE SAN SEBASTIÁN / 第58回 サン・セバスティアン国際映画祭で観た作品。

正確には“観て”はいない。FESTIVAL DE SAN SEBASTIÁN / サンセバスティアン映画祭 2日目の上映だったのだが、長旅の疲れが一気にそこで出てしまい、この作品でかなり気持ちよく寝てしまったのだった。このたびDVDで見直してみたら、知らないシーンがいっぱいあった。 

ポップな色遣いや室内のレトロな小道具など、可愛らしい画面造り。

語彙はところどころ凝っているような気がした。特に出版社の経理(?総務?)のペラエス(アレックス・アングーロ)の嫌味ったらしい回りくどい表現など。だからスペイン語の(ヒアリングの)勉強にはちょっと厳しいかもしれない。


話は面白い。会話が面白いし、なによりこのバスケスがあまりにも興味深い人物なのだし。

ただ、伝記物なので、スペイン人じゃないと瞬間的に笑えない仕掛けが盛り込まれているのはしかたないね。スペイン国内向けの作品という壁を越えてはいないと思う。

たとえば、バスケスの漫画のキャラクターだってスペイン人には一瞬で共通の認識を伝えられるのだろうけど、私はそれを勉強して情報として得ないことには掴み取れない。バスケスの他にも実在の人物(後述)が描かれているようだが、それらも外国人の私は後から調べる項目として書き留めるところから着手するわけです。

また、話し相手の胸に鈍く光るファランヘ党のバッジを見た途端に態度を変えていくバスケスが描かれるのだけど、そのシーンの滑稽さも果たして外国人に瞬時に伝わるものかどうか。


スペイン語にというより「スペインに」長けた人におすすめの作品です。

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Saturday, June 11, 2011

La caja 507 / 貸し金庫507 [スペイン映画]

おはなし
炎暑の南スペイン。テレビはツール・ド・フランスのアレックス・ツェーレとミゲル・インドゥラインの攻防を伝えている。友達とキャンプに行くと言い玄関に向かう娘のマリアに、モデストは父親らしい一言を投げかけた。マリアはそれきり帰らなかった。その夜、キャンプ先の山火事で焼け死んだのだ。マリアのたばこの火の不始末が原因とされた。

それから7年、アンダルシアにまた厳しい暑さが訪れる。

その日、銀行の支店長を務めるモデストのもとに一本の電話がかかってきた。モデストは娘の死の真相を知ることとなる。金庫室の507番ボックスに長いこと隠されていた陰謀を。

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twitter https://twitter.com/reneyama/status/73025110692478976
もう何度かDVDはBG“V”としてかけてあって、けっこう面白いじゃないか!って気に入った作品。今夜は本格的に観てブログにササっと書いちゃおうって張り切って見始めたんだけど、いざ見始めたら、人物が多くしかも顔が似ていておまけにド売れっ子じゃない俳優ばかりなので、把握に手こずってる。twitter

twitter https://twitter.com/reneyama/status/73026543592542208
鑑賞からブログUPまでは時間をかけようと思えば何時間でもかけちゃうので、最近はなるべく時間をかけずに観るよう心がけている。正座して鑑賞する時間がとれず「BG‘V’として再生しておく」感じのことも少なくない。でも、そんな見方でも面白い作品はわかるもんだ。ってことが最近わかってきた。twitter


先日こうツイートしたのがこの作品。面白かった。


たしか東京の大きくない映画祭で上映されたはず……と思ったが、www.liberarte.jp スペイン語の映画 2003というページにあるように2003年のバスクフィルムフェスティバルでかかった作品だそうです。その映画祭の直後、私は知り合いのスペイン人のおっさんと食事だったのだけど、「どうだった?」って聞いたら彼が、「ああ、面白かったよ」って即答。しかし「だいたいどんな話?」って聞いたら、「銀行があって、貸金庫がどうしたこうした、って話」という。

どんなだよ。

でもこれ仕方ないんだね。私もこのたび何度か観てみたけど、ちゃんと把握するのはたった一回では無理だ。人間関係が複雑で。だってその関係図の全貌を明らかにしていくストーリーなんだから、それがわかりやすくても困っちゃうしね。

主役の二人以外は、ドドーンとメジャーな男優じゃあない。舞台などで活躍する役者が多いのではないかな―――いや知らないけど―――。控えめな悪相揃いで実に渋い仕上がり。商業的な成功なんて度外視していたんじゃないかって思ってしまうよ。血はあっても乳は無し。安易に集客に走らないこの作品の気骨が感じられるではありませんか。


「スペインのヤクザ」ってどういうものなの?っていうのは私は相変わらずわかっていない。(参照: La Espalda de Dios [スペイン映画]: CabinaVengo / ベンゴ [スペイン映画]: Cabina) たまにスペインに遊びに行くだけだし、行ったってもう夜の街に繰り出すことすらしない、きわめて健全な爽やかなスペイン像だけを楽しみ慈しむ滞在スタイルだし。覗かないからね、そんな世界。

この作品を観て「あ、これがスペインのヤクザ界かしらΣ(゚∀゚ノ)ノ」とわくわくした。ハードボイルド? フィルム・ノワール? 

面白いよ。私のお気に入りのホセ・コロナードの、文太以来の角刈りまで楽しめる。……ただ……よくよく考えてみれば、イタリアマフィアがアンダルシアにいるというストーリーだから、厳密にはこれはスペインヤクザ界を描いた作品ではない……? 


La caja 507 (2002) - IMDb
直訳 金庫507

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