El hombre de al lado / ル・コルビュジエの家 [アルゼンチン映画]
おはなし
レオナルド・カチャノフスキーは有名なプロダクトデザイナーで、その作品はミラノなどのビエンナーレでも高い評価を得ている。代表作とも言える“カチャノフスキー・チェアー”は世界各国で売上を伸ばしている。大学でも講義を受け持つなど、レオナルドの活躍の場は拡がるばかりである。
ル・コルビュジエによってデザインされたあのクルチェット邸に住んでいる。ハイセンスなその家で、ヨガ教室を主宰する妻アナと難しい年頃の娘ロラと暮らしている。
ル・コルビュジェの計算どおりに配置された木々の葉音と小鳥のさえずりが心地よい。静やかなレオナルドの朝のひとときを重たいハンマーの音がぶち破る。泡を食ったレオナルドがその鈍い不吉な音をたどってみると、隣家との境界壁に大穴が開けられるところであった。
得体の知れないビクトルという隣人の粗野な振るまいはレオナルドの静穏な日常を脅かす。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
とても面白い。そしてスリリング。
ニヤニヤともヒヤヒヤともするのだけど、ここの会話がこのように面白かったとか、このシーンのあの目つきに驚かされたとか、書くに書けないのがもどかしくなる作品。「観る人それぞれに楽しんでもらいたい。私は今はだんまりでいこう」という点では『Whisky / ウィスキー』の時と似た気分かもしれない。
うん。
そうだね。
もうこれ以上は本文では書かないことするわ。
( コメント欄でなにか書いてしまうと思います)
ここが面白かった、ここが怖かったと挙げようにも、そんなのを挙げていったら全部説明することになってしまいそうで、言わないようにことばを飲み込まなきゃいけないのが困る。
そのように次から次へと可笑しい会話やゾクッとするシーンが続くという点ではいったい何の作品に似ているかなあ……。
これ、映画祭などで日本でも観られるようになってほしい。おもしろいと思いますよ。
舞台はココ。ビクトルは自分の住所をCalle 54の320番地だと言っている。
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2012.08.25 加筆
ラテン!ラテン!ラテン!のvagabundaさんのおかげで日本で観られるようになりました。邦題は『ル・コルビュジエの家』です。
9/15から新宿K’s Cinema
地図: ::: ケイズ シネマ:インフォメーション :::
10/6からシネマート六本木
地図: Cinem@rt- シネマート六本木 | 劇場情報 | 映画館
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Comments
メモ
・¿Con quién tengo el gusto?
・medianera: 《ラ米》(ラプラタ) →medianería
・medianería: 1. (建物・地所などの)境界壁[塀]; 柵,垣根.
・bombacha: 2. f. Arg. y Ur. braga (ǁ prenda interior).
・Casa Curutchet - Wikipedia, la enciclopedia libre
・nota: 17. f. Arg. y Ur. Artículo periodístico
・CANCHERO: El que cancherea.
→・・CANCHEREAR: Actitud de conocer y dominar toda situación. De aparecer como experimentado hombre de mundo.
・coimear: 1. tr. Am. Mer. y Nic. Recibir o dar coima (ǁ soborno).
・イノシシ肉のマリネを作ったというビクトルのセリフ: No sabés como chillaba el bicho. ¡Un infierno! Casero, casero... como la reputísima madre ¿eh? Puse diez cabezas de ajo picadito...
・mucamo, ma: 1. m. y f. Arg., Bol., Chile, Cuba, Par. y Ur. criado (ǁ persona empleada en el servicio doméstico).
・garca: Tramposo, estafador
・GARCA: Cagador, defraudador, estafador.
・vozarrón: 1. m. Voz muy fuerte y gruesa
・troglodita:
1. adj. Que habita en cavernas. U. t. c. s.
2. adj. Dicho de una persona: Bárbara y cruel. U. t. c. s.
・salame: 2. m. despect. coloq. Arg. y Ur. Persona tonta, de escaso entendimiento.
・La concha de la lora@Wikipedia
・negocio: 6. m. Local en que se negocia o comercia.
・「月曜日には必ずやるよ。約束するよ」という時のビクトルのセリフ: Te juro por mi reputísima madre muerta que ...
→・reoutísima については以前『El mismo amor, la misma lluvia [アルゼンチン映画]: Cabina』のコメント欄に少し書いたと思います。
・capo: 3. m. coloq. Arg., Bol., Par. y Ur. Persona con poder y prestigio o muy entendida en una determinada materia. Es un capo en física cuántica.
・borrón y cuenta nueva: 1. expr. coloq. U. para expresar la decisión de olvidar deudas, errores, enfados, etc., y continuar como si nunca hubiesen existido.
・esmerilar: 1. tr. Pulir algo o deslustrar el vidrio con esmeril o con otra sustancia.
・chusma: 5. f. despect. Arg. Persona chismosa y entrometida.
・ビクトルが自分のカノジョを紹介する時に「el mejor pete de zona norte」とレオナルドの耳元で囁く。
→・pete: Practicar sexo oral.
→・pete: fellatio, mamada.
こんなわけで、ビクトルの言葉遣いがとにかく野卑であけすけで勉強になります。しかし、それは辞書的ではないということも意味するので、つまり聞き取りは簡単ではないかもしれません。あと、lunfardoがけっこうあったので、慣れていない人にはちょっとチャレンジングかもしれません。
・Lunfardoの意味 - 英和辞典 Weblio辞書
Posted by: Reine | Tuesday, March 01, 2011 20:50
・El hombre de al lado (2009) - IMDb
・Aleph Cine - El hombre de al lado
監督: Mariano Cohn Gastón Duprat
脚本: Andrés Duprat
出演:
Rafael Spregelburd ... レオナルド
Eugenia Alonso ... アナ
Inés Budassi ... ロラ
Lorenza Acuña ... 家政婦のエルバ
Daniel Aráoz ... ビクトル
Eugenio Scopel ... カルロスおじさん
・2010 Sundance Film Festival : The Man Next Door
・Premios Goya 2011: candidatos / 第25回ゴヤ賞ノミネート : Cabina
Posted by: Reine | Tuesday, March 01, 2011 22:16
これから私は勝手な想像をいろいろ書きますが、鑑賞前に目に入ってしまうのはよくないことも書くかもしれません。
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そしたら書き始めます
まあ、あれだ、女房が悪いんだよ。女房が諸悪の根源。
もちろん規則違反行為に及んだビクトルが事の発端ではあったのだが、レオナルドの嫁がもう少し気立てもしくは頭のよい女であったなら、ここまで事態はこじれなかったろう。
あの嫁はダメだ。
レオナルドだって、それにはどこかで気づいてると思うよ。うっすらと気づいているけどはっきりと気づくわけにはいかないんだろう。
レオナルドは女房に頭が上がらない。
女房がもう好きではないんじゃないの?
それでも一緒にいなければいけない。言いなりでいなければならない。ご機嫌を損ねないように神経をすり減らし続けなければ。
レオナルドはそんな自分のことも恥じるような蔑むような気持ちでいる。
その自己嫌悪から発展した怒りがビクトルのおじさんであるカルロスのような弱者に向かう。レオナルドは見下すことのできる相手が欲しかった。家に招いた友人のことも見下していたくらいだしね。
女房に対する苛立ちを転嫁する対象が欲しかった。本来なら、対立構図からいってその《敵》はビクトルであるはずなのに、ビクトルには手も足も出ないものだからカルロスおじさんという弱者にむかう。
それを自覚した時にレオナルドは自分を恥じてうなだれる。
でも、レオナルドの真の《敵》は女房。あるいはそんな女房と愛のない生活を続けている欺瞞に満ちた自身でしょう。
なぜ女房に頭が上がらないか。
女房の実家に頭が上がらないからでしょう。
序盤で女房の両親が遊びに来ている。舅はビデオカメラで遊んでいる。舅が婿のレオナルドを尊重していない様子がうかがえる。このシーンの舅の態度から、「ああ、この家を買うお金は嫁の家が出したな」と思ったら、終盤でやはりそのようなセリフがあった。(あのセリフはその場を繕うための方便ではなくて、ほんとうの事情を述べたのだと思う)
レオナルドは女房をもう好きではないだろう。浮気は過去にもしたでしょう。女生徒を口説くのは今回が初めてではない。
そしてどういうわけか、娘はそれを“知って”いる。と思う。だから娘はあそこまで父親を蔑み、避けるのじゃないかな
レオナルドは娘に言い聞かせる:
「ほんとうに自分が対峙しなきゃいけない問題から逃げるための方便として親を、っていうかパパを憎んでみてるだけなんじゃないかって、一度立ち止まって自分自身に聞いてみなさいよ。
パパに判定を下すのとおんなじ物差しでまず自分のことも裁いてみて、それでもやっぱりパパが悪い、パパが嫌い、パパはこんな目に遭って当然って思うんだったら、わかった、パパはそれも尊重しよう。」
本当に対峙するべき者と向かい合えというのは、レオナルドにそっくりそのまま返ってくるセリフでしょう。
でも、この家族、実のところみんなそこが問題なんだよね。みんな自分でしゃべりなよ。
舅は「ローラを呼んできてくれよ、録画したいんだから」って婿のレオナルドに頼む、というか“命じる”。自分で呼んでくりゃいいじゃん、孫娘だろうが。
嫁はレオナルドの尻を叩いてビクトルとの交渉に当たらせる。勿論、家長がそれをやった方がいい、あるいは男だからレオナルドがやった方がいい、あるいは交渉は一本化した方がいいっていう考え方もあるのかもしれないけど、だったら決まったことについて外野は後からガタガタ言うなよ、と。
動かない奴が後から口だけ出すのは我慢ならない。だったらおまえが話つける役を買って出ておけ。
でもレオナルドだってもっと堂々と嫁と話し合えばいいじゃない。ビクトルの威勢にびくついて、こそこそとその場限りの対応を繰り返すから“どつぼにはまる”のだ。
そしてそのレオナルド。
ビクトルがインターホンで話しかけてきた時に家政婦のエルバさんにイヤな役回りを押しつけている。こう言え、ああ伝えろと命じている。もう、お前が言えよ!
ビクトルにはその辺を見透かされ、結局恥ずかしい思いをするのはレオナルド自身だ。
隣人のビクトルはこの空間においては野蛮人とみなされている。他人とサシで話すことを常に望むなんて、なんとまあ不可解で下品な男か、と。
Posted by: Reine | Wednesday, March 02, 2011 23:28
あ、そうだ、これも書いておこう。
笑えるシーンの一つなので、楽しみにとっておきたい人はご注意を。(と言っても、日本でこの作品が観られる日が来る―――せめて映画祭などでも―――のかは心配なのだけど)
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ビクトルがレオナルドに電話を掛けてきて「あんたデザインとかやってるんだったよなあ?ちょっと降りてきてくれるか」と。
それで結局押しつけられてしまう“アート”が……わたし、ビクトルが持ってきた瞬間にわかっちゃったぞ、「ああ、アレだな」って。
“アート”の詳細はこちらのブログで: santiago rey: Objetos y escenografìa para la pelìcula “el hombre de al lado” de mariano cohn y gastòn duprat.
Posted by: Reine | Saturday, March 05, 2011 00:12