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Tuesday, February 22, 2011

Esperando la carroza [アルゼンチン映画]

Esperando la carrozaおはなし
スサナは32歳。夫ホルヘは稼ぎがいいわけでもなく、家の事といえば横の物を縦にもしない男。女の子が生まれ家事が増えたことでヒステリックになっているスサナだが、彼女にとって目下最大の悩みの種は姑ママ・コラだ。いろいろと家事に手を出しては余計な仕事を増やしてくれるだけの姑との同居にスサナは限界を感じている。

ホルヘは弟のセルヒオ、アントニオ、そして妹のエミリアという4人兄妹の長兄。ママ・コラは38歳で夫に先立たれてから4人の子をひとりで育てた女丈夫だったわけである。

実はスサナは義弟セルヒオの嫁エルビラやアントニオの嫁ノラよりも年が若いのだが、長男の嫁であるという理由で今日まで姑の世話を任されてきた。溜まりに溜まったその不満が爆発する時が来た。もともと仲がよくなかったこともあり、スサナは数ブロック離れたセルヒオ=エルビラ夫婦の家に怒鳴り込むのだが、折悪しく今日はこの家にアントニオ=ノラ夫婦がやってくることになっていた。

老いて軽度の認知症を発症していると思われる母親の世話をめぐって3兄弟とそれぞれの嫁の思惑がぶつかり合う。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


わたしはしょっちゅうIMDbを覗いて観るべき映画を探すが、スペイン語映画のコメディではいつも上位にあるこの作品には数年前からそそられていた。製作国をアルゼンチンに絞ったら一位に輝いているわけだから尚のこと。観たくてしかたなかった。

それでたしか一昨年の夏やっと観た。観たというか、その時はまとまった時間がとれなかったので別の作業の時にDVDを回しておいただけだったのだけど。

そして今回あらためてきちんと観る態勢で観ましたが……これはおそらく私がこれまで観てきた約230作品の中でも、

one一分あたりの音節数がたぶん最も多い。

twoセリフの無いカットの占める割合がたぶん最も低い 
(セリフの多さ・慌ただしさはたとえば『Plácido』もそうだけど、『Esperando ~』に比べたら『Plácido』なんておとなしい、おとなしい)

threeヒアリング難度はたぶん最も高い 
(発音の特徴とか話す速度のせいでヒアリングがキッツいなあと思ったのはたとえば『Martín (Hache)』のフェデリコ・ルッピや『25 Watts』が思い出されるが、『Esperando ~』は比じゃないと思う。チナ・ソリーリャを筆頭に、みんな難度高い。

もしも『Esperando la carroza』の単語の一つ一つまで聞き取れたら、つまりこの作品の書き起こしができるのなら、その人はヒアリング分野についてはDELEの何級だろうが何っっっにも恐れなくていいと思う。私はこれは字幕無しだったら青ざめるレベル。厳しい)


ぜんぶ“たぶん”だけど、そういう作品だと思う。ひらたく言うと、「最もやかましい」作品。現に、私がこれを再生していたら母がすっ飛んできて「なんか、うるさいんだけど! 御近所迷惑!」と言った。


今回はちゃんとヘッドホンをつけて観ました。
面白いと思う。社会の階層差、人心の乱れ、富裕層の偽善、警察の腐敗、ちょっと前の暗黒時代への非難、人種偏見、高齢者問題、男尊女卑的社会構造への批判などなどなどをこちらに叩きつけてくるように描いている、どぎついブラックユーモアの連打。

ひととしてどうかと思うようなことをケタケタ笑いながら話す人っているじゃん? 怖いじゃん、そういうアンチソーシャルな人。そういう人が目の前でしゃべっているのを内心冷や冷やしながらこわばった笑顔で聞いている時のような気分がする作品。


Esperando la carroza (1985) - IMDb
直訳: 霊柩車を待ちながら

監督: Alejandro Doria アレハンドロ・ドリア
脚本(IMDbのいうところの‘Writer’って何だっけ?): Alejandro Doria
劇作・脚本: Jacobo Langsner

出演:
Antonio Gasalla ... Mamá Cora ママ・コラ(姑; 演じているのは当時44歳のおっさん)

Julio De Grazia ... Jorge ホルヘ: 長男
Mónica Villa ... Susana スサナ: 長男の嫁

Juan Manuel Tenuta ... Sergio セルヒオ: 次男かなあ
China Zorrilla ... Elvira エルビラ: その嫁; 毒舌家
Andrea Tenuta ... Matilde マティルデ: 娘; 16歳; 非処女

Luis Brandoni ... Antonio アントニオ: 三男だろうか? 一番羽振りがよい; 警察とも癒着している様子あり
Betiana Blum ... Nora ノラ: その気障ったらしい成金臭ぷんぷんの嫁; セルヒオにちょっかいを出すのでエルビラは面白くない

Lidia Catalano ... Emilia エミリア: 3兄弟の妹; 未亡人
Darío Grandinetti ダリオ・グランディネッティ ... Cacho カチョ: その息子; 箸にも棒にもかからない、うどの大木; 『トーク・トゥ・ハー』『今夜、列車は走る』のグランディネッティですよ

Enrique Pinti ... Felipe フェリペ: ホルヘたち兄妹の従弟

Cecilia Rossetto ... Dominga ドミンガ: セルヒオの家のお向かいの人妻; 息子はまだ幼い; たぶん夫の目を盗んで日曜の真っ昼間に浮気に出かけるところ
Matías Puelles ... Hijo Dominga: その幼い息子

Clotilde Borella ... Doña Elisa ドーニャ・エリサ: セルヒオ=エルビラ夫婦の家の隣家の夫人
Pina Criscuolo ... Doña Gertrudis ヘルトゥルディス先生: マティルデのフランス語の先生
Mónica Alessandría ... Pocha ポチャ: マティルデの女友達じゃなかったかな

Juan Acosta ... Peralta ペラルタ: 警察の人

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Sunday, February 20, 2011

O Cheiro do Ralo / 下水って、匂う。 / 尻に憑かれた男 [ブラジル映画]

O cheiro do Ralo 2008年のブラジル映画祭で上映、2009年のブラジル映画祭で再上映された作品。

映画祭公式サイトによるストーリー紹介
「いやなにおいがしないか?下水のにおいだ」ロウレンソの営む骨董店では下水のにおいが充満中。金に困り骨董を売りにくる客を冷たくあしらうロウレンソの人生は、ある女性の尻に魅了されてから狂いはじめる。

監督はその突飛な発想で“下水のにおい”に「誰もが隠してきた場所、人間の陰の部分」を描き出す。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


Cheiro do raloリオ在住のウルグアイ人の友人が公開当時からわりと勧めてくれた作品。ブラジル映画祭に行くことができず、モタモタしていたらありがたいことにDVDをプレゼントしてくれた。やっと時間ができたので今週観てみました。

彼は『Estômago / イブクロ ある美食物語 』も勧めてくれた。彼も私もこの2作品は面白かったと思っていますが、2作品とも会う人会う人みんなに薦められる作品だとは思ってないです。

そういった趣の作品です。一応そのようにことわっておこうと思います。私のこのニュアンスを酌み取って、観るか観ないか、好きそうか嫌いそうかなどの判断材料の一つとされるのであれば幸いです。


あと数日で日本でも発売になるようです。

アマゾンより
傲岸不遜な男が“完璧な尻”との出会いをきっかけに変わっていく姿を描いたコメディ。骨董屋を営むロウレンソは客の品を二束三文で買い叩き、屈辱を味わわせることに楽しみを見出していた。そんな折、彼は偶然出会ったウェイトレスの尻に魅了され…。

アマゾンより
倒錯のエロティシズム“尻フェチ”男の頓狂な顛末を描いた異色作。骨董屋を営むロウレンソは、金に困って店に来る客の品を二束三文に買い叩き、屈辱を味わわせることに無上の楽しみを見出していた。だがある日、ランチをとる店のウェイトレスの美しく豊かな完璧な尻に魅了されてから、彼の人生は数奇な道を辿り始める…。


んーーー、どうだったかな……。上記の三つのストーリー紹介文、私がDVDから受け取った印象とはどこかちょっと違っているように感じる。特に三つ目。ミスリードっぽいなと思わないでもない。

dangerでも、ポル語音声+英語字幕で観て、しかも二三日かけて途切れ途切れに観たものだから私の頭の中が整理されてないだけかもしれない。あるいは私の「フェティシズム」に対するビジョンが、この作品を“尻フェチ”男の物語だとするビジョンとはちょっと違っていて、違和感はそこから生じているのかもしれない。

(コメント欄に語句メモなど)

こうやっていろんな人々が物を売りに来ます。
Cheiro
Cheiro

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Saturday, February 19, 2011

Deprisa, deprisa / 急げ、急げ [スペイン映画]

Deprisa Deprisa 白昼堂々自動車泥棒や強盗を繰り返す4人組。パブロ、メカ、セバス、紅一点のアンヘラ。衣食住はもちろん、遊興にドラッグにと彼らは盗んだ金を使う。

車を盗む時、金を奪って逃げる時、いつだって「Deprisa, deprisa 急げ、急げ」と叫んでいる。

1975年のフランコ死去、1978年の新憲法制定を経て民主主義体制への移行を図り、スペイン社会は変容しつつあった。首都マドリードのアウトサイダーの姿をドキュメンタリータッチで描いたカルロス・サウラ監督作品。1981年の第31回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


予備知識ゼロで見始めたが、パブロやメカがしゃべり始めて1~2分で「これは素人を起用したのね」とわかる。かなりの棒読みなので。(それでもバーテンダーや「火事ダー、逃ゲロー」よりはよっっっっっぽどマシだがね) 


台詞回しがたどたどしいので最初は面食らう。パブロだかセバスだかがセリフを“噛む”ところさえあったかと思う。そこでIMDbの『Deprisa, deprisa』のinfoを見る:

Berta Socuéllamos ベルタ・ソクエジャモス ... Ángela アンヘラ
Jose Antonio Valdelomar González ホセ・アントニオ・バルデロマール・ゴンサレス ... Pablo パブロ
Jesús Arias ヘスス・アリアス ... Meca メカ
José María Hervás Roldán ホセ・マリア・エルバス・ロルダン ... Sebas セバス


強盗団を演じた彼らはこの作品以外には出演が記録されていない(※メカ役のヘスス・アリアスはもう一作品には出ている)。そして……、パブロ役のホセ・アントニオ・バルデロマール・ゴンサレスやヘスス・アリアスが30歳とちょっとで死亡していることに気づけば、そう、もう、これは本物の不良青年をスカウトして不良青年を演じさせたのではないか、そして不良青年は映画出演後も不良の道を生きていき、不良として早死にしていったのではないかと考えるわけである。ひょっとして『ピショット(VHS)』のFernando Ramos da Silvaのような最期を迎えたのではないかと。


それでIMDbのトリビアやDeprisa, deprisaのwikipediaを見ると、当たらずといえども遠からずといったところ。

imdbJose Antonio Valdelomar González (Pablo) was recruited by Saura in a casting for non-professional actors. He was paid US$3,000. In 1992 he was found dead of heroin overdose at Carabanchel prison (Madrid), where he was arrested for robbing a bank.

imdbDespite false rumors that she died of an overdose, Berta Socuéllamos (Ángela) gave up everything for her privacy and she lives in peace with her family. She married 'Jose María Hervás' (el Sebas) and they still live in the same place

wiki 撮影終了してから公開までの間にヘスス・アリアスは逮捕され、カラバンチェル刑務所やその他の矯正施設に収容されることとなる。1992年に31歳で死亡するが、遺体の引き取り手は無く、2007年に荼毘に付された。


wikipediaからの受け売りになりますが、新聞ABCはカルロス・サウラのこのキャスティングなどを含めて作品をずいぶん批判したようです。bookOtro de los actores de una película de Saura detenido por un atraco サウラ作品の出演者、また一人強盗罪で逮捕」などの記事が例として挙げられています。

他紙にもいろいろ記事があります。
book 主演のバルデロマール、撮影中にヘロインを摂取
book 『急げ、急げ』の主役、銀行強盗で逮捕
book バルデロマール、出演作品鑑賞は刑務所内で
book バルデロマール、ヘロイン過剰摂取によりカラバンチェルで死亡 ………etc.


パブロがおばあちゃんを訪ねていく。「数日前におまえのことを聞きに刑事が来たよ」と言われて、ニヤッと笑って「それは少年院の時のことを聞きに来たのさあ」とはぐらかすシーン。あのバルデロマールのナチュラルな振る舞いの凄味と来たら。

セリフが棒読みであるのは目を瞑るとして、この作品の放つリアリティは当時の観客には衝撃だったのじゃないかなと想像します。パブロたちの銀行襲撃のニュースをMatías Pratsが報ずるシーンなんて、特に生々しく感じただろうと。


私はカルロス・サウラの音楽ものというか舞踊ものはほとんど興味が無い。残念ながら。彼の作品を数多く観たわけじゃないからなんとも言えないが、『Deprisa, deprisa』のような作品の方がずっとずっと好きだ。

でも『Deprisa, deprisa』の曲の挟み方が好きになれない。サウラの曲の使い方には前にも文句をつけたことがあったと思う。あれは、そうだ、『TAXI / タクシー』だ。「ダッサいタイミングでかかるので気恥ずかしくなる」とまで言った。ダメなんだよね。

カルロス・サウラ、本当に凄いと思う。彼の作品を観ていると鳥肌が立つ。でもどんなに彼を尊敬して彼の映画を称賛していても、曲の趣味は合わない。そういう合う・合わないは仕方のないこと。


(つづきはコメント欄で)

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Achero Mañas

スペイン映画『El Bola』についてアリ・ババ39さんから情報をいただいた中に、アチェロ・マニャス監督についての詳細も含まれていたのですが、『El Bola』のコメント欄からは独立させます。

Achero Mañas 公式


diamond アチェーロ・マニャスはマドリード郊外のカラバンチェル生れ・カラバンチェル育ち

A: カラバンチェルといえば、もうエルビラ・リンドのベスト・セラー小説、マノリート・シリーズ“Manolito Gafotas”(「めがねのマノリート」)に一直線に繋がります。

B: 本名はマノリート・ガルシア・モレノなんだが、一番の親友オレホーネス・ロペスだって知らない。この界隈では渾名で呼ばれるのは、子供の世界でも「大物」なんですね。

A: 彼らも“El Bola”と同じように互いにニックネームで呼びあっています。実はオレホーネスだって「el Orejones」と渾名、マノリートの弟は「el imbecil」(清水憲男訳「おばかっちょ」)、ガキ大将“El chulito de Yihad”(同訳「ワルのジハード)という具合です。

B: またぞろ定冠詞に逆戻りしてしまいましたが、マノリートの女友達スサナは‘la Susana’、マンションの隣人ルイサも‘la Luisa’と定冠詞付きで出てきたりします。

A: こちらはニックネームではありませんが、親しみと俗っぽさをない交ぜにして使用しているようです。外国人である私たちは、そういう使い方もあるということを知ってるだけでいい。

B: この例はいたずらに使ってはいけないということですね。


diamond マニャスは1966年、父Alfredo Manas、母Paloma Lorena の間に生れた。

shadow 父親アルフレド・マニャスは“Historia de los Tarantos”(タラント家の物語)の作者。

book “Historia de los Tarantos”: ベテラン監督フランシスコ・ロビラ・ベレタが“Los Tarantos”(1963)として映画化した。アカデミー外国語映画賞にノミネートされたこともあって、邦題『バルセロナ物語』として翌年公開された。1984年の「スペイン映画の史的展望《1951~1977》」映画祭にも上映された。

シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』のフラメンコ版。邦題はバルセロナを舞台にしていたことから採られた。タラント家の‘ロミオ’の母親にカルメン・アマヤが扮して話題になった(=ヒターノの天才的バイラオーラ、もうフラメンコにかかわる人で畏敬の念を払わない人がいないという第一人者)。

度々来日したアントニオ・ガデスも‘ロミオ’の友人役で出演していた。japanesetea


A: shadow 母親は女優のパロマ・ロレナ、テレビの仕事が多いが、息子の第2作目“Noviemble”(2003)と第4作目となる最新作“Todo lo que tu quieras”(2010)に出演しています。

B: 映画の道に進むべく運命づけられていたような家庭環境です。

A: 「めがねのマノリート」に登場するようなカラバンチェルの悪ガキと並行して、文化的香りのあるシネアストの家庭という二つの雰囲気のなかで大きくなった。

B: 沢山の映画を両親と一緒に楽しんだと言ってます。

A: 12歳のときスケート靴とチョコレートを無断で頂いたとも、大人になったカラバンチェルっ子は白状しています。


diamond ニューヨークのアクターズ・スタジオの俳優コースに入る

B: 最初は俳優として出発した。両親が知り合いの製作者から頼まれ、わずか5歳でデビュー。

A: デビューには違いありませんけど。ニューヨークの「アクターズ・スタジオ」の俳優コースで演技を学んでいます。

B: ハリウッドの名優どころがここの卒業生、いわゆる「スタニスラフスキーの演技理論」をメソッドにしている俳優養成所ですね。

A: 日本で公開された映画には、リドリー・スコットの『1492コロンブス』(1992)にキャビンボーイとして出ています。まだ《その他大勢》の一人ですね。

B: movie米仏西合作の歴史大作、アメリカ大陸到達500年を記念して製作された。

A: コロンブスにジェラール・ドパルデュー、その妻にアンヘラ・モリーナ、イサベル女王にシガニー・ウィーバーと仲良く3カ国の有名どころが顔を揃えました。他にスペインではフェルナンド・レイ、フアン・ディエゴ・ボトーなど。コロンブスの内面が描いてあって唯の冒険映画に終わっていない。しかし膨大な製作費は回収できなかったのではないか。

B: 『炎のランナー』『ブレードランナー』の音楽監督、ギリシャの作曲家でシンセサイザー奏者のヴァンゲリスは素晴らしかった。こちらはサントラがミリオンセラー、回収できた(笑)。japanesetea

A: 他に公開になったものでは、カルロス・サウラの“Dispara!”(1993、西伊合作『愛よりも非情』)にも出演。フアン・セバスティアン・ボジャイン監督の“Belmonte”(1995、西ポルトガル仏合作)では20世紀前半に活躍した闘牛士フアン・ベルモンテを演じた。

B: ベルモンテは知性とユーモアのセンスに富み、なおかつ現代闘牛術の改革者、創始者、芸術にまで高めたマタドールと言われています。

A: それで、作家のバリェ=インクランやペレス・デ・アヤーラなどのファンが多いのです。この映画では、サンティアゴ・アルバレスがバリェ=インクランを演じています。マノレーテのように《砂場》で命を落とすことがなかったのに、皮肉にも70歳のときピストル自殺をした悲劇の人でもあり、この映画には、勇気、情熱、宗教的救い、宿命論などのテーマが込められています。

B: 晩年のベルモンテを演じたのはラウタロ・ムルア。

A: 監督はイシアル・ボジャインの叔父さん。イシアル・ボジャインはスペイン映画アカデミー副会長、“Tambien la lluvia”が今年のゴヤ賞に13個もノミネートされている。コンペ外(パノラマ部門)ですが、第61回ベルリン国際映画祭にも出品されています。japanesetea

B: マニャスは「ベルモンテ」撮影ちゅうに右膝の靭帯を切るという大怪我をしたそうですが。

A: 『El Bola』で主人公のパブロ少年が警官に追われて転び膝を痛める。さらに最後のほうのシーンで、大人たちへの不信から逃れようと走って転倒、また右膝を打って今度は歩けなくなってしまう。右膝だったので自身とパブロが重なってるなぁと思いました。小説にしろ映画にしろ、どれも一種の《自伝》なんですよ。

B: アルフレドのお父さんに抱きかかえられるところでウルウル。本当はお父さんにしてもらいたかったんだ。


A: マニャスは監督業と俳優と脚本と製作、二足も三足も草鞋を履いています。俳優としてはアドルフォ・アリスタライン監督の“La ley de la frontera”(1995)が最後の長編出演作品ですね。

アイタナ・サンチェス=ヒホン扮するジャーナリストが、かつて「エル・アルヘンティーノ」と呼ばれた山賊の探索記を書くために、スペイン・ポルトガル国境にその行方を探しに出掛ける話。途中で二人の男に遭遇、その一人がマニャス、もう一人の老人がフェデリコ・ルッピ。japanesetea

B: その後、役者としては短編やテレビ出演が多く、映画の資金作りに俳優業をしてるのかしらん。

A: 映画祭で賞を取ることは、映画を作りつづけるうえで最善、第1作でゴヤ賞4つを含めてトータル25の賞を貰えた。それで第2作“Noviembre”が撮れたと語っています。

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Thursday, February 17, 2011

Luis Buñuel

先日ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの作品一覧を作ってみたら我ながら使い勝手がよくできたので、他の映画人についても見てみる。

Luis Bunuelルイス・ブニュエル

このウィジェット↓に作品をランダム表示します:


以下、一覧。制作年降順。penのついた作品はもうこのブログで取り上げています。

1977
Cet obscur objet du désir / 欲望のあいまいな対象
1974
Le fantôme de la liberté / 自由の幻想

1972
Le charme discret de la bourgeoisie / ブルジョワジーの秘かな愉しみ
1970
Tristana / 哀しみのトリスターナ

1969
La voie lactée / 銀河
Simón del desierto / 砂漠のシモン
(short)

1967
Belle de jour / 昼顔

1964
Le journal d'une femme de chambre / 小間使の日記

1962
El ángel exterminador / 皆殺しの天使

1961
Viridiana / ビリディアナ

1960
The Young One / 若い娘

1959
La fièvre monte à El Pao / 熱狂はエル・パオに達す
1959
Nazarín / ナサリン

1956
La mort en ce jardin / この庭に死す
Cela s'appelle l'aurore / それを暁と呼ぶ

1955
El río y la muerte / 河と死
Ensayo de un crimen / アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生

1954
Robinson Crusoe / ロビンソン漂流記
Abismos de pasión / 嵐が丘
La ilusión viaja en tranvía / 幻影は市電に乗って旅をする

1953
El / エル
El bruto / 乱暴者

1952
Una mujer sin amor / 愛なき女
Subida al cielo / 昇天峠

1951
La hija del engaño / 賭博師の娘
Susana / スサーナ

1950
Los olvidados / 忘れられた人々

1949
El gran calavera / のんき大将

1947
Gran Casino (Tampico) / グラン・カジノ

1937
¡Centinela, alerta!
(co-director)

1936
¿Quién me quiere a mí?
(co-director)

1933
Las Hurdes / 糧なき土地
(documentary short)

1930
L'âge d'or / 黄金時代

1929
Un chien andalou / アンダルシアの犬

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Monday, February 14, 2011

El arte de morir / 惨劇の週末 [スペイン映画]

El arte de morirdanger わりとサラっと観たので注意点がいくつかありますdanger

このブログではこれまでにスペイン語圏・ポルトガル語圏の映画をたぶん220~230作品取り上げてきたのだけど、私はめったに×(ペケ)をつけない。たいていの作品は好きか大好きになるので。「よくない」といった作品はたぶん5%も無いんじゃないかな

だけど今日のこれはダメだ。くだらない。というかつまらないといった方がいいのかな。とにかくつまらない。20分を過ぎた辺りから退屈すぎて苦痛。DVDの残量時間表示がうらめしかった。

これ、公開時、つまり11年前に観ていたなら斬新なストーリー展開とでも感じられたんだろうか? ニュータイプのスリラーあるいはサスペンスって、少しはわくわくできたんだろうか? いやあ、いつ観たって私はこんな感想だったと思うわ。


観る意味があるのかはなはだ疑問。というか作る意味があったのかが疑問。作る意味があったと思うかと、作った人たち・作るのにお金を出した人たちに聞いて回りたいくらい。何がしたかったのか。死生観がどうだこうだとか哲学的な話する? Ars moriendiって? ¡Uy, no por favor! それ、ほんと? ほんとに後付けじゃない?

“I Know What You Did Last Summer(『ラストサマー』)”みたいなパターンだが、ひたひたと迫り来る恐怖があるでもない、殺され方が残忍であったりド派手であったり独創的であったりするのを楽しめるでもない、『ファイナル・デスティネーション』シリーズのような「あるある……かもしれない」殺され方・死に方を味わうでもない、真犯人はひょっとしてこの人かしらという謎解きを楽しむでもない。主人公たちの怯え方は中途半端だわ、どいつもこいつもキーキーうるせえわ、うるせえわりに怒り方も中途半端だわ。

それから女がぶさいくだ。つまらない作品ならせめて女をもっとエエ感じに映してくれよ。マリア・エステベ、もうちょっと撮りようがあっただろう。杉兵助師匠じゃないか。


馬鹿野郎どもは何年経っても馬鹿野郎でしたっていう映画。で、ほんとに「言うのが遅い」。


『惨劇の週末』って………これを観てしまった私の週末が惨劇だろう。この監督の1992年のショートの『El Columpio』は面白かったんだぞ。どうしちゃったんだ、いったい。


さて、ここまでケチつけたわりにはずいぶん失敬な話なのだが、うむ、これは謝るべきだと思うのだが、白状すると最初の方、私は『殺しのセレナーデ [DVD]』を観ているつもりでいたんだ。シルケがなかなか出て来ないなあとか思ってた。これは私が悪かったと思う。

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Premios Goya 2011: palmareses / 第25回ゴヤ賞発表

2011年ゴヤ賞(=スペインのアカデミー賞といわれている映画賞)の発表。crownが受賞作・受賞者。 

ノミネートについては1月に書きました。ジャケット写真はあちらに載せてあります)

(公式サイトは「たぶん」)
(公式サイトはかなりの確率で音が出るので注意)
(数字はわたし用メモなので気にしないでください)
(来年おなじことができるかどうかは私にもわからない)


見ながら記事を整えていくので


crown 栄誉賞(Goya de Honor) Mario Camus


clip 作品賞(Mejor película)
Balada triste de trompeta@IMDb2011年10月9日 観ました

crown Pa negre@IMDb2011年5月4日 観ました

También la lluvia@IMDb
También la lluvia 公式

Buried@IMDb
Buried 公式
リミット 公式
[リミット] コレクターズ・エディション [DVD]


clip 監督賞(Mejor dirección)
・Rodrigo Cortés 『Buried』
crown ・Agustí Villaronga 『Pa Negre』
・Iciar Bollaín 『También la lluvia』
・Álex de la Iglesia 『Balada triste de trompeta』


clip 新人監督賞(Mejor dirección novel)
・Juana Macías 『Planes para mañana』 
Planes para mañana@IMDb
Planes para mañana 公式

・Jonás Trueba 『Todas las canciones hablan de mí』 
Todas las canciones hablan de mí@IMDb
Todas las canciones hablan de mí 公式

crown ・ David Pinillos 『Bon appétit』
Bon appétit@IMDb
Bon appétit 公式
・『恋するリストランテ』(邦題)


clip 主演女優賞(Mejor actriz)
crown ・Nora Navas 『Pa Negre』

・Emma Suárez 『La mosquitera』
La mosquitera@IMDb
La mosquitera (制作会社のサイト)

・Belén Rueda 『Los ojos de Julia』 ⇒ 2011年5月21日 観ました

・Elena Anaya 『Habitación en Roma』
Habitación en Roma@IMDb
Habitación en Roma 公式
ローマ、愛の部屋 [DVD]


clip 主演男優賞(Mejor actor)
・Antonio de la Torre 『Balada triste de trompeta』
・Ryan Reynolds 『Buried』
・Luis Tosar 『También la lluvia』

crown ・Javier Bardem 『Biutiful』
Biutiful@IMDb
Biutiful 公式
Biutiful 公式


clip 助演女優賞(Mejor actriz de reparto)
・Ana Wagener 『Biutiful』
・Terele Pávez 『Balada triste de trompeta』
crown ・Laia Marull 『Pa negre』

・Pilar López de Ayala 『Lope)』
Lope@IMDb
Lope 公式


clip 助演男優賞(Mejor actor de reparto)
crownKarra Elejalde 『También la lluvia』 

・Sergi Lopes 『Pa Negre』
・Eduard Fernández 『Biutiful』

・Alex Angulo 『El gran Vázquez』 ⇒ 2011年6月16日 観ました


clip 新人女優賞(Mejor actriz revelación)
・Aura Garrido 『Planes para mañana』
・Carolina Bang 『Balada triste de trompeta』
crown ・Marina Comas 『Pa Negre』
・Natasha Yarovenko 『Habitacion en Roma』


clip 新人男優賞(Mejor actor revelación)
・Juan Carlos Aduviri 『También la lluvia』
crown ・Francesc Colomer 『Pa Negre』
・Oriol Vila 『Todas las canciones hablan de mí』

・Manuel Camacho 『Entrelobos』
Entrelobos@IMDb
Etrelobos 公式


clip 脚本賞(Mejor guión original)
・『Balada Triste de Trompeta』
crown ・『Buried』
・『Biutiful』 
・『También la lluvia』


clip 脚色賞(Mejor guión adaptado)
・『Habitación en Roma』
crown ・『Pa Negre』

・『Tres metros sobre el cielo』
Tres metros sobre el cielo@IMDb
Tres metros sobre el cielo 公式

・『Elisa K』
Elisa K (2010) - IMDb2010年9月21日 観ました


clip ヒスパニック映画賞 Mejor película hispanoamericana
Contracorriente@IMDb
Contracorriente 公式

El hombre de al lado@IMDb2011年3月1日 観ました

El infierno@IMDb
El infierno 公式

crown La vida de los peces@IMDb
La vida de los peces 公式


clip アニメーション賞(Mejor película de animación)
crown Chico y Rita@IMDb
Chico y Rita 公式

・El tesoro del Rey Midas
El tesoro del Rey Midas 公式

La tropa de trapo en el país donde siempre brilla el sol@IMDb
La tropa de trapo en el país donde siempre brilla el sol 公式

La aventuras de Don Quijote@IMDb
・公式サイト見つけてない


clip ドキュメンタリー賞(Mejor película documental)
・『Ciudadano Negrín』

How Much Does Your Building Weigh, Mr Foster?@IMDb
How Much Does Your Building Weigh, Mr Foster? 公式

・『María y Yo』
María y yo@IMDb2011年2月10日 観ました

crown ・Bicicleta, cullera, poma / Bicicleta, cuchara, manzana2010年9月19日 観ました

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Thursday, February 10, 2011

Carlos Saura

先日ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの作品一覧を作ってみたら我ながら使い勝手がよくできたので、他の映画人についても見てみる。

Carlos Sauraカルロス・サウラ

このウィジェット↓に作品をランダム表示します:


以下、一覧。制作年降順。penのついた作品はもうこのブログで取り上げています。

2010 
Flamenco, Flamenco

2009
Io, Don Giovanni / ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い

2007
Fados pen

2005
Iberia / イベリア 魂のフラメンコ

2004
El séptimo día

2002
Salomé / サロメ

2001
Buñuel y la mesa del rey Salomón / ブニュエル ~ソロモン王の秘宝~

1999
Goya en Burdeos / ゴヤ

1998
Tango / タンゴ
Esa luz!

1997
Pajarico

1996
Taxi / タクシー pen

1995
Flamenco / フラメンコ

1993
¡Dispara! / 愛よりも非情

1992
Sevillanas / セビジャーナス
El sur
(TV movie)
Marathon / マラソン
(documentary)

1990
¡Ay, Carmela! / 歌姫カルメーラ pen

1989
La noche oscura

1988
El Dorado / エル・ドラド

1986
El amor brujo / 恋は魔術師

1984
Los zancos

1983
Carmen / カルメン

1982
Antonieta / アントニエッタ
Dulces horas

1981
Bodas de sangre / 血の婚礼
Deprisa, deprisa / 急げ、急げ pen

1979
Mamá cumple cien años / ママは百歳 pen

1978
Los ojos vendados

1977
Elisa, vida mía

1976
Cría cuervos / カラスの飼育 pen

1974
La prima Angélica / 従妹アンヘリカ

1973
Ana y los lobos

1970
El jardín de las delicias

1969
La madriguera

1968
Stress-es tres-tres

1967
Peppermint Frappé / ペパーミント・フラッペ

1966
La caza / 狩り pen

1964
Llanto por un bandido

1960
Los golfos

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María y yo [スペイン映画]

Maria y yo このあいだスペインで友人と泣きながら観たドキュメンタリー。この下書きをする間もぽろぽろ涙がこぼれてしかたなかった。しあさって発表されるゴヤ賞のドキュメンタリー賞にノミネートされています。

おはなし
漫画『MAKOKI』を世に送り出したミゲル・ガリャルド。彼の14歳になる娘マリアはいわゆる自閉症児である。マリアはミゲルの住むバルセロナからは3000km離れたカナリアに母マイと暮らしている。ミゲルは時々娘を訪ねてカナリアに行き、リゾート地で二人っきりの時間を楽しむ。

ミゲルとマイが自閉症児との生活をカメラの前で語る。

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danger たぶん7割くらい書いてしまいますdanger

↓↓↓↓

今日はけっこう書くからね

↓↓↓↓

diamond マリアが生まれた直後からミゲルはその姿を描き始めた。「よそのお父さんは写真を撮るところだろうが、私は絵を描いていた。職業病というやつだろう」。マリアの一コマ一コマを描いたそのノートブックには「○ヶ月と▲日、初めて風邪をひきました」など日常が詳細に綴られており、赤ちゃんを見つめる両親の眼差しの優しさにつられてこちらも微笑んでしまう。

どこか少し違うようだと初めに気づいたのは母親のマイだった。
「マリアは私のことが好きじゃないみたい」とマイは言った。ミゲルは「赤ちゃんが君のことを好きじゃないなんて、ありえないだろ」と返した。

「そういうことじゃないの。なにか違うと思うの」。発達障害という認識があったわけではないが、歳の離れた弟やいとこの世話をしてきたマイの目には我が子マリアは少し“違う”のだった。

ミゲルは言う。「正直言って僕はなにも気づかなかったんだ。小児科医などの診断を経て心配をしはじめたわけです。そうしてようやく僕はどうやらマイの話を真剣に聞いていなかったのだと悟りました」。


diamond 生後10ヶ月、マリアの発達には通常と明らかな差がみられた。生後11ヶ月でマリアは6ヶ月児の発達程度であった。マイは「どうしてかしら。どこで私はいけないことをしてしまったのか。どうして私の赤ちゃんが?」という罪悪感にも似た感情に囚われたと言う。1歳の誕生日は「悲しいお誕生日でしたね……」。


マリアは、あの子は、波の向こうに見える島のようだ。ふだんは辿り着けない。潮が引いた時だけそばに行ける」。


diamond 8歳で最終的な診断がなされた。そのあいだミゲルたちは自閉症児の子育てをする仲間に支えられて歩んだ。苦悩で眠れぬ夜を過ごし、答えの見つかるはずもない自問を繰り返し、自分だけが異形の者であるように感じた。どこの親もそうだろう。「でも皆さんから僕らは魂を学び取りました。前へ進もうという意欲と、無限の愛と無尽蔵の忍耐力を」。

歩き方を覚えるのも他の子と比べたらそれはそれは“ゆっくりさん”だったマリア。勿論、しゃべることも遅かった。それが今、マリアはのべつ誰かに話しかけている。

「『マリア、おねがい、ちょっと黙っててくれる?』なんて言う日が来るなんて、昔は夢にも思いませんでした」と母親のマイは喜びを隠しきれない表情で語る。「それに、他人に反応するようになりましたよね。マリアなりの返し方ではありますけどね。特定の物事に興味を示すようにもなりました。あの子はものすごく努力してここまでできるようになったんですよ。私にとってあの子はチャンピオンなんです」。

マリアは人前で照れるとか恥じらうということがない。人がいようがいまいが奇声をあげるときはあげる。人々の視線が瞬時にマリアに注がれる。好奇の目、憐憫の目、そして時に慈愛の目。マリアを見遣るときの人々の表情がミゲルを閉口させることもある。「鬱陶しく、そして悲しくなることもありますよ」。


diamond 学齢期を迎えた頃のマリアは普通学級に通わせる状態に達しているとは言い難かった。両親はマリアを障害児学校に通わせる選択をする。「あの子には専門家が必要だと思いました」とマイは振り返る。「教職員のスタッフの中にたとえば言語療法士や理学療法士、特別支援教育の先生がいてくれる学校がよかった」。


ミゲルは言う。
「現代社会の傾向として、あるじゃないですか、平等絶対主義というんでしょうか。みんな平等で、機会均等でって。マリアがふつうの子とおんなじ学校に行く意味はないですよ。だってそこには相互関係が築かれはしないんですから。それに子供というのは特に残酷なものでしょう……子供はね、障害をもったりした子からは距離を置こうとするものですよ。ほんの僅かな差異であってもね。

僕はマリアが他の子と同等の機会を与えられるようであってほしいとは思いません。そうじゃなくてより多くの機会を与えてやってくれと思っているんです。あの子にはその資格があるから。あの子には必要なことだから。マリアをふつうの子と同じように扱ってくれと言うんでもない。僕はね、あの子が大事に大事に扱われますようにって願っています。あの子の行く先々にレッドカーペットを敷くぐらいにね(笑 

僕が四六時中そばにいてやってやれることはなんだってしてやりたい。

僕はマリアが他の子と同等になれなんて願っていない。マリアをふつうの子らしく見せるように躍起になったりもしないし、マリアにそう要求するはずもない。ただただあの子があの子なりの小さな世界で幸せであってくれと望むだけです。あの子なりのペースでいいから少しずつ進んでいってくれって。僕はあの子にとって不可能な目標を掲げたりはしませんから」


母親のマイが言う。
「マリア自身は自分が他人と違うとは気づいていません。それでよかったと思います。だからあの子は幸せに暮らしているのだと思うんですよ。ええ、私はそう思っています。あの子はとても幸せな女の子。周りから愛されてね。ううん、他者から愛されているから幸せだっていうのは違いますね。好かれているのに幸せじゃないってことだってありますものね。

……あの子は一日中微笑んでいるんです。学校のお友達、新しく知り合った人たち、前からのお友達、バルセロナの家族・親戚、とにかくみんなとのふれあいをこよなく愛しているの。うん。私思うんですよ。あの子は幸せな子だって」


diamond 友達の親御さんたちとミゲルがいつも漠然と共有している感覚というものがある。あたりを漂っているおぞましく厭わしい感覚。「自分たちがあとに死ねたら……という思いです」とミゲル。

子供たちを自分の命の続く限りいつまでも守り続けたいと願う親の気持ち。自分が先にいなくなって子供が後に残されることになってしまったらという親の憂い。我が子のことを誰よりもよく理解しているのは自分なのだという親の自信。ミゲルら、親の心の中にそういった感情がないまぜになっている。

「誰かマリアの世話をしてやってほしいと切に願っています。世話といっても物質的な意味ではなくて、マリアの衣食住が足りてる足りていないの問題ではなくて、私が言いたいのは、私がもはやこの世にはいないとなった時、マリアのことを愛し続けてくれる誰かがいてほしいということなのです。あの子を愛して、理解してくれる人が。……そのことを考えています。この先、マリアにそのような人が現われますように、って」。これがマイの願いである。

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Saturday, February 05, 2011

El Bola [スペイン映画]

El Bolaおはなし
パブロは12歳。友達からは“ボーラ”というニックネームで呼ばれている。友達と遊ぶのはいつも線路際。死ぬか生きるか、ギリギリのゲームが流行っている。

パブロが遊びにいける日は限られている。父親の金物屋を手伝わなければいけないから。友達が家に誘いに来て玄関口で喋っていると途端に父の怒鳴り声が飛んでくる。「ドアを開けっ放してダラダラ喋ってるんじゃあないと何度言ったらわかるんだ!」

パブロのクラスに転校生がやってきた。アルフレドという大柄なその子は転校早々休み時間にタバコを吸っていて先生に怒られていた。アルフレドの父、ホセはタトゥーアーティストで、スキンヘッド。腕には派手なタトゥーが入っている。粗野な風貌のこの父子にパブロは初めのうちこそ気圧されたが、その温かさに惹かれ急速に親しくなる。

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あと10日で第25回ゴヤ賞が発表されます。先日そのノミネート作品を紹介しておきましたが、アリ・ババ39さんのコメントに「フアン・ホセ・バジェスタが12歳で鮮烈デビューした」とありました。そのときの作品がこの『El Bola』です。2001年2月に発表されたPremios Goya 2001: palmareses / 第15回ゴヤ賞では、作品賞、脚本賞、新人男優賞、そして、新人監督賞も獲ってしまった作品なのです。アチェーロ・マニャス監督もまたこの作品で長編の“鮮烈デビュー”をしたというわけです。

フアン・ホセ・バジェスタはあれから10年間スペイン映画界で活躍し続けてきました。この若さで。そしてこれから先もずっと牽引してくれるのだろうと思います。


児童虐待という社会問題をとらえたこの作品。私はそのテーマだけは当時から知っていた。だから8年前のスペイン旅行で買ってきても観ることができずにいた。悲しくつらいんだろうと思っていたから。6年前のスペイン旅行中にも、たまたまテレビをつけたらちょうどこの映画の放映が始まったところだったのだけど、チャンネルをかえてしまった。


このブログで映画感想文を書き始めた初期も初期、『La Espalda de Dios』という作品について書いた。その中で、地獄に落ちそうなスケコマシのロクデナシのゴクツブシを演じていたのがアルベルト・ヒメネス。顔の造りの良さで女を食い物にしてきたであろうイバンという冷血漢をいやらしく演じていた。

その次に彼を見たのは『キャロルの初恋』で、そこでもアルベルト・ヒメネスは非情な役柄だった。たった二作ではあるが、私の中でアルベルト・ヒメネスは《わるもん》として定着した。だから『海を飛ぶ夢』で病身の妻フリア(ベレン・ルエダ)を支え続ける夫を演ずる彼を見れば、「いつ妻を捨てるか」と冷や冷やするし、こないだ『Tocar el cielo』を観た時も、《いいもん》か《わるもん》のどちらかと言ったら《わるもん》としての立ち位置にある彼の姿に妙に安堵や満足感を覚えたのである。


それで。
だから『El Bola』なんてね、キャストにアルベルト・ヒメネスの名を見たらね、当然この人が虐待暴力親父なのですよ、私の中では。ずっとそう思っていた。benitaさんとコメントをやりとりする2006年9月までそう思っていたらしい。


……っていう話を、こないだのスペイン滞在中に友人に言ったんだ。「アルベルト・ヒメネスが《いいもん》だとは思わなんだ」と。友人はアルベルト・ヒメネスという名前は初めて聞くような印象だったらしい。

「アルベルト・ヒメネス知らない?」
「あんまりピンと来ない」
「オトコマエだけど悪人面の俳優。でも『El Bola』では《いいもん》なお父さんなんだって」
「ああわかった、タトゥーのお父さんか。うん、だからつまりさ、あの映画のテーマってソコなんじゃないかと思うんだよね。善良に見える人の心が実は冷酷で、凶悪な外見の人の内面は温かくて、みたいなさ」


それでようやく私も観る勇気が出たよ。いい作品です。なぜこういうのがアマゾンにimportでも無いかね。


しかし、スペイン語(のヒアリングなど)の訓練用にするには難度が高めなので要注意。

マドリードの下町のことばで、まず辞書に載っていない語彙があるということと、江戸のべらんめえ口調が「威勢のいい荒っぽい口調」であるようにこの映画の会話のスピードは速いということ、それから子供が、しかも演技は初めてかもしれないオーディション選出の子供が演じているので劇団で訓練されたような明瞭な発音ではないこと。その辺がハードルです。

(つづきはコメント欄で)

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Thursday, February 03, 2011

Pedro Almodóvar

先日ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの作品一覧を作ってみたら我ながら使い勝手がよくできたので、他の映画人についても見てみる。

Pedro Almodóvarペドロ・アルモドバル

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以下、一覧。制作年降順。penのついた作品はもうこのブログで取り上げています。

2012 Mina

2011 La piel que habito

2009 Los abrazos rotos / 抱擁のかけら pen

2009 La concejala antropófaga

2006 Volver / ボルベール <帰郷> pen

2004 La mala educación / バッド・エデュケーション pen

2002 Hable con ella / トーク・トゥ・ハー pen

1999 Todo sobre mi madre / オール・アバウト・マイ・マザー

1997 Carne trémula / ライブ・フレッシュ pen

1995 La flor de mi secreto / 私の秘密の花 pen

1993 Kika / キカ

1991 Tacones lejanos / ハイヒール

1990 Átame! / アタメ pen

1988 Mujeres al borde de un ataque de nervios / 神経衰弱ぎりぎりの女たち pen

1987 La ley del deseo / 欲望の法則

1986 Matador / マタドール<闘牛士>・炎のレクイエム

1985 Tráiler para amantes de lo prohibido

1984 ¿Qué he hecho yo para merecer esto!! / グロリアの憂鬱/セックスとドラッグと殺人

1983 Entre tinieblas / バチ当たり修道院の最期 pen

1982 Laberinto de pasiones / セクシリア

1980 Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón pen

1978 Folle... folle... fólleme Tim!

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Wednesday, February 02, 2011

Premios YoGa / 第22回ジョガ賞

Los ganadores de los 22º premios YoGa

ゴヤ賞(=スペインのアカデミー賞といわれている映画賞)ならぬ“ジョガ賞”、つまりスペイン版ラジー賞(Razzie Awards)の発表。

主催者: Colectivo Catacric(Colectivo de críticos de cine catalanes)
主催者のツイッターアカウントtwitterhttp://twitter.com/#!/catacric


movie スペイン映画部門
最悪作品賞(Peor película): 『DiDi Hollywood』(Bigas Luna ビガス・ルナ監督)

最悪監督賞(Peor director): 『Amador』のFernando León de Aranoa フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督

最悪男優賞(Peor actor): 『Tres metros sobre el cielo』のMario Casas マリオ・カサス

最悪女優賞(Peor actriz): Elsa Pataky エルサ・パターキーおよびCarolina Bang カロリナ・バング(ex aequo)

pencil ex aequo: En una competición o en un concurso, en pie de igualdad para compartir un premio o una posición.)


movie 外国映画部門
最悪作品賞: 『Come, reza, ama 食べて、祈って、恋をして』(Ryan Murphy ライアン・マーフィー監督)

最悪監督賞: 『The tourist』のFlorian Henckel von Donnersmarck フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督

最悪男優賞: 『Furia de titanes / Clash of the Titans / タイタンの戦い』『El equipo A / The A-Team / 特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『Exposados / The Bounty Hunter / バウンティー・ハンター』『Un ciudadano ejemplar / Law Abiding Citizen / 完全なる報復』の、Liam Neeson リーアム・ニーソン、Gerard Butler ジェラルド・バトラー、 Ralph Fiennes レイフ・ファインズの三人

最悪女優賞: 『Love happens / わすれた恋のはじめかた』『Ex-posados / The Bounty Hunter / バウンティー・ハンター』『Un pequeño cambio / The Switch / スイッチ 』のJennifer Aniston


(つづきは後日)(コメント欄になにか書くと思う)

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