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Sunday, August 01, 2010

Lula, o Filho do Brasil / ルラ、ブラジルの息子 [ブラジル映画]

Lula
9/16からのラテンビート映画祭
で上映される作品。

ブラジルの大統領、ルイス・イナシオ・“ルーラ”・ダ・シルヴァの生まれた時(1945年)から1980年くらいに労働組合の大規模行動を組織するまでの半生を描いた作品。

リオ在住の友人が贈って(送って)くれたので鑑賞してみました。
ある人の生い立ちをこうして『知ってるつもり』のように見せてもらえるという点では面白かったし、社会科の授業を受けるような気持ちでも楽しんだけれども、映画の一作品としては面白いのかどうか、また映画祭で上映するのに向いている作品なのかどうかなどについてはクエスチョンマークが拭えずにいます。

私がもともとbiopic(人物伝もの)を求めていない映画鑑賞者だから、そもそもピンと来ないのでしょう。伝記ものの楽しみ方を私はよくわかっていない。さらに言うと、生きている人の話だしね。存命も存命、現在進行形の人物の―――ましてや政治家の―――おはなしだからね。心を揺さぶられるという境地に達することは難しいと思う。 

そういうジャンルって一歩退いたところから冷淡に観ようと心がけてしまうでしょう。心を動かされまいとする意思が働いてしまう。「美化しようったってそうはいかないからな」なんて警戒しながら観てしまう。美化されてたら美化されてたで鼻白んじゃうわけだし。うっとりするように作られていたらそれはそれで危なっかしい。

頭は冷めちゃうんだよね、こういうジャンルは。だから、さすがの私も無表情に見終わってしまった。観る作品、観る作品、毎回「泣いちゃったあ」なんて言っている、さながら泣き女のような私だというのに。


ポスターにグロリア・ピレスが大写しだから、母が子に注ぐ愛情の深さがどうのこうのというおはなしだろうとは思うのだけど、その辺も………はて……どうだったかなあ。どうも印象が薄い。細切れにいろいろな調べ事をしながらの鑑賞だったせいだとは思うが。

もう一度きちんと鑑賞して感じられるものは感じたいと思います。


年を示すのに曲が使われているのでメモcd

ルーラがクラブで2対2でナンパした時にかかっている曲はAltemar Dutraの『Sentimental demais』。たぶんだけど『O Inesquecivel Altemar Dutra』には収められてる。1964年の曲かね。ルーラ19歳。


チークダンスするのはTim Maiaの『Você』。たぶん『Vou Pedir Pra Voce Voltar: O Melhor De』に収録されてる。


ルーラがバルにいる時にかかってる曲(軍警が合わせて口ずさんでいる曲)は『PRA FRENTE BRASIL』 (1970年W杯のブラジルの応援歌らしい)(注: このyoutubeの↓は、オリジナル音源ではないようです)

バルの表にはPMの車輌が停めてあって警棒で市民を殴りつけて拘束する姿も見られる。(店内の軍警は気分上々で歌を歌い続けている、という図)(その辺の社会事情も合わせて学習するのがこのテの作品の楽しみ方の一つかも)

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Comments

Lula, o Filho do Brasil 公式
Lula, o Filho do Brasil@IMDb

監督: Fábio Barreto ファビオ・バヘト  Marcelo Santiago マルセロ・サンチアゴ

脚本: Fernando Bonassi フェルナンド・ボナッシ  Denise Paraná デニス?・パラナー  Daniel Tendler ダニエル・テンドレル

eagora.org.brというところの記事によれば、本作品はこのパラナーという人が90年代に著した大統領唯一の公式バイオグラフィーに基づいて制作されたとか。

出演
Rui Ricardo Diaz フイ・ヒカルド・ヂアス ... Luis Inacio Lula da Silva ルイス・イナシオ・“ルラ”・ダ・シウヴァ
Glória Pires グロリア・ピレス ... Dona Lindu リンドゥ: 母親
Milhem Cortaz ミリェン・コルタス ... Aristides: 父親

Cléo Pires クレオ・ピレス ... Lurdes ルルデス: 幼馴染で初恋の相手で最初の妻
Juliana Baroni ジュリアナ・バローニ ... Marisa Leticia マリーザ・レチシア: 二人目の妻

Marcos Cesana マルコス・セザーナ ... Cláudio Feitosa クラウディオ・フェイトーザ: ルーラの前に労働組合を指揮していた男


普段だったらキャストの書き方にもネタバレの無いようにと気をつけるものなのだけど、こういう作品の場合はね……ちょっとでもwikipediaのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァの項などを見てしまえば書いてあることばかりなので、ネタバレも何も…。

Posted by: Reine | Sunday, August 01, 2010 at 21:26

この「クラウディオ・フェイトーザ」という役柄のことをちょっと検索してみた時に一番上に出てきた記事がこちら

Filme de Lula 'é uma baita mentira', diz sindicalista

「『ルラの映画は嘘っぱちだ』、労組活動家は語る」ですって?ふむふむなになに?と読んでみたら、そう批判しているのはPaulo Vidalという人で、この人がつまり映画の中では“pelego”で独裁政権ともなれ合っていた(ように描かれていた)活動家「クラウディオ・フェイトーザ」だそうだ。

・pelego: 《軽蔑》[組合内部の]労働省の手先; 追従者,子分.

まあ、それぞれの登場人物にそれぞれの言い分があるでしょう。と、凡庸なまとめかたを。

Posted by: Reine | Sunday, August 01, 2010 at 21:46

この作品を観るのに『ブラジル新時代―変革の軌跡と労働者党政権の挑戦』を注文してみた。

開いて6ページ目にもう「2.ルーラ政権の登場とメタモルフォーゼ」という節があったので嬉しかった(・∀・)


hairsalon ……略…… 同大統領の生い立ちは,ブラジルが高度成長を始めた1950年代において,貧困地帯の北東部から工場の動力が鳴り響く南東部のサンパウロへと人の波がつづいた「内国移民」の典型であった。

45年にペルナンブコ州のセルトン(sertão)地帯と呼ばれる半乾燥の内陸農村部で生まれ,7歳のころ,沖仲仕としてサントス港へ出稼ぎにきていた父親の後を追うようにして,母親や兄弟たちとともにサンパウロに移り住んだ。

どん底生活のなかで靴磨きやオフィスボーイをして生計を助け,日系人の洗濯屋で配送の仕事をしたこともあったという。15歳で旋盤工の見習いとなり工場労働者となって,しだいに組合運動のリーダーとして頭角を現し,民主化運動の中心的な存在となった。

軍政が求心力を失いはじめた78年には山猫ストを断行し,80年には逮捕・拘留される。その同じ80年に ……以下略…… hairsalon 


だいたいここまで。
これがこの映画で描かれる時期です。「洗濯屋で配送」のシーンもたしかにある。ここにさらにルーラという男性の恋・愛の部分がプラスされている、といった構成です。

日頃私はあらすじを全て書いてしまったりはしないのだけど、この作品についてはもうしょうがない。だってこういう経歴の人であって、それをこういう映画にしてあるんだもん。

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 09:56

(ひきつづき同書から)

hairsalon 共和制樹立以降,ブラジルの大統領は,文民にせよ軍人にせよ,上層階層,そうでない場合でもエリート層から選出されてきた。

2002年10月の大統領選挙によるルーラ候補の当選は,これまでとは全く異質な社会層出身の大統領,しかも工業化のなかでたどったブラジル下層階層の姿を体現する人物の最高ポストへの上昇を意味したのである。

ルーラ大統領は今回の選挙のまえに89年,94年,98年の大統領選挙にも挑戦している。過去の3階は,いずれも上層階層やエリート層に阻まれての敗退であった。2002年の選挙では,企業家層や上層階層のなかからもルーラ支持に回る動きがみられたところに時代の潮流の変化が感じられた。……略……hairsalon


この辺は映画の中でもサラサラッと触れられてはいました。

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 10:10

ルーラの子供時代の生活は我々(世代以降の)日本人にはもうあまりピンと来ないような情景でした。いや、庶民っていう言葉では拾いきれないような、零れ落ちていってしまいそうな階層が描写されていました。

何か近いものないかなあ……と頭の中を探してみたけど……うーむ……『たけしくんハイ ! 』で、たけし少年らが友達の住むあばら屋を揺すって遊んでいるうちに倒壊させちゃったシーンがあったと思うけど、ルーラの子供時代のシーンでは多くの人があのようなあばら屋に暮らしている感じでした。青ざめるようなどん底。

非識字者がまだいて、教育など必要が無い、学校なんぞに行く暇があったら日銭を稼げと叫ぶ親があり、反対に、極貧だからこそ次世代には教育を施さなきゃいけないのだ、這い上がっていくためには何としても教育をと願う親もいて……という風景。


うん、まあ、だから、ルーラが“下層階層”だというのと、菅が“庶民派”だとか言ってかっこつけてるみたいだけど「あんたは庄屋のおぼっちゃんでしょうが」といった具合でちゃんちゃらおかしいのとはわけが違います。国の違いこそあれ。⇒ サラリーマン家庭出の菅首相…甲子園の3・8倍の土地持ち 

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 10:30

語句メモ

・cair no mundo: 逃げる,去る.

・arredar pé: manter-se firme, não sair do lugar.

・arredar o pé: despegar-se de um lugar.

・corretivo: 矯正措置; 懲戒,処罰

・paletó: 上着

・piquete: [ストライキの]ピケ

・teimar:
vti e vint 1 Insistir, obstinar-se, porfiar, pretender com teimosia:
例) O garoto teimava em (ou a, ou por) comer a fruta verde.
例) Teimou o vendedor com o freguês.
例) "Outros, porém, teimaram, correndo para a árvore solitária" (Euclides da Cunha).
vtd 2 Insistir em: Teima que o viu.

・chapa: 選挙候補者名簿【~ eleitoral】; 投票用紙(札).

・pau-mandado: [命令されたことを何でもする]卑屈な人,定見のない人.

・traira:

Dops@Wikipedia: Departamento de Ordem Política e Social
映画の中ではDeopsというつづりもDopsも見えたと思う。新聞記事の中だとかに。

wikipediaですが、「até ser extinto no início de 1983. A sua designação no período final era Deops – Departamento Estadual de Ordem Política e Social, como consta em seus arquivos.」と書いてあるので、末期にはDeopsだったと。ルーラが拘留された80年辺りだとDeopsで、でも人々はまだDopsと呼び習わしていたとかな?二つの表記が混在していた時期だったとか?

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 11:54

・白黒の映画を観に行くんだけど、なんだろうな、『O Noivo da Girafa』という掲示が映ったような気がするのでそれかな。1958年。

・洪水のシーンはどこかの湖沼にセットの村を作って撮影したとか。ルーラの家はしょっちゅう浸水に遭っていたのだそうだ。

・milico:
白水社book 《ブ,俗語》兵士,軍人.

→スペイン語だとmilicoという語は《軽蔑》っぽかったりもするけどポルトガル語のニュアンスはどうなのか知らない。
マリアモリネルbook (Am. S.; desp.) m. Soldado, militar.
小学館西和中book 《ラ米》(南米)《話》《軽蔑》(1) 兵士,軍人.(2) 警官.

ああ、でもアウレリオにはPej.とあるのでポル語でも《軽蔑》的ではあるのだろう
アウレリオbook s.m. Fam. e Pej. Militar.


・「É importante uma outra coisa... もう一つ他の重要なことは…」というセリフがあるのだけど、スペイン語のotroはルールが違ったと思う:

D.P.D.book 2. Es compatible con 《下記のものといっしょに用いてもOK》
el artículo 定冠詞 (la otra opción) y con otros determinantes, como posesivos 所有詞 (mi otro hijo), demostrativos 指示詞 (ese otro), numerales 数詞 (otros tres) o indefinidos 不定限定詞 (algún otro tema, ninguna otra cosa, muchos otros u otros muchos),

a excepción del indefinido un 《でも不定冠詞とはダメ 》, con el que no puede combinarse 《不定冠詞とotroはくっつけない》, a diferencia de lo que ocurre en otras lenguas romances, como el catalán, el francés o el italiano 《そこがフランス語、イタリア語、カタランなどほかのロマンス語と違うところです》:

誤)TV3 y Canal 33 están emitiendo un otro partido distinto del que uno está viendo. (Vanguardia [Esp.] 17.6.94).

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 12:14

《人名とか》
・João Goulartって大統領については『ブラジル学を学ぶ人のために』でも『現代ブラジル事典』でも一、二行でさらっと済ませてあるような? 私が見落としてるだけかな? 『現代~』の表によれば任期は1961年9月7日~64年4月1日みたい。


・1964年4月1日 軍事クーデター (と画面に出てたと思う)
book『現代ブラジル事典』
1964年3月の軍部のクーデターによって左翼的民族主義の政権が否定され、開発優先の権威主義的政府が誕生した。これによって、親米反共の軍事政権が21年間続き、大統領全員が軍人といういわば軍部主導の政権であったため、人権抑圧などの暗い側面もみられた。


・Castelo Branco
book『現代~』
1964年4月、クーデターを指揮したカステロ・ブランコ将軍が大統領に就任し、65年の軍政令第2号の公布により、既存政党の解散と与党の国家革新同盟(ARENA)と野党の部アジル民主運動(MDB)の2大政党制への再編がなされた。

67年のコスタ・エ・シルヴァ(Costa e Silva)大統領の就任時に、カステロ・ブランコによって準備された新憲法が発効したが、シルヴァ大統領は68年に軍政令第5号を公布し、67年憲法では謳っていない大統領の非常大権を承認させた。……略……hairsalon


book『現代~』から「労働組合」について
ブラジルの労働組合は、1930年代に発足したヴァルガス政権が、それまでに結成されていた自発的な労組を解散させ、イタリア・ファシズムに模して労資それぞれに官製の組合を組織し、コーポラティズム的な政治基盤とした。……略……企業内組合やナショナルセンターの結成を禁止した。

……略……1970年代末から民主化の一環としてサンパウロ近郊の工業地帯(ABC地区)から「新しい労働組合運動」が始まり、83年にはCUTが設立されてナショナルセンターが生まれた。……略……hairsalon


→・CUTとは?
book同書より) 労働者党(PT: Partido dos Trabalhadores)系の中央統一労組(CUT: Central Única dos Trabalhadores)

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 14:46

あ。そうだ(゚0゚) 大事なこと

・ABCってのは?

→・@Wikipediaですが、サンパウロの地区の名前で、ABCっていうのはSanto André (A), São Bernardo do Campo (B), São Caetano do Sul (C) からできた名前らしい。

そして、「A presença de indústrias desse porte fez com que a região fosse o berço do movimento sindical no Brasil. As greves dos operários foram fortes nas décadas de 1970 e 1980.」というのが今回の映画で描かれていたことですね。

bookラテンアメリカ 都市と社会』(『ラテンアメリカ都市と社会 (Shinhyoron selection (40))』は同じ本かな?)には、「サンパウロ市の東部および市の南東にある工場地帯ABC地区」って書いてあった。

Posted by: Reine | Monday, August 02, 2010 at 15:35

book 同書から
《第5章 内陸都市サンパウロの形成と発展》

………略(1930年くらいからのサンパウロの工業化の説明)……… 第二次大戦中のサンパウロの工業の発展と戦後の鉄道および道路網の発展は、農村人口を都市にプッシュする有力な要因となった。大土地所有制のもとで相対的に停滞した経済活動を長期にわたり強いられてきた北東部、北部、中西部のブラジル農民にとって、工業都市サンパウロは、新しい未来を開く鍵となった。……略……

……略…… 新しい未来を求めて、農村からサンパウロに夥しい数の人口が流入し、サンパウロ市とその衛星都市の人口が膨れ上がった。

1940-50年に州の間の顕著な人口移動が行われ、40年にはブラジル総人口の8.5%に相当する340万人の内国移民を数えた。50年に内国移民は520万を数え、総人口の一割を越えた。……略…… hairsalon


……略……コーヒー経済によって蓄積された資本を基盤に工業化を果たし、20世紀の50年間に巨大な都会に成長した。しかし、サンパウロの都市の諸機能は、50年代以降の人口の増加と都市圏の拡大に伴って必ずしも発展しなかった。

教育施設の充実、道路交通網の整備、上下水道の完備、住宅の供給などは増大し続ける需要に応じられてはいない。……略……

……略……低所得層の人々の住宅、居住環境の周辺化は多くの深刻な社会問題を生む。地理的条件と経済的条件によって就学のチャンスに恵まれず、その結果就業のチャンスが狭められ、貧困から抜け出ることを困難にする。……略……

……略……85年の民主化以後、やっとブラジルでは貧困層の住民が市民としての権利を享受できる都市づくりの必要性が認識された。……略……hairsalon

Posted by: Reine | Tuesday, August 03, 2010 at 09:36

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