El Custodio / ボディーガード [アルゼンチン映画]
( わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります。)
Latin Beat Film Festival 06 / ラテンビートフィルムフェスティバル2006 / 第3回スペイン・ラテンアメリカ映画祭で上映された作品。
当時の映画祭サイトより、作品紹介:
2006年ベルリン映画祭アルフレッド・バウアー賞受賞。
ボディガードの仕事は大臣を常に見守ることである。大臣が車から出ると、彼もあとに続き、大臣が左へ曲がると、彼も後に続く。大臣がうたた寝するときは、その寝姿を見守る。常にその場にいなくてはならないが、その存在を主張してはならない。そう、まさに影のように。予定も来客も知らされることがないので、彼は状況がまったく把握できない。……略……
昨日今日のゲバラ検索大会で疲れ切ったので、今夜はこないだから少しずつ観ていたこの作品をサクッと観てオシマイにしようと決めました。楽ちんな鑑賞をして今夜はスヤスヤと眠りにつく予定だったのに、いま私、なんだかとても哀しく寂しい気持ち。(´・ω・`)ショボーン……。
これ、2006年の映画祭では上映後の観客の空気ってどんな感じだったのでしょう? 当時のことを覚えていたら教えてください。
主人公ルベンの姿をカメラはとらえているけれども、定点カメラのような構図も多く、彼の顔が映っていないことも少なくない。我々は画面の隅っこに彼の姿をやっと発見したり、背中の肉で彼だと判断したりもする。『ウォーリーを探せ』ならぬ『ルベンを探せ』ですわ。無言の彼は声高に会話をする人々に埋もれてしまっている。
遠くから主人公の暮らしをただ眺めているような気持ちになって、こないだ観たばかりの『La Soledad / ソリチュード:孤独のかけら』を思い出してしまったわ。そしてそう思い浮かべた時に、「‘孤独’って言ったらこっちも負けていないわよ」と思った。
また、顔のよく映らない、つまり顔を見てもらえない、個や我を消し消されてしまったルベンを傍観しているうちに、なぜか昨秋のラテンビートの『トニー・マネロ』のこともぼんやりと思い出していた。
・El custodio@IMDb
直訳: 保護者,監視人
邦題: ボディーガード
英題: The Minder
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Comments
語句メモ
・malla: 7. f. Arg., Bol. y Ur. bañador (ǁ prenda para bañarse).
・mango: 1. m. coloq. Arg. y Ur. peso (ǁ unidad monetaria).
・metralletista:?
→・metralleta: 1. f. Arma de fuego automática, de cañón más corto que el fusil y de gran velocidad de disparo.
Posted by: Reine | Tuesday, January 13, 2009 20:11
初めまして。
いつもロムってるだけですが、今日は思い切って書きます。
もう、この映画については、おそらく日本の中で私だけが気づいている「ある事」について、誰かに語りたくてしょうがなかった。
(その「ある事」はアルゼンチン人ならともかく、日本人だと5回ぐらいは見ないと気づかないことで、現時点で5回以上見た日本人は私ぐらいではないかと…)
何とか知り合いに見せたくて、いつNHKで放送されるのかと2年ぐらいもやもやしてますが、今のところ放送された気配はないです。
そして、その「ある事」も含めて、私にとっては「ウィスキー」と「ボディーガード」はラプラタ川をはさんだ、あっち側とこっち側で描かれた相似形のような作品に思えるんですよね。
ちなみに映画祭の時はあえて見なかったので、上映後の雰囲気は知りませんが、監督は作風とは似ても似つかぬファンキーなお兄ちゃんでした。
あ、「あの事」についてネタバレさせずに書くのは難しいので、興味あるようでしたら後でこっそりメールします。それでは。
Posted by: アノ★C | Friday, January 23, 2009 01:59
アノ★Cさん
コメントありがとうございます。
多少ネタバレしてしまうとしても、それはもう避けようがないのであれば仕方ないので、書いてくださってかまいません。よろしくお願いします。
Posted by: Reine | Sunday, January 25, 2009 10:27
では、さらりと。
主人公に決心させるのがカラオケという点です。
すっかり台無しにされてしまったかのように見えた誕生日会の後、彼は決心してある場所に向かいます。
その時バックにかかっている音楽。
それはカチョ・カスターニャのPara vivir un gran amor、つまり歌手志望なのにド音痴の姪が歌ってくれた曲なのです。
あんまりにも下手だったんでしばらく同じ曲と気づかなかった。しかもインストだし。
生きるためには愛がなきゃだめなんだ
新しい世界を発見しなきゃだめなんだ
そうカチョに背中を押されるようにして愛を探しに行った先が、あんな所なんて…
(ちなみにこのシーンは私の号泣ポイント)
自分を殺して生きてきた人間に、わずかに芽生えた命のほとばしり。それを音楽だけで見せるのって、うまいなぁとは思うけど、カチョ・カスターニャを知らない日本の観客に分からせるのは無理がありますね。(そういう自分も、調べて初めて知った)
それと同じような音楽の使い方なのが「ウィスキー」。ほとんどの人が気づいていなかったようですが、エルマンがカラオケで歌った曲は、いつもマルタが通勤のバスの中、ウォークマンで聴いていた曲です。60年代ぐらいにラテンアメリカで大ヒットした曲らしく、20代のベネズエラ人の子も知ってたけど、日本人が知るわけないしなぁ…。でも、それが分かるのと、分からないのとではラストの見え方が違いますよね。
と、どう頑張っても字幕に乗せられないけど、大切な情報があるということで。失礼いたしました。
Posted by: アノ★C | Tuesday, January 27, 2009 03:55
アノ★Cさん
おもしろい情報をありがとうございました。
そう、あのカラオケのシーンは……私はものすごく気が滅入りました。あの母娘の不安定な精神状態があっという間に画面いっぱいを薄暗くしてしまう感じ。
‘プレコックス感’とやらいうものを、私はなぜか昔から強烈に敏感に感じ取ることができるのですが、あのカラオケのシーンは、映画であるにも関わらず私の中のプレコックス感センサーの針がぶんぶん動いてしまった。
あの姪っ子の歌。歌とも言えないような調子っぱずれの狂気じみた歌声。あの歌詞にそういう意味があったというのは重要ですね。ありがとうございます。
『Whisky』については、字幕担当の方からのお話をbenitaさんが教えてくれました。あのとき私も「benitaさん、その情報、重要」とうろたえました。
それを知っているのといないのとでは、たぶんあの映画の観方が少なからず変わってきちゃうと思えたので。
Posted by: Reine | Wednesday, January 28, 2009 11:03
『El Custodio』を観たころはちょうど『La soledad / ソリチュード』について熟考していた時で、そういえば二作品ともサントラが無いんだなあと思っていたのでした。
その流れでwikipediaを見ていた。
El Custodio@wikipedia
>All music in the film is diegetic; that is, exists within the fiction of the movie, and is not part of the soundtrack.
>The exception is the part in the film where Ruben's niece is forced to stop singing karaoke, and then in the next scene, in a place that's not in the karaoke restaurant, the unaccompanied karaoke instrumental track continues in the background.
語句メモ
・diégesis
>El Sonido en películas se dice diegético si lo que suena es parte de lo narrado. De este modo, si uno de los personajes está tocando algún instrumento musical, o reproduce un disco compacto, el sonido resultante es diegético. Lo opuesto, si suena música de fondo que no es escuchada por los personajes de la película, se denomina no-diegética o más exactamente extra-diegéticos.
Posted by: Reine | Wednesday, January 28, 2009 11:13