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Monday, January 05, 2009

Central do Brasil / セントラル・ステーション [ブラジル映画]

central do brasilリオ・デ・ジャネイロの駅の構内で代筆屋として日銭を稼ぐドーラ。昔は小学校の教師をしていた。独り身のまま中年となり、今では化粧気もない。肌も髪も、そして心もぱさぱさ。

アナという女が息子を連れてやってきて代筆を依頼した。「ジェズースへ。あんたは最低よ。でもあんたの息子のジョズエがせがむから手紙を書くわ。あんたなんかどうしようもない男だって言い聞かせてきたのにこの子はそれでもあんたに会いたいんですって」。

後日、アナは不慮の事故で命を落とす。独りぼっちになったジョズエを見かねて家に連れ帰ったドーラであったが…


5年前にこのブログを始めた時からプロフィールページには好きな映画として『セントラル・ステーション』と書いておいた。先ごろ行われたイベロアメリカ映画マスターピース読者投票で3位に選ばれたようなので、予定を変更して今日はこれを観てみた。

何度観てもおなじ感想。いつ観ても最後ははらはらと泣く。

‘家族’が急にできてしまう‘疑似家族もの’はやっぱり人間性がそのままテーマになってくるから、涙腺や琴線に触れやすいんだよな。‘家族’っていっても、大きく括って、保護する役目を引き受けてしまう(負わされる)者と庇護される者とのパートナーシップってことね。

そこへもってきて独り身の女の孤独が描かれて、しまい込んできた過去との対峙も柱の一つで、とどめでロードムービーとは。その念の入れようと来たら。私みたいのがこれを好きにならないわけがない。


※しぶしぶ世話することになった子供と駅の雑踏、というシーンで『コーリャ 愛のプラハ』を思い出した。

『セントラル~』が好きならばたぶん『コーリャ~』も気に入ると思う。(私だけでなく、うちは家中でこれがお気に入り)

Central do Brasil@IMDb
Central do Brasil 公式

セントラル・ステーション@goo
セントラル・ステーション@映画生活
セントラル・ステーション@象のロケット



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CENTRAL DO BRASIL【字幕版】 [VHS]
CENTRAL DO BRASIL【日本語吹替版】 [VHS]
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Central Station [VHS] [Import]
セントラル・ステーション [サントラ]

『ニュー・ブラジリアン・シネマ ――― 知られざるブラジル映画の全貌 (単行本)』でも『セントラル・ステーション』は再三取り上げられている。(後日コメント欄にでも加筆できればする)

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Comments

ブラジル映画での語句メモは、ポル⇒ポルとポル⇒スペのどちらで記録した方がいいのかと迷い始めたのだけど、これまでどおりポル⇒ポルで書きとめることにした。

語句メモ
・trancar: 2 Encarcerar, prender:
例) O delegado trancou no xadrez o desordeiro. vtd

・carregar:

・tesão
1 Estado ou qualidade de teso; tesura.
2 Embate violento; ímpeto.
3 ch Desejo sexual feminino ou masculino.
4 ch Estado do pênis em ereção.

「ch」って略号は「chulo 下品な,下卑た,みだらな」の意

・lixo: sm 1 Aquilo que se varre para tornar limpa uma casa, rua, jardim etc.

・instrução: 4 Educação intelectual.

・bêbado: adj+sm pop V bêbedo.
→・bêbedo:
adj 1 Perturbado pelo excesso de bebida alcoólica, pelo fumo ou por entorpecentes.
sm 1 Indivíduo que tem o vício da embriaguez.

・gaveta: 1 Caixa corrediça, sem tampa, que se embebe em qualquer móvel e se abre puxando para fora.

・mesmo: [副] 本当に,真に

・machucar: vtd e vpr 4 Magoar(-se), ferir(-se):
例) "Diz V. Ex.cia que eu com a minha bota machuquei o seu coração" (Machado de Assis).
例) "Coitado do meu velho! Vão ver que se machucou" (Coelho Neto).

・pirralho: sm 1 Criança, criançola.

・cachaceiro:
adj Que bebe habitualmente cachaça.
sm 1 Bêbedo.
→・cachaça: ラム酒,ピンガ

・chega: interj Basta!

・transar: Fazer sexo, relação sexual.

・sertão: セルタン地帯【特に北東部の半乾燥性の過疎地帯.牧畜中心で古い伝統・習慣が残っている】

・Sei lá: 知りません
→・lá: [動詞のあとで,否定]

・mandarse: 《ブラジル・口語》 立ち去る,辞する; 逃げる
★あのさ……つかぬことをうかがいますけどさ、スペイン語って再帰動詞はこのように見出し語風に書くんだけどさ、ポル語ってハイフン入れるんだったっけ? (;・∀・) これだったら「mandar-se」って書くべきなんだっけ? 入れるんじゃない? (;´∀`) なんかもうカオス

・massa: adj m+f gír bacana, grã-fino.

・garimpo:
1 Lugar onde se exploram pedras e metais preciosos.
2 Mina de diamantes ou carbonados.

・「Batia nela. その男は彼女のことを殴ってたのよ」
・bater: [自]《+a, em を》 叩く,殴る
スペイン語のbatirとはちょっと違うのな

・botar:
ポルトガル語のbotarはスペイン語のponerみたいなものだな。いろんな語義で便利に・安易に使えちゃう動詞。


★これまで当ブログで扱ったブラジル作品と比べて今回はひ・か・く・て・き・言葉がはっきり聞こえたので、最初のうちはやたらメモってたんだけども、途中で「おい、ちょっと待て。スペイン語映画だったらこれくらいの語句は流してるはずだぜ」と我に返ったので、そこからはメモをほとんどとらなくなった。だから、今回の語句メモにはムラがある。

Posted by: Reine | Monday, January 05, 2009 20:02

・イレーネを部屋に呼びつけたときにドーラが実にてきとーな感じで口ずさんでいるのは「O Samba e o Tango」(Caetano Velosoの『Fina Estampa En Vivo』などに収録の曲)だと思う。

・映画がふわっと終了してクレジットタイトルになった時にかかるのはCartolaの歌う「Preciso me encontrar」ですが、ここ、詞の意味がわかって聴いてたら映画の余韻は「倍率ドン! さらに倍!」だから。「あぁ、ここでこの曲もってくんのかあぁぁっ」と思ったわ。

阿部さんがブログで歌詞を和訳していらっしゃるので、今度観る時までに詞の意味を覚えといてください。余計なおせわですけど、ほんとにほんとに。

ふと気づけば私はスペイン語映画に関してはあんまりサントラに興味を抱かないようだけど、ブラジル映画のときは必ず音楽に言及してるのな。私、スペイン語圏の音楽には興味薄いんだよね、それどうしようもないんだよ。スペインの友人にも何度も嘆かれたんだ、そこは。

Posted by: Reine | Monday, January 05, 2009 20:43

監督: Walter Salles ヴァルテル・サーレス(ウォルター・サレス)
脚本: Marcos Bernstein  João Emanuel Carneiro  Walter Salles

出演:
Fernanda Montenegro ... Dora ドーラ
Marília Pêra ... Irene イレーネ: 女友達

Vinícius de Oliveira ... Josué ジョズエ
Soia Lira ... Ana アナ: お母さん
Othon Bastos ... Cesar: 運転手さん

Matheus Nachtergaele ... Isaías
Caio Junqueira ... Moisés


この最後の彼が部屋の奥からぬって顔を出した時は「うはっ」って声が出ちゃったわ。だって『Tropa de Elite』の‘ネト’の人なんだもん。ニキビ痕の残っていそうなハイティーンとすら見える顔の。

私、俳優の顔ってけっこう見分けられるほうだと思う。前に観た作品と比べてどんなに顔が若返っててもどんなに老けこんでても、「ん? この顔はどこかで……。そうだそうだ、あの作品のダレソレだよ!」って思い出すことができるほうだと思ってる。‘特技’と言えそうなくらい、顔認識の成績はいいと思う。(あと、‘声’でわかる人もいるけどね)

だけど、こないだ『Tropa de elite』で‘ネト’を観た時には全く思いつかなかった。まさか『セントラル~』で既に見ていた顔だったなんて。

このたび何年かぶりに『セントラル~』を観てみて、‘ネト’の人もこんなに初々しかったんだなあと、甥っ子の成長を見守る叔母のような気持ちで微笑んだわ。

あぁ、ネト………制服マッチョ……(結局それか)

Posted by: Reine | Friday, January 09, 2009 20:06

ニュー・ブラジリアン・シネマ―知られざるブラジル映画の全貌』では何度もこの作品への言及があるので幾つか拾っていこうと思う。

※以下、改行は私が勝手に。
※漢数字はアラビア数字に私が勝手に。


1998年、『セントラル・ステーション』(ヴァルテル・サーレス[ウォルター・サレス]監督)がベルリン映画祭で金熊賞に輝き、同時に主演のフェルナンダ・モンテネグロも最優秀主演女優賞を受賞する。

この作品はブラジルで大成功を収めるとともに、これをきっかけに、ブラジル映画は、1960年代のシネマ・ノーヴォ全盛期以来はじめて、国際舞台への復帰を果たした。

『セントラル・ステーション』は、英国アカデミーの最優秀外国映画賞、アカデミー賞(オスカー)の最優秀外国映画賞と最優秀主演女優賞へのノミネートなど、ブラジル内外で多くの賞を獲得した。また、海外での興行も大成功であった。


P80~82、87~89とか、P169~とか、その他たくさんのページは解説が面白いので書き写さない方がいいと思います。書き写さないことにしました)

Posted by: Reine | Friday, January 09, 2009 20:19

第8章
『現代ブラジル映画におけるセルタンとファヴェーラ』

(……略……『セントラル・ステーション』では)
都会とそこで急速に崩壊する人間関係が描かれる。都会は倫理的価値観が滅びゆく孤独な場所であり、農村、つまり人間関係が長く続き、個人の経験が今なお何らかの価値を持つ、交換と対話の世界、記憶や聖像、写真や約束を記した手紙の世界とは対照的である。

この作品が描くのは、失われた人間関係や、連帯の名残りを探してリオの街から北東部のセルタンに向かう主人公の旅である。

……略……『セントラル・ステーション』には、シネマ・ノーヴォの暴力的で耐え難いセルタンではなく、幼い主人公ジョズエ(ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ)の兄たちが、情け心でジョズエを迎え入れる、無垢で、粗野ではあるが純粋なセルタンが登場する。

……略……この作品は、セルタンの退屈であからさまな貧困やその無言の暴力が、悪漢やギャングのいるリオのセントラル・ステーションという都会の地獄よりも耐えられるものであると示唆しているように思われる。……略……

Posted by: Reine | Friday, January 09, 2009 20:49

P158 第9章
『ミレニアムの終わりにブラジル人が想像するセルタン』

……略……つまり、『セントラル・ステーション』のセルタンは、本質的に和解の場所なのである。1960年代のシネマ・ノーヴォが、セルタンを社会的分裂や争いや不和のもっともあからさまな表現として利用したのに対し、新しいブラジル映画は、セルタンをコミュニティ意識や、対抗するものの調和、差異の解消と結びつける。……略……

Posted by: Reine | Friday, January 09, 2009 21:00

そうだ。
Tenho saudade de tudo. を字幕でも吹き替えでもたしか「やり直したいのよ」と訳してたと思うけど、どうなんだろうか、もうちょっと何とかならなかったんだろうかと思った。

そのすぐ前のセリフがああで、その次にこう来るなら、その和訳は「やり直したいのよ」でほんとによかったんだろうかと、まだ納得が行ってない。

Posted by: Reine | Friday, January 09, 2009 21:54

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