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Friday, December 26, 2008

Lista de espera / バスを待ちながら [キューバ映画]

lista de esperaストーリー
キューバの中部のとあるバスターミナル。やってくるバスはどれも満員で、待合室は順番待ちの客でごった返している。このターミナルに停留しているバスの故障が直りさえすれば……。みなそれを思い、何時間も待っている。

若い技師エミリオは、実家に戻るためにバスを待っている。事態がさらに悪化し皆が諦めかけたその時、エミリオはある提案をする。それは突飛なアイディアではあったが、これに乗ってみようという待合客も少なからず現れたのである。さっきまで空席を争っていきり立っていた人々が、力を合わせ心を共にするうちに奇妙な連帯感で結ばれていく。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


こういうのは私は大好き。優しく微笑んで観ていられるでしょ。寂しさもちょっと感じさせつつね。そして登場人物のみんなの‘この後’の幸せを心から願ってしまう。


こないだ9月のラテンビートフィルムフェスティバルで『Viva Cuba ビバ・キューバ』を観たのだけど、途中、えーっと、悪く言えば‘安っぽい’シーンがあり、私はその瞬間は「この作品、良いと思ってたけどひょっとして失敗だった……?」と不安に駆られたのですがね。

観終わってロビーで(大学の後輩の)みなさんたちとしゃべったとき、やはりそのシークエンスが話題になりました。

アルゼンチンで一時期映像制作に携わったり、日本でもゼミでそういう分野を研究したことがあるという後輩Kが、「(中南米の映画って)ああいう小技―――蛇足ではないかとすら思える小技―――を入れたくなっちゃうものなんですかね……」と言っていたのが印象的だった。


  ・CGなどで何かを加えてみたくなった感
  ・ファンタジーを添えたくなってしまった感
  ・それらのやりすぎ感・ドタバタ感・ハチャメチャ感

そういった傾向が中南米映画にはチラチラと顔を出す、と彼女は感じていたのだと思う。


さて『バスを待ちながら』に話を戻すと、終盤、「ひょっ、ひょっとして、これもその口? ファンタジー盛りたくなっちゃった?」と、眉間に皺を寄せつつ苦笑いしかけた。「ええぇぇぇ? こう来るのかあ……ぁ? んんんん?」と、戸惑った。


が、しかし。


そのままでは終わらせないのがとてもいい。『ビバ・キューバ』もそうだった。期待外れ……っ?と思わせておきながら、そこからの牽引力が目覚ましいです。

(コメント欄につづき)(たぶんネタバレっぽくなるからご注意を

Lista de espera@IMDb
直訳: キャンセル待ちリスト
英題: The Waiting List

監督: Juan Carlos Tabío フアン・カルロス・タビオ
脚本: Arturo Arango アルトゥーロ・アランゴ  Senel Paz セネル・パス  Juan Carlos Tabío

出演:
Vladimir Cruz ウラジミール・クルス ... Emilio エミリオ
Thaimí Alvariño タイミ・アルバリーニョ ... Jacqueline ジャクリーン
Jorge Perugorría ホルヘ・ペルゴリア ... CHANGE Ciego to Rolando 盲人(ロランド)

Noel García ... Fernandez フェルナンデス: 駅長さん
Alina Rodríguez ... Regla レグラ(たぶん): 薬草に詳しく料理上手

Saturnino García サトゥルニノ・ガルシア ... Avelino アベリーノさん

Antonio Valero アントニオ・バレロ ... Antonio アントニオ: ジャクリーンのスペイン人の恋人; 今日の夜マドリードからハバナに到着する予定; 明日には二人で大使館に行って結婚の届けなどを済ませる

Leandro Sen ... Erick エリック: 若いカップルの男のほう
Saskia Guanche ... Katia カティア: 若いカップルの女のほう
Coralia Veloz ... Alicia (as Coralita Veloz) アリシア: 夫婦連れの奥さんのほう

Assenech Rodriguez ... Abuela おばあちゃん

Jorge Alí ... Cristobal クリストバル: 規律、規律とやかましい男
Camila García ... Wendy ウェンディ: その娘

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Comments

知識も教養も技術も人々はそれぞれに備えているのにそれを活かす機会が無かった。たとえばアベリーノさんは文学に精通していて私設図書館を建てることを生涯の夢としていたが、書物が打ち捨てられている現状を目にして心苦しさを覚えるばかりである。

各人の生活ばかりか社会全体をも変えられるかもしれないポテンシャルが個々にあるのに、時間をかけてそれらを習得したというのに、活かせぬまま、人々は立ち去ろうとする。街を去って故郷の農地へと向かうエミリオ、キューバという国を去ってスペインへ行こうとしているジャクリーン。

食べ物への執着は皆が多かれ少なかれ抱えている。人を欺いてでも腹を満たしたいと、浅ましさをむきだしにする人もいる。クリストバルの娘ウェンディはアイスが食べたいと訴えるが、石頭のクリストバルはそんなワガママをゆるさない。「手に入ったのがサンドイッチならしかたない。これもそこそこ美味しいじゃないか」。与えられたもので妥協せよと。

クリストバルにとっては規律が絶対。お上の発表は信じて受け入れるべきだ、疑問を挟むなど不埒であると説教して回っている。

駅長のフェルナンデスはもちろんバスを直そうと頑張ってきた。「耳がちぎれそうになるくらい」方々へ電話をかけて部品を手に入れようとしてきた。だが、なしのつぶてである。彼の求めるとおりにはシステムが動いてくれないのだ。

フェルナンデスの実直な人柄と働きぶりをレグラはすぐに見抜いたが、世間知らずな若者はフェルナンデスを責める。「えぇ、あなたはたしかに奔走してましたよね、電話でね」。


直すべきものがそこにあって、直せるかもしれない人手があるのに、直してよいというGOサインがなければ誰も手を着けられないのが本来の彼らキューバの市民の社会生活か。バスは壊れてしまったのさと、端から諦めて早々に立ち去った人、このターミナルで進行する‘謀反’の動きに巻き込まれたくないからと大慌てで逃げ出す人、居残ったには居残ったが行動に移す勇気が出ない人。

それが普通であり正しいとされていたのだろうが、この夜の待合客はエミリオの一声でそれを打ち破ろうとする。古くてガタが来たバスを直そう、掃除をして整理整頓をして綺麗にして新しく健全な素敵な場所を創り出そう、自分を解き放って雨の中で皆といっしょに踊りたい……


つまりこのターミナルが、あるいはバスが、キューバなんだね。

Posted by: Reine | Friday, December 26, 2008 at 23:40

語句メモ
・guagua: 2. f. Can. y Ant. Vehículo automotor que presta servicio urbano o interurbano en un itinerario fijo.

・condoler: 2. prnl. compadecerse (= sentir lástima). 列の人が同情したらそれでいいけど、私がこの人に売ったら文句を言うのはあなたがたでしょう。

・refuerzo: . m. Ayuda, socorro o complemento.
例) Clases de refuerzo.
例) Refuerzo vitamínico.

・fístula: 3. f. Med. Conducto anormal, ulcerado y estrecho, que se abre en la piel o en las membranas mucosas

・costar algo los ojos [un ojo] de la cara: 1. frs. coloqs. Ser excesivo su precio, o mucho el gasto que se ha tenido en ello.

・fundirse: 3. tr. Estropear un aparato o un dispositivo eléctrico. U. t. c. prnl.

・sabi(h)ondo, da: adj. coloq. Que presume de sabio sin serlo. U. t. c. s.

・ponerse de parte de alguien: 1. fr. Adherirse a su opinión o sentir

・delante de los ojos de alguien: 1. loc. adv. En su presencia, a su vista.

・comemierda: 1. com. vulg. Persona despreciable

・rodar: 6. intr. Moverse por medio de ruedas. Rodar un coche

・jevo, va: 《ラ米》《話》子供,少年,少女

・arete: 1. m. Arillo de metal, casi siempre precioso, que como adorno llevan algunas mujeres atravesado en el lóbulo de cada una de las orejas.

サルトルとかの本

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 12:09

出た!これ、大好きな映画です!笑
最後「夢オチかい!」と笑って突っ込めるところも、ゲイカップルが読む本とストーリーとのメタ構造も、お色気も(笑)絶品ですね。
ぼくホラー見られないんですが、こっち系の作品紹介、楽しみにしております!

Posted by: 八代目 | Saturday, December 27, 2008 at 12:56

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 13:40

八代目さん
ずーっと観たかったのですが、スペインからDVDをまとめて買う時にうっかり注文し忘れたこともあり、なかなか入手できずにいました。

私も本当はこういう作品が好きです。私もホラー(とかホラーじゃなくても戦争もの・軍政もののように「怖い」映画)は本当は観たくないのですが、やっぱりこう、そういったジャンルの作品タイトルで検索からアクセスされたりすると、「やっぱりそういうのも観ておかなきゃなの……? shock」と思い、正直、‘しぶしぶ’観ています。

これからもよろしくお願いします。

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 13:51

ここから先はたぶんネタバレだから

↓↓↓

これは『桃源郷』か『キューバ版浦島太郎』かと私は思ったのだけど、それじゃぁいったいどこからそのおはなしが始まっていたのかな。

(別の作業の合間にBGVとしてつけっぱなしにして)何度か回してみて、たとえば「この時点ではこの服だったのか…。で? どこで服が替わった?」などと、ジャクリーンの服装に注目してみたりもしたのだけど、‘起点’がよくわからない。じっくり凝視してれば気づくものなんだろうか?

というか気づかなくていいんだと思う。だってそもそもこのターミナルでは時の流れが不思議じゃないかい。

磯野家の謎』じゃないや『サザエさんの秘密』に、「磯野家のカレンダーの謎」という章がある。

「磯野家のひと月が、世間でいうところのひと月と異なる」という。また磯野家やその周辺全域で、時計の「長針と短針とがあっていたためしがない。まるでデタラメなのだ。つまり月日だけじゃなく、時分もまた、世間一般とはどうも異なっているようなのだ」そうだ。(だから彼らは誰も歳を取らないのではないかと考察は続いて行く)

『バスを待ちながら』のターミナルもそういう空間なんだよ、たぶん。

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 14:20

ジャクリーンはエミリオとしゃべっているうちに険悪な雰囲気になってしまった。

キューバ人女性がスペイン人と結婚してスペインに行ってしまうことにエミリオは好感を持っていないし、きっと世間的にも好感をもって受け止められてはいないだろうし、自分の結婚がそのように見られているとジャクリーンもわかっているだろう。だから、「君はスペインに行ってしまうんじゃないか」とエミリオから非難めいた口調で言われた時に気色ばんで席を立った。

その辺の事情は『ビバ・キューバ』でマルーのお母さんが抱えていたのとおんなじことかな?

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 22:17

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