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Thursday, November 06, 2008

El Bosque Animado / にぎやかな森 [スペイン映画]

el bosque animado第2回ゴヤ賞(88年3月22日発表)で5部門受賞に輝いた作品。

・作品賞
・主演男優賞
・脚本賞
・音楽賞
・衣装デザイン賞

この時の主演男優賞はアルフレッド・ランダが獲得したが、ランダと言えばこの2月のゴヤ賞で栄誉賞を与えられた名優です。

これまでにスペイン人の友人からたびたび勧められてきた作品ですが、本当に面白い。


私は映画のタイトルを耳にした場合、IMDbの評点と、IMDbの作品トップページに現れているジャンルしか見ないように心掛けているのだけど、この『El Bosque Animado』はジャンルが「ファンタジー」となっているのがネックでした。ファンタジーには興味が無いんだ、私は。

ファンタジーっつうと、私はどうしても「ねーばーえんでぃんぐすとーーーーりーーーー」を思い浮かべてしまい、萎えるのです。

いや、ねーばーえんでぃんぐすとーーーーりーーーの原作には文句は無い。原作は小5の時だったか担任の先生に勧められて夢中になって一晩で読んだ覚えがある。しかし、リマールのあの歌と、80年代イコール思春期真っ只中の独特の気恥ずかしい日々が蘇るのがよくない。よくないだろう?

しかしそれだけなら私だってここまで「ファンタジー映画」に拒否反応を示すまい。まだほかに原因があるのですよ。

私の場合はね、……これ……あたしたぶん今までの人生で告白したこと無いんじゃないかな……、私の場合はですね、何の因果か、森尾由美だかだれかが主演のミュージカル版ネバーエンディングストーリーという冷え冷えとしたイベントに連れて行かれた気まずい思い出までがセットとなっているのですよ。どーよ、その心の闇。

それがゆえに四半世紀を経てもなお、「ファンタジー」と聞くだけで記憶の深く暗い淵に突き落とされるわけよ。そんなこんなで、私はジャンルに「ファンタジー」と振られている映画は後回しにするのです。


しかしこれは少なからぬ数の友人に勧められてきたのでついに観てみました。するとこれが実におもしろいのだ。諸事情あって読書という行為を頑なに拒んでいる私ですが『El Bosque Animado』は原作を読みたいと心から思いました。

タイトルに「にぎやかな森」というとおりガリシア地方の森を舞台に展開するが、森の木々がしゃべりだしたとか妖精のささやきだとかいう意味でにぎやかなのではなくて、森に暮らす人々がにぎやかなのだ。「にぎやか」というと聞こえがいいが、言いかえれば喧しく姦しく口さがないのである。

「ファンタジー」とジャンルを振られる意味もわかるが、その実、人間くささに満ちたストーリーです。貧しい暮らしの中で生きぬくために狡すっからい手間を惜しまない庶民の姿を見ていて、こういうのはたぶんピカレスクの流れなのかなと思った。


セルバンテス東京の図書館にもありましたから、ぜひ。

(つづきはコメント欄で; たぶん長くなります)

El Bosque Animado@IMDb
直訳: にぎやかな森、活気のある森
にぎやかな森@goo

監督: José Luis Cuerda ホセ・ルイス・クエルダ
原作: Wenceslao Fernández Flórez ベンセスラオ・フェルナンデス・フローレス
脚本: Rafael Azcona ラファエル・アスコーナ

2枚組DVD・メタルケース・字幕なし・8.24ユーロ(@158.4円くらい 2/19)


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Comments

キャスト紹介 ネタバレ気味かも

Alfredo Landa アルフレッド・ランダ ... Malvís / Bandido Fendetestas マルビス (追いはぎフェンデテスタス):
貧乏暮らしに耐えかね、デアボンドさんの家で拳銃をちょろまかしたのをきっかけに森の小道でちんけな追いはぎを始める。タバコが好きというかすっかり中毒気味でいつも誰かにタバコをせびっている。

Alejandra Grepi アレハンドラ・グレピ ... Hermelinda エルメリンダ:
やや尻軽ではあるが美しい娘。魅力的なので男出入りは少なくない。口うるさく疑り深く意地の悪い伯母といっしょに暮らしており、口論が絶えない。泥棒呼ばわりまでされついに家を出、コルーニャに向かった。

Fernando Valverde フェルナンド・バルベルデ ... Geraldo ヘラルド:
水脈を探し井戸を掘る職人。片足が義足。エルメリンダに惚れているがどうしても告白できずに来ている。

Encarna Paso エンカルナ・パソ ... Juanita Arruallo フアニータ・アルアージョ:
エルメリンダの伯母。猜疑心が強くけちん坊で欲深い。お金がからむと相手が誰であろうと無慈悲に対応する。

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 21:45

Miguel Rellán ミゲル・レジャン ... Fiz de Cotovelo フィス・デ・コトベーロ:
マルビスが森で見かけ襲おうとした顔色の悪い男。ポケットからタバコを出してマルビスにくれようとしたが出てくるのは土ばかりである。「これ、土じゃねーか」とマルビスが怪訝そうに言うと、コトベーロは「どうも誰もタバコを入れてくれなかったみたいだ」とわけのわからない返答。「‘入れてくれなかった’っていつのなんの話だよ」と気味悪そうにマルビスが聞くと、コトベーロは「いつって……僕を埋葬した時にですよ」と無表情に答える。

コトベーロは、San Andrés de Teixido(サン・アンドレス・デ・テイシード)に行く誓いをたてていたのに果たせぬまま死んだので、誰か信心のある者に代わりに行って欲しいと望むあまり成仏(という用語が適当とも思わないが)できずに森をさまよっているという。

※San Andrés de Teixidoについて調べると、どうも「vai de morto quen non foi de vivo」と言われているようだ。「生きているうちに行けなかった者も死後には必ず訪れる」とかそういう意味かな。


コトベーロの祖父はキューバに移民したそうで、コトベーロは憧れの地キューバを知らぬまま死んだことも心残りなのだ。

山賊フェンデテスタスことマルビス爺さんは、コトベーロのそういう身の上話を聞かされたものの、こんな幽霊に縄張りをうろうろされたのでは自分の‘商売’もあがったりなので、「あんたさぁ、そうやって化けて出るの、よそでやってくれないか。ここは俺が追いはぎしてる森なんだよ!」と強く出たりする。

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 21:53

José Esteban hijo ... Fuco (as José Estéban, Jr.) フーコ:
アリの巣におしっこかけたり、いたずらしてまわっている少年。マルビス爺さんの仕掛けていた罠にかかった獲物を先回りして持ち去っていた。マルビスからタバコを買ってくるようにと渡された小銭を持ってとんずらした。

マルビスはこの小賢しい子供に激怒しており、幽霊コトベーロに「そうだ、フーコとかいうガキをこの辺で見かけたことがあるかい。あんたあの小僧の前にヌッと出て驚かせちゃぁくれまいか」と頼んだりする。

Laura Cisneros ... Pilara ピラーラ:
フーコの姉でよく働く少女だが、したたかなところは母親にでも似たのか。山賊フェンデテスタスに出くわしても堂々と渡り合う。エルメリンダがいなくなってしまったあと、フアニータの家にお手伝いとして入ることになった。

Luma Gómez ... Marica da Fame マリカ・ダ・ファーメ:
フーコとピラーラのお母さん。欲の皮が張っている。

※特典DVDにはゴヤ賞の授賞式の模様が収められていて、脚本賞受賞のアスコーナの代わりにフーコ役の少年がステージに上りアスコーナからのメッセージを読み上げている。

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 22:05

Luis Ciges ... Loco de Vos ロコ・デ・ボス(マノーロ):
少し惚けているらしく、自分は大人物だと思いこんでおりいつも他人にプレゼントをして回っている。もらった側としては実はあとでそれらの物品をそのつど家族に返してあげなければならないので、相手をするのはけっこう面倒なのである。

María Isbert ... Moucha モウチャ:
森に暮らす呪術師。相談料としてはけっこうな額をふっかけているようで、欲張りなマリカ・ダ・ファーメなどは興味津津の様子。ヘラルドの依頼により、コルーニャに行ってしまったエルメリンダが戻ってくるかどうかを占いおまじないのお守りをくれる。「その女の肌に触れたものとこのお守りをいっしょに保管しなさい」と言い聞かせる。

Fernando Rey ... Sr. D'Abondo デアボンドさん(ダボンドさん?): 裕福な家の主人。威張っている風である。

Óscar Domínguez ... Javier ハビエル: その息子

Silvia Lurueña ... Rosina ロシーナ: ハビエルの従姉。色っぽく成長しておりハビエルを困惑させる

Alicia Hermida ... Gloria Roade
Amparo Baró ... Amelia Roade マドリードから2か月のバカンスに来た年配の姉妹。二人揃って神経過敏。この村の迷信などを聞かされ目を白黒させてばかりいる。

Manuel Alexandre マヌエル・アレクサンドレ ... Roque Freire フレイレ:
山賊フェンデテスタスことマルビスに山道で襲われたが、そこは小さい村のこと、もともと顔見知りである。「そうそうそうそう。なんか山賊が出るとか聞いた聞いた。お前かよー。景気はどう?」と世間話を始めるかのよう。それでもマルビスがすごんだのに対し、値切る始末。

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 22:11

語句メモ
・qué niño envuelto [muerto]: 1. locs. interjs. coloqs. U. para expresar desprecio de lo que alguien dice.

・rompérsele a alguien una tripa: 1. fr. coloq. Ocurrirle algo que necesite ayuda de otra persona.
例) ¿Qué tripa se le habrá roto a ese?

・refunfuñar: 1. intr. Emitir voces confusas o palabras mal articuladas o entre dientes, en señal de enojo o desagrado.

・lágrimas de cocodrilo: 1. f. pl. Las que vierte alguien aparentando un dolor que no siente.

・amortajar: 1. tr. Poner la mortaja a un difunto.

・bien: 11. adv. m. Con gusto, de buena gana.
例) Yo bien accedería a tu súplica, pero no puedo.

・de mil amores: 1. loc. adv. coloq. Con mucho gusto, de muy buena voluntad.

・catalejo: 1. m. Aparato extensible de largo alcance.

・apocado, da:
1. adj. De poco ánimo o espíritu.
2. adj. Vil o de baja condición.

・「Se me ha hecho una carrera.」
→・carrera: 16. f. Línea o puntos que se sueltan en la media o en otro tejido análogo.

・apeadero: 2. m. En los ferrocarriles, sitio de la vía preparado para el servicio público, pero sin apartadero ni los demás accesorios de una estación.

・doncella: 2. f. Criada que sirve cerca de la señora, o que se ocupa en los menesteres domésticos ajenos a la cocina.

・neurasténico, ca
1. adj. Med. Perteneciente o relativo a la neurastenia.
2. adj. Med. Que padece neurastenia. U. t. c. s.
→・neurastenia: 1. f. Med. p. us. Trastorno funcional afectivo atribuido a debilidad del sistema nervioso.

・sacramentar: 2. tr. Administrar a un enfermo el viático y la extremaunción, y a veces también el sacramento de la penitencia. 《カトリック》(臨終の人)に臨終の秘跡を授ける

・zanquear: 2. intr. Andar mucho a pie y con prisa de una parte a otra.

・clamar algo al cielo: 1. fr. Ser manifiestamente escandaloso.

・perillán, na: 1. m. y f. coloq. Persona pícara, astuta. U. t. c. adj. U. m. la forma en masculino.

・como los chorros del oro: 1. loc. adj. coloq. Muy limpio. U. t. c. loc. adv.
例) Es limpia como los chorros del oro.

・alfeñique:
2. m. coloq. Persona delicada de cuerpo y complexión.
3. m. coloq. Remilgo, compostura, afeite.

・torvisco: 1. m. Mata de la familia de las Timeleáceas, como de un metro de altura, ramosa, con hojas persistentes, lineares, lampiñas y correosas, flores blanquecinas en racimillos terminales, y por fruto una baya redonda, verdosa primero y después roja. La corteza sirve para cauterios. ジンチョウゲ

・pájara pinta: 1. f. Especie de juego de prendas.

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 22:47

(1) Santa Compaña: Santa Compaña@Wikipediaによれば、「サンタ・コンパーニャ」とはガリシアやアストゥリアス地方の伝説で、死者の霊が行列を作って夜中12時から教区内をうろうろとさまよい、間もなく亡くなる人が出る家々を回って歩くのだそうだ。ガリシアからアストゥリアス地方にはいくつかの変種が散在していて、Güestia、 Güéspeda、 Estadea、 Hoste、Genti de Muertiなどと呼ばれるほか、「procesión de animas」とも、あるいは簡単に「compaña」とも呼ばれるらしい。

(2) orujo: 去年の12月に大使館でガリシア関係の催しがあったときに大使館のおっさんにお呼ばれして行ったのだけど、その時にこのオルッホというお酒を飲みましたよ、そう言えば。

(3) 「Esto ocurrió en aquellos años en que una gallina costaba dos pesetas y el bosque de Cecebre era más extenso y más frandoso. これはメンドリ一羽が2ペセタでセセブレの森が今よりももっと広くて深かったころのおはなし ----Wenceslao Fernández Florez ベンセスラオ・フェルナンデス・フローレス」

(4) おまじないが効いて本当にエルメリンダが―――すっかり垢ぬけて―――村に戻ってきた。ヘラルドは彼女に会う前に義足を取り換えたりしたいため、マルビスに借金を申し込む。「こんな時こそ友情ってものがあるんじゃないのか」と頼み込むが、マルビスは格言・ことわざをまくしたててなんとか逃げようとする。

・El buey suelto bien se lame

・El que pierde a una mujer no sabe lo que gana

・Los amores entran riendo y salen llorando y gimiendo.

・Mujer hermosa, niña e higueral, muy malos son de guardar.

・Casamiento malo, presto es concertado.

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 22:58

追いはぎフェンデテスタス。
「Fendetestas」とはガリシア語で「fender」+「testa」に分かれるのだそうで、スペイン語にすると:

fender⇒ hendir. ⇒ tr. hender.: 1. tr. Abrir o rajar un cuerpo sólido sin dividirlo del todo. U. t. c. prnl.

testa⇒ cabeza

つまりマルビスは山賊としては「どたまかちわったろか」という名前をつけているのです。

追いはぎフェンデテスタスことマルビスが通行人を襲うときに「¡Alto (とまれ!), me caso en Soria! ¡La bolsa o la vida!」と叫ぶのだけど、後半は「財布をくれるのかそれとも命か!」だけど前半の「ソリアで結婚する」っていうのはどういうこと?

っていうのは友達が教えてくれたけどまた後日。今日はもうなんかめまいがひどいわ。

Posted by: Reine | Thursday, November 06, 2008 at 23:29

さて、昨夜からずっと今日も一日中めまいと吐き気でフラフラだったのだけど、プクの散歩に行ってお風呂入ったらやっとここへきて落ち着きました。

そこで「Me caso en Soria.」について書いて寝ようと思います。しっかし具合悪いな、今日は。

前出の友達が言うことには:
「傑作だよね! アルフレド・ランダの名演技ね。
えっとね、山賊は人々に襲いかかる時には決まり文句とか叫び声をたいていは持っていたでしょ。『Me caso en Soria.』っていうフレーズでフェンデテスタスが言いたいのはね、えーっと……中世とかそれくらいから?言われていることなんだけども、ソリアで結婚する人っていうのはなんにも持っていないってことだったのね。

フェンデテスタスは『Me caso en Soria.』と言うことで自分は盗賊としてもはや何もためらわないというのを相手に知らせているわけ。何も失うものが無いって。

中世くらいから近世までスペインで山賊とか強盗は襲う時にこのフレーズを使ってたのよ。襲われる側もフレーズ本来の意味は知ってるわけだから、強盗がどんな覚悟でいるのかもただちにわかるわけでしょ。フェンデテスタスがもう希望も何も持たない男だってことをすぐ理解するわけ」


わかったようなわからないようなだったので聞き返す:
「つまりこのフレーズを言うことで山賊は自分がもう家族も仕事もおかねも、そして良心のかけらさえもなーんにも持っちゃいないんだってことを宣言しているわけだね?」


友達がさらに続ける:
「そうそう。そういうこと!
それとね、カスティージャとかガリシアの人にとってはSoriaとかそこの人々っていうのは、どこかギャグの対象になりがちなんだよ。そんなわけでソリアをネタにしたジョークなんかがよくある」


私: 「それってLepeについての反応と似たようなもの? (注: 私がスペイン時代によく耳にしたのはLepeを小馬鹿にしたようなギャグが多かったから)」

友: 「そうそう。似てるんじゃない。
あとは……作者のベンセスラオ・フェルナンデス・フローレスはガリシアの伝統や伝説について豊富な知識があるんだよね。この本も素晴らしいよ。映画ももちろんだけどね」


だそうです。頭がクラクラするので裏はとっていません。あしからず。

Posted by: Reine | Saturday, November 08, 2008 at 01:17

ついでだから「ピカレスク」について。

bookスペイン・ポルトガルを知る事典』(私のは旧版):
わるものしょうせつ 悪者小説
16,17世紀のスペインで流行した《悪者》pícaroを主人公とする小説の様式で.その後のヨーロッパ・リアリズム小説に大きな影響を与えた.悪漢小説,ピカレスク小説,あるいはピカレスク・ロマンという呼称も一般化している.……略……《ピカロ》は,貧しくて生活のために悪事を働く,悪知恵にたけた冒険好きのならず者といったほどの意で用いられている.

《悪者小説》を特徴づける二大要素は,主人公が社会の最下層の出であること,そして自伝体の小説であることである.そして普通は,定職を持たない放浪の主人公が様々な主人に仕え,その体験を通して社会の各層をあくまでしんらつに,冷笑的に風刺する.

……略……社会の下層階級の人々をリアルに描く伝統のあったスペイン文学には,J・ルイスの《よき愛の書》やフェルナンド・デ・ロハスの《セレスティーナ》といった,直接的な先駆というべき傑作がすでにあった.しかし厳密な意味での《悪者小説》は,1554年に出た作者不詳の《ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯》をもってその嚆矢とするというのが定説である.

……略……当時スペイン文学を風靡していたのは騎士道小説や牧人小説であったが,それらのあまりに現実離れした理想主義に対する諧謔的な,そしてしんらつな反動として,この小説が現れたと考えられる.

……略……このジャンルを確立したのは,マテオ・アレマンの《悪者グスマン・デ・アルファラーチェの生涯》(Guzman De Alfarache)であり,その頂点をなすのがケベードの《かたり師,ドン・パブロスの生涯》(Historia De La Vida Del Buscon)である.……略……

Posted by: Reine | Sunday, November 09, 2008 at 19:24

じゃぁまたついでに『ラサリーリョ~』について。

bookスペイン学を学ぶ人のために
これは生まれの卑しい少年ラサロが盲人や聖職者、従士など異なる身分の人間に仕えて糊口をしのぎ、飢えと戦って生きていく過程で、社会の悪や偽善、人間のさもしさや哀れというネガティブな側面を体験し、ずるがしこく世を渡って行くすべを身につけて出世し、最後は首席司祭の情婦をめとって「まさに幸運の絶頂」にある自分のかつての人生を、一人称で自伝的に物語る作品である。

……略……下層社会にうごめく人物たちの赤裸々な情念と行動を写実的かつ饒舌に描いて、近代小説の先駆けとなった対話小説である『セレスティーナ』が騎士道的・宮廷愛的理想主義を破壊するものであったとしたら、この『ラサリーリョ』もまた率直さの影に破壊力を秘めた皮相的な言説によって、スペイン社会を支配する宗教的建前や世俗的名誉観などの偽善性・虚構性に痛撃を加えるのものであった。

……略……ドストエフスキーやカフカなど人間性の暗部を鋭く抉り出そうとした近代ヨーロッパの写実主義文学の原点には、人間における悪をしっかり見据えようとしたスペイン・ピカレスク小説があったことを忘れてはならない。

Posted by: Reine | Sunday, November 09, 2008 at 19:40

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[E:danger] この作品については割と細かく書いてしまうと思う[E:danger] おはなし どこにでもあるごくありふれた地方都市。カテドラル、川、広場の柱廊、そして町一番の賑わいを見せるメインストリート。 35歳になって未婚のイサベルはさしずめ“敗者”である。18年前に修道女学校を出た後ずるずると時が経ち、独り身のまま来てしまった。もう未婚の女友達もほとんど居ない。 フアンはマドリード出身の銀行員。この町に赴任した当初は戸惑ったが、今ではcasino(=会員制娯楽クラブ)での遊び仲間もで... [Read More]

Tracked on Friday, August 19, 2011 at 10:26

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