La ley de Herodes [メキシコ映画]
( わりとサラっと観たので注意点がいくつかあります。)
あらすじ
1949年、ミゲル・アレマン大統領の任期中、サン・ペドロ・デ・なんたらという名の片田舎の鄙びた村の村長が、腐敗政治の挙句に現地住民たちによるリンチに遭い首を斬りおとされて死んだ。ちょうど選挙準備にかかろうかという時期だったもので、県知事としてはそんな政治スキャンダルはできるだけ早いうちに片付けてしまう必要があった。
知事はさっそく書記官のロペスに、問題の僻村に誰か臨時の村長を送りこんでおくよう強く命じた。ロペスは秘書のラミレスが推薦するフアン・バルガスという党員に目をつけた。こうして、凡庸で馬鹿正直なその男が村に送り込まれた。
バルガス自身は近代化と社会正義をこの村にもたらすと意気軒昂であったが……
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
面白いな。
音楽にひきずられてついつい笑ってしまったような箇所もあるけど、全編通してニヤニヤしながら観ていられる作品。私はすぐ眠くなるから三日に分けて観たけど、正直、途中で止めるのが惜しくて無理矢理見続けちゃおうかなと思ったりした。
テーマは普遍的だよね。
もしかしたら実際にこの大統領の時に特にこれこれこういう世相だったのですなどという社会的・歴史的背景もちゃんとあって、メキシコに詳しい人ならその辺はすぐにぽんぽん出てくるのかもしれませんが、それらをひとまず脇に置いて、単にユニバーサルな劇として観ているだけでも楽しい。
政治も宗教も腐りきっている図とか、中央が地方を実際は舐めきっているんじゃないかという気色とか、人民を従わせるのは結局は法と武力なのかねぇ、悪法も法ってか!という諦観とか、いや武力次第で法だっていくらでもデフォルメできちゃう危うさとか、そういうもろもろを描いた風刺画として。
そしてまた、別にこれ、悪代官と悪徳坊主と非情な女郎屋のおかみと……そんな連中が蠢く、そちも悪よのぉ・山吹色の菓子・何をなさいます、ご無体なーといった大江戸パターンに脳内で変換してもふつうに観ていられるのだわ。
オチは早くから読めるけど、それでいい、そこがいい。
面白いのにどうしてアマゾン(日)ではビデオでしか手に入らないのかね。もったいないね。
(※amazon.comにあるDVDはリージョンが1かもしれない)
・La ley de Herodes@IMDb
タイトルは『Herod's Law』、つまり「ヘロデの法」と訳せるわけだが。
たとえばこういうスレッドを見かけた: 「ついつい笑っちゃうようなスペイン語のフレーズって何かありますか」
その11ページ目にこうある: 「la ley de herodes, o te chingas o te jodes...esto es hablando de cuando uno no tiene alternativa (選択肢が無い様子を表す)」
「究極の選択」みたいな感じだろうか。(……ふと思ったが若い人は1989年頃に「究極の選択」っていう概念(?)が流行したことなど知らないんだろうな)
監督: Luis Estrada ルイス・エストラーダ
脚本: Luis Estrada 他
出演:
Damián Alcázar ダミアン・アルカサル ... Juan Vargas フアン・バルガス: くりくりお目目が可愛らしい。途中からだんだん猪口才。この人、いろんな役を演じられるんだねえ。それが役者というものですと言われればそうですけども。
Leticia Huijara レティシア・ウイハラ ... Gloria グロリア: 妻
Salvador Sánchez サルバドール・サンチェス ... Pek ペック: フアンの秘書
Alex Cox ... Gringo アメリカ人
Guillermo Gil ... Cura 司祭
Eduardo López Rojas ... Doctor 医師
Isela Vega ... Doña Lupe ドニャ・ルーペ: 女郎屋の女将
Pedro Armendáriz Jr. ペドロ・アルメンダリス ... López ロペス書記官
Juan Carlos Colombo ... Ramírez ラミレス: 秘書; フアンとは入党の同期(じゃなかったかな)
Ernesto Gómez Cruz ... Gobernador 知事
Luis de Icaza ... Alcalde Alfredo García 前知事
語彙はメキシコの言い回しが多いとは思うけどしゃべるスピードは速くないので聞きとりはさほどつらくない。わりとはっきり聞こえると思うよ。
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Comments
サラっと観るつもりのカテゴリーなのについつい語句をちょっとメモってしまった。
・interino, na: 1. adj. Que sirve por algún tiempo supliendo la falta de otra persona o cosa.2. adj. Dicho de una persona: Que ejerce un cargo o empleo por ausencia o falta de otro. U. t. c. s
・lenocinio: 1. m. Acción de alcahuetear.
・trata de blancas: 人身売買
・inhumación: 1. f. Acción y efecto de inhumar.
→・inhumar: 1. tr. Enterrar un cadáver.
・licenciado, da: 《ラ米》《中米》《メキシコ》《敬称》弁護士
・chamaco, ca: 2. m. y f. Méx. novio (= persona que mantiene relaciones amorosas).
・burdel: 1. m. Casa de prostitución.
・llanta: 4. f. Am. neumático.
・vacas flacas: 1. f. pl. coloq. Período de escasez
・infamia:
1. f. Descrédito, deshonra.
2. f. Maldad, vileza en cualquier línea.
・tenencia: tenencia.1. f. Ocupación y posesión actual y corporal de algo.
・chingadera: 2. f. malson. Méx. Acción ruin.
・correr: 28. tr. echar (ǁ deponer a alguien de su empleo).
・indios pata rajadas (patarajadas?):
Posted by: Reine | Thursday, October 16, 2008 23:39
ネタバレ気味だと思いますが
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1) 私はメキシコ事情を知らないから何とも言えませんが、「メキシコ」という国と「アメリカ」という国の関係も描いてあるんだと思うよ。「メキシコ」という国を裏切る―――あるいは過去に‘裏切った’―――分派の姿とかを重ねているとか?
2) フアン・バルガスがもっと奮闘するというか、銃をちらつかせて、時に発砲してしまいながらも、赴任当初の理念に燃えて道路を引いてきたり学校教育の普及を成し遂げちゃったりするのではないか、はちゃめちゃで法を無視したやり方であっても結果的に村にとっては良いことをしてしまっている可笑しさを描くのかと思って観ていたんだが、予想以上にアッサリと腐敗の道を突き進んでいくのが意外と言えば意外で、むしろ可笑しかった。
Posted by: Reine | Thursday, October 16, 2008 23:40
・ミゲル・アレマンっていう大統領のことをサラっとググると、「el primer Presidente civil 最初の文民大統領」っていうフレーズをよく見かける。
・フアン(やロペスやラミレスや知事)が属している政党はPartido Revolucionario Institucional)(←音注意)かな。1929年から万年与党だったんだね。その辺も映画からうかがえるよね。
あとはあとで(といっても、メモはほとんどとってない)
Posted by: Reine | Thursday, October 16, 2008 23:41