Chuecatown / Boystown / チュエカタウン [スペイン映画]
( サラっと観ただけなので注意点がいくつかあります。)(※まぁ、でも、今回は「サラッと」というほど「サラッと」観てはいない)
あらすじ
レオとレイはチュエカに暮らすゲイのカップル。このところチュエカ地区では古いマンションに独りで暮らすおばあさんが殺される事件が続いている。
ベテラン女刑事ミラと部下であり息子でありタッグを組んでいるルイスが連続殺人鬼を追ってチュエカにやってきた。
レオとレイも容疑者の一人とされたようだが、このカップルはそんなことよりももっと重大な危機に直面している。一つは二人の仲が気まずくなっているということ、もう一つはレイが呼び寄せた母親アントニアとレオが犬猿の仲であるということであった。
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傑作とか秀作とかじゃ全然ないけど、面白いは面白いよ。語彙は現代的で軽妙。話すスピードは昨日の『La estrategia del caracol』よりもずっと速いと思うが、一字一字聞き取れるくらいなのは、やっぱりスペインのスペイン語だからなのか、それとも単に『La Estrategia ~』の音響に問題があったということなのか。よくわからない。とにかく本作はスピードは速めだけどヒアリングは苦ではない。
チュエカの雰囲気を垣間見るのも楽しい。
時々映される窓からの景色、屋根、屋根、屋根ばかりの景色。あれは大昔、私も目にした景色。
ゲイのミゲルと二人でマドリードのチュエカ地区で3泊くらい過ごしたんだ。アパートを日割りで貸してもらった。あの窓から見た景色。あの旅行からもう10年以上も経ったのかと感慨深い。
2005年7月3日からはスペインでは同性婚が合法となった(※wikipediaですみませんが)。 つい2週間ほど前、ちょうどミゲルとしゃべったんだが、そう、彼も結婚するって
スペインで一時期ミゲルやその友達と毎週のようにゲイ向きのクラブに出かけていた。彼らは店の中では心底はしゃいでいたな。でも、さんざんはしごして明け方になって地上に出た瞬間に道の向こう側から大声で「¡Maricoooones!」と罵られたりしてちょっと(´・ω・`)ショボーンとする彼(ら)の姿も私は見た。それを思うと、いよいよこういうときが来てよかったねと思う。おめでとう、ミゲル。
こういう思い出がぐわっと湧いて出るのでそういう感傷もプラスして面白かった。
むりやり難を言うと、同じくチュエカ地区が舞台となっていた『Cachorro / ベアー・パパ』のような、私に問いかけてくるような姿勢は無かったような気がする点。
『Cachorro』と比べた場合『Chuecatown』は、舞台がチュエカであることも、はたまた主人公がホモセクシャルであることも、はたして意味があったのだろうかとちょっと我に返らないでもないという点。
『Chuecatown』からホモセクシャル性を差っ引いて、違う町が舞台のヘテロセクシャルの人たちの話として作ったとしてもストーリーの着地点はあんまり変わらなかったんじゃないか? だとすると、この作品のゲイ性やチュエカ性は単なる小道具だったわけで、そうだとすると、いや、それってどうなのよ、と。
思わないでもなかった。まぁ、これはいちゃもん。全体的に軽く楽しめるブラックコメディ。一人、あたしがその首を絞めてやんよ!という殺意を抱かせる登場人物がいたけどね。
・Chuecatown@IMDb
・Chuecatown 公式
・英題: Boystown
・東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映
監督: Juan Flahn フアン・フラン
脚本: Dunia Ayaso ドゥニア・アジャッソ Juan Flahn Rafa ラファ (基になっている漫画) Félix Sabroso フェリックス・サブローソ
出演:
Pepón Nieto ペポン・ニエト ... Leo レオ
Carlos Fuentes カルロス・フエンテス ... Rey レイ
Concha Velasco コンチャ・ベラスコ ... Antonia アントニア: レイのうるっせー母
Mariola Fuentes マリオラ・フエンテス ... Lola ローラ: レオとレイの女友達; 作家志望
Pedro Veral ペドロ・ベラル ... Fran フラン: レオが目の敵にしている知人
Joan Crosas ジョアン・クロサス ... Sr. Pardo パルドさん: レオの勤める自動車学校の経営者
Pablo Puyol パブロ・プジョル ... Víctor ビクトル: この地域一帯の再開発を企画しているディベロッパー
Rosa Maria Sardà ロサ・マリア・サルダ ... Mila ミラ: ベテラン女刑事; いくつも「~恐怖症」がある
Eduard Soto エドゥアルド・ソト ... Luis ルイス: その息子で部下
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Comments
ザッと見るだけのカテゴリーですから、メモはとらないつもりでいたのですが、小ネタが多いのでついつい幾つかメモしてしまった。
1) ビクトルがレオ・レイをお気に入りの店に連れて行く。「この店、好きなんだよねえ。フォスター的でしょ」という。
レオ: ジョディー?
ビクトル: ……ノーマン…。
レイ: あぁ、『サイコ』ね。
ビクトル: ………ノーマン・フォスター……。
2) このビクトル役のPablo Puyolがきれいなんだわ。まつ毛とか、たまんない。
(音注意) Pablo Puyol 公式
この顔ってありがちなのかもしれないけど、私、どっかで見たことがある気がしてならないんだよな。記憶の隅っこになんかすごい引っかかってる。映画じゃなくてどこかで見てる、というか会ってる気がするんだ。
Posted by: Reine | Monday, October 13, 2008 17:56
3) 殺人現場でルイス刑事がレオ・レイに質問する:
「見たところお二人はホモセクシャルのようですね。その中でもなにか特定のジャンルに属していますか? レザー系、なになに専、熊系とか、ちょっとした変態とか、ほらたとえば聖水プレイとか」
レオが呆れて聞き返す:
「それ、捜査となんか関係あります?」
4) レイの母親がレオを四六時中ののしるんだが、その一つ:
「このマンション、あんたみたいな、pasivoでケツが日本の国旗みたいになっちゃってるオカマにはちょうどいいじゃない」
pasivoっていうのは「受身の」という語。文法用語だったら「受動態」という意味でもある。
でもゲイの世界では「pasivo」は、だから、ほら、受け入れる側よ。その逆の、入れる側の人は「activo」。だと思うよ、私はどっちでもないからわからないけど。(日本語のゲイ用語でもpassive⇔activeでいいのかな)
だから、pasivoであるレオの尻が日の丸みたいに云々というのは、activoのレイの母親が息子の恋人レオに向けるセリフとしては、あまりにもえげつないと思いました。
レイもここは冷やっとしたのか、「ママ、度が過ぎるよ」とたしなめていた。(でも、だいたいがレイがよくないと思ったわ、私は。全体を通してレオが可哀想だった)
Posted by: Reine | Monday, October 13, 2008 18:09
5) あとは……チュエカ地区には「芸」と漢字で大きく書かれた看板があるのだけど、私自身はそれを見たことがない。ずっと見たいと思ってるけど、マドリードに行かないんだからしょうがない。(マドリードみたいな内陸の町って、行くことを想像するだけで息が詰まっちゃうの)
この映画で一瞬だけ「芸」の文字の下半分が写り込むね。見られて嬉しかった。
2008.11.12加筆というか訂正
「芸」って文字の看板、見たことなくなかった。『Cachorro』でも出てきてたみたいじゃんね。『Cachorro』のところで私コメントしてたわ。
6) 語句はことごとくメモればかなり面白いと思うよ。けど、今日はこれだけ
apolíneo, a:
1. adj. Que posee los caracteres de serenidad y elegante equilibrio atribuidos a Apolo, dios griego. Suele contraponerse a dionisíaco.
2. adj. Dicho de un varón: Que posee gran perfección corporal.
3. adj. poét. Perteneciente o relativo a Apolo.
7) 自分の外見を強く美しく気高く造り上げている人が「私を見よ」と言って仁王立ちになる後ろ姿は、Red Dragonの「I am not a man.」のシーンを彷彿さs………せるかぁっ?
※Red Dragonのシーン (←でも、これ、半分まで来たら閉じた方がいいと思う……。あたし、ちょっとこれ直視したことないわ)
Posted by: Reine | Monday, October 13, 2008 18:33
あとはヘスス・バスケスと「Arny事件」について書こうと思うけど、夕飯作ってきます。
Posted by: Reine | Monday, October 13, 2008 18:35
今年のゲイ&レズビアン映画祭でこれを観た時、まず最初のクレジットのところで、「ロサ・マリア・サルダが出てる!」「コンチャ・べラスコが出てる!」と思った。他の(特に)クマ系の俳優のことは知らないんだけど、有名なんだろうか?
そして、「あなたがたは特定のジャンルに所属していますか?」のくだりでは、観客の(主にゲイの)皆さんがゲンラゲンラ笑い転げてましたよ。
確かに、チュエカである必然性は低いかもな・・・。監督がチュエカを舞台に映画を作りたかったのかも知れないね。
Posted by: abetchy | Tuesday, October 14, 2008 22:39
あと、ロサ・マリア・サルダの息子の服装(やその他の面で)の変化が面白かったな。
軽い気分で映画でも観たいなーって時に楽しめる一作という感じ?
Posted by: abetchy | Tuesday, October 14, 2008 22:42
Abetchy
なるふぉどゲラゲラ笑っていたのですね、ゲイの皆さんは、あのシーンで。それは興味深い。
息子ってのはあの部下の刑事ね。服装が、ほんとに……どんどん変わっていくんだよね。あれはおもしろかった。いかにもな感じになっていくのが。
Posted by: Reine | Thursday, October 16, 2008 23:59