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Thursday, September 20, 2007

Estrellas de la Línea / 線路と娼婦とサッカーボール [スペイン映画]

estrellas
【冒頭、テロップ】
Junto a la vía del tren que atraviesa la ciudad de Guatemala, en un lugar llamado La Línea, trabajan doscientas prostitutas que son habitualmente maltratadas y asesinadas con impunidad. グアテマラシティを横切る線路沿いに‘ラ・リネア(ライン,路線)’と呼ばれる地区がある。その界隈で働く200人ほどの売春婦は日々暴力に晒されており、こういった女たちを殺した者が罰せられもしないことなどしばしばである。

Un grupo de ellas, con el fin de llamar la atención y reclamar sus derechos, formaron un equipo de fútbol, entrenaron durante semanas y se apuntaron a un torneo local. Esta es su historia. 問題提起をし人権尊重を訴えようと、彼女たちはサッカーチームを結成した。トレーニングを積み、地元のトーナメントに登録した。
____________


登録はすんなりと受け付けられたが、ふたを開けてみて売春婦だと知ったとたんに事務局はこのチームを締め出しにかかった。対戦相手からも排除の要望が提出されるなど、売春婦に対する根強い偏見と差別を彼女たちはグラウンド内外で実感することとなる。しかし、ここで退いてしまったら何も変わらない。彼女たちはマスコミを通して社会に訴える。


売春婦たちは練習グラウンド――と言えるほど立派ではない空き地――の片隅でチーム名を話し合う。「‘線路沿いの売春婦’でよくない?」「F.C.はつかないの? F.C.は」「私たちが売春婦だってことは誰でも知ってるんだから、わざわざ売春婦って名乗らなくていいんじゃない?」「じゃあ、‘線路沿いの星 (レイルロード・オールスターズ)’は?」

こういう会話をしている時の彼女たちの表情は明るい。大きな口を開けて、目尻のしわを気にもせず、三段腹をよじり、みんなで大笑い。「娼婦、バンザイ、いぇ~い!」と気炎万丈。売春婦を母親に持つ子供も明るく優しい目をしている。このラ・リネアという地区は、グアテマラ(というか、中南米)に行ったことのない私の目には、とても寂れているようにも見えるが、一つ一つの壁の色づかいがとても鮮やかなので、町の景色もまた‘明るい’ものとして目に入ってくる。

けれども、それぞれの個室に戻ったとき彼女たちがカメラに語る身の上話は、暗すぎて辛すぎてにわかには信じがたく、スペイン語を聞き間違えたのかと何度も巻き戻し、あるいは英語字幕を何度も確かめたほど、私には‘よその国の話’だった。いっそ‘よその星の話’と思いたいくらいだったが、これはどこかの国の現在であって、私はそれをどうすることもできない。

昔、ジョージ秋山の『浮浪雲』をたけしと大原麗子でドラマ化してたとき、なんだったかなぁ……女郎屋の主人が極悪で労働条件が劣悪で、そこの妓を一人救出しようとするんだけど、あと一歩足を踏み出せば逃げ出せるというところでその妓が立ち止まり、「私が逃げられても仲間はどうにもならない」ようなことを言って部屋に戻ってしまう話があったような気がする。記憶曖昧。

『Estrellas de la Línea』はそれと似たやるせなさが残る作品でした。この人を一人救出し、このサッカーチーム一つにスポットライトが当たっても、そのあとは? そのほかは?って。私は今は自分の頭のハエを追うことでいっぱいだから、手が出せない。出さない。

でも、彼女たちのことを知るだけでもいいんだよな。と思うことにした。だから年末に観られたら観てください。今私にできるのはこうして書いておくことくらい。

もしも私の周りからハエがいなくなったら、そうね、何がいいのかな、やっぱり教育なのかな。『ビンタと最高のアイディア』でも書いたけど、たぶん近道なんだと思う。それについて考えていけたらいい。でも、ほんと、今はハエ。

娼婦の息子が小学校から落伍しかけていた。母親は「まだまだ学校を辞めるなんて言う齢じゃないわよ」と諭していたけど、ホントにそう。「やめるな」と彼に伝えたかった。お母さんのためにも、そして君の次の世代のためにも。


監督・脚本: Chema Rodríguez チェマ・ロドリゲス

・一昨日スペインラテンアメリカ映画祭で上映された作品
・DVD(スペインから購入; 15.47ユーロ)
Estrellas de La Línea @IMDb 7.4 (ジャンル: ドキュメンタリー)
・『レイルロード・オールスターズ』
制作会社のサイトにトレーラーなどあり(TOP ⇒ CATALOGO ⇒ largos)

日本公式 (邦題: 線路と娼婦とサッカーボール)
・スペイン映画(グアテマラ映画)
マラガ映画祭参加作品(2006年に‘Menciones especiales’)

線路と娼婦とサッカーボール@ウーマンエキサイト
線路と娼婦とサッカーボール@CinemaCafe
線路と娼婦とサッカーボール@goo
線路と娼婦とサッカーボール@映画生活

(コメント欄に語句メモ等)

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Comments

(コメントをガシガシ書いていくのはたぶんこの週末)

(※個々の娼婦の事情は一応名前と詳細は書き取ってあるけど、ここに書いても仕方ないので、その辺ははしょります)

(とりあえず、マリーナ婆さんの件だけ)

※このドキュメンタリー映画出演がきっかけで、マリーナ婆さんは『Triste Borracha』(他、50年代のボレロを全10曲ほど)をレコーディングしたらしい。

※さっき開こうとしたらものすごく重かったんだけど、『Prensa Libre』という雑誌(?)の16ページ目がマリーナ婆さんの特集です(PDF)。

そこ読むと、現在68、9歳かな。18歳~20歳までは歌を歌っていたこともあるんだと。「10曲の中では『Triste Borracha』が一番好き。自分が目を失ったときのことなど思い出され、まるで自分のことが歌になっているんじゃないかと思うほど」。

なるほどたしかに:
Soy triste borracha que paso la vida bebiendo y llorando con un llanto amargo de este ingrato amor. El mundo entiende que a una mujer buena la arrastra de pronto miseria de vida, escoria de amor. Me miro al espejo, quiero romperlo, por siempre maldigo al hombre perverso que me hizo infeliz. El vino es mi amigo, él solo comprende la horrible tragedia que enlodó mi vida y arrastra mi ser.

若い頃は飲んだくれてた。夫に出会って変わるまで。でも、読み進むとどうもあの旦那さんはつい最近(※2006年?)亡くなっちゃったようだぞ。最愛の人だったって。「彼が私に家と食事と、尊厳を与えてくれたのだから」。20年近く連れ添ったんだねえ。

旦那さんはマリーナが『Triste Borracha』を歌うのをいやがっていたらしく、『Nuestro Amor』を好んだと。

※そしてバルセロナでテレビ出演も堂々と果たしてます。まだ片目だけど。いっしょに出演してるのはコーチ兼デザイナーのキンバリーかな。
↓↓↓
Marina canta "Triste Borracha" en Barcelona

Posted by: Reine | Thursday, September 20, 2007 at 00:29

あの婆ちゃん、歳のせいか少しはずれてしまうけど、本物じゃなくてどっかから連れてきたプロかと思うほど、聞いてると心にぐっと染み込んでくるいい歌い方するよなあと映画見ながら思ってたら、映写後のQ&Aで、ベルリン国際映画祭だっけかで皆の前で歌って、満場の拍手を受け、これが夢だったのよとか言ってたとかそんな話をしていたけれど、昔本当に歌ってた人だったんだ。
・・・でもあの爺ちゃん、死んじまったんだなあ。

Posted by: KLE4c | Thursday, September 20, 2007 at 17:57

KLE4cさん
そう、最初歌が聞こえてきて、「あぁ、BGMかぶせてるんだよな」と思って漫然と観てたんですよ。そしたらマリーナ婆さんが歌ってるんだと気づいて。

その時の私のメモ:
※マリーナが歌ってるの? マジで? びっくりした

びっくりしてから次には「仕込みかよ!」と思い、気になって調べていってあのPDFファイルやYoutubeに行き着いたのでした。

>昔本当に歌ってた人だったんだ
↑↑↑
私の想像ですけど、ほんとにショービジネスの中にいたというよりは‘どさ周り’というか地元のキャバレーの歌い手だったとかそういう感じかなぁと思ったりもしました。

Posted by: Reine | Thursday, September 20, 2007 at 23:46

語句メモ
estrambótico, ca: adj. coloq. Extravagante, irregular y sin orden

de mala muerte: loc. adj. coloq. De poco valor o importancia; baladí, despreciable.
例) Un empleíllo de mala muerte.

escoria: f. Cosa vil y de ninguna estimación.

contar con:
10. intr. Tener, disponer de una cualidad o de cierto número de personas o cosas.
例) El equipo cuenta CON once jugadores.
例) Cuento CON su simpatía.
11. intr. Confiar o tener por cierto que alguien o algo servirá para el logro de lo que se desea.
例) Contamos CON tu hermana PARA el viaje.

trompudo, da: [名][形] coloq. Arg., El Salv., Hond., Méx., Nic. y Ur. Dicho de una persona: bezuda.

covacha: 2. f. Vivienda o aposento pobre, incómodo, oscuro, pequeño.

marero, ra: [形][名][El Salv.][Hond.] Dicho de una persona: Que es miembro activo de una mara.
→mara: [女][El Salv.][Guat.][Hond.][Méx.] Pandilla de muchachos.

machete: [男] Arma blanca, más corta que la espada, ancha, pesada y de un solo filo.

poner el grito en el cielo: fr. coloq. Clamar en voz alta, quejándose vehementemente de algo. 

sidoso, sa:[形][名]《話》《軽蔑》エイズの

trompón: m. [rural] El Salv. y Hond. trompada (= choque de una persona con otra).

ティカル(= Tikal

土木学会附属土木図書館 景観デザイン・フォトライブラリー 文化遺産

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 00:01

おっと、書き忘れてた。

ユニフォームのデザインを決めたりしてる(布屋さんのカタログなども見たりして)

背番号が7だというCarolina。
El siete del diablo tiene que ir grande. 悪魔の数字7はデカく書いてないとね」という。

数字の7についてどっかに何か書いてないかなぁと探したんだけど、とりあえず今これだけ ⇒ ¿por que el numero del diablo es el 666?

なんか「7」は完全性の数字なんだとか?

それととりあえずWikipediaの「siete」の項
>El siete es un número muy recurrente en la cultura. Son siete los días de la semana, siete los colores del arco iris y siete los pecados capitales. など。

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 00:02

まとまりのないメモを幾つか

1) 隣国のエルサルバドルから職を求めて移住してきた娼婦もいる。グアテマラとエルサルバドルの関係とか、それぞれの国民の相手への視点とか、両国の経済状況とかわからないことだらけなので何とも言えないんだけど、こういった移民娼婦は他の娼婦よりも更に弱い立場にあるのかな、やっぱり。蔑視や虐待が何割か増しだったりするのかな。


2) スペイン時代の友人が何人かグアテマラにも留学しに行った。スペイン人の男友達はそういう彼女たちのことを心配してか、「なんだってあの子たちはGuatepeorにわざわざ…」と呟いていた。

(※guatepeorとは:
「Salir de Guatemala para entrar en Guatepeor.」という地口――たぶんスペインで造られた――があるんだよ。「jump [leap] out of the frying pan into the fire 小難をのがれて大難に陥る」というような意味)

なんだかそれを思い出した。

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 23:24

3) 愛人の男に片目を抉られた娼婦。別の愛人が義眼をプレゼントしてくれたが泥酔して失くしてしまったという。片目を失ってからはさまざまに不便だし、何よりも体調が著しく悪化して難儀している。

唇が分厚くてかまわない、靴を履いてなくても不細工でもなんでもいい、私が愛せて私を愛してくれる人をどうか授けてくださいと‘神ちゃま’にお願いした。

「神様からの贈り物よ」と夫を紹介してくれる。二人の暮らす掘っ立て小屋は、1998年のハリケーン・ミッチ(Huracán Mitch)で目茶目茶になってしまった。夫は今、彼女のために家を造ってくれている。

町の眼科医まで夫が付き添ってくれる。掘っ立て小屋までの帰り道、急で細い坂道、石ころだらけのでこぼこ道を、夫は振り返り振り返りしながら手を引いてくれる。

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 23:34

ああ、あんな↑調子で全て書いてしまいそうだ。いかんいかん。書かずにおかないと。あぁ、すげぇ書きたい。我慢する。

とにかく、彼女たちの人生は‘軽視’の連続です。子供らしさも軽んじられ、娘としても妻としても誰としても尊重されず、人としての尊厳はまるで考慮されず。何もかも奪われて、生きていく意味も見失い。

だから彼女たちは行動を起こした。
子供たちの権利を守るため、社会から受け入れてもらうため、自分たちの職業がこれ以上の差別を受けなくて済むように。

彼氏・夫というごく身近の男たちの受け止め方に薄っすらとだが変化が見られたようなシーンもあり、それは光明だったかな。

でもね、観ていて心配だった。
このドキュメンタリー撮影の後はどうなっただろうって。こういうムーブメントって往往にしてパッと盛り上がってシュッとしぼんじゃうからなぁって。

その後どうなったでしょうか。今はどうなってるでしょうか。

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 23:45

彼女たちが事務局などに交渉に行っても門前払いである。

「お行儀よくいったのに」「まるで動物を表に放り出すみたいに出て行けの一点張りで」「あの人たち、立派な学校出ていい教育も受けてるんだろうに、私たちには礼儀のかけらもみせなかった」

彼女たちを蔑む世間もまた‘無知’から脱しているとはいえない。汗でエイズがうつるという声も試合中にきいた。試合中にひざをすりむいたら、芝生を替えろと野次がとんだ。

娼婦たちはそれを前時代的だと批判する。「たしかに私は売春婦だけど、イコール馬鹿じゃないの」。

Posted by: Reine | Friday, September 21, 2007 at 23:55

「たしかに私は売春婦だけど、イコール馬鹿じゃないの」

‘売春婦だからイコール性器’という捉え方があるとしたら、それはやっぱり間違っているのである。

喧嘩騒ぎで警察に連行された娼婦がいる。警官が4人、「さっき喧嘩してる時に聞こえたけど、あんた、売春婦なんだってね?」と、取引を‘提案’してきた。彼女が拒絶できるわけもない提案。

特別公務員暴行陵虐罪っていう法律は存在していないんだろうか? もしかして概念すら存在しないの? そんなまさか。

Posted by: Reine | Saturday, September 22, 2007 at 00:02

まぁ、でもやっぱりな……。
そうは言っても娼婦への差別を取り払うのは、万国共通で難しいのではないですかね。合法とされてても、じゃないかな。その辺、世界的にはどうなんだろう?

Posted by: Reine | Saturday, September 22, 2007 at 00:12

セルバンテスの土曜映画上映会で3月はこの作品がかかるそうです。

3/7 14:00
3/14 17:00
3/21 14:00
3/28 17:00

B1オーディトリアム、入場無料、先着順

Posted by: Reine | Tuesday, March 03, 2009 at 21:52

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