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Saturday, August 11, 2007

La Caza / 狩り

cazaたぶん全編、荒野で撮影されているけれども、これは密室劇なんだね。広々とした野っ原に実は閉じ込められている。空気の熱さなんかを想像するだに息苦しい作品。

※映画冒頭の注意書き:
Esta película ha sido realizada en una finca acotada para la caza del conejo en el término de Seseña (Toledo) y en el pueblo de Esquivias (Toledo). (「ウサギ猟指定区域で撮影しました」とのこと)

そう、ウサギ猟。
……これさ……リアルに殺してると思うんですよ。猟銃、ぶっぱなしてるんですよ。ウサギ、たくさん殺されてるんです。犬やフェレット?にウサギを攻撃させる手法で狩っているから、Ummm………、ウサギに何かしらの思いがある人にとってはショッキングなシーンもありますね。

あと、もっと大型動物の解体シーンもあります。吊り下げて腹を掻っ捌いてます。「かっさばく」という動詞がちゃんと変換されるんだと今知りました。

なので、元々あんまり肉食人種じゃない私のようなヤワい人にはきついシーンもあります。ウサギのぴょこたんぴょこたん逃げる様と、噛み殺されつつあるときの断末魔の叫びとか……途中、「やーめーてーくーれー」と独り言を漏らしました。何度も見直したくなる映像ではなかったです。(なんて言ってても私も、ウサギの肉だって食べたことはあるわけですがね)

以上、鑑賞上の注意事項をお伝えしました。次に、DVD(スペインから通販)のジャケットに書かれたストーリー紹介を訳します:

マドリード近郊の狩猟区。夏の日。古くからの友人同士である男が3人と青年が一人。些細なできごとが積み重なって、徐々に暴力・恐怖・憎悪・不満の記憶が男たちに蘇る。

日が傾くころには、彼らの照準器は互いの姿を捕らえるようになっていた。やがて撃ち合いが始まり、もはや死者の地と化したこの山から、青年だけが逃げ延びるのだった。
__________

……って、ストーリー丸ごと説明しちゃってあるじゃん! いいの? えっと、まんまです。つまりこういう物語でした。おしまい。


それだけではアッサリしちゃっているので、なんかくだらないことを書き足しておこうと思います。3人のおじさんが似ていて識別が難しいと思うので、ちょっとメモしておきます。

ここで思い浮かべてもらいたいのは、のび太・ジャイアン・スネ夫の3名です。あの3人が青年期を共に過ごし、中年期に達したと想像してください。

力の差や経済格差も今ではすっかり縮まりました。似たり寄ったりの人生を歩んできました。一時期には共同でビジネスまでやっていたのだし、今日だってこの狩りにみんなでウキウキとやって来たんですから。仲が悪いなんてことは決してないんです。良好ですよ。一応

しかし、そうは言っても、昔ながらのいろんな意味での力関係がどこかで時々顔を覗かせます。このところ8年ばかり行き来の絶えていたこういう3人のおじさんが、今日は久々に集まって狩りを楽しもうというのです。


ドラえもんの3人はそれぞれが象徴的でしたよね。

のびた:使い走りっぽさ・ドジ・ヘマ
ジャイアン:威張り散らしてるっぽさ
スネ夫:お金は持っているっぽさ

その「~ぽさ」に、『La Caza』の壮年3人を当てはめてみるのです。

ルイス ⇒ のび太:
※冒頭、ジープに乗ってやって来る時点からSF小説を読み耽っている人

ホセ ⇒ ジャイアン:
※猟犬を連れてきた人。

パコ ⇒ スネ夫:
※ジープを運転してきた人。

こういう風に見ていくと、どれが誰だかわからなくなっちゃうっていう事態は避けられます。…たぶん……。たとえ途中で顔がわからなくなりこんがらかったとしても、のび太的なコンテクストならルイス、ジャイアン的なのがホセ、スネ夫的なのがパコです。これは映画の中でほぼ一貫していますから。

おまけとなりましたが、唯一の若者、エンリケは「しずかちゃん」ってことにしておけばいいと思う。肌露出担当だし。

・スペイン映画
La Caza @IMDb
・英題: The Hunt
スペイン書房でもビデオ取り扱いあり

監督: Carlos Saura カルロス・サウラ
脚本: Angelino Fons アンヘリーノ・フォンス Carlos Saura

出演:
José María Prada ホセ・マリア・プラダ ... Luis ルイス
Ismael Merlo イスマエル・メルロ ... José ホセ
Alfredo Mayo アルフレド・マジョ ... Paco パコ
Emilio Gutiérrez Caba エミリオ・グティエレス・カバ ... Enrique エンリケ (パコの義弟)
Fernando Sánchez Polack フェルナンド・サンチェス・ポラック ... Juan フアン(山守?の男)
Violeta García ビオレッタ・ガルシア ... Carmen (フアンのところの娘)

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Comments

もうちょっと3人のことをまとめてみると、関係の密度の濃淡やら個々の事情が見えてくる。

ルイス(のび太):
・妻ルシアに逃げられた
・パコが結婚したのは知らなかった
・ホセが若い女マリベルとデキちゃったのを知っている
・ホセのそういうところに呆れてる感じ

ホセ(ジャイアン):
・8年前のパコの結婚式に出席している
・ルイスが奥さんに逃げられたのは知っていた
・胃薬らしきものを常用している
・ルイスを急き立てたりする声に苛立ちや侮蔑のトーン

パコ(スネ夫):
・ルイスが奥さんに逃げられたのを知らなかった
・ホセが若い女とデキちゃったことなんて知らなかった

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:14

ルイス(のび太):
・山守のフアンの飼っているロバに乗ってみたけどおりられない。「ホセー、落っこちちゃうよ」と助けを求めたりする(※小原乃梨子さんの声が幻聴として聞こえてきそうなカッコ悪いシーンである)
・そのとき指を怪我する
・ロバからおろしてくれたホセに、「一人でおりてればこんな怪我しなかったかも」と言ったりする
・「ホセ、救急箱どこだよ」「ねえ、救急箱は?」とせっつく

ホセ(ジャイアン):
・早く狩りに行きたくてしかたないのに、ルイスがロバで遊び始めたりしたので怒鳴りつけてる。再三怒鳴りつける。
・ルイスに対して、さっさと設営を手伝うように怒鳴る
・グラス類を取り出す時、パコに対して、「お前のあんな(乱暴な)運転じゃあどうなってるかなぁ」とわざわざ口にし、実際に割れてるのを確認すると、パコに見せて「やっぱりなあ。まあ、気にするな、たいしたもんじゃないから」と言ったりする

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:16

だから最初は、ルイス(のび太)の幼児性とそれに苛立つホセ(ジャイアン)の傲慢さとがぶつかり合う点に関係の悪さが目立つ。しかしそのうちもっと色々見えてくるんです。

ホセ(ジャイアン):
足の不自由な山守フアンをある程度気遣っているようにみえるシーンもあるし、若いエンリケに声をかけたりする一面も見せる。

パコ(スネ夫):
・山守のフアンは片足が不自由である。ホセはフアンと並んで話をしながら歩いている。そのホセに向かって、「モタモタするなよ。時間もったいねーよ」と大声で言ったあと、「ほんと、tullidos(身体障害者)はゾッとするぜ。なんか縁起が悪い感じでよ」と小声で吐き捨て、ルイスやエンリケをドン引きさせるのだった。

ルイス(のび太):
・パコのその発言にドン引きし「お前のそういうとこ、変わらないな」と言う

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:18

・ついでに書いておくと、エンリケ青年はお坊ちゃまですね。ジープもエンリケ(の家)のだし、持参した銃も、「父のです」と言いつつも、わりと銃マニアっぽいルイスが瞠目し「‘品質’といえばコレ、だよなぁ」とうっとりするくらいのドイツ製のものだし。

エンリケの家は裕福です。そしてエンリケの姉と結婚しているのがパコ。お金目当ての結婚だったのかなんなのか……。そういうのも人物設定を理解する助けになるでしょう。

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:20

炎天下、4人は横一列に無言で歩いていく。日差しが強すぎて集中力を殺がれ、どうしても考え事をしてしまう。

ホセ(ジャイアン):
「パコにはきっとわかってもらえる。なんと言ってもパコは狩りが好きだからな。マリベル…マリベル……パコが了承してくれさえすれば何もかもうまく行くんだ……。いかんいかん。今はとにかく狩りに集中しないと」

パコ(スネ夫):
「ホセに狩りに誘われた時どうして二つ返事しちゃったんだろな。どうかしてたぜ。あいつは俺に金を借りたいだけなんだ。そんなのわかりきっていたのに、どうして…」

ルイス(のび太):
「ルシアはどうしているかな。どこの男とくっついてんだか。もう忘れよう。俺はルシアとのことでも他のことでも全く馬鹿みたいだったぜ。どうにもならんよ…」

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:21

ちなみに。
山守のフアンは、ホセに対しては3人称で話し続ける。逆にホセからフアンに対しては2人称です。主従関係とまではいかないけど、ホセが、荒野で貧しく暮らすフアンにとっての大切な顧客であることはたしかです。が、それでもフアンはホセとは長年に渡って‘友好的な’関係を築いてきたと感じてはいた。

母親の容態が悪化し高価な薬が必要になったので、フアンはホセに今後の猟の前払いを頼み込む。が、自身も金策に苦しんでいるホセは断った。「これまでただの一度だって私はあなたに頼み事などしなかったじゃありませんか!」と、声を荒げたフアンであったがどうすることもできなかった。


ちなみに二人称と三人称について目に付いた箇所といえば、映画冒頭、エンリケ青年が初対面のルイスに話しかけるシーンもありました。

エ: ¿Qué le parece mi sobrino? (うちの甥っ子の写真、いかがです?)
ル: Oye, muchacho, a mí tutéame, que no soy tan viejo. (おいおい、君ぃ、敬語なんていいよ、俺、そんなに歳いってないぞ)

これまで数多くの映画で、túでしゃべってくれだのUstedはよしてくれよだのいうシーンを目にしてきましたが、だから、スペイン人が人と交際する上で割と重要なポイントなのかもしれなくない?

あるいは、映画などにおいて、人間関係とか心理状態をシンプルにわかりやすく示せる便利なツールとしてusted/túの使い分け絡みのシーンを用いてるのかも?

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:28

と、まあね、あんな具合にお互いの本音が、心の声としてあるいは陰口として語られていくのです。友人の人間性に対する漠然とした悪印象ってものは、気づかないように意識しないようにと努めるうちに無事に見えなくなったりもするけど、心の中で言葉に換えた時から増幅していっちゃうし、ましてや第三者にこぼしてしまうというのはね、もはや断絶も覚悟しないとね。

「俺は弱ってきているのに、どうしてアイツは変わらないんだ」。暑さ・熱さと狩りの高揚感とが相俟って、皆がどんどん苛立っていく。男の、っていうか人間の、意地悪なところがぽろぽろ出てくる。言わなくていいことを言い合って、互いのプライドを潰し合って。

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:37

・Le ha dado por leer noveluchas de marcianos.
→ darle a alguien por algo: Entrarle muy vivo interés por ello. (「誰それは(最近)~にハマってる」というような時に使う)
→novelucha = novela (小説) + -ucho, cha (接尾・軽蔑) = 三文小説

・mixomatosis: ウサギの粘液腫症

・「Me saca de quicio.」
sacar de quicio a alguien: Exasperarle, hacerle perder el tino.

・borrón y cuenta nueva: Usada para expresar la decisión de olvidar deudas, errores, enfados, etc., y continuar como si nunca hubiesen existido.

・desquiciar:
3. [他][再] Trastornar, descomponer, exasperar a alguien.
4. [他][まれ] Hacer perder a alguien la privanza, o la amistad o valimiento con otra persona.

青年エンリケの役者Emilio Gutiérrez Caba、この当時はいけめん系。美少年系(?)。この作品の中では"可愛い子ちゃん"役だね。最近だと、『サーティーン みんなのしあわせ』に出ていたんだって。まったく気づきませんでした。

Posted by: Reine | Sunday, August 12, 2007 at 20:38

スペイン・ポルトガルを知る事典(平凡社)』をめくってたら、カルロス・サウラの項でこの作品について書いてあったので抜粋:

>ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した第3作の『狩り』(1956)

>この時期のサウラはシンボリズムに富むリアリズムとでも呼ぶべき独特のスタイルを確立し,60年代から70年代のスペイン映画を代表する存在となった.『狩り』は映像言語からするとニエベス・コンデの『根なし草』(1951)やエリセの『ミツバチのささやき』(1972)などと並ぶスペイン映画史上の結節点となる作品で,全く無駄のないリアリズムで貫かれているが,すでにそのスタイルの萌芽が認められる.リアリズムを基調としながら随所にシンボルがちりばめられているというこの独特のスタイルは,検閲によって自由な表現ができないという状況が生み出したものであるといえる.

Posted by: Reine | Sunday, September 09, 2007 at 09:59

いつも頼る『スペインハンドブック』(三省堂)にもそういえば『狩り』について書いてあるはずだよね。と気づいた。やっぱり書いてあった

>……略…… いずれにせよ体制批判,ブルジョアジーの腐敗暴露,そしてその表現のグロテスク精神,残酷さ,といったもの――つまりはスペイン芸術の真髄――はサウラのその後の作品を決定したのである.『狩り』(1966)は1966年のベルリン映画祭で監督賞をとったが,兎狩りが人狩りであったというスペインのブルジョア階級の解剖が主題で,サウラのテーマとスタイルはこの映画で確立されたといわれている.

Posted by: Reine | Sunday, September 09, 2007 at 22:27

この作品を見てた頃(2007年の8月)なんかは、私はまだちゃんと映画を考えて観るということをしていなかったので、いつかもっときちんと観直さなきゃいけないなと思っていました。

そのためにも、everything reminds you of somethingのbananafishさんの記事がたいへん参考になりました。ありがとうございます。

Posted by: Reine | Wednesday, December 24, 2008 at 11:35

言及していただきありがとうございます。いつもこちらの映画情報参考にしています。

私はふだん映画を見ても「おもしろかった」「音楽がよい」等しか考えないのですが、今回スペイン人による解説付きだったので背景まで知れて普段以上におもしろかったです。今後も見た映画をメモしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

ちなみに先生が授業中に使っている本はLarousseの"Cine Espanol"でした。

Posted by: bananafish | Friday, December 26, 2008 at 07:39

bananafishさん
こちらこそいつもブログを楽しく拝読しています。

解説つきの映画鑑賞はいいですね。
私も昔スペインで学校に通っていた時は1か月に1度くらいそういう授業がありました。(あの頃はワケわかってなかったのですけどね…)

今はといいますと、私にスペイン語映画を解説してくださるのは、よくコメントをくださるアリ・ババ39さん(や、その他のお仲間)です。今年の2~5月に‘映画講座’で知り合えたのですが、そこからの私の映画鑑賞生活は以前と比べモノにならないくらい楽しいものとなりました。

これからもbananafishさんともこういう場を使って情報交換できれば幸いです。良いお年を。

Posted by: Reine | Saturday, December 27, 2008 at 11:10

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