« Spanglish / スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと [アメリカ映画] | Main | «No la pegues», ¿ejemplo de laismo? »

Saturday, May 05, 2007

El Día de la Bestia / ビースト 獣の日 [スペイン映画]

el dia de la bestiaアンヘル・ベリアトゥアは神父であると同時にデウスト大学の神学教授である。慌てた様子で教会へ駆け込むと司祭に告解する。

「懺悔したいのです」
――何をしたか言ってごらんなさい

「何の罪も犯していません。これから犯すのです。ありとあらゆる悪事に手を染める決意です」
――どういうことですか

「やらねばならないのです」
――いったい君はさっきから何を言っているのです?

「わかったんです、暗号を解いたのです」

長年二人で取り組んできた黙示録の解読にアンヘルはついに成功したというのである。悪魔がこの地上に生を受けんとしているという人類滅亡のメッセージを読み取ってしまったのだ。暗号の示す日時はまさに今日、95年のクリスマスイブであり、アンヘルの推理によればマドリードがその地である。

司祭は声を落として言い聞かせる。「我々の敵は非常に強力だ。ちょっとでも気を抜いたら殺されてしまうぞ。この会話だって聞かれてしまったかもしれない」。

「どうかお力をお貸しくださいますね」
――勿論だとも

二人は緊張した面持ちで歩みだしたが、そのとき信じがたい偶然が司祭を襲うのだった。


独りきりになったアンヘルはクリスマスイルミネーションの煌く街へ急ぎ足で出て行った。イブの夜中から25日の夜明けまでが勝負である。悪魔誕生の精確な場所を何としても突き止めなければ。マドリードであるのはわかったが、この街のいったいどこなのか。

悪魔は非常に狡猾で、神の猿真似をして人を欺くケダモノだから、悪魔が生まれたら人々が釣り込まれてしまわないうちに葬らなければいけない。そのためには私の方から悪魔に近づく必要があるんだ。

……そうだ 京都、行こう。

もとい、「そうだ 悪さ、しよう。」 アンヘルは思いつく限りの悪事を生真面目に実践し、悪魔との接触の機会をうかがう。


いかにも悪魔っぽい音楽を求め、アンヘル神父はヘビメタ系のレコードショップに入る。そこの店員ホセ・マリアは乱暴者の風体であるが、意外と世話焼きで話好きである。「俺の好きなバンドっすよ」と、上腕に入れた墨を見せてくれた。「Satánica (サタンの,悪魔の)」と彫ってあった。

悪魔出現の場所を追究するアンヘルはホセ・マリアの協力も得て、町中を奔走する。

そのときふと目に入ってきたのが‘カヴァン教授’というイタリア男である。「運命を知りたくば、私に電話なさい」とCMで繰り返し話しかける芝居がかった男。最近持て囃されている霊能者らしい。悪魔祓いに成功したというエクソシストの亜流のような特番まで作られ、著書もバカ売れの寵児である。

「この人なら悪魔を召喚できるのではないでしょうか」。初めてテレビを見たというアンヘル神父はそう信じ込み、カヴァン教授のもとへ急いだ。時間が無い。悪魔を仕留めなければ。
______________


IMDbのtag付けで「Good Versus Evil」ってのがあるでしょ。『オーメン』とか『エクソシスト』にはそのタグがついているね。そういうの、私、あんまり怖くないのね。宗教観とかが関係してると思うんだけど、「悪魔がこの世を支配しちゃうぞ」は、私の場合は「怖いよぉ」という感覚には決して繋がらないんだよね。そういうの、ピンと来ないよ。

『El día de la bestia』もその引き出し………だと思っていると勿体無いのです。これはそういう路線と見せかけてるけど、もっと私にとって恐ろしいことを描いてる。私も本当に馬鹿だねぇ、そういうのさっさと気づかないと。

邪道は正道を装って人々を誘い込む」の一例が見えるとブルッと来るよ。

カルロス・サウラの『Taxi』という映画を知っていますか。『El dia de la Bestia』は95年10月公開、『Taxi』は96年10月公開。テーマ、似てると思うんだよね。「敵意」と「排撃」。

この二作品が描き出す世運があの当時の実相だったのなら、私は何と恐ろしい時期にぷらぷらしていたのかと、それが今頃になって物凄く怖い。

el dia de la bestia(コメント欄にメモ)
・スペイン映画
El día de la bestia@IMDb
・英題: The Day of the Beast
ビースト 獣の日@goo映画

監督: Álex de la Iglesia アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本: Jorge Guerricaechevarría ホルヘ・ゲリカエチェバリア Álex de la Iglesia

出演:
Álex Angulo アレックス・アングロ ... Padre Ángel Beriartúa, el cura アンヘル・ベリアトゥア神父
Armando De Razza アルマンド・デ・ラツァ ... Profesor Cavan (Enio Lombardi) カヴァン教授
Santiago Segura サンティアゴ・セグーラ ... José María ホセ・マリア
Terele Pávez テレレ・パベス ... Rosario ロサリオ(ホセ・マリアの母)
Nathalie Seseña ナタリー・セセーニャ ... Mina ミーナ

・十年以上前にスペインで買った古いビデオで鑑賞したので、イタリア語の会話部分は何がなんだかわからず観た。たぶんストーリー把握にはたいした影響が無いんだろう。

このamazonのビデオでは字幕等どのように処理されているのか私は知らない。スペインで売られているDVDには「伊、英、仏、聾唖向けスペイン語」の字幕があるようだ。

|

« Spanglish / スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと [アメリカ映画] | Main | «No la pegues», ¿ejemplo de laismo? »

Comments

(今夜は私はコメント書きませんが、何かありましたら私にかまわず書いてくださってけっこうです。

ひとまずおやすみなさい)

(宗教用語、使い方がよくわからなかったので、なんか間違いを見つけたら教えてください)

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 00:35

A mi, personalmente, Santiago Segura es un actor que me desagrada mucho. No lo puedo soportar, pero hay que reconocer que cuando interpreta personajes marginales y repugnantes, como ahora al Heavy "Jose María" en "El dia de la Bestia" o a "Torrente", los clava.

Ha tenido algún que otro cameo en películas como ahora "Belle Époque", si no recuerdo mal, pero no ha sido nada destacado. No olvidemos los fracasos conseguidos con películas como "Pocholo y Borjamari" y "La Máquina de Bailar", entre otras. Santiago Segura solo triunfa cuando hace de lo que es: de escoria humana.

Respecto a lo que "El dia de la Bestia" respecta... bueno, es divertida. Hace gracia el ver lugares característicos de Madrid bajo influencia demoníaca. Ahora que lo pienso, no se si todavía existirá el famoso cartel de "Schweppes" X'D

Saludos. /\

Posted by: Robo | Sunday, May 06, 2007 04:14

Hola, Robo. Buenos días. Más tarde responderé a tu mensaje.

これからコメントをまとめて書くわけですが、Roboくんがちょっと触れてくれましたから、そしたらじゃぁSchweppesの件だけ先に書いておこう。

恐れをなした3人組(言うまでも無くアンヘル神父、ホセ・マリア、カヴァン教授)が高層階の窓から脱走を試みる。外壁に架かっているSchweppesのネオンサインを伝って逃げる。「Pまで来たぞ。あと6文字だ、がんばろう!」とか言ってる。

マドリードのPlaza de Callaoという広場らしい。なんか本当にSchweppesの看板があるんだって? これね。見て、見て → http://www.skyscrapercity.com/showthread.php?t=390992 (※撮影はセットで行ったとどこかで読んだ記憶が)

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 10:01

(悪魔に認めてもらうため)「そうだ 悪さ、しよう」と決意したアンヘル神父がやらかした悪事を列挙する。ホントは詳しく書きたいんだけど自粛:

1) 虫の息の人に「Púdrete en el infierno. (地獄で腐りやがれ)」と耳打ちしてみたりします

2) 街角で人を小突いたりします

3) 他人の持ち物を持ち去っちゃったり

4) 十字架なんてひっ剥がして放り捨てちゃう

5) タバコを吸ってみちゃう

6) 根性焼きしてみちゃう

7) 万引きしてみちゃう

8) 他人を殴り倒したりしちゃう

9) 他人の車に傷つけてみたりしちゃう

10) 暴力は好きじゃないんですと言いながら烈しく尋問しちゃったりします

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 10:56

悪魔出現の場所を突き止めたいがサッパリ思いつかず苛立ち焦る神父がふと電器屋のショーウィンドーのテレビ放送に目をとめる。カヴァン教授とやらいう胡散臭い占い師(霊能者、予言者)のCMが流れている。

あの頃(=90年代)、実際にRappelっていう男が「あなたの運命がどうのこうの、私に電話してきなさい」などとテレビに出づっぱりだったからね。カヴァン教授でそれを連想した。

Rappel……。思い出したくもないものを思い出しちゃったな。

キンモーーーッな感じのおっさんで、女性誌なんかの七変化的ファッショングラビアで汚ねータンガ姿(しかも豹柄とかそういう)を披露してたり。Rappelがその後どうなったかは私は知らない。

こんな男。彼のやり口が細木系だったか江原系だったかは忘れた。http://www.nosotros.cl/detalle_noticia.php?cont=394では「Farsantes, brujos y sinverguenzas ... 」と紹介されているけどね。たしか彼は自宅に空き巣に入られて、「m9(^Д^) 予知できなかったのかよ」的な嗤われ方をしていたと思う。

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 10:57

神父はヘヴィなレコード屋さんに入る。買いたいメモを店員ホセ・マリアに見せる。

・Napalm Dez(→Napalm Deathのことだね)
Iron Maiden
・Hace de cé(→これ、わかる? これ、AC/DCのことだな)

これ、誰かに書いてもらったのか? それとも誰かに「悪魔に魅入られたようなワルいバンドを教えてください」とでもきいて教えてもらったのを書き取ったのかな。(これがまた丁寧な筆跡なんだよな。それが微笑ましくて)

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 10:58

万引きの現場で取り押さえられたアンヘル神父は当然管理人室に連れていかれ事情を聞かれる。「私は悪事を働くことに慣れないといけないんです。悪魔とコンタクトを取る必要があるんです!」と正直に述べる。

「25年間、ヨハネの黙示録を研究してきました。そしてついに暗号を解読できたのです」と始めて、諷喩がどうした、等式がこうした、今夜がまさに地球最後の夜であると書かれているのです……などなどと、一般人にはワケのわからないことをよどみなく語る。

すると店長はちょっと席を外し事務員に指示する:
「最近神父がひとり脱走しなかったかどうかこの辺りの精神病院に手当たりしだい問い合わせてみろ」。

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 10:59

この、知識・教養・情報にまつわる神父と一般人の乖離が面白いんだよね。特にアンヘル神父はこのたび初めてテレビというものを見たというような堅物ですからね。

悪相でむさくるしいルックスで粗野なヘビメタおたくのホセ・マリアとのやりとりは勿論、街角のビラ配りのバイトの若者との会話しかり、デパート店長による丁寧な取調べしかり、ノストラダムスの大予言(※映画公開は95年です)の講演者との討論しかり。

(ちなみにホセ・マリアによると「ヘビメタじゃなくてデスメタルだ。混同すんなよ」だそうだ)

神学の考究以外に目を向けたことも無さそうな、謹厳で敬虔そのもののアンヘル神父の実直が可笑しいのね。映画が進むに連れ彼の受ける肉体的ダメージの度合いが進むのも滑稽なんだけどだんだん笑えなくなったり。(『La Comunidad』の時に言ったけど、痛いんだよ、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品は。アンヘルなんて、もーボロボロよ)

世界を救うという使命を全うするために彼の悪行がエスカレートしていき、彼がどんどん慣れていく様も、よく考えると怖かったり。

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 11:00

・acabar (con): 10. [自] Poner fin, destruir, exterminar, aniquilar.
例) Los disgustos acabaron CON Pedro.
例) Tú acabarás CON mi vida

・Es posible que + 接続法

・vandalismo: 蛮行,(公共物などの)汚損; 文化・芸術の破壊

・Pasa de mí, que estoy currando.
→ pasar de: 50. [自] Mostrar desinterés o desprecio por alguien o por algo.
例) Pasaba DE su familia.
例) Pasa DE trabajar.

→que: 13. [接] Usada igualmente como conjunción causal y equivale a porque o pues.
例) Con la hacienda perdió la honra, que a tal desgracia le arrastraron sus vicios.
例) Lo hará, sin duda, que ha prometido hacerlo.

→currar: trabajar

cámara oculta: 隠しカメラ; ドッキリ

cajonera: 整理だんす

maqueta: 3. f. Grabación de prueba de uno o más temas musicales.

Llevo un año intentando tirármela.
llevar + 現在分詞

→tirar: 35. [自][口] Poseer sexualmente a alguien. ([他]でも[再帰]でも)

tranqui: tranquilo

invocación: 呪文(で霊を呼び出すこと)

payasada: 2. f. Acción ridícula o falta de oportunidad.

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 11:41

公道で問答無用に警棒などで殴打されるアフリカ系移民と思しき若者たち。

町を歩く神父の耳にテレビニュースが聞こえてくる。マドリードのグラン・ビア(※主要道路)で老人の遺体が発見されたとのこと。‘Limpia Madrid (マドリード浄化)’のスローガンの下にこのところ相次いでいる蛮行の犠牲者はこれで7人にのぼりました、などなど。街角の「Limpia Madrid」の落書きも映し出される。

24時間営業の店は‘Limpia Madrid’の襲撃をうけ店主店員が惨殺された。田舎暮らしだった私なんかからすると、「マドリーって怖ぇぇぇぇっ」です。映画ですが。

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 11:42

これは本当に答えを明かしちゃうことになるので鑑賞後に目を通してもらいたいのですが、さんざん彼らが探し回った悪魔誕生の地。どこだったんでしょうか。最初に正解がひらめいたのはカヴァン教授です。

どこだったでしょうか。カヴァン教授が「目の前にあるじゃないか」と示したときは、粟立つというと大げさだけど、「おぉぉ、繋がったねぇ」と思った。

以前その場所のことを1度だけ書いていたんですね、私。こちらの文に答えがあります → この文のどこかにあるよ (そしてそれは96年にできあがるんだ=映画の中ではまさにできあがりつつあるところなんだ)

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 11:43

Gracias por tu comentario, Robo.
Yo de Santiago Segura no me acuerdo casi nada. Sólo recuerdo que salía en programas de noche. Si en aquel entonces hubiera podido comprender lo que hablaba él, me habría dejado alguna impresión, o buena o mala. Pero la verdad es que ni me enteraba.

Han pasado más de 12 horas desde esta mañana cuando leí tu comentario. ¡Qué despistada he estado! Me fijo a estas alturas en el signo que has puesto. Muy bien hecho, Robo ;-)

Saludos,

Posted by: Reine | Sunday, May 06, 2007 20:41

Bueno, pues supongo que cuando veas las tres películas de Torrente, en especial la primera (Torrente, el brazo tonto de la ley) lo aborrecerás.

Es humor español muy pero que muy sucio. No te voy a negar que no me haya reido viendo esa película, pero la verdad es que es muy asquerosa.

De las tres películas que hay hechas hasta el momento, quizás las más divertida haya sido Misión en Marbella, y la peor, la tercera, "Torrente 3: el protector".

Creo que con esas películas podrás aprender muchas cosas que no se enseñan en los libros de texto X'DDDD

Posted by: Robo | Sunday, May 06, 2007 20:59

Muchas gracias por la recomendación, Robo.
He oído hablar de la serie de esta película y siempre imaginaba que sería del gusto de los ... chavales, quienes no saben más que decir "¡Que fuerte!"justo como el personaje José María en El Día de la Bestia. Como dije antes, en la entrada de "pelis recomendadas (February 04, 2006)", no me apetece ver películas con sangre/sexo/dolor/violencia. Estos tres filmes que acabas de mencionar son de este tipo, a que sí?

Pero, tú tienes razón, será muy bueno para un lenguaje específico. Si un día encuentro alguno de segunda mano, igual me lo compro. Pediré tu ayuda para completar el dictado. :-)

Posted by: Reine | Tuesday, May 08, 2007 15:02

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference El Día de la Bestia / ビースト 獣の日 [スペイン映画]:

» Taxi / タクシー [Reino de Reine]
Pazは試験に落第した。このところ恋人Francisともしっくり行かないと感じている。もう何もかもイヤになった。学校をやめようと考えるパスに父は平手打ちを食らわせ、「だいたいお前のしつけが……」と母マ... [Read More]

Tracked on Monday, May 07, 2007 22:32

» 25 Watts [ウルグアイ映画] [Reino de Reine]
ここを読む前に鑑賞を済ませてもらえるといいな。フェデリコ・ガルシア・ロルカ図書館にもあったと思います。 この作品、人々が初見でどれくらい「わかる(※後述)」ものなのか、興味があります。スペイン語学習歴... [Read More]

Tracked on Sunday, April 20, 2008 20:41

« Spanglish / スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと [アメリカ映画] | Main | «No la pegues», ¿ejemplo de laismo? »