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Wednesday, March 21, 2007

envidia

先日の『世界で一番醜い女』のコメント欄で、「先にぬっ殺すべき連中は他に居るだろが」と私もつっこんだところですが、ノラドさんのブログ(im like Heroin)にも、過去に自分をさんざん痛めつけた者への復讐による殺人ではなくて嫉妬による殺しに向かってしまうところが疑問だというようなことが書いてあった。

ホント、あれ、私もちょっと飲み込みがたい犯行だったなあ。殺害対象の選び方が八つ当たりとも思えた。被害者にしてみればとんだトバッチリじゃないですか。

さて、そこで「嫉妬」を考える。
なるほど、「嫉妬」っていう視点はけっこうおもしろいのですよ。
「嫉妬」、けっこう大事なんだよね。

私はここでやはり『スペインハンドブック』の‘国民性’の章を思い出してしまうのであった。(章の担当はコントレラス先生とある)

1) 二元的なるスペイン
2) 名誉と名誉感情
3) 面目――変質した名誉感情
4) 社会階級と自尊心
5) 自発性と即興性
6) ストイシズムあるいは無関心
7) 怠惰
8) 個人主義
9) ヒューマニズム
10) 嫉妬
11) 観客の基準,救世主志向

「10) 嫉妬」の項目は、「スペイン人の典型的欠点のひとつ」「スペイン人自身が,嫉妬がスペイン人の性格のうち最もしばしば,そして最も強く見られる欠点であると考えている」といった文から始まる。十数年前のスペイン生活時代にこの項を読んで受けた印象は強烈で、この本全体のことでほかに覚えていることはそんなに無いのに、ここだけはグッサリと頭に刻み込まれたのでした。

以下、抜粋
グラシアンは,この欠点を「スペイン人の悪性」と呼んでいる

スペイン文学で最初に書かれた伝記であるシードの物語ですでに,悪意の嫉妬に対して寛大な心が深く苦しむ様が随所に見られる

・この欠点は,確かに,地上最強の王,太陽の決して沈まぬ帝国の主人であったフェリーペ2世の心にも巣食っていた.無敵艦隊を指揮するのにメディナシドニヤ公爵を選んだことがその良い例である.
(※「有能な部下に任せたら俺たち勝っちゃうじゃん、勝っちゃったらその人が一気に人気者になっちゃうじゃん、えー、なんかそれって俺的には気に入らねー」ってことで、パッとしない人に任せたもんだから敗れちゃった、みたいなことが書いてある。あの敗戦で大西洋の制海権を失ったわけですからね、ダメージでかすぎ。ほんのジェラスのために海上権大打撃)

・豊かなヒューマニズムに満たされ,驚くほど寛大なスペイン国民は,同時に深い嫉妬心を持つ国民でもある.

などなど。

それから、wikipediaですけど、「envidia(嫉妬)」の項にもこうある:
El escritor de la generación del 98 (98年の世代), Miguel de Unamuno (ミゲル・デ・ウナムーノ) afirmaba que era el rasgo de carácter más propio de los españoles (「スペイン人の特性としてしっくり来る」)

と、まぁ、こういったわけでね。
「嫉妬」ってけっこう重要なのね。
今回の『世界で一番醜い女』に限らず、今後、スペイン映画を観る時やスペイン人としゃべっている時などにね、この項目をチラっと思い出すとストンと腑に落ちたりしますよ。これ、けっこうキーワードになってくると思うよ。

たとえば、スペイン人同居人が異性を連れ込んで夜毎うるさいのでそういう生活態度を注意したとたん、「嫉妬してんじゃねーよ!」などとぶち切れられて、「( ´Д`) はぁ??? なんで俺がテメェに嫉妬しなきゃいけねーんだよ」と全力でキョトンとすることがありますが、そういう時にも、「あぁ、この発想は国民性、国民性、メンタリティ、メンタリティ……」と心の中で繰り返すと、なんとなく理解できたりしますから。

映画にしても実生活においても、「嫉妬」という視点に立つと骨組みが透けて見えたりするんですよ。


「えー、でもさー、スペイン人にだって嫉妬しない人はいるしさー、日本人にだって嫉妬深い人っているじゃーん」などと、口をとんがらしてわかりきったことを言い出す人が居ないとも限らないので、念のため、この‘国民性’の章のはじめの方に書いてあったことも抜粋しておきますよ:

・「たいへん当惑致します.いったいスペイン人の国民性というものは存在するのでしょうか.」
・「スペインに関してスペイン人は決して意見の一致を見ることはない.」
・「唯一のスペイン」について,その性格の諸要素をまとめるというのはあまりに大胆すぎはしないだろうか.
・ここではスペイン人的な特徴と思われるもののうち,根元的と思われるいくつかの特徴に焦点を絞ることにしよう.
・大部分の国民においてその特質が観察されるからといって常にそれが行動を規定するわけではないし,
・ある特質が数世紀にわたって維持されたとしても,それが不変であるとは言えない.


「一般化なんてできないじゃーん」とか、あぁ、そう言いたくなるのもわかるけども、それはそれ、これはこれとして「国民性」みたいなデカい枠組みについてああだこうだと考えてみるのが大人だったりするんじゃないかい。

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Comments

こんばんは、TBありがとうございます。
スペイン人の特性に嫉妬…初耳でした!
でもこれを聞いて、あの映画の疑問点が少し解決できました。
今度からスペイン映画を観るときは、『嫉妬』というキーワードを念頭において鑑賞してみたいと思います。
勉強になりました!ありがとうございます^^

Posted by: ノラド | Wednesday, March 21, 2007 at 21:19

ノラドさん、コメントありがとうございます。
しかし、それにしても「どーしてそっち殺すかなー」というハテナは残りますよね。私だったら、もっと別の人間を先に始末しに行きますけどね。…ん? …もしかして私が見落としただけでしょうか? ちゃんと過去の極悪人への復讐は遂げてあったのでしょうか? 確かめようにも、もう一度見る気が起きない……。

ノラドさんも、もしもいつか中・長期でスペインに行き、スペイン人と親交を深めるような機会があったら、その時もまたこのジェラシー理論(?)を頭の片隅においておくと、いろいろ感じ方が変わって面白いと思いますよ。

Posted by: Reine | Thursday, March 22, 2007 at 01:07

今までスペイン映画を見る中で、特別スペイン人が嫉妬深いとは感じたことがなかったのですが、この記事を読んで一つ、光り輝くように思い当たった作品がありました。
「情熱の処女」です。
主人カリストにあれだけ誠意を尽くし忠実だったパルメノが、何故手のひらを返すようにセレスティーナの側に移ったのが、なかなか納得いかなかったんですよ。
でも、カリストが自分の忠誠心よりもセレスティーナの助言を重用したことに対する、悔しさと嫉妬心。 哀生龍が考えていた以上に、(翻意の引き金になるほどの)激しい嫉妬心を燃やしてしまったのかな?と思い当たったのです。
「可愛さ余って憎さ百倍」と言いますか・・・

良い情報を頂きました。
今度成り行きが腑に落ちない時は、「嫉妬」を当てはめて見たいと思います!

Posted by: 哀生龍 | Friday, March 23, 2007 at 12:58

哀生龍さん、なるほどそうやって観る努力をしたのなら、あの‘コスプレ紙芝居’ももっと面白く鑑賞できたのかもしれませんね。

「嫉妬」をあてはめたらわかるのかもしれないという作品が他にも何かあったかと色々思い出そうとしているのですが、なかなかうまく行きません。

あぁ、あれはどうかな……んー、あくまでも私の見当ですが、『Inconscientes』は、妬みの感情、しかも姉妹間のという生々しいケースがうかがえる作品かもしれません。

Posted by: Reine | Friday, March 23, 2007 at 21:37

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