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Saturday, July 29, 2006

Descongélate / チル・アウト! [スペイン映画]

descongelate Justo Santos フスト・サントス(愛称Justito, Tito; フスティート,ティート)
うだつが上がらないスタンダップコメディアン。弟ベルトの店に‘出演’。特技は声帯模写。マドリード市内のLavapiés地区(後述)に妻イリスと暮らす。神経過敏なところがあり、緊張した時など過呼吸の発作に苦しむ。

Iris イリス
フスト(フスティート,ティート)の妻。自然食料理研究家。自宅に生徒を呼んで料理を教えている。本を出したいと考えてはいるが原稿を書くだけ書いてそれっきりになっている。日ごろからフルーツや豆腐などの食品を多く摂る。姑カティと反りが合わず嫁姑バトルは恒常的。

Berto ベルト
フストの弟。フスト夫婦の上階に住んでいる。Bar「Café de los Santos(サントス亭)」を経営しているが、麻薬売買で日銭を稼いでやっとと言ったところである。従順な兄と比較されて育ってきたからなのか、どうせ俺は憎まれっ子だなどという自己意識が垣間見られる。

Katy カティ
フストとベルトの母親。かつてはvedette(演劇・映画・ショーの人気者;花形;スター)だった。らしい。今は次男ベルトのところに厄介になっている。何かにつけ専横である。冷凍食品が大好き、というか冷凍食品を盲目的に信仰しているとすら言える。そんな食生活からして嫁のイリスとは対極にあり、当然のことながら諍いは絶えない。

彼らのマンションは「C/ Tribulete, No.5」と言ってたと思う。

ベルトのBarは「Calle de Argumosa, 16」だったと思う。職住近接ですな。

そして、もう一人。Aitor アイトール (Aitor Ruiz Ullate)
有名映画監督。精力的に売れ線の作品を創ってきた男。傲慢である。女に対してなど特に。今夜もセフレのAnitaを車から引きずり出し突き放し罵ったところである。厄介払いをしてやったと、ふと辺りを見回すとそこはサントス亭の前であった。


descongelateベルトがアイトールを店に招き入れる。アイトールはフストの漫談をすっかり気に入ってしまった。いや、芸の出来映えはさておき、とにかくこのフスティートという冴えない芸人の冴えなさに惚れ込んだのか。アイトールはフストに言う:

「アンタ、俺の次の作品の主役だよ。ノイローゼ気味でダメ男っていう役柄にぴったり。その顔、そのなり。負け組、挫折組。すげぇよ、アンタ」


ヒドい言われようだがともあれやっと日の目を見るのである。シナリオを読んでみたが、全シークエンスに登場するではないか! フストは喜び目を潤ませる。妻のイリスもそれ以上に喜んでいる。つつましやかと言えば聞こえがいいがとどのつまり惨めったらしかった生活をいよいよ脱するのよ。弟ベルトや母カティには内緒にしとこう、彼ら、おこぼれを狙ってワラワラとたかってくるだろうから。

契約を明日に控え、夫婦はアイトールを自宅でのディナーに招いた。アイトールは今夜もクスリでかなりハイになっている。フストとイリスも今夜はハメを外して大はしゃぎする。……と、アイトールがテーブルに突っ伏したきり動かなくなった。オーバードーズ。胸に耳を当ててももう何も聞こえない。


アイトール! 今あんたに死なれちゃ困るんだよ、明日の契約どーすんの! 明日までこの男を生かさねばならない……

____________________

Descongélate 公式
Descongelate @ IMDb
Descongélate @ Yahoo Cine
チル・アウト!@ぽすれん
・英題 『Chill Out!』
・バルセロナのFnacで19.95ユーロで購入(@140円くらいだったかなぁ)

監督: Dunia Ayaso ドゥニア・アヤッソ、Félix Sabroso フェリックス・サブローソ

出演:
Pepón Nieto ペポン・ニエト
Candela Peña カンデラ・ペニャ
Loles León ローレス・レオン
Rubén Ochandiano ルベン・オチャンディアーノ
José Ángel Egido ホセ・アンヘル・エヒード
Óscar Jaenada オスカル・ハエナーダ
Pilar Castro ピラール・カストロ
Roberta Marrero ロベルタ・マレーロ


この作品のテーマは、たぶんだけど、「マザコン」。


(詳細はコメント欄で)

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Comments

タイトルは直訳すると「あんた自身を解凍してよ」。

Descongélate(おまえ自身を解凍せよ)とは、「Despabílate(目を覚ませ)」「Despierta(起きろ)」を比喩的に言い表したもの。「Despabílate ante una realidad. (現実を前にして目を覚ませ)」である。

Alaska y Dinaramaの『Delirios de Grandeza 』に収められた同名の曲より着想。みたいなことらしい。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 12:56

どうなのかなぁ、スペインの(そしてイタリアも)男性はマザコン説ってあると思うのね。

私の行ってた学校の、当時30歳手前の男の先生が自嘲気味に言ってたな、「僕はこんな齢だけど、まだ母親といっしょに買い物に行く。僕の洋服を買いに行ったりもする。そして、腕を組んで歩いたりもするんだ」って。

それをただちに‘マザコン’と表わすかどうかはさておき、ママが大切で、そして頭が上がらなくてっていう男性を多く目にしてきたのは確かだ。

このフスト(フスティート,ティート)もそのクチでね。口うるさい母の支配から果たして卒業できるのか……ってのを見届けるようなつもりで私は観ていました。

ティートは別に母にべったりと甘えているわけではないですよ。だけど母に玉を握られっぱなしでここまで来ちゃった男なんだろう。

母が自分とイリスとの生活にやたらと介入してくるのに対して邪魔だと言うことができない。妻と母のいさかいの間に入った時に、母の側につくというわけでもないけれども、それじゃぁ妻を護るかと言ったらそうでもない。

フストはとにかく女性に何かを決められて/決めてもらって生きてきたんだろ。指示され続けて。

結婚・独立を機に、形の上では母から‘卒業’したかもしれないが、母にある意味ソックリな女に移行したに過ぎない。今回のような人生を賭けた大勝負に際しても、妻のイリスに「何したらいい?」「次どうする?」「俺にどうしろって言うの?」って聞いてばっかりなの。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 13:48

そういう‘従順’な長男フストと、ちょっとばかしグレた次男ベルト。母カティがどちらを可愛がるかと言えば、前者なのでした。

だって御しやすいからね。御されてくれる相手は御してて気分がいいからね。(ところで「御する」はサ変動詞? ぎょしない,ぎょします、ぎょする、ぎょする時、ぎょすれば、ぎょせよ???)

母カティと次男ベルトの不協和は、いつ何がきっかけだったのかね。

母は長男フストを上記の理由でもって囲い込むようにして育てて来たのではないだろか。フストはそのように囲われることで神経過敏な子に育つし、母の支配力に屈したまんま成長したから、いつまで経っても母子ともに離れられないでいる。

次男ベルトはそんな中で疎外感を抱いて来ただろう。自分はこの家で除け者的な位置にあるという思いを募らせてきたかもしれない。だから母から離れるのも早かったろうし、ちょびっとヤクザな道を歩いてきただろうし、と。

行き場を失った母は、それでも、次男ベルトのところへ転がり込んだのであるが、それは長男フストの家に近いからという理由からかもしれない。母と次男の同居は和やかに営まれているとは到底思えないのである。

この母と次男の相互の疎隔が今回の一件を通して繕われるのだろうか、ってのも見届けるべきポイントかもしれない。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 14:05

> 行き場を失った母は

というのは、そのように受け取れるシーンがあったから。私の解釈ミスかもしれないが、母カティがどこかから追い出されてこの町に戻って来たような説明ゼリフがあった。

さてはカティがどこかを追われたか、というのは想像に難くないですよ。とにかく傍若無人な女なんだなぁと思わされるシーンが多々あるからね。

ベリーダンス講習会においても、インストラクターの指示なんて聞きゃぁしないんです、この人は。挙句、注意されると捨てゼリフを吐いて罵って去る。

そういう生活を送ってたら、あなた、そりゃぁ、行き場を失うでしょうね、と。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 14:15

ふつうに暮らしてきて、その暮らしをそれなりに幸せだと思い、自身にもそう言い聞かせてきた人々が、ある日とてつもなく大きなチャンスを掴めそうになった途端に、その可能性に烈しい執着を見せてあがく。無いなら無いで済んでいたものでも、ある‘かもしれない’と知った途端に、無きゃダメだへ変わる。

成功へ執着する、人気・名声を欲するというのはほとんどの人の中に燃えているか、あるいは燻っている欲求なんじゃない? というのがこのお話。

1) 契約の話に目の色を変えた妻イリスに向かってフストが、「日ごろの禅の思想はいったいどうしたの? いまの生活が幸せだって言ってたじゃん」と呆れ気味に問う。

イリスはサラッと答える、「えぇ幸せよ。でも、もっと幸せになれるならなろうじゃないの」。

2) 掴みかけたチャンスが手からスルッと滑り落ちてしまいそうになった時に、イリスが爆発する。静かな暮らしに満足していたように見えたイリスが、‘解凍’の時を迎えたんだろう。

「もう我慢できないの。この家も、お義母さんも、ちゃちな料理教室も……。あんたのこと信じてついてきて8年よ。もうアタシ期待してられないの!」

「君が何かを期待していたとは知らなんだよ」

「期待してましたけどなにか!? ……あと一歩なのよ、ティート。あと一息なの。……あんたって人が、愚痴こぼすだけこぼしてチャンスをみすみす逃すような男だってもしも今夜わかったら、アタシ出て行く。出て行くわよ」

だから、ここからの奮闘においてイリスがティートに再び「愛してる」と言ってあげるのは、ティートがいよいよ本気で「絶対に2000万ペセタは手に入れるからな」と言い切ってくれた瞬間なのでした。

そのティートの意思表明を聞くまでのイリスは過去のイリスとは別の人間でした。激しい執着を見せていた。富か、名声か、金銭か。何に執着しているのかは本人もよくわからなくなっていたんじゃないか。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 14:35

物語はもっぱら彼らの居住区で進行する。地図にあるとおり、マドリードのLavapiésという地下鉄駅近辺である。

どうもね、ブロンクス的らしいんだな、その界隈って。人種のるつぼ的な地区かな。それと道端に高級車なんかを停めておくのは、イコール「窓割ってください」であるような地区だろうか。

女の「ひとごろしー、ひとごろしー!!」という絶叫が聞こえたので「ねぇ、この叫び声いったい何?」とたずねるんだが、住人はケロッとした顔で「この地区ってほら……柄が悪いでしょ。だから」と答え、音楽のボリュームつまみをグイッとひねるのであった。客も客で、それで納得しちゃうような。

どうもそのような地区らしい

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 15:09

語句メモなど(このテの作品はコトバが面白い)

1) AitorがセフレのAnitaを罵り罵られるシーン。「Pásate a por los cuatro trapos que tienes en mi casa. (俺ん家にあるおめぇの服を取りに来いや)」。

このセリフだけで3つ楽しいです。

・a por: …を求めて,探して
これはスペインのスペイン語ではよく見られるけど中南米のスペイン語では「por」だけを使うのが一般的なんでしょ? ちなみに私は「a por」は使うときもあるといったところ。

うん。そのようだ。調べてみたよ。
El uso de esta secuencia preposicional pospuesta a verbos de movimiento como ir, venir, salir, etc., con el sentido de ‘en busca de’, se percibe como anómalo en el español de América, donde se usa únicamente 'por'.…略… En España alternan ambos usos, aunque en la norma culta goza de preferencia el empleo de 'por' …略… La secuencia 'a por' se explica por el cruce de las estructuras ir a un lugar (complemento de dirección) e ir por algo o alguien (‘en busca de’), ya que en esta última está también presente la idea de ‘movimiento hacia’.

たばこを買いに行く(前置詞 a)のと、たばこを求める(前置詞 por)というのを、両方ともいっぺんに表わせるのです、とな。

・trapo: ぼろぎれ、の意 → (軽蔑的,主に女性の)着物,衣服

・cuatro: わずかな,少しばかりの (usado con valor indeterminado para indicar escasa cantidad.)

2) 「O va en el maletero o no conduzco. (これをトランクに入れるか、俺が運転しないか、どっちかだ → これをトランクに入れてくれないなら俺は運転しない)」

o ほにゃらら o なんだかんだ: ほにゃららかなんだかんだか(二つのうちどちらか一方だけであることを強調する)

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 15:18

語句メモ 続き

・a la intemperie: 野天で、吹きさらしの
・calada: (タバコの)一服
・a lo juliana: 千切りに (bien finita)
・a daditos / a dados: さいの目切りに

・colgado, da: 麻薬中毒者
adj. coloq. Que se encuentra bajo los efectos de una droga.

・pez gordo: 大物、重要人物
tener tela marinera: fr. coloq. Tener gran dificultad

・maruja: (Hipocorístico del nombre propio, María).
f. despect. coloq. Ama de casa de bajo nivel cultural.

・¿A que no sabes a quién acabo de conocer?

・mearse de risa: 《比喩》《俗》 大笑いする
・mearse de gusto: 《比喩》《俗》 大いに喜ぶ

・tener un colocón: (1) 酔っ払っている (2) 麻薬でいい気分になっている
・colocón: 麻薬でいい気分になっている

・colocarse: tr. coloq. Dicho del alcohol o de una droga: Causar un estado eufórico.

・kilo: (Porque, en billetes antiguos de 1000 pesetas, pesaba casi un kilogramo). m. coloq. Un millón de pesetas

・flipar: intr. coloq. Estar o quedar entusiasmado.

・hiperventilar: tr. Aumentar en exceso la frecuencia (脈拍) y la intensidad respiratorias.

・no poder más: Estar sumamente fatigado o rendido de hacer algo, o no poder continuar su ejecución.

・mover el culo: ponerse en acción, moverse

・bocaza o bocazas.(Del aum. de boca).
com. coloq. Persona que habla más de lo que aconseja la discreción

・¡Venga, que no llegas! さっさと(行きなさい)、間に合わないわよ。

・caballo: m. coloq. heroína

・yonqui: En la jerga de la droga, adicto a la heroína

・no decir pío / o ni pío: No chistar, no despegar los labios

・capullo, lla: tonto, necio

・poner verde a alguien.
fr. coloq. Colmarlo de improperios o censurarlo acremente

・Estoy que muerde. > morder
7. tr. coloq. Dicho de una persona: Manifestar de algún modo su ira o enojo extremos.
例) Juan ESTÁ QUE muerde.

・ni de coña: en absoluto, para nada

・cuadro: 症状,徴候

・danza del vientre: ベリーダンス

・sal gorda: humor grosero y picante (「下ネタ」みたいなものか)

・intríngulis: m. Dificultad o complicación de algo.

・talego: vulg. cárcel (de presos)

・ni un pelo: adv. coloq. Absolutamente nada.
例) Esto no me gusta ni un pelo.

・subidón: sensación inicial de los efectos de una droga

・montarse una peícula: excusarse, obsesionarse, fantasear

・carne de cañón: f. coloq. Gente ordinaria, tratada sin miramientos.

・¡(Mira tú) quién fue a hablar! = look who's talking! = 〔話〕 君だって同じことじゃないか, よくいうよ

・calentarle a alguien la cabeza: coloq. quebrantar la cabeza (cansar con pláticas necias)
→ quebrantar la cabeza: Cansarlo y molestarlo con pláticas y conversaciones necias, porfiadas o pesadas. ややこしいこと・くだらないことをゴチャゴチャ言って煩わす

・a tiro: 射程内で,手の届く範囲で

・dar palos de ciego: 開いて構わず殴る; 考えずに行動する

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 15:27

Madrid Directoってのはマドリードのローカルニュース番組かなにか?

・Aitorのマンション室内に日本の新聞が逆さに貼ってある。「港区麻布から」「ルーム公開中!」「広尾(?)・六本木」などと読み取れる。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 15:35

面白かったけども、まぁ、可もなく不可もなく、といった印象。かな。IMDbの評価で6.1点というのは妥当じゃん。

他の人にとってはどうか知らないが、IMDbの評点は私の映画の好悪とはおおむね合ってる気がする。

あぁ、どうかなぁ……6.1は低すぎかもな。6.2って言ってもいいと感じる。その「0.1」はデカい。

Posted by: Reine | Saturday, July 29, 2006 15:37

> Óscar Jaenada オスカル・ハエナーダ

ん? 今Latin Film Beat Festの『カマロン』を読んでて「あ。」と思ったのですが、この人は「ジャエナーダ」と発音するの? カタランだから??? どっちなのでしょうか?

Posted by: Reine | Monday, August 14, 2006 23:33

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