Intruso / 危険な欲望 [スペイン映画]
観なくていいんじゃない? 借りた人間がバカを見る。「あと何分残ってるんだよ」と、DVDの時間経過表示が気になるだけのくだらない作品。
作品がどんなに腐っていようが、その制作に対しては敬意を払うべきであるから、作品を罵倒するにも全力で罵倒するべきである。というのを私は『カマキリな女』では頑張ったわけですが、『Intruso ―― 危険な欲望 ――』 に対しては、こっち(観客)がそこまでやってさしあげる必要はないと感じる。
それでも誠心誠意、悪し様に語ってみようか。それがこの作品の供養でしょ。
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子供の頃から思春期も青年期もルイサ(女)とアンヘル(男)とラミロ(男)は仲良かったです。「2人と結婚するの」とルイサはいつも言っていました。で、まずアンヘルと結婚しました。でもすぐにラミロと結婚しなおしました。アンヘルはベネズエラに行ってしまったそうです。
ラミロとルイサはその後、一男一女をもうけ、裕福で幸せな家庭を築きましたとさ。
ある日、変わり果てたアンヘルをルイサは町で見かけます。次の日、ルイサはアンヘルを見つけ出して家に連れ帰りました。重病で余命いくばくもないアンヘルとの同居が始まります。アンヘルはなんだか恨みがましくて鬱陶しいです。
ラミロは不機嫌です。ルイサは甲斐甲斐しくアンヘルの世話をしてみます。重病人をヤっつけたりしてます。そうするとそれが起爆剤にでもなるのか、ラミロもいつもよりも激しく求めてきたりします。
ルイサはダブルヘッダーをこなしたりします。アンヘルとヤってきた体でそのままラミロのベッドに戻って来て、問われてもいないのに、「Llevo en la vagina el semen de Ángel. (アンヘルの精液がヴァギナにあるの)」なんつってやがる。
アンヘルが重篤な状態に陥った時、ルイサは自己流の蘇生術を施したりして生き返らせちゃったりします。わー、そりゃーすげーや(棒読み)。
で、棺桶。さて、幾つでしょうか。
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DVDの特典映像の特別予告編ってやつを書き取っておいた。「 」の部分はナレ。それ以外は文字。こんなのを書き取るという手間をかけただけでも観客としての誠意は十分すぎるくらい見せたことになるだろう:
ビクトリア・アブリルが魅せる
倒錯の愛の美学
『危険な欲望』
男と女が
再会する時
「偶然の再会が
男と女、そして夫の本能を呼び覚まし
狂気の淵へと駆り立てる
平和な家庭に
突然迷い込んだ過去からの訪問者」
愛欲と官能の嵐が吹き荒れる…
「狂気の殺意を内に秘め
忍び寄る訪問者とは。
恐怖と官能のセクシャル・サスペンスが今始まる
異常なSEXに溺れる男と女
愛欲と官能の嵐が吹き荒れる
狂気の果てにやって来るのは
生か死か
物語は予期せぬ結末
――揺れ動く愛の狭間で
女の欲望が覚醒する――」
だってさ。
意味深な(=なにかしら‘事件’の火種をほのめかすような)ショットがちょびっとと、後は情交のシーンを切り貼りした予告編です。こんな予告編が他のDVDに収められていて、これで興味をちょっとでも持ってしまった人間がレンタルしちゃうんだろうか。えっとね、騙されないでちょうだい。
この作品程度のサスペンスや愛憎劇ならば毎日のようにどこかしらの局で2時間モノをやってるわけだし、この作品程度のエロスでヌけるくらいたまっているんだとしたら、おいおい君は長いこと両手を怪我でもしていたのかねと問わずにはいられない。
それっくらい、この作品は借りる意味が無い。時間の無駄ですよ。も一つ付け加えると、スペイン語の勉強という面からも、めぼしいもの無しですから。
危険な欲望 @goo映画より
>製作: 1993年 スペイン
>発売日: 2001年3月2日
製作から8年も経った作品を扱おうと発売元・販売元が決めた理由は何だろう。
さっきの特別予告編とやらでも精一杯切り貼りしていたけど、性交のシーンがあるからか? ヴァギナに精液ウンヌン言うセリフが一箇所あったからか?
アブラモビッチくんとかゲイツくんとか、財布から10億円くらいポンっと私にくれないもんかな。どんな奉仕をしたらくれるかな。痛いのと汚いのと怖いのと恥ずかしいこと以外なら何でもやりますが(←って、それ、フツー宣言じゃん)。
もっと、こう、入れるべきスペイン(語)映画を入れられる会社を作らないといけないな。私が作るのか!
だって、観るべき作品・観てもらいたい作品、他に幾らでもあるんだよ。なんでこんなのが日本に入ってて、『El Hijo de la Novia』とかがDVDで観られないのかね。
私だってなにも、私がいいと言う作品を必ず入れろやとヤタラメッタラがなり立てているわけではないですよ。例えばこないだの『Aunque tú no lo sepas』はとてつもなくグッと来る作品だったけど、日本に入れるのは無理だって思ってます、私だって。あれは事情説明が要りすぎだし静かだから。
そういうのはさておき、『カマキリ~』にしても、この『危険な欲望』にしても、他を差し置いても入れる意味があったんですかと胸倉掴んで問いただしたくなるようなのが多いわけです。
どんな狙いか知らんが(←うそ。狙いはだいたい見当はつくでしょ)、くだらないスペイン(語)映画作品が日本に入って来てるんである。日本人観客のためにもスペイン(語圏)の映画製作人のためにも、どちらのためにもならない愚かしい嘆かわしい由々しい状況なんである。
しかし悪貨は良貨を駆逐するんである。
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Comments
悪口じゃないことをムリヤリ書いてみようかと思う。
三省堂の『スペインハンドブック』(絶版)に、スペイン人の国民性について32ページを割いて解説してある。(たぶんコントレラス先生)
スペイン生活の超初期にこの項を読んで、「嫉妬」について書かれていたクダリが私にはとても強く残ったのでした。「スペイン人の典型的欠点のひとつ、嫉妬」とあって色々説明してあった。
※どこの国民でも嫉妬なんてあるだろう、ナニゴトも十把一絡げに語れるものではないだろう、っていう大前提はひとまず脇へ。「一般論はイクナイよ」とか言ってたら何も始まらないわけだから。
で、「嫉妬」。
私はその後のスペイン生活のちょっとした局面で、この「嫉妬」っていうフィルタを取り出してかざして見るのでした。そうすると、人々の言動の骨組みがレントゲンのように透けて見えるような気がしたものだ。
そういうフィルタでこの映画を観てみると…
……あー、もう、いいや。ムリヤリ真面目なことを書いている自分の誠意が馬鹿馬鹿しくなった。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 11:56
ルイサには、アンヘルを捨ててラミロに走った過去への罪悪感みたいなものがあって、罪滅ぼしのような気持ちもあって、それで……
などということも一生懸命に語ってみる親切な観客。
まぁ、ベネズエラに渡ったアンヘルがビジネスを成功させたと聞いていた時代は、なんだか救われたような気になっていたかもしれないわな、ルイサも(そして、ラミロも或いは)。
スペインに帰って来られちゃ、しかもボロ雑巾のようになって戻って来られちゃ、自分の良心みたいなものが機能しなきゃいけないようで、ハッキリ言って鬱陶しかろうよ。
ルイサは全力で世話を焼くことでその鬱陶しさから逃れるし、ラミロはアンヘルの寿命が尽きるのを待ち望む。
まぁ、とにかく、酔い痴れたい女と、鬱陶しい男の迷惑な物語だ。
重態に陥ったらさすがに病院に運べや、と。それが観客の私が一番強く思ったこと。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:05
メモ
舞台はサンタンデールかな。車のナンバーが「S」だから。
miedica: despect. coloq. miedoso
Ratoncito Pérez / Ratón Perez
乳歯が抜けたら枕の下に入れておく、そうするとこの気さくなおっさんがやって来て贈り物と取り替えてくれるんだそうな。
decrépito, ta: adj. Sumamente viejo.
morrocotudo, da: adj. coloq. De mucha importancia o dificultad
sopa boba:
1. f. Comida que se da a los pobres en los conventos.
2. f. Vida holgazana y a expensas de otro.
例) Comer la sopa boba. Andar a la sopa boba.
Es un caso claro como el día.
→ claro como la luz del día: 明々白々な
Intruso @IMDb
(英題: Intruder )
危険な欲望 @allcinema
危険な欲望 @映画生活
危険な欲望 DVD@amazon
監督: ビセンテ・アランダ Vicente Aranda
製作: エンリケ・セレッソ Enrique Cerezo ペドロ・コスタ Pedro Costa
製作総指揮: ペドロ・コスタ
原案: ペドロ・コスタ
脚本: アルバロ・デル・アモ ビセンテ・アランダ
撮影: ホセ・ルイス・アルカイネ Jose Luis Alcaine
出演:
ビクトリア・アブリル Victoria Abril
イマノール・アリアス Imanol Arias
アントニオ・バレロ
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:12
だいたいね、『カマキリ~』もそうだったけど、IMDbのジャンルの表記で、「Comedy / Horror / Thriller」なんつって、闇鍋みたいな状態になってることからして、ダメ作品臭が漂っているのです。
そういうテンコモリなのって、たいがいは、どこにも着地させようがないからラベルをドカスカと振ってあるだけの話だからね。
LA COMUNIDADみたいに「Comedy / Thriller / Crime (more)」ってなっててもキチンとしている作品なんて、滅多に巡りあえないサダメなんですよ。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:16
ただ、ルイサとラミロの間にできた娘がアンヘラという名前で、そのアンヘラちゃんが、急に居候することになった不思議なおじちゃんアンヘルに向かって、
「なんで叔父ちゃん、私と同じ名前なの?」
って尋ねるっていうのは、話の持って行きようによっては、怖い仕上がりにしようと思えばできるいいセリフだとは思ったけどね。
ここくらいかな、この作品で褒められるのって。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:18
で、DVDでyukkiebeerさんも御指摘のとおり、人名がメチャクチャです。
スペイン語から英語になったスクリプトを渡された日英翻訳者が字幕作業をしたのかなぁ……? と思うんだけど、その辺のビジネス事情は私は知りません。
Ángel (正)アンヘル → アンケル、(サイトによってはアングレとも)
Luisa (正) ルイサ → ルイザ
娘Ángela (正) アンヘラ → アンケロ
Juliana (正) フリアナ → クリアナ
最後の「クリアナ」に至っては、先に誰かが手で書いておいた「フ」を次に書き写す時に「ク」と見間違ったのですかという、字の乱雑さが原因かよ!と考えることさえできそうな、そんな感じではないですか?
こういうのをchapuzaという。chapuza=ヤッツケ仕事。この字幕に携わった一連の人々は、みんな、chapucero(=ヤッツケ仕事をする人)。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:25
なぜ、西→英→日と訳しただろうと考えるかというと、ルイサとアンヘルの間でのキーワードの訳し方からわかるのです。
二人が頻繁に「P.R.E.O.M (プレオム)」と謎のことばを交わしますが、それは、「Para Reencontrarnos En Otro Mundo (来世でまた逢う)」の頭を繋いだ語でしょ。
それが字幕だと、「トミオウ」となっている(※そのこと自体にはケチつけませんよ)。「To Meet In Other World」かな? だから、この字幕は西→英→日だろうなと思えるわけです。
その苦労はよくわかるけれども、人名くらいはさ、ほんのちょっとの手間でもうちょっと何とかなったでしょうよって思うのよ。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 12:30
> だって、観るべき作品・観てもらいたい作品、他に幾らでもあるんだよ。
これに激しく同意ですー!
まったく同じことをフランス映画にも感じており、日本語(もしくは英語)で観られないことが悔しくて、フランス語学習を決意した次第でして。でもまだ始めたばかりなので道のりは遠いです・・・その前にアブラモビッチかゲイツが(略)
Posted by: nabezo | Thursday, May 04, 2006 13:24
そうなんだよね、恐ろしいことだよね>nabezo氏
だって、私はスペイン映画に関してはある程度の「自習」ができるから、こうして粗悪品は粗悪品と言ってしまうことができるけど、他の言語・他の国の映画に関しては知識・情報がゼロの赤子みたいなもんなのですよ。
だから、彼ら(入れようって決める会社の人たち)が入れたものをただ見せられるだけという受身な感じ。
その国の映画のことを自習で知っている人からしたら「あーーー! そんなの観ないで!」って叫びたくなるような作品を、無知な私はありがたがって観ているかもしれないわけであってさ。
やっぱりアブラモビッチくんかゲイツくんに……(略
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 13:43
http://newsflash.nifty.com/news/tt/tt__reuters_JAPAN-212171.htm
B・ゲイツ氏、「お金持ちでなければよかった」(ロイター) 2006年05月04日 20時33分
うん。だからね、私に10億円ほどお年玉をください、と。
Posted by: Reine | Thursday, May 04, 2006 21:19
オバンデス。
昔、アントニオ・バンデラスファンだったので多分この映画見てますが、覚えてないです。そのくらいの映画なんだと思います。
私、ビセンテ・アランダ監督の映画は苦手ですね~。バス・ベガのカルメン映画も「女王ファナ」もダメでした。ハビエルと「ダンスオブテロリスト」で共演するというラウラ・モランテを見ようと借りた「セクシャリティーズ」は私の中で最低スペイン映画の中のひとつです。エロ中心なのに高尚なフリをしているところが何よりダメです。
Posted by: benita | Friday, May 05, 2006 21:41
申し訳ありません、Reineさんの罵倒を読んでいたら、
猛烈に見たくなってしまいました。
週末、スーパーで探してみます。
こっちではスーパーでDVD売ってます。
ゲイツ氏の発言、ニュースで見ました。
言ってみたいですよね。
メキシコは相続税がないですよ。
ビルゲイツがメキシコで今のような巨万の富を築いていたら(こんな環境でありえませんが)
子孫は永遠に長者番付世界一でいられます。
Posted by: ユースケ | Saturday, May 06, 2006 11:15
えぇぇぇぇぇ>ユースケ氏
言っとくけど、ほんとにエロは期待外れだからね? ぜんぜんエロくないんだよ? 何が見えるわけでもないよ? 目新しいテクとかにチャレンジしてもいないよ?
そして、benitaさん
ダメ出し情報をありがとうございます。
うっかり観てしまうことのないようによく覚えておきます。
『セクシャリティーズ』ですね。了解です。
Posted by: Reine | Saturday, May 06, 2006 11:29
昨夜遅く帰宅したらこの記事について
>reineさんの罵倒がツボに」
>あれはかえって宣伝になってしまいかねない素晴らしい解説
というメールが届いていました。
メールをありがとう。
えっと、こ、光栄です(?)
まさに昨夜は友人と6時間ほどしゃべってきたのですが、「ほんとに、Reineちゃんがムカついた映画を罵倒してる時の文章って力があるよね、嬉しそうだよね」と言われて帰って来たところでした。
先述のメールに話を戻しますと、こうも書いてありました:
>書いていてハイになりませんでしたか?
Yes。
ダメ映画について書いている時の筆の疾走っぷりには我ながら苦笑するのであります。
私は、とにかく、怒りで生きていますから。腹を立てることで命を繋いできたのですから。『かわいいこころ』で言うところの、肝臓タイプですよ、ド肝臓ですよ、私は。
昔から多くの人々に指摘されてきましたが、怒髪天を衝いちゃってる時の私は煌いているのだそうですよ。
理想の死因は憤死。
Posted by: Reine | Sunday, May 07, 2006 14:34
しかし、まじめに言い訳しとくと、全力でダメ出しをするのは私なりの誠意ですってば。(いや、たしかに、reneyamaのいう「私なりの」はおうおうにして間違った方向に逝ってるのですが)
だってね。
つまらない映画を「つまらなかった」だけで済ますのは、そういうオマエの人となりがつまらん、ではないですか。
Posted by: Reine | Sunday, May 07, 2006 14:41
ごめん。映画の話の最中にホントゴメン。
「両手を怪我でもしていたのかね」
が胸をこう、ついて。
Posted by: Nisimura | Sunday, May 07, 2006 15:38
それっくらいヌけない映画なんだよ。ふんとに。
Posted by: Reine | Sunday, May 07, 2006 16:02
> 理想の死因は憤死
これまたツボです。
今後エスカレートしてダメ映画を罵倒している最中にイッてしまう、
そんなことがあったら是非教えてください(笑)
楽しいひと時をありがとうございました。
DVDは残念ながら発見できませんでした。
日本に帰ったときになんとかしますね。
Posted by: ユースケ | Monday, May 08, 2006 07:17
ダメ映画に激昂しすぎて下書き段階で憤死の瞬間が訪れたら、なんとしても送信ボタンを押すだけは押して絶命したいですね。
ある日このblogにダメ臭の漂う作品の感想文がUPされていて、その文章の細かい体裁が整ってなかったり、中途で終わっていたりした場合には、
「reneyamaさん……(-∧-)」
と合掌してください。お手手の皺と皺を合わせてください。
Posted by: Reine | Tuesday, May 09, 2006 09:37