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Thursday, May 11, 2006

Chiquito

私がスペインに行っていた頃、Chiquito de la Calzada(←音量注意)(チキート・デ・ラ・カルサーダ)っていうおっさんコメディアンがTVに出づっぱりでした。‘社会現象’だった。いや、「これはもう社会現象なのよ~」と言ってたのは私の大家さんですがね。

私は、そうだな、スペイン到着がもう半年も早ければ、もっとその社会現象的な盛り上がりを体感していたかもしれない。なんか有名なおどけたおっさんがいるみたいだなって私が薄っすらと気づいた頃には、そろそろブームも下火ではなかったか。

まだまだスペイン語もよくわかってない私をつかまえて周りのスペイン人が「‘の・ぷいど、の・ぷいど’って言ってみろ」と言うので、聞こえるままに「No puido, no puido」または「No puedor, no puedor」みたいに言ってみせれば彼らは大ウケしてた。それなんかも、たぶんチキートっていうそのおっさんのギャグ。

今、Chiquito de la Calzada - Wikipediaを見て思い出したが、そうそう、「quietor」「¿comorl?」辺りは当時よく耳にしたような。


あれ? でも、一番多く言わされたフレーズがWikipediaには載ってないじゃないか。

と思ったので、Chiquito de la Calzada - Wikiquoteを見てみる。そうそう、あったあった、これこれ → 「¡Hasta luego Lucasss! 」だ。それは、ホントによく言わされました。

というか、渡西して最初に教わったスペイン語と言ってもいいくらいだ。たしかスペインに着いて2日目か3日目、まだホテル住まいだった頃に近くのレストランで食事をとっていて、隣席でどこかの会社の懇親会が催されており、その人たちに「『さよなら』の挨拶するときは‘あった・るえご・るーかぁっ’って言ってごらん」と教わったように思う。


と、ここまで書いてきて、ふと立ち止まった。そもそも、あの「¡Hasta luego Lucasss!」は、チキートの発明したギャグなのか、それとももっと起源を遡るべき‘成句’なのか?


ザッと調べてみてもコレ!という記述に出会えない:
・había un cómico español llamado el chikito de la calzada y que se despidía de una peculiar forma a los teleexpectadores diciendo "Hasta luego Lucas". Después esta frase jerarquizó (階層化する; 等級づける) una forma original de decir "Adiós y que te vaya bien que no me interesa (さようなら、色々うまく行くといいね、俺には関係ないけど)"


・La frase "Hasta luego, Lucas" fue popularizada por un cómico español llamado 'Chiquito de la Calzada' que intervenía en un concurso de hacer chistes en la cadena Antena 3, hace unos 3 ó 4 años, y que la incluía frecuentemente en sus representaciones. Su éxito en España fue tal, que ésta y muchas otras frases hechas se incorporaron como expresiones más o menos festivas al lenguaje común. Este cómico hizo alguna película. Supongo que por este medio, o por la televisión por satélite, esta frase pudo conocerse fuera de España.


・Hasta luego Lucas:
Dicho popular de despedida, muy de moda por los años cuarenta y cincuenta, ya casi olvidado, y vuelto a poner den circulación hoy día por el humorista Chiquito de la Calzada.

うーむ。その「40~50年代」についてもうちょっと詳しく知りたいのだが。


まさか無いよねぇと思いながら一応Instituto Cervantesの掲示板で検索をかけたら、あったのだ。起源を探してる人たちがいたわ。Buscando a Lucas desesperadamente (¿Sabe alguien quién o qué es o era ese tal Lucas?)

「Yo llevo un tiempo indagando y no consigo encontrar al sujeto.」

「yo también llevo buscándolo largo tiempo y no he dado con él en ninguna fuente de fiar.」

「Lo que sí le puedo decir es que la expresión es vieja, casi centenaria, y que no la ha inventado ningún humorista catódico moderno」

「es una simple aproximación de sonidos entre «luego» y «Lucas»」

「un «Lucas» es un infeliz y un pánfilo」

………などなど。結局、コレ!って起源は突き止められなかったんだなぁ。


※関連記事 チキートのフレーズ集

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Wednesday, May 10, 2006

oraciones comparativas 比較

比較の文について学びましょう。


私が語学留学時代に最初に使うことになった教科書は、Editorial Edinumen社の『Método de español para extranjeros. Nivel superior』(ISBN: 84-85789-95-4; Selena Millares著)。

最初の単元はSERとESTAR。その「応用編」というページに載っていた問題がこれ ⇒ 「Intenta usar las siguientes expresiones comparativas en frases correctas con SER y ESTAR (以下の比較表現を含む文をSERかESTARを使って作りなさい)」

… más agarrado que un pasamanos
… más bruto que un arado
… más bueno que el pan
… más fuerte que un roble
… más listo que el hambre
… más malo que un dolor
… más pobre que las ratas
… más raro que un perro verde
… más viejo que un Matusalén
… como una flauta, como una cabra, como una regadera
… más contento que unas castañuelas
… como una seda


まだ学校が始まったばかりで問題文からして辞書を引かないとわからないという極めて苛酷な状況にあった私は、一番上の「… más agarrado que un pasamanos」なんかも、まずagarrado(ケチンボ)を調べ、次にpasamanos(階段などの手すり)を調べた。


……「階段の手すりよりもケチンボだ」……って……意味わからないでしょ。


でもね、これ、agarrado という形容詞がカケコトバになっているのです。この場合、agarrado(ケチンボ)ではなくて、動詞agarrarの過去分詞だと考えるのです。

agarrarは 掴む,握り締める; grasp,hold tightly ですから、つまり、「… más agarrado que un pasamanos」は、「階段の手すりよりもしっかりと握り締められた; 手すりよりもしっかりと掴まれた」と読み下すことになるわけです。

で、agarradoの「ケチンボ」という語意がそこで強調される仕組みになっているのです。もはや「階段の手すりよりも」という部分は訳そうとしなくていいのです。あれらの例文はみなagarrado、bruto、bueno、fuerte、listo……などの形容詞だけを考えればいい。そして、その形容詞の意味を大げさに捉えればいいのです

えーっと、何言ってるかわかる? 私は「階段の手すりよりケチンボだ」の造りがわかった時、ニヤリとし、「スペイン語って、ほんと、面白ぇな」と爽やかな気持ちだった。


さて。
当時スペインではChiquito de la Calzada(←音量注意)(チキート・デ・ラ・カルサーダ)っていうおっさんコメディアンがTVに出づっぱりでした。(※そのおっさんについては後ほど別記事で解説

チキートは上述のexpresiones comparativas(比較表現)に基づくお笑いフレーズを大量に創り出したことで知られています。今ネットでいくつか拾ってみたけど、そうだな、各フレーズが発せられたその時その時の話題のヒト・モノなんかも取り入れてると思う。だから、今となってはどういうカケコトバなのかがボンヤリとしてたりする。また、全てがChiquitoの創作ではないだろうとも思う。

上述どおり、「○○よりも▲▲である」の「○○よりも」部は、「▲▲である」部を際立たせるためにくっついているわけであって、本当なら訳さなくてもいいところ。カケコトバなのでスッキリと訳せなかったりもするし。つまりは、「とても▲▲である」と言えば済む話なのである。

でも、そんなことは重々承知の上でコトバ遊びに励んだ結果、これらの表現が在るのです。


Tienes más peligro que un barbero con hipo. しゃっくりの止まらない床屋さんより危険

Tienes más peligro que una piraña en un bidé. ビデの中に泳いでるピラニアより危険

Te repites más que un episodio de farmacia de guardia. お前は『当番薬局』(※有名テレビドラマ)よりもよっぽどおんなじ話を繰り返す奴だな

Eres más raro que el final de Twin Peaks. ツインピークスのラストより変なヤツ

Tienes más huecos que la defensa del extremadura. エクストレマドゥーラ(※サッカーチーム)のディフェンスよりもスカスカ

Tienes menos repertorio que una película porno. ポルノ映画よりレパートリーが少ない

Tienes menos vocabulario que el diario de Tarzan. お前はターザンの日記よりも語彙が乏しい

Estas más atacada que la nave de Star Trek. スタートレックの艦隊よりもひどく攻撃されている

Tienes más mala cara que marco en el día de la madre. / Estas más triste que Bambi en el día de la madre. ‘母の日’のマルコより沈んだ顔をしている/‘母の日’のバンビより寂しい

Trabajas menos que el sastre de Tarzan. ターザンの衣装係より仕事が無い 

Estas más quemado que la azotea del coloso en llamas. タワーリング・インフェルノの屋上より燃えてる

チャックTienes menos futuro que Chuck Norris en la casa de la pradera. 『大草原の小さな家』にチャック・ノリスが出るのよりも見込み薄だ

※これ、ちょっと文脈がわからないので、もっと違う文意かも。


a-teamTienes más capacidad que la furgoneta del equipo 'A'. お前のキャパシティって特攻野郎Aチームのワゴンよりすげぇ

※このセリフが発せられた状況を知らないので誰の何を指しているのかわからないのだが、capacidadという語を、‘お前’に関しては「素質,能力」と解釈し、‘ワゴン車’に関しては「収容力」と解釈するというカケコトバではなかったかと想像する。


knightTienes más discos que los frenos del coche fantástico. お前はナイトライダーの車よりもディスクが多いな 

※discoはレコードという意味と、ブレーキディスクという意味とあるようなので、その辺のカケコトバだろうか?

※ちなみにL.A. Times紙で、Ten Things You Didn't Know About 'Knight Rider'という記事を発見。


Tengo más trabajo que el chapista de Mazinger z. マジンガーZの板金工よりも大忙し

※友人が、マジンガーZはボロボロになっても次の場面・次の放送回には新品同様にピカピカのツルツルに戻ってるだろと説明してくれた時、私はゲラゲラ笑った。

※彼はたくさん挙げて説明してくれたんだが、10年以上も経ってほぼ完全に忘れてしまった。しかし、このマジンガーZのだけはしっかりと覚えている。だから、今日、掲載サイトをgoogle検索する際に入力した語は、「"Chiquito de" mazinger」でした。


Estas más despeinado que Loyola de Palacio. ロヨラ・デ・パラシオより髪の毛がボサボサ

※Loyola de Palacioっていうのは政治家かなにか? で、その女性が御髪が乱れてるというのかな?


Te renuevas menos que el escaparate de Simago. シマゴのショーウィンドウよりもお前はリニューアルしない

※Simagoはスーパーマーケットチェーンの名称のようだ; まぁ、どうなんだろ、鄙びてる感じで知られていたのかな; 現在は他社に吸収だかなんだかされた模様。


Tienes más pintura que el neceser de Marujita Diaz. お前はマルヒータ・ディアスの化粧箱よりもよっぽど塗料をたくさん持ってるんだな

Marujita Diazっていう女性タレントのことだろう。彼女の写真を見ると………そうだね……化粧を仕上げるのに大量の‘塗料’を要しそうだね。

※そして、文脈は知らないが、おそらくここでは「pintura」が指していたのは「絵画」だと思う。絵画のpinturaと、化粧品=塗料のpinturaとをカケコトバにしたんじゃないかなと。


マクガイバーTienes más peligro que MacGyver en una ferretería. 金物屋に冒険野郎マクガイバーがいるよりももっと手強い

Estas más sucio que las uñas de Mac Gyber. 冒険野郎マクガイバーの爪より汚れている

Estas más contento que Mac Gyber en un desguace. 解体現場にいる冒険野郎マクガイバーよりもウッキウキ

※冒険野郎マクガイバーという人は器用な手先を駆使して手近にある小物でなんでも作って戦っちゃうんだってね。


Tienes menos contenido que un Kinder sorpresa. キンデル・ソルプレッサより中身が無い

キンデル・ソルプレッサとは、キンダー・サプライズのこと。


Eres más triste que Naranjito en una licuadora. ジューサーに入れられたナランヒート(オレンジちゃん)よりも哀しげ

Tienes más miedo que Narajito cuando ve el anuncio de zumosol. スモソル(※ジュース会社)のCMを見たときのナランヒート(オレンジちゃん)よりビクついてる

naranjito※ナランヒートって何かのマスコット?……と調べたところ、1982年にスペインで開催されたサッカーワールドカップのマスコットだったらしいよ。(Naranjito was also the mascot of the FIFA's football World Cup held in Spain in 1982. Naranjito, an antropomorphic orange in Spain's team's colours, appeared in many merchandising items, and was protagonist in an animated cartoon series.)


nanaEstas más frío que el publico de un concierto de Nana Mouskouri. ナナ・ムスクーリのコンサートの客より冷えちゃってる


Tienes más exito que Angel Nieto trabajando de mensajero. バイク便で働くアンヘル・ニエトよりよっぽど成功するよ

※アンヘル・ニエトってのはMotoGP殿堂入りしてる人みたい


Estas más maciza que el casco de la hormiga atómica. 怪力アントのヘルメットより頑丈


ウッドペッカーTengo más trabajo que el psiquiatra del pájaro loco. ウッディーウッドペッカーの精神科医より俺の方が忙しい


Aquí se habla más de fútbol que en la primera comunión de Oliver y Benji. 『OliverとBenji』の初聖体拝領よりもよっぽどここの方がサッカーの話で盛り上がってる

※これ、どうかな。『OliverとBenji』ってのは、『キャプテン翼』のスペイン名。Oliverが翼くんとやらで、Benjiはもう一人の登場人物のことらしい。

彼らのことだから初聖体拝領の場でもきっとサッカーを論じてるだろうけれども、今ここにいる俺たちの方がもっとサッカー談義に花を咲かせているよ、とかなんとかそういう意味だろか???


Estas más acalorada que Isabel Tocino en un sex shop. アダルトショップにいる時のイサベル・トシーノよりも火照ってる

Isabel Tocinoっていう女性は元環境大臣かな?


Estas más macizo que el moño de la Pantoja. Isabel Pantojaのシニョンよりも君は頑丈だな

※イサベル・パントハは有名な歌手


……などなどですよ。comparacionesやexageracionesで探せばいっぱいあると思う。

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Thursday, May 04, 2006

Intruso / 危険な欲望 [スペイン映画]

intruso観なくていいんじゃない? 借りた人間がバカを見る。「あと何分残ってるんだよ」と、DVDの時間経過表示が気になるだけのくだらない作品。

作品がどんなに腐っていようが、その制作に対しては敬意を払うべきであるから、作品を罵倒するにも全力で罵倒するべきである。というのを私は『カマキリな女』では頑張ったわけですが、『Intruso ―― 危険な欲望 ――』 に対しては、こっち(観客)がそこまでやってさしあげる必要はないと感じる。


それでも誠心誠意、悪し様に語ってみようか。それがこの作品の供養でしょ。
_________________

子供の頃から思春期も青年期もルイサ(女)とアンヘル(男)とラミロ(男)は仲良かったです。「2人と結婚するの」とルイサはいつも言っていました。で、まずアンヘルと結婚しました。でもすぐにラミロと結婚しなおしました。アンヘルはベネズエラに行ってしまったそうです。

ラミロとルイサはその後、一男一女をもうけ、裕福で幸せな家庭を築きましたとさ。

ある日、変わり果てたアンヘルをルイサは町で見かけます。次の日、ルイサはアンヘルを見つけ出して家に連れ帰りました。重病で余命いくばくもないアンヘルとの同居が始まります。アンヘルはなんだか恨みがましくて鬱陶しいです。

ラミロは不機嫌です。ルイサは甲斐甲斐しくアンヘルの世話をしてみます。重病人をヤっつけたりしてます。そうするとそれが起爆剤にでもなるのか、ラミロもいつもよりも激しく求めてきたりします。

ルイサはダブルヘッダーをこなしたりします。アンヘルとヤってきた体でそのままラミロのベッドに戻って来て、問われてもいないのに、「Llevo en la vagina el semen de Ángel. (アンヘルの精液がヴァギナにあるの)」なんつってやがる。

アンヘルが重篤な状態に陥った時、ルイサは自己流の蘇生術を施したりして生き返らせちゃったりします。わー、そりゃーすげーや(棒読み)。

で、棺桶。さて、幾つでしょうか。
______________


DVDの特典映像の特別予告編ってやつを書き取っておいた。「   」の部分はナレ。それ以外は文字。こんなのを書き取るという手間をかけただけでも観客としての誠意は十分すぎるくらい見せたことになるだろう:

ビクトリア・アブリルが魅せる
倒錯の愛の美学
『危険な欲望』

男と女が
再会する時

「偶然の再会が
男と女、そして夫の本能を呼び覚まし
狂気の淵へと駆り立てる
平和な家庭に
突然迷い込んだ過去からの訪問者」

愛欲と官能の嵐が吹き荒れる…

「狂気の殺意を内に秘め
忍び寄る訪問者とは。

恐怖と官能のセクシャル・サスペンスが今始まる
異常なSEXに溺れる男と女
愛欲と官能の嵐が吹き荒れる
狂気の果てにやって来るのは
生か死か

物語は予期せぬ結末

――揺れ動く愛の狭間で
女の欲望が覚醒する――」


だってさ。


危険な欲望意味深な(=なにかしら‘事件’の火種をほのめかすような)ショットがちょびっとと、後は情交のシーンを切り貼りした予告編です。こんな予告編が他のDVDに収められていて、これで興味をちょっとでも持ってしまった人間がレンタルしちゃうんだろうか。えっとね、騙されないでちょうだい。

この作品程度のサスペンスや愛憎劇ならば毎日のようにどこかしらの局で2時間モノをやってるわけだし、この作品程度のエロスでヌけるくらいたまっているんだとしたら、おいおい君は長いこと両手を怪我でもしていたのかねと問わずにはいられない。

それっくらい、この作品は借りる意味が無い。時間の無駄ですよ。も一つ付け加えると、スペイン語の勉強という面からも、めぼしいもの無しですから。


危険な欲望 @goo映画より
>製作: 1993年 スペイン
>発売日: 2001年3月2日

製作から8年も経った作品を扱おうと発売元・販売元が決めた理由は何だろう。

さっきの特別予告編とやらでも精一杯切り貼りしていたけど、性交のシーンがあるからか? ヴァギナに精液ウンヌン言うセリフが一箇所あったからか?


アブラモビッチくんとかゲイツくんとか、財布から10億円くらいポンっと私にくれないもんかな。どんな奉仕をしたらくれるかな。痛いのと汚いのと怖いのと恥ずかしいこと以外なら何でもやりますが(←って、それ、フツー宣言じゃん)。

もっと、こう、入れるべきスペイン(語)映画を入れられる会社を作らないといけないな。私が作るのか!


だって、観るべき作品・観てもらいたい作品、他に幾らでもあるんだよ。なんでこんなのが日本に入ってて、『El Hijo de la Novia』とかがDVDで観られないのかね。

私だってなにも、私がいいと言う作品を必ず入れろやとヤタラメッタラがなり立てているわけではないですよ。例えばこないだの『Aunque tú no lo sepas』はとてつもなくグッと来る作品だったけど、日本に入れるのは無理だって思ってます、私だって。あれは事情説明が要りすぎだし静かだから。


そういうのはさておき、『カマキリ~』にしても、この『危険な欲望』にしても、他を差し置いても入れる意味があったんですかと胸倉掴んで問いただしたくなるようなのが多いわけです。

どんな狙いか知らんが(←うそ。狙いはだいたい見当はつくでしょ)、くだらないスペイン(語)映画作品が日本に入って来てるんである。日本人観客のためにもスペイン(語圏)の映画製作人のためにも、どちらのためにもならない愚かしい嘆かわしい由々しい状況なんである。

しかし悪貨は良貨を駆逐するんである。

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Wednesday, May 03, 2006

El Hijo de la Novia / Son of the Bride [アルゼンチン映画]

hijo
子供の頃ラファエルは年上の子らにいじめられると怪傑ゾロになりきって仕返しをした。いじめっ子たちが追いかけて来ると、仲良しのフアン・カルロスが助けてくれた。二人で全力で逃げた。家まであと少しとなったら「ママー!」と叫ぶ。母ノルマは必ず門を開けて待っていてくれ、いじめっ子たちを追っ払ってくれた。

母はフアン・カルロスとラファエルを迎え入れるとこう言った。

クッキーを食べる? 腕白なあなた達のお口に合うかわからないけど」。


ラファエルは父ニーノのレストランを継いでしゃかりきにやってきた。業者への支払いに追われ、電話で怒鳴り散らし、時には仲間を罵り殴り切り捨てもした。この店で出すティラミスはラファエル自身の人生よりも苦い。安いクリームチーズとパウダーシュガーで誤魔化してきたから。マスカルポーネは高くつく。

別れた妻との間にビッキーという娘がいる。仕事に時間を奪われて、ビッキーを学校に迎えに行くのもままならない。食事中にも仕事の電話はひっきりなしで、学校の話を聞いてやることもできなかった。ふてくされたような泣き出しそうな顔で二階に上がって行ったきり、ビッキーはおりてきてくれない。

若い恋人ナティとは踏み込んだ話はせずにいる。縛られたくないだろう、お互いに自由で居ようじゃないか、互いに立ち入らないでやっていこうじゃないか。


母ノルマはアルツハイマーで施設に入っている。見舞いに行ったのはもう一年も前のことだ。父が店にやってきて言う、今日は母の誕生日だと。父さん、お見舞いには行けないよ、今、店が忙しくてしっちゃかめっちゃかなんだ。それに母さんは別に俺に会いたいとも思っていないだろう。

父はラファエルに打ち明ける。「母さんにプレゼントしたいことがある。結婚式を挙げてあげたいんだ。教会式のウェディングを」。父さん、そんな突拍子もないことを。母さんはもう、それの意味もわからなくなってるんだよ。明日また冷静に考えた方がいいよ……。


その夜、ラファエルは心臓発作を起こして病院に担ぎ込まれる。

「俺は何を生きてきたんだろう」。ラファエルは初めて立ち止まった。
_____________________


母モノは私の弱点なので、これは覚悟が要る映画でした。「君は気に入るはず」と薦められていたとおり、たしかに気に入った。そして当たり前のように泣いたよ。いろんな箇所で。

だけど、思っていたほどには泣かないで済んだ。理由は幾つかある:

1) 静穏
大仰なつくりになっていないんだよね。ベッタベタな泣き所を設けていない、静かで穏やかな淡いつくり。

2) 微笑
微笑むという意味での笑いのシーンが用意されているので、そちらで顔がほころんじゃって。

3) ことば
私の超苦手なアルゼンチンのスペイン語なので、そっち(語彙とか音とか活用とか)に気をとられていてストーリーへの集中を削がれたという障壁。

4) フラッシュバック
序盤の30分(ラファエルが倒れるところまで)、ラファエルの、人を人とも思わないような傲岸不遜な高圧的な専制君主的な………幾らでも修飾語を繰り出せるけども、とにかくあれだ、典型的な‘ムカつく上司’的な態度が、過去に仕事で関わった、大大大大大嫌いなporteño(ブエノスアイレスの住民)のことを思い出させるもので、私は、その仕事で心的に負った一生モノと言えるくらいの深傷を今さら抉られるようで、たいへんにストレスフルだったのだ。

このストレスが障害となって、この作品に入り込むのが遅れた。それで、涙量も予想を下回ったのです。

序盤のラファエルは私にとっては本当に嫌な人物でした。ラファエルの醸し出す負のパワーにそこまでゲンナリした観客が地球の裏側にいたなんて知ったら、フアン・ホセ・カンパネラ監督やラファエル役のリカルド・ダリンはさぞ喜ぶだろう。

私の涙量が意外に少なかったのは私の個人的なネガティブな思い出が入り込んだからであって、ふつうに観ればもっとじんわりと感じることのできる作品だと思いますよ。

あのジャケ写で微笑む母ノルマを見ただけでグッと来るはずなんだわ。


(アルゼンチン映画)
(語彙などコメント欄で)

El Hijo de la Novia 公式
(直訳: 花嫁の息子)
(アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品)
El Hijo de la Novia @IMDb

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