La Mala Educación / バッド・エデュケーション [スペイン映画]
映画監督エンリケ・ゴデは少年時代の一時期を修道会系の寄宿学校で過ごした。
イグナシオ・ロドリゲスは歌が得意な少年で、その美声は聴く者を虜にした。校長兼文学教師のマノロ神父も、イグナシオの神々しいまでの美声に陶然とする。
マノロ神父はイグナシオに対し破廉恥な振る舞いに及んだ。拒絶して逃げたときにイグナシオは転んで額を打った。「流れ落ちる一筋の血が僕の額を2つに裂いた。あの瞬間、僕の人生もきっとこうなると直感した。真っ二つに裂かれ、それを僕はどうすることもできないだろう」。
エンリケとイグナシオは互いに愛慕する仲となった。初恋だった。二人は映画館の暗がりに身を沈め、互いの体で手淫を覚えた。
その夜、二人はなかなか寝付けなかった。トイレでしゃべっていると、マノロ神父がやって来てトイレの扉を一つずつ開けていく。二人が息を止めて身を隠していた扉の前にマノロ神父が立っている。床と扉のわずかな隙間からマノロ神父の白く光る目が覗いた。
エンリケはイグナシオから引き剥がされ床に叩きつけられたが、神父を見据えて言い放った。「No pienso dejar a Ignacio solo con usted. イグナシオをあなたと二人っきりにはしない」。マノロ神父がわずか10歳の教え子イグナシオに対して抱いていた劣情にエンリケは気づいていた。
浅ましい激情に駆られたマノロ神父はエンリケの放校処分をちらつかせる。イグナシオはエンリケをどうしても失いたくなかった。「エンリケを退学させないでもらいたい一心で、あの香部屋で僕は初めて体を売った。しかし、マノロ神父は僕を騙した。このツケを必ず払わせると僕は心に誓った」。
エンリケは学校を辞めさせられた。去って行く日、エンリケはイグナシオを振り返る。それが二人の最後だった。
16年後、映画監督として名を成したエンリケを一人の青年が訪ねてきた。イグナシオである。小劇団に属し、‘アンヘル・アンドラーデ’という芸名で役者をしているらしい。イグナシオ改め‘アンヘル’はシナリオを持って来た。
仕事が欲しいのか。その手の売り込みには閉口気味なエンリケだったが、『La Visita(訪い)』というその作品が彼ら自身の少年時代に着想を得たものだと聞いて興味をそそられた。しかし、‘アンヘル’は随分と変わった。街ですれ違っても気づかなかったろう。
彼が忘れていったライターに書かれた宿の名を頼りに、エンリケはガリシア地方に一人向かった。‘アンヘル・アンドラーデ’を知るために。彼の実家に辿り着き、そこで知り得た真実にエンリケは息を呑んだ。
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トランプでさ、1から13まで綺麗に並んでるわけよ。「七並べ」が完成してるように見えるわけ。だけど、よくよく見たらクラブのところにスペードが混ざりこんでいたり、ハートのところにダイヤが収まってたり。「あ、なによ、混ざってるんじゃん」って。
『バッド・エデュケーション』は、2005年3月にスペインでファミリーの次女(28歳)と二人でDVDを観たんだが、まぁ……我々と来たら……。
「あ、なによ、混ざってるんじゃん」って‘トランプの色違い’に気づくのが、はぁ、遅かったこと遅かったこと! アルモドバルの高笑いが聞こえて来そうな、なんとも鈍い観客でしたことよ、まったく。アルモドバルの並べ方の巧いこと!
私たちは、途中、何度か一時停止して確認しながら観ていた。私のスペイン語力不足のせいと、ソファがテレビから離れすぎてて画面がよく見えなかったという致命傷もあったんだが、何よりも次女の呑み込みの悪さは問題だったと思うぜ。だって、あたしが説明したんだから。「これがソレで、あれがコレなら、じゃぁさっきのは?」「いや、これがソレで、アレがソレよ」「え? ドレがドレ?」「だから、ソレがあれだよ……たぶん……」みたいな。
※ちなみに、翌々日だったか、今度は三女と『El Lobo』(エドゥアルド・ノリエガ主演)を観ていて似たようなドタバタを……。
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(スペイン映画)
(語句メモなどはコメント欄で)
・La mala educación | Pedro Almodóvar | Página oficial(スペイン公式)
※オリジナル予告編はネタばらしが過ぎるので、そのページ↑に入ったらミュートして、目をシバシバさせて自己モザイク処理をした方が無難。日本版のTrailerの方が気を遣って練ってあると思う。
・バッド・エデュケーション 日本公式
・La Mala Educación @IMDb
・La Mala Educación @Yahoo!Cine
・バッド・エデュケーション @みんなのレビュー
・バッド・エデュケーション@ぽすれん
・バッド・エデュケーション @goo映画
・バッド・エデュケーション @映画生活
・バッド・エデュケーション@象のロケット
・バッド・エデュケーション@シネマトゥデイ
・@シネマカフェ
・バッド・エデュケーション@goo映画
・La Mala Educación - El Guión - @DVDGO.com
監督: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodovar
製作: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodovar アグスティン・アルモドバル Agustin Almodoval
製作総指揮: エステル・ガルシア Esther Garcia
脚本: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodovar
撮影: ホセ・ルイス・アルカイネ Jose Luis Alcaine
音楽: アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias
出演: ガエル・ガルシア・ベルナル Gael Garcia Bernal
フェレ・マルティネス Fele Martinez
ハビエル・カマラ Javier Camara
ルイス・オマール Lluis Homar
ダニエル・ヒメネス・カチョ Daniel Gimenez Cacho
レオノール・ワトリング Leonor Watling
ナチョ・ペレス Nacho Perez
ラウル・ガルシア・フォルネイロ Raul Garcia Forneiro
おまけ。オフィシャルサイトより:
美術館での策謀シーンは『Double Indemnity(深夜の告白)(1944)』の同様のシーン(※おそらくこの↓写真のシーン)へのオマージュだってさ。
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Comments
(1) 語句メモ
・¿Cómo voy [no voy] a + 不定詞? : 私が~~する[しない]わけがないだろう(反語)
・¿De qué va? (テーマは?)
・quedarse frito: 眠り込む,居眠りする
・estar como un tronco: 熟睡している
・pollón: polla(ペニス)+増大辞-ón = ナニがデッカい,デッカいナニ
・empalmarse: 勃起する
・metálico: 現金
・deformación profesional: 職業習癖(職業上の習慣からくる考え方や行動の癖)
・manga(s) por hombro(s): 乱雑に,無頓着に
・Haz con lo que te salga de la polla.
→ こないだの『Familia』でも似たような表現が出てきた(lo que te salga del culo)
・calientapollas: calentar(熱くする) + pollas(ペニス) → 男をムラムラさせ(るクセにじらすだけじらして最終的には何もさせてくれない態度をと)る人
※「動詞の直説法・現在・三人称・単数」+「名詞の複数形」という形で「~する人・もの」という意味を成す語はたくさんある
・pluma: 女っぽさ,なよなよ,ゲイっぽさ
・・el cuento de nunca acabar: 際限の無い話,容易に決着のつかないこと
・estar [meterse] en un callejón sin salida: 行き詰っている[行き詰る]
・yonqui: En la jerga de la droga, adicto a la heroína.
・al contado: 即金で,現金で
・mono: (中毒になっているものに対する)欲求; 禁断症状
「Dame pasta. Tengo un mono que te cagas. (お金ちょうだいよ。クスリがきれて限界なのよ)」
・deshacerse de + 人: (人)を殺す
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 21:35
(2) 愛し合う少年二人が映画館で観たのはSara Montielの出演する『Esa mujer』(1969)
……でも、そうすると、よくわからないんだけど……この映画が1969年だったら……そこから16年経って二人が再会するのは1985年……ではないの? 再会して「16年ぶりだな」って抱き合うのは「1980年 マドリード」ってなってなかった?
あれ? なにか私は勘違いをしてるのか? 私はまだ‘トランプの色がよく見えてない’のかい?
(3) ライターを頼りにエンリケはホテルを探す。
検索によれば、La CoruñaのOrtigueiraに400-150という電話番号で問題のライターの『Hostal Residencia La Perla』という宿は実在するようだ(http://www.dondevas.com/guia/est.php/101603/)
(4) parchís(すごろくみたいなゲーム盤)で遊ぶシーン。parchísは『El Verdugo』にもチラッと映った。
参照
・http://www.ludoteka.com/parchis.html
・http://www.mundijuegos.com/multijugador/parchis/
・http://www.dialway.com/teuladi/juegos/011Parchis/parchis.html
(5) 字幕で「タイプライターを運んでよ」ってなってるところでは、セリフでは「olivettiを運んでよ」と言ってたね。
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 22:06
(6) 『トーク・トゥ・ハー』とか『Torremolinos 73 』で静かなひたむきさを演じていたJavier Cámaraが賑やかな役を演じてた。可愛らしい、というかキモカワイイ男娼…じゃないか……「オカマ」キャラのパキータ姐さん。
「Mira, ni dormido se le baja. 寝てるってのにアノ大きさったら!(※もちろん男性性器の話をしている)」
「Para cosas malas las dos juntas, pero para buenas tú sola. 悪いことは二人で分け合いましょうで、いいことはアンタいつも独り占めなのよね。んもぅっ!」
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 22:24
(7) 『Moon River』の歌詞はhttp://www.populationstatistic.com/archives/2005/02/15/bad-educations-rio-luna/
(7') 『Jardinero(帰れソレントへの替え歌)』の歌詞はあったんだけど、なんかちょっとよくわからないBBS(……ショタコンBBS……???)だったのでURLはちょっと保留
Jardinero, jardinero,
Noche y dia entre tus flores, encendiendo sus colores
con la llama de tu amor.
Vas poniendo en cada caliz
la sonrisa de tu anhelo,
con los ojos en el cielo
donde tienes tu ilusion.
Y tus flores, jardinero,
de coloras encendidas
que al unirse agradecidas
te embalsaman con su olor.
Sigue tu labor
cultivando las flores
que a tus amores
confio el Señor
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 22:42
アルモドバル(合ってます?)苦手だったんですが、この映画はめっちゃ好きでした。去年のマイベスト10にも入れました。
でも、「めっちゃ好き」ということしか覚えてなくて、reineさんのエントリーを読んだら、あんまりにも話を覚えてないことに気づいて愕然としました。。。
Posted by: nabezo | Wednesday, January 04, 2006 22:57
nabezoくん
私は基本的にジーンとしたい人で、さめざめとはらはらと泣きたい人なのです。だから、この映画はそういう意味では別に好きではないな、そういう意味では。
しかし、実に面白かった。その意味ではこの映画好きだな。かなーーり好きかもしれないぞ。(※見直してみたら、ね。去年スペインで観た時は好きも嫌いも、あんな↑調子だったので……)
> あんまりにも話を覚えてない
↑
いやぁ、そう言われると私も不安だ。いい加減な鑑賞をしてるからね、私は、けーーっこう。とんちんかんな解釈をしてる可能性が…。
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 23:34
(※本文中にあった記述をこちらへ移動)
なぜか『太陽がいっぱい』と、松本清張の、えーっと、あれは何と言ったか……『天才画の女』だったかなぁ、こっちはちょっと確認できていないけども、とにかくその2作品を想起しました。
Posted by: Reine | Wednesday, January 04, 2006 23:36
オバンデス。
この映画、私にとっては記念すべき初外国映画館鑑賞映画でした。夕方からのみ上映の6ユーロだったと思います。公開してから何ヶ月か経っていたので安かったし,観客も私含めて5人くらいでした。
去年晴れて日本で字幕付きで見た時、ガエル君が誰なのか把握出来ていなかったことが分かりました。好きか嫌いかと聞かれればどっちにも属さない映画ですが、マドリッドで座ったベルベット張りの椅子の感触が今でも思い出されて映画好きとしては胸キュン(死語)でございます。
Posted by: benita | Thursday, January 05, 2006 00:03
benitaさん、この作品にはそのような‘感触’としての思い出が。いいなぁ、そういうの、私、あんまり体で覚えてないので羨ましい。
> 誰なのか把握出来ていなかった
↑
あぁ、次女がそれでした。
Posted by: Reine | Thursday, January 05, 2006 00:12
二人の少年とマノロ神父が一時期を共に過ごしたあのような形の学校のことを日本語で何と訳すのが正しいのかわからない。
「神学校」じゃないでしょ?
神学校って「キリスト教の教職者を養成する学校」でしょ? あの子たちは別に教職者になろうとしてあそこで学んでいたのじゃないでしょ?
「カトリック系の(寄宿)学校」?
と言ったって、あの時代(60年代)にはスペインの学校って……‘カトリック系’で当たり前……なんじゃないの?
修道会系の? 修道士会系の?
そんなコトバあるの?
Posted by: Reine | Thursday, January 05, 2006 00:26
> あんまりにも話を覚えてない
↑
nabezoさんのこれについてだけど。
これね、私のあのあらすじ紹介文に問題があるんだと思うよ。
いつもならあらすじ紹介文には私なりの説明セリフは極力混ぜないようにして、排除して書くんだけど、今回は意図するところがあったので混ぜ込んでみたから。
例えば「手淫」のクダリね。
あれだって、あの暗がりのシーンを「手淫」と解釈したのは私の勝手だよね。あの子たちは二人で手をつないでいただけかもしれないわけだから。それを「手でヤってた」と私が書いてしまうことは、普段は排除して来たのですが、今回はちょっとね。敢えて決めつけといた。
……いんやぁーー、やっぱり、でも、あれはソレだろ、とは思うけどね。だってシャカシャカ動いてたもんね。あれは、ヤってたでしょ?
…っていう、決めつけを「あらすじ紹介文」に今回は書いてある。もしもnabezoくんがあのシーンを違うように鑑賞していたのだったら、私のこのエントリーを読んでキョトンとしたのも自然な反応だよね。
Posted by: Reine | Thursday, January 05, 2006 12:56
これって、アルモドバル監督が、ガエル・ガルシア・ベルナルが掘られるところを見たいから作った映画だと思ってました・・・。
Posted by: 石井 | Thursday, January 05, 2006 15:00
実は私も、昨3月に次女と見終わった時の真っ先のコメントは、「アルモドバルは撮影さぞかし楽しんだだろうな」でした。
だって、私が男であって性的に男を欲する傾向の人だったとしたら、たまんねぇもん、この映画。ガエルもフェレも。
と思ったもん。
Posted by: Reine | Thursday, January 05, 2006 15:39
あ、あのシーンは私もそう見てましたよ。
「あまりにも」というのは、reineさんの書いたあらすじ以降のことがまるで思い出せなかったからなのです。どうやって終わったか、とか。reineさんの書かれた部分は「ふんふんそうだったな」と思いながら読んだのに、そこから先の記憶がすっぱりなかったことに驚いたわけでした。
Posted by: nabezo | Thursday, January 05, 2006 17:32
nabezoくん
> reineさんの書いたあらすじ以降のこと
↑
私なんて、つい昨夜のことなのに、もう既に「えーっと…」って感じですよ。
> あ、あのシーンは私もそう見てましたよ
↑
よかったよかった(笑
いやぁ、私が勝手にそう解釈してただけなんだっらどうしようって、ちょっと心配でした。
Posted by: Reine | Thursday, January 05, 2006 19:35
たった今、ファミリーの次女とのチャットを終えた。
こないだ私は彼女を含むスペインの友達にメールを(BCCで)出し、わりと最近のスペイン映画のお薦めを教えてくださいって頼んだんだ。(※前回は2004年の11月でした) それについて次女が、「あれの回答は妹に頼んでおいたから」という。
そして、「私、映画あんまり好きじゃないみたい。っていうか、理解できないんだよね」って。
Posted by: Reine | Sunday, January 22, 2006 02:17
「トランプのカードが混ざってて、よくよく見るとちゃんと七並べになってない」と私は書きましたが、その七並べをうまく並べ直してくれたのがコジマさん ⇒ コジマライフ: La mala educación (バッド・エデュケーション)
いつももっぱらtwitterで楽しませていただいています。
Posted by: Reine | Monday, June 13, 2011 09:33