Familia / カット!世にも奇妙な一族 [スペイン映画]
朝、サンティアゴは目を覚ました。階下では家族がそれぞれに忙しそうにしていた。
・バスルームにこもって化粧に余念の無い妻カルメン
・バスルームをさっさと出てよと急かす老母ロサ
・試験に向けて暗記に励んでいる長男カルロス
・穿くズボンが決まらず焦り気味の長女ルナ
・クイズ番組を熱心に見ながら数々の小箱を綺麗な紙で包装している次男ニコ
「そろそろ起きてくる頃かしら」「だね」「そこの扉を閉めてちょうだい」。家族は食卓に揃い、サンティアゴがダイニングに降りてくるのを待っている。サンティアゴがやってきて家族全員での朝食が始まった。しかしこのぎこちなさは何だろうか。この家庭に漂っているtensión(精神的緊張)は何なのか。娘ルナがその年頃の難しさからサンティアゴに反抗的な態度をとっているせいか?
もどかしさにたまらずサンティアゴが次男ニコに「なんか変だと思わないか?」と尋ねるが、「別に……いつもこんな感じじゃない?」と。そこへ妻カルメンがプレゼントを抱えて現れた。「なーんかおかしいと思ってたら、そうか、こういうことか!」と相好を崩すサンティアゴ。
今日はサンティアゴの55回目の誕生日であった。
老母ロサはサンティアゴの生まれたときの様子を語った。子ども達も楽しそうに聞き入っている。サンティアゴはプレゼントを一つずつ開けていった。娘ルナからはchandal(スポーツウェア)。「ジョギングの時にでも着てね」。老母からはストップウォッチ。「……なぜ……ストップウォッチ…?」「……えーっと…なんでも測れるじゃない」。
そして次男Nicoからのプレゼントを開けた。パイプが入っていた。
※注意※文字サイズが小さくてよく見えない人のために英語で書くとpipeです。パイプです。バイブではないですよ。
Santiagoの表情がかき曇る。「これは誰のだ?」と家族を見回す。皆がキマリ悪そうに目をそらす。「僕の……」と次男Nicoが名乗り出る。
サ: どういうつもりだ
妻: サンティアゴ…(※なだめるかのように)
サ: もういい! お前がすべてぶち壊してくれたよ。パイプとはね。お前は頭が悪いのか? どうした? 聞いてるのか?
ニ: …ごめんなさい…
サ: 何もかもうまく行ってたのにコレのせいで! ……このバカはいったいどこから来たんだよ! なんで俺がタバコ吸わないってことをコイツは知らないんだ?
妻: サンティアゴ、やめてちょうだい。
サ: みんな知ってることじゃないか? なら、どうしてこんなことに?
妻: サンティアゴ、Nicoが泣いちゃってるわ。
ニ: (※泣きながら) パパ……大好きだよ…。
サ: ハァ?
ニ: 大好きだよ。
サ: 信じられないね! 涙が出てないじゃないか!
ニ: ほんとだよ、大好きなんだよ。
サ: だいたい俺は肥った息子は欲しくなかったんだ。メガネかけた子もヤダったよ!
……あまりにもあんまりな父親の暴言である。これがサンティアゴ一家の一日の始まりであった。
この映画はここでエンジンがかかるようなものです。ここまでは、あれ何ていう、イグニションキーを回していたようなもの。この家庭に漂っていたtensión(緊張感)は、ここからますます増大します。どうかみんなヘマをしないでくれ、この父親の機嫌を損ねるようなことがあってはならないのだと、観ているこちらまでハラハラすることになる。
涙も感動も特に大きな盛り上がりは無い映画だけども、「おもしろい」とは言えるね。私は好きだね。「この映画、どう?」と、たとえば姉や兄に聞かれた場合にも「あぁ、いいんじゃないかい? 観れば?」と答えるだろう、と言ったらなんとなくその方向性はわかっていただけるか。
ほのぼの系というか。家族モノというか。ホームコメディーですかな。ブラックユーモアといえばブラックですが、何もここ(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/vlimgdata/4988003953089.jpg)までおどろおどろしく加工を施す必要は無いだろう。
クスリニヤリと笑う箇所があちこちに仕込まれているし、小さくではあるが声をあげて笑っちゃったところもある。苦笑いというか、ね。一つ一つのシーンの、役者たちの心中をお察し申し上げると可笑しくて可笑しくて…というシーンが多々ある。映画館で予備知識も無く観ていたらもっと大声で笑ったのかもしれない。
そう。
観る前に何かをネットで調べようとしちゃいけない。何も知らずにまず観てしまえばいいと思うよ。
____
(語句メモなどはコメント欄)
(スペイン映画)
・カット! 世にも奇妙な一族 DVD
・OfertaDVDで14.75ユーロで購入。
・CUT 日本公式?
・カット!@シネマカフェ
・カット!@goo映画
監督: フェルナンド・レオン Fernando Leon
製作: エリアス・クェレヘタ Elias Querejeta
原作: フェルナンド・レオン Fernando Leon
脚本: フェルナンド・レオン Fernando Leon
撮影: アルフレッド・マヨ Alfredo Mayo
編集: ナチョ・ルイス・カピージャス Nacho Ruiz Capillas
出演:
ファン・ルイス・ガリアルド Juan Luis Galiardo
アンパロ・ムニョス Amparo Munoz
アガタ・リス Agata Lys
チェテ・レラ Chete Lera
エレナ・アナヤ Elena Anaya
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Comments
1) ルナは反抗期といえば反抗期かもね。「familia feliz (幸せな家族)」という理想像に刃向かいたがるというか。「familia feliz … ¿Eso no es lo que se comen los chinos? (シアワセカゾクねぇ……それって中国人の食べ物かなんか?)」と言ってみせる。
この年頃の娘は父親を避けたがるものかもしれない。父親サンティアゴは、「Lunaは私のことをまるで知らない人でも見るかのような目つきで見ることがある」と、グチってさえいる。
しかしながら、この父親サンティアゴの娘との接し方は奇妙である。こんな会話まであったぞ:
父: Tú y yo no hablamos mucho, ¿verdad? お前とはあまり話をしていないね
娘: No sé. ¿De qué? そうかな? 何について?
父: De tus cosas, de lo que tiene que ver contigo. Sé que estás en una edad difícil. / Lo que pasa es que hay ciertas cosas que un padre debería poder hablar con su hija. / Viviendo todos tan juntos, sepamos tan poco unos de otros. Por ejemplo, lo de tal Rafa. No sabía ni que existiera. Y sois novios, ¿no? お前についてだよ。難しい年頃だってのはわかるけども。でも父親が娘と語り合わなきゃいけないこともあるんだぞ。みんないっしょにこうして暮らしてたってお互いに何にも知らないって思うことがある。たとえばさっきお前が言ってたラファっていう男のことなんて、パパはそんな子の存在すら知らなかったぞ。彼氏なのか?
娘: Bueno, amigos, novios, más o menos. まぁね、友達っていうか彼氏っていうか。
父: ¿Te acuestas con él? SEXもする仲?
娘: Pss, no sé, a veces. えっと…たまにはね……。
父: ¿Usáis algunos anticonceptivos? 避妊はしてるんだろうね?
娘: ………。
父: ¿Qué pasa? ¿Te da vergüenza lo que te pregunto? どうした? 恥ずかしいのか?
娘: Es un poco la verdad. えぇそうね。
父: Si los padres hablan así con sus hijos, luego no habría tantos sustos, ¿a que no? 父親が子どもとこうして話していれば後でビックリさせられなくて済むじゃないか。
娘: Condones, usamos condones. コンドームよ、コンドームを使ってるの!
父: Y ¿se lo pones tú o él solo? お前がつけてやるのか? それとも彼が自分で?
娘: Él solito. 彼が自分でよ!
父: ¿Eras virgen cuando empezaste con él? その子と付き合い始めた時はお前は処女だったの?
娘: Papá, por favor. Joder, ¡que preguntas cada cosas! パパ、いい加減にして。なんなのよ。なんでもかんでも質問してさ!
父: Me parece lo más natural, somos padre e hija, ¿no? ¿Qué pasa? ¿No hay confianza entre nosotros? あたりまえのことじゃないか。親子なんだぞ。信頼し合ってるだろ。
娘: Sí, pero ........ えぇ、だけど……。
父: ¿Eras virgen o no eras virgen? 処女だったのかどうなのか!
娘: ¡No, no era virgen! 処女じゃなかったわよ!
父: ¿Se la chupas? しゃぶる?
娘: Joder .... なんなのよっ
父: ¿Se la chupas, o no? しゃぶるのか。
娘: ¡Pues, sí, se la chupo! あーそーよ! しゃぶるわよ!
父: Y ¿a los anteriores también? 前の彼氏とかのも?
娘: A todos, ¡se la chupo a todo el mundo! みんなよ! 私はみんなのをしゃぶります!
父: Pero, que no pasa, ¿no puedo enterarme de a quién se la chupa mi hija? おい、どうしたんだ、自分の娘が誰のをしゃぶってるかを知っちゃいけないのか?
娘: ¡No, no puedes! いけないのよ!
Posted by: Reine | Sunday, November 20, 2005 at 23:50
2) 家の前で若い女性の車がパンクしてしまった。困った彼女はこの家に入ってくることになる。
Santiagoは彼女を連れて庭を散策する。彼女は身の上を語る。どうやら妻帯者とずいぶん長いあいだ不倫関係にあるらしい。
彼女は言う、「あなたが羨ましい。あなたの御家族のような家庭を私はもてないんじゃないかって思うことがあるの。勘違いしてるのかもしれないけど、あなた方はとても幸せそうに見えるわ」と。
「そうですか、そんな風に映りますか」と満足そうなSantiagoであった。
Posted by: Reine | Monday, November 21, 2005 at 00:12
3) pinchar: [自]パンクする
これ、主語は「タイヤが」じゃないんだね。「ダレソレが」なのですね。
例) Pinchamos en la autopista. 我々の車はハイウェイでパンクした。
英語) We had a blowout on the road.
西語) Pinchamos en la carretera.
(http://www.wordreference.com/es/translation.asp?tranword=blowoutを参照)
Posted by: Reine | Monday, November 21, 2005 at 00:14
4) 「トイレの順番待ちをしなきゃいけないことにウンザリして(Estaba harto de tener que hacer cola por entrar en el cuarto de baño.)家族全員を撃ち殺してしまった男の記事をこないだ読んだよ」とカルロスが興奮気味に話していた。
トイレ争いがウザくて家族を殺したというその男はこれ↓をどう思うのだろうかね。
「Es mucho mejor estar mal acompañado que solo. Los que dicen lo contrario, es que nunca han estado solos. あんまり嬉しくない人とであっても誰かと一緒にいることの方が独りでいるよりもずっとマシだ。そんなわけ無いよと言う人もいるだろうが、独りぼっちになったことが無いからそんなことが言えるんだろう」
Posted by: Reine | Monday, November 21, 2005 at 00:20
5) llegar a + 不定詞: もしも~だったなら
En la prótasis de las frases condicionales irreales de pasado, puede sustituir al pluscuamperfecto de subjuntivo. El verbo LLEGAR tiene que estar en presente. (過去の事実に反する条件文の前提節において、接続法過去完了の代わりに使える。LLEGARは現在形に活用させる)
↓↓えっと……なにがなんだって? ↓↓
「もしも過去のあの時にナニナニしていたならば、こうこうこうだっただろう。(←実際には過去のあの時にナニナニしなかったのでこうこうこうはならなかった)」の文を作ろうとするとき、
Si hubiera cogido un taxi, habría llegado a tiempo. 「タクシーを拾っていたなら、間に合っていただろう。(← 実際にはタクシーを拾わなかったので間に合わなかった)」
と言わなければならないのだけど、「llegar a + 不定詞」を使うと、
Si llego a coger un taxi, habría llegado a tiempo.
と、スッキリとした文で言える。
Si lo hubiera sabido, no me habría comprado el coche.
↓
Si llego a saberlo, no me habría comprado el coche.
もしもそのことを知っていたならば、私はその車を買わなかったよ (← そのことを知らなかったので、私はその車を買ってしまった)
Si te hubieras marchado, te lo habrías perdido.
↓
Si llegas a marcharte, te lo habrías perdido.
もしも帰っちゃっていたなら、君はアレを逃してたことだろうよ (← 君は帰らないで残っていたのでアレを逃さずに済んだ)
Posted by: Reine | Monday, November 21, 2005 at 00:23
6) 妻役のAmparo Muñozは1973年のミス・スペイン、74年のミス・ユニバースらしい。当時の写真はhttp://web.tiscali.it/elena_gianotti/universe/images/1974.jpg 、http://www.pageant.com/universe/history/images/am250m.jpg
Posted by: Reine | Monday, November 21, 2005 at 00:24
取り急ぎ語句メモを書き写しとく:
1)
妹Luna: どのズボン履いたらいいと思う?
兄Carlos: (だから、さっきも言っただろ)破れてるやつ
妹: でもこれはキツいのよね
兄: だったらなんで俺に聞くんだよ。俺がどう答えようが結局自分の思った方を履くんだろ?
兄貴は苛立っていますな。「si al final te vas a poner lo que te salga del culo (おまえのケツから出たやつを最終的には着るんだろうが)」と言ってます。「lo que te salga del culo」の検索結果を見て、ニュアンスを知りましょう。
ちなみに:
女の人に「AとBどっちが私に似合うと思う?」と訊かれた場合、男の人はAともBとも答えてはならないのです。 その女自身はどっちがいいと思っているのかを察しろ、察するんだ。その上で、「僕もそれがいいと思うよ」と言えばいいのです。
Posted by: Reine | Tuesday, November 22, 2005 at 16:41
・estaba desvelado
desvelarse: 眠れない,まんじりともしない
・estar (siempre) encima de …: (1) (人)をいつもうるさく注意する (2) (事)に常に注意を払う
・movida: 《話》騒ぎ,混乱
・ En eso ha salido a ti. (そこのところは彼女はお前に似たんだな)
salir a + 人: ~に似る
・a estas alturas: この時点[段階]で
・tarado, da: 頭のおかしい人; まともなことができない人
・pintar: 【ふつう否定文で】重要である,値打ちがある
・de pega: 偽造の,偽の
・No se te ocurra volver a levantarme la voz. 二度と私に向かって声を荒げるんじゃないよ!
ocurrirse a + 人: (誰それに)考えが思い浮かぶ,思いつく
volver a + 不定詞: 再び[また]……する
levantar la voz: → alzar la voz: 横柄な口をきく
・llorera: おいおい[わんわん]泣くこと,大泣き,号泣
・colar: (嘘や偽物が)受け入れられる,通用する,通る
Posted by: Reine | Tuesday, November 22, 2005 at 16:45
なにも、http://bookweb.kinokuniya.co.jp/vlimgdata/4988003953089.jpg までおどろおどろしい加工を施さなくてもいいじゃないかと上で書きましたが、言い忘れてたけど、GEOLANDで見かけるDVDパッケージはもっとヒドい絵柄になっているんだよ。
http://www.geoland.jp/index.php?page=detail&gcode=1500992&media=00
なんか他の、スプラッタかなんかと間違えちゃってんじゃないのか?
Posted by: Reine | Saturday, April 29, 2006 at 17:32
またまた、こんにちは。
この映画も観てみて、ブログに記事を書いたのでリンクさせてもらいました。ほんとにね~、こんなにおどろおどろしいタイトル&ジャケットにしなくていのにって作品ですね。特典映像の予告編も見たけど、本編を見てからだと、すごく明後日の方向を指しているように思います。
で、GEOLANDのはまったく別物ですね(笑)後ろの役者さんが違うもの。
Posted by: bordergirl | Sunday, July 01, 2007 at 21:05
bordergirlさん
こんばんは。
おっ、特典映像の予告編ってどんな感じでしたか? 興味津々。なんか、とんでもなくかけ離れた仕上がりだったのでしょうか……? 恐いもの見たさをそそられますね。
私はこれが日本のamazonで買えると知らずにOfertaDVDかどこかでスペイン版を買ってしまったので、日本版の予告編を残念ながら知らなくて。ホントに、これはもっとよく調べてから日本版で観ればよかったなぁと、「ちっ」という思いです。
あとでbordergirlさんの記事も読みにうかがいます。楽しみにしています。
Posted by: Reine | Tuesday, July 03, 2007 at 21:01