Carlos contra el Mundo [スペイン映画]
この映画、薦めない。だってつまんないから。このDVDもさしあげたい。文字通り「つまらないものですが」。
(※注意点としては:
私も知らないでもないMálagaという街の人間の役があんまりにも愚鈍に描かれているのが、観客としての私をイライラさせている。という要素もあるのね、きっと)
主人公はCarlos、25歳。働いたら負けかなと思ってる。
仕事帰りの父が死ぬ。(父の職業から、この家庭はたぶん裕福では無いだろうと感じられる)
(工事中の?)道路に大穴がドッカンと開いていたのに、コーンも何も設置されていなかったために、父はそこにバイクごと落ちて死んだ。「Esto es una metedura de pata para el Ayuntamiento, se le ha matado un ciudadano por una negligencia, que han cometido. この事故は役所の大チョンボである、役所の怠慢によって一市民が殺されたのである」。
従兄が葬儀にかけつけた。
従兄は工場を経営している。「俺んとこならいくらでも仕事があるからいつでも来いよ」と言ってくれる。弁護士を紹介するから役所に対して徹底的にやってやれとCarlosに言う。
電話番号をメモするのに「ボールペンあるか?」と従兄が聞くと、Carlosは「No」と答えるのみ。ちょっと間が空いてから従兄は、「…誰かに借りてきてよ」と言う。Carlosっていうのは、こうゆう男です、「ボールペンある?」っていう質問に「あるか/ないか」を答えて終わっちゃう人。
そんなつもりでこの先ずっと観ていくと、ホントCarlosにはイライラします。この若者に微笑みかける気が起きない。ニコリともクスリともできない。まったく好きになれない。応援する気にならん。そもそも、応援されるようなことをCarlosはしないのですけどね。この若者は何も為さない。
それが、開始8分のこのボールペンのシーンで示されてるようなもんですわ。
Carlosは弁護士に話を聞きに行ってみる。
「最低でも2000万ペセタは取れるよ」とのこと。
すぐさま弟に「おい、俺たち金持ちになれるぞ」と語る。何が欲しいと訊かれて弟は「PlayStation」と答える。ここでCarlosも大はしゃぎするんだが……、あーもうあーもう! ホント、ダメだ、あたし、この男。好きになれない。はしゃぎっぷりが幼稚すぎて全く微笑ましくない。
というか、あれだ、あたしはこいつのルックスがてんでうけつけない。問題はソコだ。ソコか!
従兄のとこに行ってみたの?と尋ねる母に、「え? なんで?」とCarlos。「なんでって、働き口があるかっていう話でしょうが」と母が言うと、「誰も働かなくっていいんだってば」って。弟も「ママ、うちはお金持ちになるんだよ」と言う。
母ブチキレですわ。「Hazme el favor de no meterle pajjaritos al niño en la cabeza. (頭に虫が湧いたようなこと、弟にまで吹き込むのやめてちょうだい)」などと叫んでいる。
「賠償っていったいいつになるのよ」
「わかんないけど、そんなにかからないよ」
「その間のうちの生活はどうすんのよ」
「……」
「家賃と光熱費・水道代、従兄が立て替えてくれた葬儀費用、どうするのよ!」
というか、あれか、Carlosのこの勤労意欲の欠如が我が身を見ているようで同族嫌悪なんだな。だからイライラするんだわ。問題はココか。ココだな!
恋人の働く美容院を覗くと、なんだかカノジョにプレゼントなんて贈ってるサラリーマンがいやがる。「¿Quién era el capullo ese? (あの野郎、だれだよ)」とカノジョに質問。「あんな、El Corte Inglés(※エルコルテイングレス百貨店)のCMみたいなスーツを着てるような男はどーせつまんねぇリーマンなんだろーがよ」ってさ。
あぁぁぁっ、ほんと、この小僧、張り倒してやりてーな。(いや、エルコルテうんぬんはさておき、この、職業観みたいなのがイライラする)
INEM(ハローワークみたいな機関だと思っておこう; Instituto Nacional de Empleo)で求職の登録をする。適性は‘事務補佐’と判定される。自分があれだけ小馬鹿にしていたいわゆる‘リーマン’ではないか。「それは俺のやりたい仕事じゃない」と猛反発するが、「あなたの履歴に見合うものはコレしかない」と言われる。ブチギレして職安を後にする。
(※この辺の、Carlosの自己過大評価のサマへ感じる苛立ちや嫌悪感は、懐かしのyukimasaへのソレと似ている)
仕事探しはどうなってるのかと母や親戚に問い詰められる
↓
タバコを街角で売る仕事をするのかしないのかと迫られる
↓
(従兄の工場の方がマシだと考えたか)従兄の経営する工場へ行ってみる
↓
外国人観光客の喜びそうな典型的な‘オーレ、オーレ’的スペイン人のようなコスチュームを着せられて、いかにもな‘いやげもの(※みうらじゅん)’を街頭販売するように指示される
↓
イヤだ、俺はこんなのはイヤだ
↓
イヤすぎるので…
…鼻をつまんで声を変えて家に電話を入れる:
「職業紹介所のものですけれども、Carlosさんはいらっしゃいますか、明日面接を希望している不動産会社がありますから必ずいらしてください……」
Carlosは、そこそこいい会社へ就職が決まったことを装う。そんなウソが通用するわけがない。いつまでウソでウソを固めていくのか……っていう話ですわ。
ここまでだいたい22分。
残りの約60分は、もー、イライラするだけ。ハラハラとかすればまだ面白いけど、イライラするだけだからイクナイ。全くイヤになる。主人公の浅薄な言動に終始イライラである。我が身を見ているようでイライラである。
スペイン人が観ればまた別の視点があるのかもしれない。母親が息子へ寄せる過剰な期待とか、それは期待というより依存なのかとか、就労全般の捉え方・見つめ方とか、そういうの、現地人はもっとなにがしかの感興を覚えることが可能な映画なのかもしれない。
例えば、
「うちの息子が職業紹介所に行ったらね、求職者リストの一番上に載せてくれたのよ(※もちろんこれはCarlosの虚言である)」と御近所で得意気に触れ回る母親のシーンなんて、日本人よりもスペイン人観客の方がピンと来るんじゃなかろうか、苦笑しながら観るんじゃなかろうか。「あー、こーゆー人、いる、いる」って感じで。
余談:
むかし私はスペイン語絡みの仕事に携わったわけだけども、スペインの‘ファミリー’のママと一緒にバスなんか乗ってるとですね、知らない人々にそれを実に誇らしげに語るんですわ。「この子はね、私のアパートに住んでた日本人でね、日本に帰ってからコレコレコウイウ仕事をしたのよ」っつって。いや、ホントに、鼻高々だった。「…ぁ、ぃゃ……そんなたいそうなもんじゃなくて……」という私の下方修正依頼の声などかき消されてしまい。
あぁ、‘自慢の我が子’みたいな感覚なんだなぁ…ってね。微苦笑した。実際のところ、そんなに自慢してくれるのなら本望ですよとも思ったけど。誇らしく思ってくれてるなら私もやった甲斐がありますよ、と。
大好きなママさんのすることですから嫌悪感は抱かなかったですよ。しかし、自慢たらしく‘身内’のことを語る行為そのものへの違和感というか、くすぐったさというか、居心地の悪さはやっぱりあるわね。たぶん日本人の美徳からは遠いよね。まぁ、居るけどさ、そういう日本人もさ、昔も今も。
だから、まぁ、そういうとこね。
スペインではそういう見栄のぶつかり合いが日常的なのかい?という予備知識をもってこの映画を観るとね、この母親の言動や、それによって加速してしまう息子Carlosの窮し方が、もうちょっとわかりやすく見えてくるのかもしれない。
でも、そこまで努力して観なくていいです、この映画。そうまでして観る時間があったら他のを観た方がいい。
それが結論。
_______
(スペイン映画)
・Carlos contra el Mundo 公式
・Carlos contra el Mundo @ IMDb
・Carlos contra el Mundo @ Yahoo Cine
・英語タイトル『Carlos Against the World』
・2005年3月にFnacで買ってきた(14.95ユーロ)
監督: Chiqui Carabante チキ・カラバンテ
脚本: Chiqui Carabante
出演:
Julián Villagrán フリアン・ビジャグラン ... Carlos カルロス
Victoria Mora ビクトール・モラ ... Madre de Carlos 母
Juanma Lara フアンマ・ララ ... El primo 従兄
Silvia Rey シルビア・レイ ... Carlos' girlfriend カノジョ
Manolo Solo マノーロ・ソロ ... Moi モイ



Comments
語句メモ
(1) hacer de tripas corazón : 勇気を奮い起こす
(2) Ahora eres el cabeza de familia. もうお前がこの家の大黒柱なんだぞ
「頭,頭部」っていうcabezaは女性名詞だけど、「家長,責任者」というcabezaは男女。
1. f.(←女性名詞を意味する f. ) Parte superior del cuerpo del hombre y superior o anterior de muchos animales, en la que están situados algunos órganos de los sentidos e importantes centros nerviosos.
2. com.(←男女に共通の形を意味する com.) Persona de mayor responsabilidad en una familia que vive reunida.
(3) adelanto: 前払い金
(4) talego: 1000ペセタ札
Posted by: Reine | Wednesday, October 05, 2005 at 20:17
(1)
恋人の働く美容院を覗くと、なんだかカノジョにプレゼントなんて贈ってるサラリーマンがいやがる。「¿Quién era el capullo ese? (あの野郎、だれだよ)」、のシーン
あたくしはcapulloとかそういう単語はあんまり使わなくってよ。私はできる限りお行儀のよい単語でどこまで品の無い話ができるのかというのを目指して生きたい。下品な単語で話をするってのは何語においても簡単なことなんだと思うわ。易きに流れてはいけないのだ、きっと。あぁ、ナニ言ってるかわかんなくなった。
(2)
Carlosのオナニーする時のネタは『Super Culos』というエロ本。la edición para España de la revista mensual norteamericana BIG BUTT(アメリカの月刊誌のスペイン版、らしい)
(3)
母親が近所の雑貨店で息子の就職を自慢するシーンにて、「スーツを着ていかなきゃいけないのよぉ」と言う。その時の母親の顔のいやらしさがまた……。
(3') 実際、私も田舎町で数日間を過ごしてからBarcelonaなんか行くと、「みんなスーツ着てるよ!」って目ェ真ん丸にして叫んじゃうな、そういえば。
(4)
『平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学』でも読んでみるかとチラと思った。
(5)
Bingo Los Remediosというのが映るけど、それはSevillaのBingoだね。Malagaの友人宅を訪ねたらBINGOのすぐ隣だったので、そこが映ってくれれば嬉しかったんだが、このシーンではセビージャロケだったのだね、残念ながら。
Posted by: Reine | Wednesday, October 05, 2005 at 20:40
「あまり面白くなかった」という数行で終わらせることが理想だったのに、どうしてこんなに長文に仕上がってるのか自分でもわからない。
ほんと、どうにかしてほしい。真剣に。
もうこういう性格はいい加減アタマに来る。
Posted by: Reine | Wednesday, October 05, 2005 at 21:08
私、職場で、怒りのあまり、ボールペンを破壊したことがあります。(実話)
Posted by: abetchy | Thursday, October 06, 2005 at 01:44
この映画のCarlosも終盤、ものすごい破壊行動に出るよ。たいていそういうシーンって、観てるこっちは主人公に感情移入していがちで応援しがちだと思うんだけど、この映画に限っては、ほんと、「コイツ、好きじゃねー」って思いがまずあるから、ぜんぜん「壊せ! 壊せ!」って気になれないんだ。
Posted by: Reine | Thursday, October 06, 2005 at 08:33
わたくし、中学時代、クラスのやつらのやかましさに腹をたて(たんだかなんだったかよく覚えていない)、エンピツをばっきばきに折って、クラスの男子に恐れられていました。
あと、カンペンケースを教壇にたたきつけて「いいかげんにしろ」とどなったことも(これはいつのことだったか覚えていない)。
だから、男子のほとんどがわたくしのことをさんづけで呼んでいた様な気がします。
Posted by: Nisimura | Sunday, October 09, 2005 at 23:53
すんーーーごい意外
Posted by: Reine | Monday, October 10, 2005 at 00:16