Chueca
先日『Cachorro』を観ました。映画の舞台はMadridのChueca地区です。
昔、「Madridのゲイシーン探索」をテーマにChueca地区に宿泊したことがあります。ゲイ友ミゲル(仮名)と一緒に2~3泊した。
彼が全部プランを立ててくれた。素敵♥な2DKくらいのアパートを借りて二人で過ごしたんだわ。Madridに着いて、Chueca地区に着いて、どこかホテルかオスタルで彼がフロントか誰かと言葉を交わしてた。そうこうするうちに鍵を渡されて、我々はちょっと歩いたんだ。そこに素敵♥なアパートがあった。で、すんなりとそこに宿泊決定。
インターネットだとかじゃ無い時代にどうやってあれだけ確実なinfoを彼が得ていたかがよくわからない。旅行前にゲイ雑誌を見ていたとは思う。でも、あんまり詳しいことは話してくれなかったんだよなぁ、たしか。「僕達には僕達のネットワークがあるから ;-) 」なんつって煙に巻かれた気がする。
このたび訊いてみた。「どうやって宿なんか探してたの?」等々を。以下、私のQとミゲルのA(一部伏字):
Q: あのアパートどうしてどうやって見つけたんだっけ?
A: Hostal **** に行って、「アパートは扱って無いですか?」って訊いた。それで、C/ ***** という通りのアパートを紹介してもらった。
Q: 雑誌で情報を収集してたわけ?
A: そう、雑誌だよ。ほら、恥ずかしくって俺はとてもじゃないけど買えなくって、いつもReineに頼んで買ってもらってたじゃん、あの雑誌あの雑誌。Reineがいつもうちの前の広場のキオスクで買って来てくれた雑誌があるでしょ? あの雑誌だよ。
(そう言われて思い出した。いつも私はミゲルに頼まれて、というか命じられて、ものすごく破廉恥な、表紙もいろんなものがアラワになってるホモセクシャル専門雑誌を買いに行かされてたのだ。使いっ走り。「自分の家の近所でこんな雑誌買えないよーーー」って彼は言ってたけど、アタシにとっても近所だわい。ほんとに恥ずかしかったぞ、ほんっとに)
Q: 私たち、2軒のディスコに行ったよね? 1軒は宿から近くて小さめで。細長かった印象がある。ディスコというよりはBarだったよね。でも、そこにはあんまりオトコマエがいなかったからちょっと遠くの巨大ディスコに行ったんだよね、たしか。そこはマドリードでも最大級のディスコだとかなんとか言ってた??? でも結局そこでも別にオトコマエは居なくて、っていうか、あんたが歩いてたらガンガン言い寄られて、「君が今夜一番オトコマエだ」って囁かれたりしたんじゃなかったっけ?
A: 最初のは『WHY NOT?』じゃなかったかな。その後、『ÁNGEL』に移った。『ÁNGEL』は今はもう無いよ。ちなみに、今だったらhttp://www.chueca.comとかhttp://www.gaydar.esとかで情報集めるかな。雑誌は『ZERO』ね。
だそうです。
さて。この旅行の思い出を一つメモる。
この旅行はちょうどフランコの命日の2日、3日後だった。そんな時期だったので(?)、彼を偲んで(?)スキンヘッドの人々が街にはウヨウヨしてました。(その日前後はあまり町をウロウロするなと、むかーーし誰かに言われた気がするんだが、どうなのか、そんなに危ないもんなのか)
ミゲルと私は大通りを歩いてた。日曜の昼下がりだった。首都の大通りとは言え、日曜の午後って人通りも少なく(飲食)店も閉まってるのが多かった。わりかし閑散。
そんな時、大通りの反対側を歩いてる、人が良さそうとはとても言えない風貌の若者が目に入りました。通りのこっち側の我々とだいたい平行して歩いてた。それに気づいた頃からミゲルはピリピリし始めた。「Reine、僕達、危ないのかも……」などと言い出し、蒼ざめてた。
「なんで?」っつったら、あっち側を目線で指して言った。「ゲイと東洋人の二人組なんて格好の餌食でしょ。彼らが好きじゃないものが二人並んで歩いてんだよ? 襲撃されちゃうかも…」って。ちょっと涙目で。
私もそこで遅まきながら「ひーーーーーっ」ってなった。
そういうつもりで道の反対側のスキンヘッド氏を見ると、我々と歩調を合わせてるようにしか見えなくなってきて。「こっち窺ってる、窺ってるぅっ」なんつってビクビクした。私達は立ち止まってあっちを窺ってたんだけど、そうすっとタイミングの悪いことにあっちも立ち止まってるわけ。「止まった、止まったっ」なんつってガクガクし。「こっち見た、今、こっち見たっ」っつってブルブルし。ミゲルと私はチワワくらい震えた。
そうこうする内に、道のあっち側の男は先を歩いていた仲間と合流してまた立ち止まってるんだ。それでまた、「みんなでこっち見た、こっち見たっ」って、我々は固まって動けなくなってた。
お気づきかとも思うが、ホントーーに彼らがこっちを見てたかどうかは、かなり怪しいところです。でも、ホントーに我々の恐怖はシャレにならないくらい強烈でしたってば。
「逃げよう、どっかお店に入ろう!」って慌てて方向転換するミゲル。バタバタコソコソと逃げ始めた我々。その時、私、急に態度デカくなっちゃったんだよね。で、歩みもノロくなった。なんか悠長に歩き始めた。「何やってんの! 急いで!」とミゲルは恐慌をきたしている。
私: あのね、私、いいことに気づいちゃったんだー♥ んふふふん
ミ: なによ?!
私: 私はね、きっと大丈夫。彼らは私のことは排斥しないのよ。あんたはどーか知らないけど。(ノンキ)
ミ: 根拠は何っ?
私: だってね、私は日本人だよ?
ミ: 日本人だから何なのっ
私: だーーーってさーーー。日独伊三国同盟だよ。 日本って、あぁた、枢軸国だぜ? すんごく大まかに言ってみればかつての仲間みたいなもんだよ(!)。 私、言っちゃうもん、『あらぁ、枢軸国じゃなーい♥』『枢軸国のよしみでさ♥』って。だから、私はダイジョブ。 ゲイの貴方は危ないかもだけど
ミゲルは呆れ返っており。
「Reine、お前、ヴァカじゃない? あの人達がね、中学とか高校とかでね、歴史の授業を真面目に聞いてたタイプだと思う? 枢軸国なんてね、そんなの彼ら知らないよ? 知ったこっちゃないぜ? 枢軸国だろうが日本人だろうが、あいつらにとってはただの東洋人だよ? ゲイと一緒に居る東洋女だよ?」と。
私: …ダメ?
ミ: 全然ダメ
「そう言えばそうだよねっ」っつってまた逃げ始めた私。(※ナチスもファシストもネオナチもフランコも何もかもが私の頭の中で一絡げにされてることがむしろ怖い。ごめん、全然わかってないです)
結局、一軒のBARを見つけて逃げ込もうとしたんだが、《準備中》とかいう札がかかっており。「ひゃーーー」なんつって我々、ガシャガシャすごい勢いでドアを開けようとしてた。こじ開けようとしてた。そこへ、一人の皮ジャンのスキンヘッドが近づいてきて………
……あん時はね、「万事休す」って思った。「万事休す」なんて心境、それまでの人生で滅多に味わうこと無かったけど、あれは万事休した。「もうダメ……(泪)」っつって目をつぶっちゃう感じっつうのかな。息も止まる感じで。我々二人ドアに手かけたまんま固まった。
結局そのスキンヘッド氏は我々には目もくれず通り過ぎてくれたんですけどね。
ミゲルと私、顔見合わせて苦笑いしちゃって。後から後から笑いがこみ上げてきたけど、でも、あの瞬間は色んな悲惨なシーンを想像しましたよ。バットとか鉄パイプで殴られるんだと思ったんだ。マジで怖かった。いろんな映画でさ、racismとかさ、セクシャルマイノリティへの攻撃とかさ、あるじゃないですか。『Torch Song Trilogy』とか『Carlos SauraのTAXI』とか。そういう惨劇がよぎった瞬間だったのよ。
(※それらの映画のネタバラシ的ですみませんっした)
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