Bologna Children's Book Fair
ポルトガル人の友人は児童教育に携わる教師を指導する教育者。初等教育の先生を目指す若者に教えている立場なのね。その仕事の一環で、たとえば、Cascaisでは「Levar a Ler」という名のプロジェクトに関わったりしている。
彼女が「ボローニャに行きます」と言っているのは、ボローニャ児童図書展(Bologna Children's Book Fair)に出かけるからです。世界中の児童書を見て回るのが幸せだと言ってた。(彼女は趣味と仕事を兼ねて世界中の絵本を集めています。家の壁一面が買い集めた世界の絵本で天井高くまで埋まってた)
そして、ボローニャのその図書展では、「日本の絵本のブースはいつも黒山の人だかり」らしい。日本の絵本は人気・評判が高いらしいです。
今回私がリスボンに遊びに行くのに「何かリクエストある?」と聞いたらば、「児童書が欲しい」って。そこで私が持っていったのは、私自身も子供の頃によく読んでいた2冊(どちらも英語版のを手に入れたのではなくて、日本のを買っていった):
『100万回生きた猫』
『ぐりとぐらのえんそく』
『ぐり・ぐら』シリーズは、我が家にもいっぱいあって。とにかく可愛いよね。でも、「可愛いよね」で済んじゃう本かもしれないって心配もしてたのよ。なんていうか、メッセージ性とか無いんじゃなかろかとか、愉しくってオシマイっていう感じの本だけど、そういう本を彼女は望んでるのかしらとか。いろいろ考え。でも子どもの絵本なんだからそれでいいのよねと自分に言い聞かせたりなどしつつ、全ページを訳して彼女に渡しました。
すると、彼女ははげしく気に入っていました。そして、私がまったく思いつきもしない見方をしてた。「ほら、ぐり・ぐらの後ろにあるスペースと、この先進まなきゃいけないスペースの比を見てよ。この森の絵は時間軸をも示す配置になってるのね」とか、「ほら、最初のページで時計を見たシーンが今このページに至ってやっと意味を成すわけよ。読者はその間は時計のことなんか忘れていたのに、ここで時計が再登場することで時間の経過をコトバ抜きでわからせる仕組みになってるのよ」とか。
なるほど、子供向け絵本をこういう視点で見つめるとこんなに面白いのかと、新しい世界を与えられたような気分でした。
そして『100万回……』。
私は子供の頃には『100万回……』は、「わー、おもしろーい」とは思ってなかったと思う。どちらかというと、子ども時代の私にはウケなかった本だと思う。
しかし今回、彼女に内容を知らせるために全ページを訳してみたら、深く感動した。「なんだ、この話、すげぇよ」と。ぐっと来た。「この素晴らしさがわからなかったなんて、子どもの頃はホントに私は子どもだったんだなぁ」と実感した。
訳し終えて彼女に読ませたところ、最後の2ページで彼女はハッと息を呑んだようになって、「鳥肌が立った」と言っていた。彼女の腕にはホントに鳥肌が立っていた。「人を愛するとは何なのか、死ぬとはどういうことか、生きることの意味ってなに……という重大なテーマを、これだけ簡潔に子供たちに教えられる絵本を、私は他に知らない」と言っていた。
翌日、彼女は学校で生徒達(教師志望の若者ね)に『100万回…』を読んで聞かせたらしい。生徒の中には最後のページで涙ぐむ人もいて、「日本の絵本はどうしてこんなに優れているんだろう…」と感銘をうけているようだった、とのこと。
なにか他にお薦めの日本の絵本がありますか?>All
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